隻狼、闇の中にて   作:黒プー

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人返り&3周目クリア記念。後修羅ルートでトロコン達成ですがぶっちゃけあのルートやるくらいならトロコンしなくていいです(鋼の意志)。


目覚め

 戦国末期、葦名の国のススキ原にて。

 竜胤の力を消すという主人の願いを叶えるため、一人の忍びが自らの命を断とうとしていた。

 

「……最後の不死を、成敗致す」

 

 不死断ち……すなわち竜胤の力を消すには、主人か不死になったものが自らの命を断つ必要があった。

 故に、不死の契りを交わしたこの忍び……狼は、主人を生かすために自らを犠牲にしようとしているのだ。

 狼は自らの首に不死斬りを当て、最期にと自らの主人の顔を見、一つの言葉を送る。

 

「人として、生きてくだされ」

 

 誰も聞く人がいないその言葉を、それでも自らの主人に届くことを願い、狼はそのまま、自らの首を絶った。

 

 

 

 ♢

 

 

 

 例え不死であろうと、不死斬りから蘇ることはない。

 狼自身も何度も不死をその刀で斬ったことからその効果を実感していた。故に彼は、もう2度と目覚めることはないだろうと思っていた。

 

「……ここは」

 

 なぜか目を覚ました狼は、周囲を見渡す。

 ……どうやらそこは、彼の知る荒れ寺とはまた別の寺らしかった。

 そして彼は、仏壇に自らの愛刀、『楔丸』と、かつて己を斬るのに用いた刀、赤の不死斬り『拝涙』が捧げられていることに気づく。

 

「……」

 

 周りを見るにそれなりの時間が経っているにも関わらず、その刀だけは錆びることもなくかつての状態で置かれていた。

 狼は楔丸を腰に、拝涙を背中に帯ると、とりあえず荒れ寺の外に出る。

 入り口から外を見るが、荒れ寺のある場所にふさわしく、まともな獣道一つそこにはつながっていなかった。

 

「……ううむ」

 

 行くあてもなく、かといってここから出る道すらわからない。狼がどうすればいいか考えていると……

 

 

 

「っ!」

 

 自らが培ってきた感覚に従い、変わらずに左腕に嵌っている忍び義手、そしてそこに付けられている忍具の一つ、『霧鴉』を起動し、咄嗟に避ける。

 狼がその忍具を使うと同時に、木々の奥から"収束する何か"が迫ってくる。

 木々を勢いよく巻き込んでいるあたり、霧鴉でなければ避けるのは不可能と言っていいだろう。

 

「……」

 

 狼は周囲を確認し、あれを使った人物を探す。

 すると、件の人物はすぐに見つかった。

 銀髪の青年と特徴的な前髪の青年。どうも油断しているらしく、談笑しながらこちらに向かってきていた。

 

「……」

 

 忍びがまだ生きていることに気がついていない。

 ならばやることは一つだ。

 

 

 

 ================================

 

 

「しかし悟、今回の任務は随分簡単だったね」

「そーだな。1級の任務とはいえこんな簡単なのを俺ら二人でやってこいだなんて、夜蛾センも俺らのこと随分舐めてるよな」

 

 山奥の荒れ寺に向かって、二人の青年が術式でできた道を歩いていた。

 特徴的な前髪をしている黒髪の青年が、夏油傑。非術師出身ながら術式『呪霊操術』と並外れた格闘センスによって呪術師最上位の特級呪術師になった男。

 容姿端麗な銀髪の青年が、五条悟。呪術界の名門五条家の出身であり、五条家相伝の『無下限呪術』と『六眼』と呼ばれる特殊な目で同じく特級呪術師になった男。

 二人の強さは自他ともに認められるものであり、本来であれば二人とも別の任務が割り当てられるはずだった。

 しかし、今回の任務は()()()()二人で行けと二人の通う呪術高専の教師である『夜蛾正道』に言われ、彼らはこの山奥まで来ていた。

 

「ま、こんなしょーもない山からさっさと帰れるならいいっしょ。 ちゃっちゃと確認してちゃっちゃと帰ろうぜ」

「……それもそうだね」

 

 夏油は五条を信頼している。術式はもちろんのこと、今までの経験上五条がこの手の奇襲で呪霊を撃ち漏らしたことがなかったからだ。

 実際、並大抵の呪霊であればあの無下限呪術、『術式順転「蒼」』を避けることさえ叶わず撃破することができただろう。

()()()、であればだが。

 

「______お命、頂戴致す。」

「っ!?」

 

五条と夏油の間に、いつの間にか男が立っていた。

夏油はバカな、と驚く。周囲には『呪霊操術』で操る呪霊を張り巡らせて見張らせていた、呪霊達が気が付かないわけがない。

咄嗟に呪霊達の様子を術式で確認すると……すでに、全滅していた。一体残らず。

 

「っ〜、そう簡単に、やられてたまるかっ!」

「…チッ」

 

刃が届く直前、五条は無下限呪術を使うことによってなんとか男の刃を防ぎ切る。

その様子を見た男は刃が届かないことを悟ったからか、バックステップで五条から距離を置く。

 

「てめえ、どっからどうやって俺の後ろに回り込みやがった…。」

「…」

「ああだんまりかよ、そうだろうなっ!」

 

五条は無下限呪術を最大限活かし、『無限』を貼りつつ*1術式順転「蒼」を放つ。

しかしそれを、男は一瞬姿を消して避ける。

 

「はぁ!? どういうことだ!?」

「どうしたんだい、悟。」

「…あの野郎、術式がねえ。」

 

五条は六眼で確認した情報を夏油に言う。

六眼は綿密な呪力操作を可能とする特殊な目だが、それだけではなく相手の術式を看破すると言った使い方もできる。

五条はそれを使い、先ほど男が一瞬消えた原因を探ろうとしたのだ。

しかし、そもそも男には術式がなかった。

 

「!? バカな、ならどうやって姿を…?」

「わっかんねえよ! …クソッ、まさか無下限呪術を術式なしのやつに避けられるなんて…っ!」

 

術式任せで体術などまともにできない五条が今回のこの戦闘で役に立たないであろうことを察した夏油は、懐から特級呪具である刀を取り出し、それで近接戦を試みる。

普通の呪術師であればまず受け切れないであろう夏油の連撃を、しかし男は簡単に受け流していく。

 

「……軽い。」

 

そして男は連撃を全て受け流した後にそう呟いた。

 

「っ、ならばっ!」

 

先ほどよりも素早く、そして()()()()()()連撃、これであれば流石に見切られることはないと踏んで、それを実行した。

しかし、それはむしろ悪手だった。

 

「……!   フッ…!」

「!?」

 

夏油が突きを放った途端、男はその刀の突きを見切り、そしてあろうことかそれを掴んだ。

突然の行動に、夏油は思わず体の重心をずらされてしまう。

 

「…」

「がはっ…!?」

 

その隙をつかれ、男は夏油の腹部に拳を叩き込み、彼を気絶させた。

 

「っ、傑!」

「……。」

 

友人の夏油を倒され、怒った五条が再び無下限呪術を、今度は最初の数倍の威力のものを放とうとした、その時だった。

 

「…悟!」

「っ!」

 

五条を呼び止める声が、彼の来た道から聞こえる。

振り返ってみると、そこには彼の教師である夜蛾が立っていた。

普段来ないのになんでここに、と五条が言う前に、夜蛾はあろうことか彼の頭に拳を叩き込んだ。

 

「いっっっっっってえ!?」

「馬鹿者が、俺がお前らにいつ戦えと言った!?」

「はぁ…!?」

 

夜蛾はやはりと言いたげな顔で呆れつつ、五条に説明する。

 

「…いいか、俺はお前達に、そちらにいる彼を連れてこいと言ったんだ! いつ彼と戦えと言った!」

「いや、だって呪霊じゃんか!」

「呪霊だろうがなんだろうが連れてこいと言っただろうが! お前達、1級の任務だからと言ってまともに話を聞いていなかったな!?」

 

再び五条の頭に落とされる拳骨を、男…狼はよくわからないと言った顔で眺めつつ、しかし愛刀を刀の鞘に収めることにした。

 

 

 

 

 

「…この度は、申し訳ないことをしてしまったことを謝らせていただきたい。」

「…構わぬ。」

 

あのあと、五条に拳骨を落とした夜蛾は狼をそのまま車へと乗せ、そのまま呪術高専へと向かい、今彼らは高専の一室に座っていた。

夜蛾は狼の言葉で顔をあげると、そのまま言葉を続ける。

 

「…まず、あなたの現状についてだ。うちの馬鹿どもがあなたを突然襲ったのにも訳がある。」

「…」

「…まず、あなたはもうすでに人の身ではない。」

 

夜蛾の言葉に、無表情だった狼の眉がかすかに動く。

 

「あなたは今、あなたが持っているその刀をもとに、呪霊として現代に蘇っている状態だ。」

「…呪霊、とは。」

 

狼の疑問に、夜蛾は呪霊について説明する。

呪霊とは、人から漏洩した呪力エネルギーをもとに誕生する存在。 恐れや後悔など、人の負エネルギーが向けられる「畏怖や思い出の対象となる場所・存在」に呪いは溜まりやすく、より大きな呪いが溜まるほど、より狡猾な呪霊が誕生する。

そして狼は、その刀に込められた怨嗟をエネルギーとして、呪霊として蘇ってしまったと、夜蛾は語った。

 

「…怨嗟か。」

 

狼は怨嗟について心当たりがあった。

左腕の忍び義手のかつての持ち主。そして大手門の婆の言葉。

その怨嗟によって、狼は復活してしまったのだろう。

 

「…あの馬鹿二人は、本来復活したあなたを迎え、ここまで連れてくる役割のはずだったなのだが…本当に申し訳ない。」

「…なぜ、俺が復活すると。」

 

狼の言葉に、夜蛾は懐においていた箱を机に置き、そしてそれを開いた。

中身は1通の書状らしく、狼が見慣れた字で書かれていた。

 

「…それは戦国時代に書かれたものだ。それを読み解いた結果、あなたが復活してしまうことがわかった。」

 

手紙の送り主は、剣聖、葦名一心の薬師、エマであった。

 

 

 

 

『拝啓、狼殿。

あなたがこれを読まれていると言うことは、恐らくあなたは不死斬りの怨嗟によって復活してしまっていることでしょう。

人を斬ってしまった刀にはどうあっても怨嗟が篭ってしまう。あなたがかつての仏師殿のように、怨嗟に飲まれた姿になっていないことを、祈るばかりです。

そしてもし、あなたが私の知るあなたであるのならば、願わくばあなた自身も一人の人間として過ごされてください。

他ならぬ九郎様がそう願われていました。 あなたが未だ九郎様の忍びであるならば、ぜひ主人の願いを叶えてみるのはいかがでしょうか。』

 

 

 

 

「…この手紙と共に、あなたが持っている赤の不死斬りのありかが描かれていた。だから我々はあなたを迎えに行かせた。 」

「…そうか。」

 

狼の主人は、無事に人として生き、そして死んでいったようだった。

それだけでも、狼の願いは達成されていた。

…だが、九郎の最後の願いがまだ残っていた。

 

「…夜蛾殿。」

「…呼び捨てで構わない。」

 

手紙を箱に収めた狼は、、夜蛾の目を見て言った。

 

「…俺は、九郎様の…我が主人の命に従い、今しばらく人として過ごすことにする。」

「…そうか。」

 

夜蛾は頷くと、ある提案をしてくる。

 

「では、ここで教師として働いてみると言うのは? …あなたのその忍びとしての体術。それを生徒達に教えてくれれば、私としては助かる。」

「… それが、九郎様の願いにつながるのであれば。」

 

 

 

 

こうして狼は、呪術高専の臨時教師として、籍を置く事になった。

 

 

*1
無下限呪術の基礎。無限とは、人々の間に常にある物質。五条の無下限呪術はそれを実体化させて扱うというものだ。そもそもこの術式は無限を扱う術式であり、術式順転はその応用である。




フロムゲーは呪術と相性がめっちゃいい気がする。
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