もしも2020年の東京に藤丸がレイシフトしたら 作:湯瀬 煉
空を旋回する竜が四匹。地上では、大型のウサギやゴリラが徘徊していた。
周囲には植物が生い茂っており、人気は一切無い。しかし、乱立するビルは朽ちた印象はなく、それだけに私は混乱した。
「ここは、どこ?」
故郷──東京にも見える。でもどこか違う。
「みんな、どこ?」
私に着いてきてくれた、大切な人。あの女の子は、一人にしておけない。
探さなければ。探さなければ、探さなければ!
「──随分と焦った様子ですね。カルデアのマスター」
立ち上がろうとしたその先に、そいつは立っていた。
胡散臭い笑顔と、静かな──
「ようこそ来てくださいました。この東京で、ずっと貴女を待っていた」
そういって彼は、歓迎するように両腕を広げた。
■ ■ ■
「ごめんね。偶にこういうことあるんだ……」
私は前を歩く男の人に謝罪しながら歩き続ける。
サーヴァント、ランサー。クー・フーリン[プロトタイプ]。私と共にこの特異点に投げ出された私のサーヴァントだ。
「いいぜ、気にすんな。それよりマスターの方が疲れてるんじゃないか?」
心配そうに顔をのぞき込む彼に、平気だよ、と伝えて目を逸らす。
彼に迷惑をかける訳にはいかないだろう。それに、こんな場所で休んではいられない。
白銀の鎧に身を包み、緑色の槍を片手に持った彼は空を見上げた。本日三度目である。
「……複数のクリーチャーがいる以外に生体反応は無いな。サーヴァントもなし、人影もなし、これでは調査のしようがねぇぞ。どうする? マスター」
「うーん、カルデアとの連絡も取れないから戻るにも戻れないしなあ。あ、もしかしたら都庁には誰かいるんじゃない?」
今いるのは、周囲の建物的に渋谷……だろうか。木々には植物が生い茂り、鬱蒼とした森と化しているために分かりづらいが、何となく見覚えがある建物がチラホラと見える。
「都庁ねぇ……。こんな様子じゃどこも変わらないかもしれないが、一応目指すだけ目指しとくか」
サーヴァントの同意を得て進む。
しかし自分も確証は無かった。この特異点で生きている人は誰もいないかもしれない。ただ、それでも。諦めてしまうのは違うと、そう思うから。
「それじゃあ」
行こうか、とランサーを促そうとした瞬間。私に向かって大きな影が飛びかかってきた。
「ㇱッ!」
しかし私の同行者は敏捷度
私が身構えるよりも速く、彼の槍は影の心臓を貫いた。
その、正体は。
「……ウサギ?」
ウサギだ。しかしその大きさは大型犬ほどはあり、明らかに普通のウサギとはことなる。
その牙は鋭く、ランサーがいなければ私はあっけなく死んでいたに違いない。
加えて。
「……こりゃあ、メシにするにはきついな。筋肉が硬い。銃弾でも真っ当に仕留められるかどうか……。
本当に人間なんて生き残ってるかね?」
ランサーの指摘は最もだ。
今のウサギが一匹だけならば、まだ希望を見出せたかもしれない。
あのウサギが特殊なのかもしれないと、思えたかもしれない。
しかし、そんな仮定は立てさせても貰えなかった。
目の前には、ウサギの群れがいた。
「ランサー!」
「応よッ!!」
戦闘そのものは単調だ。
飛びかかってきた順に斬り捨て、突き刺し、蹴り飛ばしていく。
それほど強力なエネミーでは無いのだろう。一撃ごとに、ウサギたちは蹴散らされていく。
だがしかし。
「数が多いなっ! それに囲まれてやがる……!」
常に、前後左右から襲い来る敵を、私を守りながら戦うという状況。かなりマズイ。
サーヴァントの持久力はかなりのものだ。しかし幾らなんでもジリ貧になる未来しか見えない。
本来ならばすぐに増援を呼ぶべきところなのだが。
「なんで………っ!」
増援を呼ぶための唯一の頼みの綱である、令呪が反応しない。
三画限りの絶対命令権にして膨大な魔力の塊にして、マスターの証。サーヴァントを呼ぶのも、強化するのも、令呪なしにはできないというのに。
大切なときに限って、この紋様は何の役にも立ちやしない。
さらに、たぶんこの戦闘に触発されたんだろう。大型のカメであったり、ゲームでよく見るスライムまで出てきた。
敵は増え続ける一方な上に、おそらくウサギよりもカメは硬いのだろう。ランサーも異なる手応えに困惑している様子だった。
「なら、せめて!」
比較的小さいウサギや、スライムは何とかしなければ、と攻撃魔術をねろうとした瞬間。
「マスター、下がれ!」
私目掛けて腐臭のする液体が吹きかけられる。
おそらく、溶解毒。毒耐性があるとはいえ、液体の塊を、強酸性の液体を、浴びても平気かな……なんて馬鹿な思考がよぎる。
だが、液体はかからなかった。
「………ぐッ」
「ランサー!」
咄嗟に私の前に出たランサーが液体をまとめて受け止めてくれたのだ。
しかし代わりに彼が猛毒に犯されてしまう。
──……私のせいだ。
「ごめん、ランサー、私」
「細けえ事は後だ! とりあえずこの包囲抜けるぞ!」
うん、と返事をしようとした。
いや、したかもしれない。
だがその音は、届かなかったろう。
なんせ次の瞬間────。
盛大な爆発と共に、エネミーたちが爆散したのだから。
「フハハハハハハ!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
この、聞き覚えのある/聞いたことのない
星に語りかけているような声は。
先程まで人影のなかったビルの屋上。
目をこらすとそこに、黄金のサーヴァントが立っていた。
「無様な駄犬よな。
自ら毒を飲み死に行く貴様の最期……よもや貴様自身の趣味であったとは!」
逆立った金髪。血の色をした、蛇のような瞳。黄金の鎧。
姿こそ違えど確かにわかる。
彼は、彼こそは。
「ほう、そこな娘。この
良いぞ、赦す! 我が美貌はそこらの凡百とは比べ物にならぬからな。
だが求婚などは諦めよ。
サーヴァント位階第三位、
人類の裁定者。
英雄王、黄金の王、最後の英雄──ギルガメッシュが、そこにいた。
アーチャーにランサー! 二騎もサーヴァントがいればドラゴンなんてよゆーね!(フラグ)