隻狼、闇の中にて   作:黒プー

2 / 2
1話投稿しただけで評価に色ついたの初めてだぁ…。
感想も結構もらえてすごい嬉しいです、ありがとうございます。


護衛任務 #1

車が行き交うごく普通の通り。

高専の特級呪術師、五条と夏油はある任務のためにこの先にあるビルに向かっていた。

彼らは教師である夜蛾を通じ、呪術界の重要人物である天元から、彼の呪霊化の阻止に必要な少女の護衛を命じられていた。

そして今、彼らは先に現地にいる狼と合流するためにこの通りへとやってきていた。

 

「…でもさー、『Q』*1の方はわかるけど盤星教*2はなんで少女殺したいわけ?」

「崇拝しているのは純粋な天元様だ、 星漿体…つまり不純物が混ざるのが気に入らないのさ。 …だが盤星教は非術師の集団だ。警戒するべきなのはQの方だろうね。」

 

五条は近くの自動販売機で買ったジュースを開け、それを飲みつつ言う。

 

「ま、大丈夫でしょ。俺たち最強だし。だから天元様も俺たちを指名……なに?」

「いや…。」

 

五条に呆れたような視線を向けつつ、夏油は言葉を続ける。

 

「…悟、前から言おうと思っていたんだが…。」

「…おい。」

 

夏油が言葉を続けようとした時、二人は後ろから声をかけられる。

二人が振り向くと、そこには柿色の装束を着た男が立っていた。

 

「ブホッ!? ゴホッゴホ……お前気配消して後ろ立つのやめろよ!? 呪力見えにくいんだよ!」

「…すまぬ。」

「さ、流石に驚きました。」

 

大きく咳き込みつつ呆れたようにいった五条とは違い、夏油は自らの近くにおいていた呪霊すら狼の気づくことが出来なかったと言う事実に冷や汗をかく。

敵だったら確実にやられていた。

そんな夏油をよそに、狼は自販機を指差しながら言った。

 

「…これは、どう使う。」

 

その狼の言葉に、二人とも目を点にした後、五条は笑い転げ、夏油は呆れたような目線を狼に送る。

 

「だっははあははは! 俺でも知ってんのに知らねえとか! だはははは!」

「はぁ…悟、君だって最近まで使えなかったんだから人のこと言えないだろう。 …お金入れてからボタン押すだけです。」

 

「はぁ!?」と怒っている五条をよそに、狼は言われた通り小銭を入れ、それからボタンを押す。

すると当然だが、自販機の底に鈍い音が響く。

狼が底についている入口を探ると、当然だがペッドボトルの抹茶があった。

 

「……」

「…上、捻って下さい。」

 

ペットボトルに困惑していた狼に、夏油は再びため息を吐きつつ言う。

狼は蓋を開け、そして抹茶を飲んだ。

 

「…うまい…。」

「そりゃ良かったですね。 ……さっさと現地行きましょう。」

 

夏油が呆れたようにそう言ったと同時。

三人が向かっていたビルの最上階の窓から爆発音が起こった。

 

「お?」

「!」

「……」

 

夏油が自らの術式を発動させ、呪霊を呼び出しているのを横目に、五条は狼に話しかける。

 

「なあ先生、これでガキンチョ死んでたら俺らのせい?」

「…知らぬ。」

「いや知っとけよ教師。」

 

夏油は呪霊に乗って爆発が起こった階へと向かっていく。

それを横目に狼は懐から夜鷹筒*3を取り出し、ビルの方に向けてそれを覗きながら言う。

 

「…あの程度の爆発であれば、女子は生きている。」

「なんでわかんのさ。」

「火薬の扱いならば心得ている。あれは精々壁を破る程度の物だ。」

 

五条は目を凝らして爆発の起こった階を見ていると、ちょうど人間が煙の中から放り出されたのが見えた。

そしてそれを、夏油が呪霊を操って確保するところも。

 

「おおー、本当に生きてた。」

「…」

 

そう五条が呟くと同時に、突然二人の背後から10本程度ナイフが飛んでくる。

それを狼が楔丸で、五条が無下限呪術で防いで見せると、ナイフが飛んできた方向から、二人の男が姿を現す。

 

「へぇ、流石高専。それなりに強そうな奴らを送ってきたんだ。」

「クク、だが所詮はガキと中年だろう。さっさと殺してしまおう。」

 

一人はQと言う文字が書かれた帽子を被り、マントに身を包んでいる男。

もう一人はQと書かれた仮面をつけ、刀を帯びている男。

どうやら二人ともQの構成員らしかった。

帽子を被った方の男が、五条の方に声をかける。

 

「君、五条悟だろ?...噂通りの実力か、確かめさせてもらおう。」

「いいけど。…でもつまんねえからルール決めよう。」

「ルール?」

 

五条はナイフを無下限呪術で放り投げつつ言う。

 

「泣いて謝ったら許してやるよ、雑魚。」

「…クソガキが。」

 

そうして戦い始めた二人をよそに、狼は目の前の仮面の男と向かい合う。

男は狼の背中に目を向けると、笑いながら言う。

 

「おいおっさん、随分いい刀持ってんじゃねえか。それ、くれよ。そしたらここは見逃してやる。」

「…戯言を。この刀は貴様の身には余る。」

 

その狼の言葉に、男は顔を赤くしながら言う。

 

「テメエ、神速のアークと言われた俺の身に余る刀なんざあるわけねえだろうが!」

「…」

「チッ、面倒くせえな、テメエを殺して奪ってやんよ…。」

 

そういうとアークと名乗った男は刀に手を付け、居合の構えを取る。

 

「テメエにこの俺様の十文字…見切れるかぁ?」

「…十文字?」

 

その言葉に、狼は相手の姿勢を観察する。

そして、このアークという男の構え、そして姿勢は、葦名流十文字の構えだということに気がついた。

だがそれはあまりに汚い構えであった。かつて葦名流を収めていた、居合の達人である佐瀬甚助の居合とは比べ物にならないほど。

 

「……野党の方がまだマシだ。」

「んだと!? テメエ…殺すっ!」

 

狼の呟きが聞こえたらしく、激昂したアークが十文字を繰り出す。

しかし、その汚い姿勢から飛び出した十文字は、ただの居合にすら及ばない物だった。

狼はあっさりとその十文字とは到底呼べない何かを弾く。

 

「クク、今お前防いだな! やはりお前にはこの太刀筋が見えていないのだろう!」

 

嬉しそうにいうその男の言葉に、狼はため息を吐きつつ、今度は彼も居合の構えを取る。

 

「居合勝負だぁ? ったく、仕方ねえな、受けてやるよ!」

「…。」

 

男が居合の構えをすると同時、狼は刀を抜き、そして十字にそれを振るう。

素早く刀を振るうことにより、斬った際の衝撃波が十字を作る。それすなわち十文字なり。

 

「…は…や…?」

「…貴様のそれは、居合ですらない。」

 

男の利き腕を斬り裂いた刀の血を拭いつつ、狼は男にそう言い捨てた。

 

 

「おーい傑ー。そっち大丈夫だったかー。」

 

エレベーターでビルを登ってきた五条の言葉に、夏油は親指で捕らえたQの戦闘員を指し示すことで返事を返す。

最も、呪霊で捕らえていたせいで戦闘員の方は精根尽きていそうな有様だったが。

 

「んまあ最高戦力名乗ってたバカも雑魚だったしこんなもんか。 …そういやあの柿忍者は?」

「…ここだ。」

 

いつの間にか上がってきていた狼に、五条は少し驚く。

 

「えっお前どうやって上がってきたんだよ。」

「…鉤縄は、架けられる場所さえあればどこにでも行ける。」

「ええ…。」

 

狼に変なものを見る目を向けている五条をよそに、狼は夏油に尋ねる。

 

「…少女と付き人の方は。」

「問題ないです。少し煤がかかっていたくらいでしょうか。付き人の方は…こちらに。」

 

 夏油が指を指している方向に狼が目を向けると、そこには夏油の呪霊で何やら遊んでいる付き人がいた。

その様子を見た狼は困惑しつつ夏油に尋ねる。

 

「…あれは。」

「………付き人の方、です。」

「…………」

 

あの付き人のことは見なかったことにしつつ、狼は爆発に巻き込まれず無事だったソファーに座り、懐にしまっていたおはぎと抹茶のペットボトルを取り出す。

その狼の様子に、夏油は驚いて尋ねる。

 

「えっ、この子どうするんですか!?」

「…知らぬ。その娘次第故。」

「いや、襲撃まであったんですよ? 高専まで連れていくべきでは?」

 

狼はおはぎを食べつつ、夏油にもう一度言う

 

「…その娘次第だ。」

「どう言う意味ですか…?」

「…天元様が、娘の好きにさせよ、と。」

 

夏油は、狼が娘次第と言った意味にようやく納得が言った。

それと同時に、もっと説明しろよと呆れた。

 

「…もう少し口数増やした方がいいんじゃ?」

「…九郎様にも、同じことを言われていた。」

 

なら学べよ、と言う言葉を飲み込んで、夏油は五条が抱えている少女の方を見る。

すると、いつの間に起きていたのか五条の手元から少し離れた位置にいた。

 

「下衆めっ! 妾を殺したくばまずは貴様から死んでみせよーっ!」

 

軽くキレている五条を狼に押し付けつつ、夏油は天内に話しかける。

 

「理子ちゃん落ち着いて、私たちは君を襲った連中とは違う。」

「嘘じゃ! 嘘つきの顔じゃ! その前髪も変じゃ! 美容院行け!」

 

あ”ー、殴りてえ。

その感情を抑えつつ、夏油は五条と共に、自らの前髪をバカにしたこの少女を、まるで牛裂きの刑のように引っ張る。

 

「い"い”やあ”あ”あ”あ”あ”! 不敬ぞーーー!!!!」

「おっ、おやめくださいいいい!」

 

その少女の声を聞きつけたのか、慌てたように付き人の女性がやってくる。

少女は救世主を見つけたかのように言った。

 

「く、黒井ぃ〜!」

「お嬢様、その方々は味方です!」

 

おやめください、と言う黒井の言葉に渋々従った夏油と五条に解放された天内は、何かよくわからないものに乗っかっている自分の付き人に、困惑した目を向ける。

 

「そ、それはなんじゃ…?」

「ああ、これは前髪の方の術式です!」

「その呼び方やめてもらえます?」

 

付き人の言葉に再びキレそうになる夏油は、キレないように気をつけつつ自らの術式について説明する。

 

「呪霊操術。文字通り取り込んだ呪霊を操れるのさ。取り込めさえすれば結構便利だよ。」

「ったく…結構アグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってそうだしどう気ぃ使うか考えてたのに。」

 

自分の術式を説明する夏油をよそに、五条は呆れたように言う。

その五条の言葉を鼻で笑いつつ、天内は言う。

 

「ふん、いかにも下賎なものの考え方じゃなぁ!」

「あ”?」

「…いいか、天元様は妾で妾は天元様なのじゃ! 貴様は"同化"と"死"を混同しておるらしいが、それは大きな間違いじゃ。 同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾となる!妾の意思や魂は今後も生き続け…って聞けえ!!!

 

お互いの携帯の待ち受け画面について話し合っていた夏油と五条は、思い出したように顔を上げる。

 

「…ああ、ごめん、興味なくて聞いてなかった。」

「てかあの喋り方だと友達もいないじゃろ。」

「快く送り出せるのじゃ。」

「学校じゃ普通に喋ってるもん!!!!!」

 

自分の言った言葉に、天内はハッと思い出したように叫ぶ。

 

「がっ、学校! 黒井!今何時じゃ!?」

「まだ昼前ですが…やはり学校は…。」

「うるさい! いくと言ったらいくのじゃっ!」

 

二人が慌てたように隣の部屋へ入っていくのを見送ると、五条は思わず呆れたように叫ぶ。

 

「はぁ!? この状況で学校行くのぉ!? このまま高専連れ帰った方がいいっしょ!?」

 

その五条の言葉に、ずっと黙っていた狼が口を開く。

 

「…止めては、ならぬ。」

「なんでだよ!? ただの学校じゃ守るのきついだろ!」

「……ならぬ。止めては、ならぬのだ。」

 

いつもよりはっきりとものをいう狼に、五条は思わず黙ってしまう。

そんな彼をよそに、狼は懐から一つのお守りを取り出す。茶色のただのお守りに見えるそれを、狼は何かを思い出すように眺める。

 

「……あのような子に世を託すなど、あってはならぬと言うのに。」

 

それ以降、彼は何も言わず、茶を飲むだけだった。

 

 

*1
呪術界でそれなりに幅を利かせている呪詛師集団。トップの戦闘員バイエルをはじめとしてそれなりの戦力を持つ。

*2
天元を神として崇める宗教団体。

*3
SEKIRO世界の望遠鏡。普通の望遠鏡よりよく見えるらしい。




九郎様と理子ちゃん境遇似てる気がしてこのシーンだけは描きたかったんだよね。
投稿遅れて申し訳ナスです。修羅ルート攻略してたらこんなに時間が…。
でも修羅一心様あんまり強くなかった気がするのですが皆さんどうでしたか? 僕エマさん含めて3回で終わったんですけども。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。