鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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本作品のサソリモドキは相手がパワードスーツなので防御力が強化されてます。


14話 封印部屋の怪物

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 武装はミサイルを選択。通常視界のバイザーであるコンバットバイザーによってサソリモドキの姿が捉えられ、ピピッ!という音と共にロックオンされる。

 

 サソリモドキに向けられたアームキャノンの砲口が変形し、そこからミサイルの赤い弾頭が露出する。ミサイルはそのまま、サソリモドキに向けて発射された。

 

 ドォンッ!

 

 後部から炎を吹き出して高速で飛翔したミサイルがサソリモドキの頭部に着弾し、起爆する。

 

「凄い爆発……上級魔法に匹敵してる……それを、魔法以外で……」

 

 ユエはミサイルの威力に驚き、思わず心の声を漏らす。だが、ハジメはそれに反応せず、サソリモドキの方にアームキャノンを構え続けていた。何故なら、サソリモドキは健在だったからだ。

 

 あの時、サソリモドキはミサイルの運動エネルギーと爆発に殴られ、その衝撃を受けて少しばかり後退していた。しかし、肝心のダメージは強固な外殻に阻まれて通らなかったようだ。

 

(ミサイルは効かないか……)

 

 今度はサソリモドキの攻撃が始まる。片方の尻尾の先から紫色の液体を噴射する。間違いなく、普通の液体ではない。ハジメは咄嗟に飛び退き、高速で飛来した液体を回避する。着弾した液体は溶解液だったらしく、ジュワーという音を立てて床を溶かしていく。 

 

(また溶解液……まともに受けたら……っ!?)

 

 ハジメの視線の先で、もう片方の尻尾が動きを見せる。その尻尾はハジメに照準され、先端が肥大化した直後に大きな杭のような針を射出する。ハジメは避けようとしたが、針は空中で破裂して大量の針を一帯に降り注がせる。まるで、フレシェット弾のようだ。

 

(この針……ユエを狙って?!)

 

 少なくとも、その程度ではパワードスーツの防御を抜くことは不可能だ。だが、生身のユエだけはそうはいかない。

 

『スペイザービーム、オンライン』

 

 ハジメはスペイザービームで弾幕を張り、針の嵐を迎撃する。何発かは抜けてくるが、アームキャノンを振り回して叩き落とし、最悪の場合はそのボディを盾にしてユエを守る。

 

(これなら抜けるか?)

 

 ハジメは反撃に移る。アームキャノンの内部でエネルギーを増幅して放つのだが、スペイザービームの効果で三発の最大チャージビームが同時発射される。三発は目標に向かっていき、全てが同じ一点に着弾した。

 

 爆煙に包まれるサソリモドキ。現在のハジメが持つ飛び道具の中で最も威力の高い攻撃であり、これなら効くのではないかとハジメは考えていた。だが、サソリモドキは絶叫を上げて煙の中から飛び出てきた。それも無傷で。

 

「キシャァァァァア!!!」

 

(これも効かない!?)

 

 サソリモドキは八本の脚を激しく動かすと、ハジメに向かって突進する。そして、四本の大きなハサミを使って近接攻撃を仕掛けてきた。その速度は凄まじく、風を唸らせてハジメに迫る。

 

 一本目はアームキャノンで殴って軌道を逸らし、二本目は後方宙返りで回避。三本目を蹴り流して姿勢を崩したハジメを四本目が襲うが、ジェット噴射で緊急回避する。激しい動きであり、左腕のユエが必死に堪えていた。

 

 しばらくの間、ハジメは回避に専念しながら状況を打開する術を考える。

 

(あれなら防御を抜けるかもしれない。だが、それではユエを守れない……)

 

 ハジメの考える“あれ”というのは、シャインスパークという突進攻撃のことだ。ハジメの攻撃の中で最大の威力を誇るのだが、今は使える状態ではなかった。

 

 シャインスパークを発動するためには、スピードブースターを使ってエネルギーを貯める必要がある。だが、それを使えば左腕のユエが巻き添えとなって死ぬ。かといって、ユエを手放す訳にはいかない。準備中にユエが襲われてしまえば、元も子もないからだ。そもそも、部屋が狭いので準備自体が困難である。

 

「キィィィィィイイ!!!」

 

 その時、サソリモドキが再び絶叫する。それに嫌な予感がしたハジメは距離を取ろうとしたが、既に遅かった。周囲の地面が波打ち、ハジメの下半身を拘束してしまったのだ。

 

(これは!?)

 

 ハジメはサソリモドキの固有魔法である“地形操作”に驚きながらも、スーツのパワーで地面を砕いて脱出する。しかし、それは大きな隙を作る結果となってしまった。

 

「はっ?!」

 

 ハジメが視線を少し上に向けると、紫色の液体の塊が目前に迫っていた。どうやら、ハジメを拘束している間に溶解液を放ったらしい。もはや避けることは不可能。ハジメは、咄嗟にユエを後方に放り投げた。

 

「お父様!?」

 

 ユエが溶解液の影響を受けない地点まで到達した直後、溶解液はハジメに直撃した。

 

「がぁぁああ!!!」

 

 溶解液は強力であり、エネルギーシールドを貫通してパワードスーツを侵食する。スーツと一体化している体に激痛が走り、戦闘中は滅多に声を発しないハジメも悲鳴を上げた。ハジメは数発のミサイルをサソリモドキに叩き込みながら地面に倒れる。

 

「お父様!」

 

 大ダメージを受けたハジメに駆け寄るユエ。パワードスーツは無残な姿となっており、侵食が酷い部位からは煙が出ている。さらに、バイザーには亀裂が入っていた。

 

「ユエ……俺には触れるな。溶解液にやられる……」

 

 自身にユエが触れないように、左手で制するハジメ。パワードスーツの中で最も侵食を受けている部位は、右肩の装甲だ。あの時、ハジメは被弾面積を減らすために体の右側を向けていた。

 

「しかし、恐ろしい防御力だ。こうなったら、死ぬまでキャノンで殴るしかなさそうだ……」

 

 ハジメは最終手段として身体強化を発動した上で頑丈なアームキャノンを使って殴り続けることを考える。だが、それはハジメが被弾する可能性が上がるということでもある。

 

「……どうして」

「ん?」

「どうして逃げないの?」

 

 自分を置いて逃げれば助かる。それを理解しているはずだと遠回しに訴えるユエ。それに対して、ハジメは自身の信念を語る。

 

「一度助けると決めた者を見捨てたりはしない。それに、俺は君の父親だ。子を見捨てる親など存在しない……彼もそうだった」

「お父様……」

 

 ハジメはレイヴンクローから多大な影響を受けていた。ゼーベス陥落の日、レイヴンはハジメのことを最期まで助けて戦死している。子を守るのが親の役目というのが、ハジメの当たり前だった。ユエはその様子を見て、本当にハジメのことを信用することにした。

 

「お父様、最上級魔法ならあの外殻を無力化できると思う。でも、放てるだけの魔力がない……」

「……魔力なら、ここにある」

 

 ユエの提案に対して、ハジメは左手でパワードスーツの胸部を叩きながら返答する。パワードスーツの本体は魔力を蓄えており、最上級を放てるだけの魔力がまだ残っていた。

 

「今すぐにでも譲渡したいが、その前に敵の動きを止める」

 

 ハジメが視線を戻すと、咄嗟に放ったミサイル攻撃の影響から回復したサソリモドキが突進してきていた。ハジメは“豪脚”で脚力を強化すると、ジェット噴射しながら地面を蹴り、サソリモドキに突進する。

 

「“豪腕”」

 

 両者が最接近した刹那、ハジメはアームキャノンでサソリモドキを殴る。サソリモドキは四本のハサミを重ねて頭部を守るが、勢いを殺せずに後方へ吹き飛ばされ、壁に激突して地面に落下すると、その場でもがき苦しむ。

 

「今だ」

 

 ハジメはユエの側に戻ると、魔力操作を行って左手に魔力を集中させる。そして、掌に赤く輝く魔力の塊が出現し、ユエの体に入っていく。

 

「ありがとう」

 

 次の瞬間、その華奢な体から黄金に輝く魔力光が発生し、周囲を照らす。そして、魔力光と同じ黄金の髪をなびかせ、片手を掲げながら、これから発動する魔法名を呟く。その目線の先では、サソリモドキが既に立ち直っていた。

 

「“蒼天”」

 

 サソリモドキの頭上に出現したのは、直径六、七メートルはある青白い炎の球体。そこから発される強力な熱からサソリモドキは逃げようとするが、吸血姫はそれを許さない。

 

 ピンっと伸ばされた綺麗な人差し指がタクトのように振られ、それに従って青白い炎の球体はサソリモドキを追いかける。そして、サソリモドキに着弾した。

 

「グゥギィヤァァァアアア!!!」

 

 青白い炎の球体に飲み込まれたサソリモドキが苦悶の悲鳴を上げ、部屋全体を響かせる。やがて、魔法の効果時間が終わって球体は消滅するのだが、そこには外殻が赤熱化して表面がドロリと融解し、悶え苦しみながら体を上下させるサソリモドキの姿があった。尻尾は完全に蒸発しており、敵の飛び道具も無効化されている。

 

 ミサイルもチャージビームも無効化し、近接攻撃もある程度は防いでいた外殻を一瞬で溶かしたユエの魔法。今のハジメでは出せない火力であり、それを放ったユエを称賛すべきだろう。

 

 その直後、後方でトサリと物音がする。ハジメが振り返ると、そこには魔力が枯渇したのか座り込んで肩で息をするユエの姿があった。

 

「ユエ、大丈夫か?」

「ん……流石に疲れる」

「そうか……後は任せておけ」

 

 ハジメはアームキャノンにエネルギーをチャージしながら、地面を蹴って瞬時にサソリモドキと距離を詰める。ハジメに対して残っていたハサミが振るわれるが、跳躍で回避して背中に飛び乗る。そして、融解した背中の外殻に右腕を突き刺すと、エネルギーを解放した。

 

「消え失せろ……」

 

 直後、サソリモドキの体内に直接叩き込まれたチャージビームが炸裂し、ドォンという音が響く。体内に広がった衝撃波でサソリモドキの体が一瞬で膨張し、そのまま破裂した。

 

 サソリモドキだったものの中でハジメが立ち上がる。ユエにサムズアップすると、ハジメはユエの所へ戻った。

 

「ユエ、勝ったな」

「ん……私達の勝利……」

 

 ハジメはユエを抱えて部屋を後にしようとするが、部屋の中央からガチャという音が聞こえ、直後に床が割れて中から箱が出現する。

 

「ん……あの箱は?」

「分からない。確認しよう」

 

 ハジメは何時でもユエの盾になれるように備えながらも、共に箱へ近づく。スキャンバイザーで確認するが、物理的なトラップの存在は認められない。魔法のトラップの可能性もあるが、ハジメは蓋を無理矢理こじ開けた。

 

「これは……何かあるな」

 

 箱の中を覗き込むハジメ。中に何か入っていたため、ハジメはそれを取り出す。それは、小さなサイズのドレスのような形状の黒い衣装だった。

 

「ドレス……」

「このサイズ、ユエが着られそうだな」

「ん……本当だ」

 

 ユエが早速着てみようとするが、罠の可能性を考えてハジメは制する。そして、ドレスをスキャンした。すると……

 

「これは凄い……ただの布のように見えるが、防御力が騎士鎧よりも上だ……それに、バイオ素材の使用も確認されている。もしかするとチョウゾテクノロジーかもしれない」

 

 少し興奮気味で話すハジメ。罠ではなかったため、ユエはドレスを着用する。下着などは身につけていないが、ボロ布一枚よりはマシだろう。

 

 ドレスを着用したユエの姿は、完全にお嬢様だった。ドレスは黒一色という地味なものだが、彼女の金髪との組み合わせは見事なものだ。また、ドレスとはいっても動きやすそうな造りとなっており、戦闘時の足枷にはならなそうだ。

 

「ん……でも、どうして服がこんな所に?」

「分からないが、使えるものは持っておいて損はないだろう?」

「まぁ、それはそう。お父様、行こう?」

「あぁ、そうだな」

 

 ハジメはユエを抱えると、今度こそ封印部屋を後にした。




スーパーミサイルならサソリモドキは瞬殺できますね
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