インフィニット・ストラトス~もしも凰鈴音がデュノア家のメイドになっていたら~ 作:カイナ
「全員揃ってますねー。それじゃあ
緑色の髪をショートカットにし、胸元を開けたような服装のせいで小柄な身体とは対照的な巨乳を見せつけるような格好になっている穏やかそうな雰囲気の女性──山田真耶の声が教室内に通っていく。
「……」
一番前の列のど真ん中の席に座る青年――織斑一夏は、自分に割り当てられたその席で困惑気味に机に肘をついて黙り込んでいた。
彼が何故ここにいるのか。それはもはや今更説明するまでもないだろうが、その中でも一夏の困惑は自分の後ろの席だった。
斜め後ろ側の窓際の席にいる黒髪ポニーテールの少女――篠ノ之箒。小学校四年生の終わり頃に転校して以来の再会だが、それだけではない。
この教室のど真ん中の席にいる銀髪の青年――入学前に政府の人間とやらに教えられたフランス人、ミシェル・デュノア。今は隣の席に座っている金髪の少女と話しているが、その前に話していた彼の後ろの席の茶髪ツインテールの女子。その顔にはとても見覚えがあった。
(鈴……だよな……?)
丁度一年くらい前の中学二年の終わり頃に家庭の事情で転校した幼馴染、凰鈴音。
中国に帰ったと聞いていた彼女は今はどう見ても中国人ではない、むしろフランス人だと聞いているミシェルと仲良く話していた。その光景がどうにも自分の知る鈴とは噛み合わず、一夏が困惑を深めながらも朝のSHRやその中で行われる自己紹介は恙なく進行していくのだった。
そして一時間目のIS基礎理論授業が終わり、鈴は朝からミシェル達としていた打ち合わせを終えて席を離れる。
「んじゃ、ちょっと一夏と話してくるわ。ミシェル達の紹介くらいはしとくから」
「頼んだぞ」
「任せといてー」
鈴はひらひらと手を振って席を離れ、一夏の元へと歩いていく。
「やっほー、一夏」
「……ちょっといいか」
しかし鈴が声をかけるのと同時に一夏に声をかける女子がいた。長く伸ばした黒髪をポニーテールに結った少女。その顔を見た一夏が呆けた顔になる。
「鈴、それに箒か?」
「ん? こっちも知り合いなの?」
一夏の言葉を聞いた鈴が首を傾げる。彼と一年ちょっと前まで一緒にいた彼女でも見覚えのない相手。その様子を見た一夏が「あぁ」と声を上げて箒を指した。
「鈴、こっちは箒。小学四年の終わり頃まで一緒だった幼馴染だ」
「小四……あーね」
一夏の言葉を聞いた鈴が得心したように頷く。続けて箒の方に一夏は顔を向けて鈴を指す。
「箒、こいつは鈴。小学五年から中学二年まで一緒だったんだ」
「小学五年……ああ、なるほど」
一夏の説明に箒も頷く。箒は小学校四年の終わり頃に転校した。鈴は小学校五年に転校してきた。
つまり入れ違いになったわけである。お互いに面識がないのも当然だった。
「ふむ……」
そこまで聞いた箒がどこか困ったような様子を見せ、それを察した鈴がにっと笑う。
「ま、小四以来ってんならなんか積もる話もあんでしょ。んじゃあんたに譲るわ」
「……いいのか?」
鈴の言葉を聞いた箒が驚いたように鈴を見ると、鈴は困ったような笑みを向けた。
「あたしの話、一年ぶりにしては色々と複雑だしちょっと長くなりそうなのよ。それならあんた先に話しときなさいって。あ、一夏。代わりに今日の昼休み空けといてね」
鈴はそこまで言うと教室のど真ん中の席――ミシェル達に目を向ける。
「あの人達……ミシェルさん達も関わる事だからさ」
「お、おう……」
「んじゃよろしく。あたしはミシェルさんに話通しとくからさ」
鈴はそこまで言うとくるりと踵を返して席に戻っていくと、ミシェル達と何やら話し始める。
「……なんなんだ? まあいいや、昼休みになりゃ話すんだし。それにしても箒、久しぶりだな!」
「あ、ああ……ちょっとここでは話しづらい。場所を変えてもいいか?」
「お、おう」
一夏は鈴の様子に困惑した後、今考えても仕方ない事かと切り替えると箒に微笑みかける。
しかしそこでの箒の申し出を聞き、一夏はようやく周りが「いきなり二人の女子と話している男子」に気になっている事に気づいたのか席を立つと、二人は教室を出ていくのだった。
それから時間は過ぎて昼休みになり、一夏は鈴の案内で食堂のある一席に連れてこられていた。
「鈴、こっちだよ」
「ほいほい。一夏、こっちよ」
「お、おう……」
食堂の隅の席を陣取って鈴を呼ぶ金髪の少女に鈴も手を振って返し、一夏は鈴に先導されるがままに連れていかれるとその金髪少女に促されて席に座る。
「わざわざ来てくれてありがとう、ムッシュ織斑」
「お、おう……」
その席の向かいに座る銀髪の青年――ミシェル・デュノアの微笑みを浮かべながらの挨拶に一夏もこくこくと頷く。それにミシェルもぺこりと会釈を返した後、一夏の隣の席に目を向けた。
「それと、鈴から名前だけは聞かせてもらったよ。マドモアゼル篠ノ之」
「ああ……箒で構わない」
「分かったよ。箒さん」
一夏の隣の席に座った少女――箒にもミシェルは挨拶、その後鈴が困惑気味に箒に問いかける。
「ってか、なんであんたも?」
「一夏一人では不安だからな。幼馴染として世話を焼いてやらねば」
「たはは……」
箒はあくまで「一夏の保護者だ」とでも言いたげな様子であり、一夏も苦笑するのみ。鈴は「ま、いいけど」と言ってミシェル側の席に移動して椅子に座る。それを合図にしたようにミシェルが口を開いた。
「自己紹介で名乗ったけど改めて。俺はミシェル・デュノア、フランスで見つかった男性IS操縦者だ」
「あ、んじゃあ俺も改めて。織斑一夏だ。よろしく頼む」
ミシェルと一夏が改めて名乗ると共に、箒と金髪の少女――シャルロット・デュノアも名乗り、互いに自己紹介を終わらせるとシャルロットが席を立った。
「それじゃあミシェルさん。私、皆の分の食事注文して準備してきますね」
シャルロットの言葉にいち早く反応するのは一夏だった。
「え、いやそれは悪いし……」
「いや、気にしないでくれ。時間を作ってくれたお礼だと思ってほしい。日替わり定食でいいかな?」
「あ、ああ。んじゃお言葉に甘えて……」
一夏の言葉をミシェルが制し、あくまでお礼だと言われると一夏も強く言えないのか首肯。そしてシャルロットが席を離れて注文に行くのを見届けると一夏は頭をかいた。
「あーと、それでミシェル。早速で悪いんだけど、俺は鈴と話があるからって呼ばれた感じなんだけど……?」
一夏は頭をかいてミシェルに問いかけた後、鈴の方に視線を向ける。
「そもそも鈴、お前って中国人だよな? それなのになんでフランス人だっていうミシェルと一緒にいるんだ?」
「あー。まあ……まずはそこを話すべきかしらね……」
一夏の当然の疑問に、鈴も困ったように苦笑をした後、元々それを話すつもりだったのか然程緊張していない様子で口を開いた。
「お父さん、ガンだったのよ」
《後書き》
投稿早々三ヶ月空いてマジすみませんでした!
仕事が忙しくなって時間的及び体力的に書く余裕がなくなったり(仕事終わりが深夜になる時は帰ったら空きっ腹に軽く何か入れてシャワー浴びたら即寝レベルで疲れていた)、最近VTuber(主にホロライブ)にハマって土日はそっちの配信見たりしてたから書くことが出来なくなってました!(おい)
あと最近ちょっと熱っぽくてこのご時世だから病院で検査してもらったら……新型コロナ陽性判定くらいましたw
もうそんなこんなな状況で色々余裕がなくなってるので、普段と比べて圧倒的に文量少ないですけどこの辺でちょっとキリ良い感じにして投稿させていただきたく思います。
次回は本作のオリジナル部分の根幹となる「本作における凰家の家庭事情」とかの回想編になる感じでしょうか?なるべく早く書きたいなと思っています。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。