夜凪景 in 推しの子   作:抹茶れもん

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 続きが書けるとは思わなかった。
 これからマイペースに上げていくかもしれないしそうでないかもしれない。



役作り

 

 

 彗星の如く現れた演劇の鬼才、夜凪景。

 俺こと星野アクアの立場はこの女の登場により一変することとなった。

 

 ……最初はお目付役なんて断ろうと思ったんだけどな。

 聞けば時代劇俳優に跳び蹴りかます女だぞ。

 絶対なんかやらかすに決まってる。

 アイという破天荒な天才の世話をしていた斉藤元社長やミヤコを見てきた俺としては、夜凪のやらかしの尻拭いなど真っ平ごめんという話だ。

 

 ここでそんな面倒なことやってられるか、俺は家に帰らせてもらう——と、言えれば簡単だったのだが。

 生憎なことに、夜凪は史上類を見ないレベルでの天才だった。

 演技に限って言えば、それこそアイに匹敵するかそれ以上のポテンシャルを秘めていると言ってもいい。

 

 それはつまり、夜凪の手綱(たづな)を上手く握ることさえできれば、芸能界での地位をいち早く獲得できるという事でもある。

 そのように思い至ってしまえば、この機をみすみす逃す手は無くなってしまう。

 

 そういうわけで、俺は俺の目的を果たすため、夜凪のマネジメントのような真似をすることとなったわけだ。

 

「あらぁ〜、アクア君いらっしゃい!」

「こんにちは。

 夜凪、もう来てますか?」

「ちょっと前に来たわよぉ!

 あの子美人さんよねぇ、料理も美味しいし。

 アクア君、あの子は逃しちゃダメよぉ!」

「いえ、別にそういうのじゃないので」

 

 CMの撮影から数日、夜凪は監督のスタジオで基礎的な芝居の稽古をこなしている。

 発声とか諸々な。

 俺もその手伝いのためにここまで足を運んでいる。

 

 夜凪は思った以上に要領が良く、まるで水に浸したスポンジの如く技術を吸収していった。

 天性の才覚というやつか、もともと悪くないレベルにはあったメソッド演技以外の項目においても既に十分な水準に達している。

 

 しかも、これでまだ成長の余地が過分に残っているだろうというのが末恐ろしい。

 

 俺は苺プロで夜凪が正式に役者として契約を交わした時のことを思い返した。

 

 

★☆

 

 

「ね、ねぇ……お兄ちゃん」

「何だよ」

「何だよじゃないよ!

 なにあの子だれ!? 超美人なんだけど!!

 えっ、お兄ちゃんの彼女!? うーわ、私に黙って女なんか作ってたの!?

 普段はやれやれ系陰キャ気取ってるクセにヤることヤってやがったんだぁ!!!」

「人聞き悪いこと言うな」

 

 苺プロに夜凪を迎え入れた際に俺の双子の妹であるルビーが発した第一声がそれだった。

 誰がやれやれ系陰キャだ、誰が。

 

 ぎゃあぎゃあと小煩いルビーに対し、苺プロの現社長であるミヤコはどこか呆れたような面持ちだった。

 

「まぁ別に優秀なタレントが加入してくれるに越したことはないけれど……。

 アクア、あなた防刃チョッキとか買っといた方がいいんじゃない? 安いのだと一万円くらいらしいわよ」

「よし、良い度胸だお前ら座れ。

 徹底的に議論してやる」

 

 俺の普段のイメージに多大なる誤解が生じているようである。

 風評被害を生む前に訂正しておかなければ。

 

「てかあの子さっきから3時間くらいずっと同じ動画リピート再生し続けてるんですけど……! めちゃコワ……」

「初めての映像作品だから嬉しいんだろ」

 

 ルビーがビシッと指差す先には、事務所のソファに三角座りしながら無言無表情でスマホと睨めっこしている夜凪が居る。

 確かに下手なホラー映画よりも不気味さで勝っている感じはある。

 

「アクア君」

「わっ、喋った!」

「そりゃ喋るぐらいはするだろ」

「人間だものね」

「この映像の中の私、どこか変じゃないかしら」

 

 彫像のようにピクリともしなかった夜凪が再起動したかのように問いかけてくる。

 

「変? いや、特にそうは思わなかったけど。

 クライアントにも好評みたいだったしな」

「うん……そうなんだけど、なんだけしっくりこなくて。

 パジャマのボタンを掛け間違えてる時みたいな」

 

 例(たと)え独特だな。

 要は自分の演技に違和感を感じるということだろうか。

 ……それならまぁ、思い付くことはいくつかある。

 

「役にズレがあるんじゃないか?」

「役に……ズレ?」

「ああ。

 あの撮影で監督が意図していた画は『父(・)の(・)た(・)め(・)に(・)料(・)理(・)を(・)作(・)る(・)娘(・)』だったろ。

 必然、表現したかったのは『子(・)か(・)ら(・)親(・)へ(・)の(・)愛(・)情(・)』ということになる」

 

 だが、それは夜凪に父親へ料理を作った経験がなかったことで不可能となった。

 

「夜凪、お前あの時誰のためを想ってシチューを作った?」

「ルイとレイ。私の弟と妹よ。

 弟の方がルイで、妹の方がレイ。双子なの」

「そうか……。けどこれではっきりしたな。

 つまりお前が演じた感情は『保護者(親)から子供への愛情』となるわけだ」

「ああ、なるほど」

 

 夜凪はポンと手を打って納得した。

 

 『愛(・)』と一口に言ってもその姿は様々だ。

 ニュアンス次第でそれの持っている意味すら変わってしまう、複雑な感情。

 

 とはいえ、それは本当に微妙な差違でしかない。

 十年近く映像の仕事触れ続けてきた俺だって、先程夜凪から話を振られるまで疑問にすら思わなかった。

 

 それほど些細な違和感にズブの素人のはずの夜凪が思い当たっているのがまず常軌を逸している。

 異常とも言えるほどの繊細で鋭い感受性に、それを見抜く天性の審美眼。

 

 ……まったく、怖ろしいぐらいの才能だよ。

 

「わ……お兄ちゃん、今ちょっと笑った?

 いつも暗い顔して俺に近づくなオーラ出してるあのお兄ちゃんが?」

「ああいうちょっと不思議ちゃんな娘がタイプだったのね……」

「それにお兄ちゃんあれでメンクイだもん。

 おとこってかってね」

「ね」

 

 聞こえてんぞコラ。

 

「……どうしよう、自信がないわ」

「は?」

「私、父親を好きになっている私を想像できない。

 このままじゃ演じられない。

 そんな私がこれから役者としてやっていけるかしら……」

「……」

 

 ……何だ、まさか不安がっているのか?

 これほどの天才のくせに不安に思うことなんてあるか。

 ネガティヴにも程がある。

 いや、もしかするとその後ろ向きな性格だからこその過去に没頭する演技なのかもしれない。

 

 けど。

 

 お前みたいなやつは何の根拠もなくたって、赴(おもむ)くままに常識なんて覆していくものだろ。

 それがこんな芝居の初歩の初歩で躓(つまず)いていて良いわけがない。

 

「何を気弱になってるんだよ。

 自分の中に無いなら、捏造でも何でもいい。

 新しく作ればいいだけだ、自分の知らない自分をな。

 それが『役(・)作(・)り(・)』だろ。

 役者にとって基本中の基本だ」

「『薬(ヤク)作り』……?」

 

 その聞き間違いはコンプラ的に不味い可能性があるから外では二度とするなよ。

 

「まぁ、そこら辺は追々(おいおい)身に付けていけばいいけどさ。

 これからも役者やってくつもりならこんなことで一々悩んで深刻になるな。

 もっと自分の才能にプライドを持て」

「う、うん。わかった。

 ……アクア君、ちょっと怒ってる?」

「別に」

 

 ただ、俺とは天と地ほども才能に差がある天才が悲観しているのを見ていると、少し腹が立つってだけのことだ。

 

「うわ……あんなに他人に入れ込んでるお兄ちゃん見るの久々じゃない? なんというか……」

「ええ。昔のアクアそっくりね。

 良い傾向なんでしょうけど……」

 

 ……普段の俺らしくないことだとは思っている。

 しかし、なんだかんだ言って俺にもメリットのある話ではあるし、十年近く面倒を見てもらった監督の言い付けでもある。

 せっかくだから、とことんまで面倒は見てやるつもりだ。

 

「むむむ……。

 お兄ちゃんが惚れるほどの顔の良さ、すらっとしたスレンダースタイル、クール系ミステリアス黒髪美人か……」

「惚れてない。勘違いすんな」

「長年アイドルを推してきた私の嗅覚が囁いている!

 現実にはなかなかレアだけど、あれは長年のドルオタの夢……真の『ミ(・)ス(・)テ(・)リ(・)ア(・)ス(・)枠(・)』を地で行っている……!」

「余計なこともすんなよ」

「ねぇ、夜凪さん!」

「なにかしら」

 

 ルビーは夜凪の肩をがしっと掴んで言った。

 

「アイドルとか興味ない!? 良かったら一緒にどう?

 私、あなたにはトップアイドルの素質があると思うんだよ!!」

「ごめんなさい。その前にあなたはだれ?」

 

 ルビー、お前はアイドル云々の前にちゃんと受験勉強しろ。

 アホなんだから。

 

 

★☆

 

 

 そんな経緯があって夜凪は無事に苺プロ所属の役者となった。

 

 と、言ってもそれは形式上の話だ。

 夜凪が実際に出入りしているのは、もっぱらこちらの五反田スタジオである。

 

「お邪魔しま——」

「あっ、アクアのにーちゃんだー!」

「にーちゃんだー」

「ルイとレイも居たか。こんにちは」

「「こんにちはー!!」」

 

 スタジオに入った俺を出迎えたのは小学生くらいの男女。

 ルイとレイ。

 夜凪家のまだ幼い弟妹である。

 

 夜凪の家には親がいない。

 厳密に言えば父親は居るらしいが、もう何年も顔も見ていないという。

 無責任な親だ。

 ルイもレイもやんちゃ盛りだというのに。

 夜凪はよくこいつらを一人で世話しながら学校やバイトの日々を送れるものだ。

 

 しかし、流石の夜凪でもそれら普段の生活や家事に加えて役者もするとなると圧倒的に時間が足りない。

 ゆえにこうしてスタジオまで連れてきているのだろう。

 

「監督と夜凪は?」

「あっちの部屋にいるよ!」

「あっちの散らかってる部屋にいるよー」

「そうか。ありがとう」

「「どういたしましてー!」」

 

 この双子は年相応に幼いながら、素直で聡明だ。

 CM撮影時の夜凪の演技からその愛着の深さはわかっていたが、よほどこの2人のことを大事にしているのだろう。

 子供の育ちが良いのは何よりだ。

 

 さて、監督達は既に稽古を始めている頃だろうか。

 発声については昨日の時点で一先ず申し分ない仕上がりにはなっていたし、次は感情表現の技術あたりにでも手を出しているのか。

 

 そんなことを考えながら監督の仕事部屋の扉を開くと——

 

「よし、夜凪。

 今何が視えている?」

「何も視えないわ」

「そりゃ目隠ししてるんだから当然だろ。

 もっとこう、実際に視えてる想定でだな……」

 

 黒い目隠しをされた夜凪が無精髭生やした長髪のオッサン(監督)と向かい合っていた。

 

「ん? おう、来たか早熟。

 ちょうど良かった。お前からもなんかアドバイスとかないか?」

「ロリコンなのはこの際突っ込まんけど現役JCに目隠しプレイは擁護できない」

「何の話!!!?」

 

 この部屋の有様を客観的に見た感想の話だよ。

 

「で、何してんの?」

「あー、今は『俯(・)瞰(・)』の視点を夜凪に教えてやってるとこだ。

 最低限フレームに収まる演技してもらわねぇと動きのある撮影全部使い物にならなくなるからな」

「なるほど」

 

 『俯(・)瞰(・)視(・)点(・)』。

 わかりやすく言えば『自(・)分(・)の(・)演(・)技(・)が(・)カ(・)メ(・)ラ(・)に(・)対(・)し(・)て(・)ど(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)映(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)か(・)を(・)把(・)握(・)す(・)る(・)見(・)方(・)』のことだ。

 要するに意識のみの幽体離脱のようなもの。

 

 大抵の役者は教えるまでもなくこの俯瞰視点を持っている。

 カメラの向こうに映る自分が気になるというのは当たり前のことだからな。

 

 しかし、夜凪は違う。

 こいつのメソッド演技は自身の過去に深く潜航することで成立している。

 つまり演技をしている間、夜凪はカメラのことなど頭に残っていないのだ。

 一周回って才能かもな。

 

 これはメソッド演技の典型的なデメリットとしてよく挙げられる議題だ。

 自分の演技に集中しすぎてカメラを意識した演技を忘れてしまうという欠点。

 

 この見た目どう見ても事案な稽古はその欠点を補うため、俯瞰視点を夜凪に後付けする意図があってのものだろう。

 

「よし、じゃあ気を取り直して稽古再開だ。

 目の前に何が視えるか想像して答えろ」

「あっ、ロリコンが視えるわ」

「誰がロリコンだよ! つかお前自分のことロリータだと思ってんの!?」

 

 意外とノリ良いな夜凪。

 

「まぁ、とりあえずその要領で良い。

 次はお前の背後だ。何が視える?」

「資料の入った棚。

 その上にトロフィーが4つ並んでる。

 あとは床にゴミ袋が2つ。あれこの部屋に入ってからずっと気になってたの。捨てていい?」

「いいよ」

 

 ゴミぐらい自分で捨てに行け。

 

「今、お前の目玉はお前の背中に付いている。

 次はその目玉を天井に付けてみろ。

 何が視える?」

「! 私だ……!」

「そう。それが俯瞰視点だ。

 その感覚を忘れるなよ」

 

 夜凪は目隠しをバッと取って天井を仰ぎ見た。

 

 ……夜凪の演技は自分自身を徹底的に掘り下げる演技。

 必然として自分で自分を探す記憶の旅が夜凪にとっての芝居となる。

 

 語り手は常に己自身。

 なら俯瞰してそんな自分を見下ろす視点を定めてやれば、感覚派の気がある夜凪にも理解しやすいだろう。

 

「お前にまず足りないのは自分をコントロールする術だ。

 こいつができない限りまた共演者に跳び蹴りかます素人のままだ」

「うっ、そうね。なんとかしないと……」

「これからも芝居続けてくつもりなら乗り越えなきゃならん壁だ。

 とりあえず家でも学校でもさっきの感覚を常に頭の中でイメージしておけ。

 身体に擦り込ませた芸は咄嗟の時に必ず身を助けてくれるもんだ」

「わかったわ」

 

 監督の言葉に夜凪は力強く頷いた。

 

 日本の役者には技術的な表現技法に優れている者が多い。

 特に幼少期から演技やってる歌舞伎役者とかな。

 一方でメソッド演技のような真に迫った感情剥き出しの演技を苦手とする者もまた多い。

 そんな演技は滅多に出てこない。

 この国の主流ではないのだ。

 

 だからこそ、もし夜凪が自分の演技を完全にコントロールし、一端の役者として世間に知られる日が来たのなら。

 その時は、本当に芸能界に激震が奔(はし)ることだろう。

 

 それが俺にとっての最大の間隙(チャンス)。

 俺はその機に乗じて必ず芸能界(この世界)で地位を手にする。

 

「ま、俯瞰視点の話は今日のところはここまでにしとこう。

 早熟も来たことだし、そろそろ次の話を始めるぞ」

「次って言うと、前に言ってたドラマの話か?」

「そうだ。

 だがまだ出演が決定しているわけじゃない。

 昔、アイ関係の仕事で関わりのあったプロデューサーにかけ合って夜凪をオーディションに捩じ込むように仕向けただけだ」

「!」

 

 アイの関係者……!

 

 それも企画立案の中枢であるプロデューサーか。

 プロデューサーには広い人脈を持つ者も多いと聞く。

 アイの死の真相に関わっている可能性がある……!

 

「そいつの名前は?」

「鏑木勝也。

 フリーでやってるプロデューサーだよ。

 顔面至上主義かつ筋金入りの拝金主義者だが、業界でも顔が広いことで有名でな。

 あいつに気に入られれば今後の活動においても良い足場になる」

 

 しかも鏑(・)木(・)勝(・)也(・)ときたか。

 その名前は俺も知っている。

 アイのプライベート用携帯の連絡先にあった名前だからだ。

 ……益々この機会を逃す手は無くなったな。

 

「オーディション……。

 私、大丈夫かしら……つい最近落ちたばかりだし」

「……そういうこともあるだろ。

 オーディションなんて受かる方が稀なもんだ」

 

 しかし当の本人である夜凪は暗い顔だ。

 

 まぁ、俺も昔まだ役者を目指していた頃にオーディションは何度か受けたことがあるから気持ちはわかる。

 ああいうのは落ちても気にしてはいけないものだが、頭ではそうとわかってはいても、一度の落ちた経験で気後れしてしまうものだ。

 

 それほど、多くの役者の心をへし折ってきたのがオーディションというものである。

 

「アクア君、オーディションで必ず絶対受かる方法ってある?」

「あるわけないだろ」

「あるわけないの?」

 

 さっきの監督の言葉に気負っているようだ。

 夜凪の夜のような黒色の瞳がじっとこちらを見つめている。

 

「……その作品の監督やプロデューサーの趣味、役に合うキャスティングかどうか。

 他のキャストとのバランスや政治的なあれこれ。

 理由は色々とあるが、結論を言えば模範解答なんてないってことになる。

 オーディションはお見合いみたいなものと考えろ」

「お(・)見(・)合(・)い(・)……」

 

 必ずしも実力のある役者が選び抜かれるわけではない。

 そうでなければ特定の俳優以外の全てが芸能界から淘汰されてしまう。

 

 数多くの役者の中から、諸々の条件をクリアしたぴったりな役者が選ばれる。

 役を手に入れるのは一握り。

 こう言ってはなんだが、ほぼほぼ運ゲーのようなものだ。

 

 だがしかし。

 一概に対策がないかと言われれば、それもまた違うというのが俺の考えだ。

 

「監督。オーディションっていつから?」

「今から2週間後だな」

「なるほど。

 まぁ、それだけあればなんとかいけるか……」

「! あるの? お見合いに必ず受かる方法」

「オーディションな。

 お見合いは物の例え」

 

 あとさっきも言ったが必勝法ではない。

 これは受かる確率を少しでも上げるための、あくまで対策に過ぎない。

 

 普通の役者始めたての素人なら可能性は薄いだろう。

 だが、夜凪は普通の素人なんてヤワなもんじゃない。

 少し方向性を変えて、行き先を示してやるだけで。

 

 可能性は、十分ある。

 

「夜凪、前に言ったよな。

 お前に足りない物の話だ」

「『役(・)作(・)り(・)』?」

「そうだ」

 

 このオーディションは俺にとっても今後の進退が賭かっている。

 夜凪には受かってもらわなければ困るのだ。

 だからそのための全力は尽くす。

 

「これからの2週間。目一杯使って仕上げるぞ。

 お前の……『夜(・)凪(・)景(・)の(・)役作り』を」

「うん!!」

 

 夜凪にしかできない『裏(・)技(・)』で、な。

 

 

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