魔法少女スノウドロップ   作:@大惨事

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「スノウドロップ、初任務完了祝いということで~かんぱーい!」

 

 蛇型の魔獣を倒した後にリーテの部屋に集まることになった。理由はリーテの言う通り初任務の完遂祝いということだ。

 カランと音を立てて音を響かせるグラス。中に注がれたオレンジジュースが揺らめく。菓子類がテーブル一杯に広げられ、チリィが一心不乱に食べている。

 

「やーこれでスノウちゃんも一人前の魔法少女だね!」

 

「もしかして、これからは一人で行くの?」

 

「いやいや!強い人ならともかく、普通は数人で行くから心配しなくていいよ!私もしばらくはスノウちゃんの面倒見るつもりだし」

 

「あぁそうなんだ。よろしくおねがいします」

 

流石にまだ一人で行けなんて言われたら怖いからね。

 

「チリィも面倒見てやる。先輩だからな」

 

「ありがとうございます、チリィ先輩」

 

「うむ」

 

「それでそれで、どうだった?初任務の感想は」

 

「うーん…。生意気だとか思われるかもしれないけど、結構楽だったなって」

 

「そんなの思わないって!でも、楽だって感じるのも当然だよ!この1週間頑張ってたし!」

 

「生意気。調子にのるなぶっ」

 

いてて…。と頭を抑える猫耳少女がそこにいた。

チリィは懲りなぁ。

 

「チリィ先輩まったく懲りないのすごいですね」

 

「ふっ、だろ」

 

「今の誉め言葉だったの…?」

 

「えっと、半分くらい…?」

 

もう半分はあきれかもしれない。

 

「まっ、チリィじゃないけど油断は禁物だよ。安全マージン取るために複数人での行動と、実力に見合った魔獣に対応させるよう選定されてるからね」

 

「なるほど、…魔獣の強さって分かるの?」

 

選定しているということはつまり、出来るんだろうけど。

 

「歪みの大きさで分かるよ~。確か、10mまでがEランクで、その後20までがD、30までがC、ちょっとトンで50までがBになっててそれ以降は全部A。単独で倒した魔獣のランクがそのまま戦闘経験に反映されるから~スノウちゃんは今Eだね!statusも更新されてると思うよ」

 

言われてstatusを開いていみる。

 

「あっほんとだ」

 

ーーーーーーーーーー

 

魔法少女:スノウドロップ

序列:142

魔法:銀槍創装

魔力:E

身体能力:D

戦闘経験:E

登録日:2024/03/7

 

ーーーーーーーーーー

 

「なら一覧にも載ってるんじゃ?」

 

「おっ!チリィいいこと言うね!」

 

リーテがスマホを取り出して何かを検索している。

 

「ほら載ってる載ってる!」

 

 そうして見せられた魔法省公式HPの魔法少女一覧の画面に魔法少女のSDキャラがズラリと並んでいる。てっきり一番下かと思ってたら両隣に見覚えのない魔法少女が陣取っている。

 

自分の描かれたキャラをタップすると見覚えのあるstatus画面が出てくる。

 

ーーーーーーーーーー

 

魔法少女:スノウドロップ

魔法:銀槍創装

魔力:E

身体能力:D

戦闘経験:E

登録日:2024/03/7

 

ーーーーーーーーーー

 

あれ?

 

「序列は書かれてないね」

 

「それね、20位以上しか載ってないよ。どうしても魔法少女歴長い人の方が高いし、下の子たちの順位を載せるのも良くないよねってことで」

 

「あーそういうの苦手な人もいるもんね」

 

 私はあんまり気にしないけど。わざわざ低い順位を見せる意味も必要もない。魔法少女一覧の並びも50音順らしく私の左にはスターマイン、右にはソリティアシャドゥという名前が綴られている。

 

「だけど無かったら無かったで困るらしいんだよね~。強い人はやっぱ頼りになるしさ。たしか別枠で序列順に表示されてるのがあったかな?」

 

「チリィもその内ランキングに載るぞ」

 

「チリィみたいな目立ちたい子にとっては順位上げたいみたいだし」

 

「ふんふん、おっリーテだ」

 

ランキング枠はすぐに見つかった。9という数字の横にSDキャラのリーテが飛んでいる。

 

「わー!恥ずかしいから目の前ではやめてくれるかなー?」

 

「ん、桜姫唯花《おうきゆいか》」

 

BGM代わりにつけられていたテレビを見ていたチリィが反応を示した。

 

「あっほんとだ。スノウちゃん桜姫さんは知ってる?」

 

「うん、知ってる」

 

「流石に知ってたか。なんてったって、序列」

 

「「1位」」

 

「だもんね」

 

リーテとチリィの声が重なる。

 

 画面には黒い少女が映っていた。

 黒い生地に金と桃色で桜の輪郭が描かれた、羽織が混ざったようなセーラー服を纏い、桜の花が装飾された髪留めで真っ黒な髪を留めている。

 全体的に黒い彼女の装いには所々に桜の花が散っており、腰には一振りの刀が差されている。

 

「ふん、いずれチリィが超える相手よ」

 

「…本気で言ってる?」

 

「…リーテ、そこは流して」

 

 リーテのいるランキング枠、その最高峰に位置する者。私はランキングサイトに表示されている無表情の黒い少女のstatusを開いた。

 

ーーーーーーーーーー

 

魔法少女名:桜姫唯花

序列:1

魔法:桜道踏覇

魔力:A

身体能力:A

戦闘経験:A

登録日:2020/07/08

 

ーーーーーーーーーー

 

 魔獣がこの世界に初めて現れた日。日本最悪の魔獣災害、73災害からまだたったの3年しか過ぎていない。それでも、魔獣の発生数が高く、初めて魔獣の降り立った地である日本が他国より圧倒的に死者が少ない理由。それが彼女だ。

 

 始まりの魔法少女と呼ばれる、赤と青の二人は現在どこにいるのか分かっていない。最初に姿を現して以降、世界各国に出現する魔獣に対処するため各地を飛び回っている所までしか確認出来ず、その後の目撃情報が無いため。世界を回っている内に力尽きたのだろうと言われている。誰も彼女達の最後を見届けた者がいないため憶測でしかないのだが。

 

そして、彼女たちを除いて最初に魔法少女になったのが桜姫唯花。

 

 桜姫唯花の魔法『桜道踏覇』、彼女の全身にある桜の装飾から幾多の花びらを放出することができ、その花びらの位置へ瞬時に移動できる魔法。

 

 7月3日から少し時間を開け、7月8日に開かれた60m越えの時空の歪み、その歪みから現れたAからEランク、大小強弱様々な魔獣の数は100体を越え、その光景を見た人々は世界の終焉が来たのだと確信するほどだった。しかし、遂には一人の死者を出すことも無くその魔獣の攻勢は終わった。どこからともなく現れた彼女がその全てを殲滅したためだ。

 

 季節外れの桜舞う世界を跳び交い、一瞬にして魔獣の首を切り落とすその姿は人も魔獣も関係なく圧倒し、空を割った歪みの下には魔獣の死体が積み重なった。

 

 その彼女がいるからこそ、他地方よりも魔獣の発生件数が多い東京から離れる人はほとんど存在しなかった。

 

 当時の記録に残っていた活動時間、魔法の発動回数、戦闘行動から測定した結果、20年7月8日時点で魔力、身体能力、戦闘経験すべてにおいて現在基準Aランクを超える。原初のトリプルA、生粋の魔法少女、それが桜姫唯花だ。

 

「いや滅茶苦茶強いね!?それ本当なの!?」

 

「うん、まーあはは。うそでしょって思っちゃうけど、当時の映像残ってるしねぇ」

 

 うん、それ、たぶん見たことある。だって超有名だし、テレビで再々再々再々再々再々再々放送されてるやつだよね。あんまり外の話とか聞けなかった私でも知ってるよ。

 

「えっチリィはこの人に勝つの…?」

 

そりゃ本気?なんて聞かれるわけだよ。

 

「うっ…。リーテぇ、スノウがいじめる」

 

「誰の蒔いた種か思い出してね…?」

 

 今だからこそ、魔法少女になった今だからこそ彼女の凄まじさがはっきりと分かる。私の魔獣討伐記録は魔法少女になった直後に1体、1週間の訓練を挟んでようやくもう1体。どちらもEランクの魔獣だ。Aランクの魔獣なんて見たことがないけど、模擬戦を通じて知ったあれだけ強いリーテの最高討伐ランクがB…だとするならAランクがどれほど強いか想像も出来ない。

 

それを魔法少女初日で倒した桜姫唯花なんて猶更だ。

 

「途方もないなぁ…」

 

「うんうん、魔法少女なら誰でも通る道だねぇ。けど、桜姫さんばかりに頼ってちゃだめ。最近歪みの連続発生が多いからね。さすがの桜姫さんでも同時に複数箇所は対処出来ないだろうし!」

 

「うん、そうだね」

 

 たった一人で日本中を守れるわけなんかないし、彼女だって一人の人間だ。疲れるしお腹は空くし眠くもなる。そして特定の一人だけに頼っていては、その人がいなくなった時、どうすることも出来なくなる。

 

 私も魔法少女になった一人として強くなっていこう。世界を守る魔法少女の一人っていう実感は、まだ湧かないけど。

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