鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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今回、後半でメトロイドのキャラクターのそっくりさんが登場します。前作を見てる人なら分かると思います。


15話 語らい

 サソリモドキを倒した後、ハジメ達は封印部屋を立ち去り、壁に穴を開けて作った小部屋の中で情報交換することにした。ハジメはヘルメットのみを解除すると、壁に背中を預けて座り、足を投げ出した状態になる。そして、ユエはその隣に座っていた。

 

「お父様、ちょっと眠い……」

 

 座り込んでいたユエはそのまま眠ってしまう。ハジメとしては今すぐにでも情報を得たいと考えていたが、これでは無理そうだ。ハジメは彼女が起きるのを待つことにし、その間に今までのこと……特に封印部屋における出来事や情報について整理していたのだが、ハジメはとある考えを持つに至った。

 

(本当にユエのおじは裏切ったのだろうか?)

 

 ユエの話では、おじ様によって裏切られ、“自動再生”の固有魔法によって殺せない危険な存在として奈落の底に封印されたということになっていた。

 

 だが、“自動再生”が効果を発揮するのは魔力が残っている間だけである。捕らえた後、魔力を枯渇させてから殺せば、わざわざ封印などする必要はない。本当に裏切ったのであれば、殺す方を選んでいたはずだ。さらに、封印部屋には衣服が残されていたが、永遠に封印してしまうのであれば、そんなものを残しておく必要はない。そのサイズがユエにピッタリだった以上、ユエのために残したということになる。

 

 少なくとも、彼が封印に留めたということは、ユエの命を奪うつもりはなかったといえる。また、衣服を封印部屋に残していることから、彼女が誰かに助けられ、再び外に出ることを想定していたのだろう。

 

(殺さなかった理由として考えられるのは……ユエの隠蔽?)

 

 ユエという存在を狙いそうな存在なら、この世界に既にいる。それはエヒトだ。勇者という強力な存在を召喚したように、ユエを利用してもおかしくない。自動再生、魔力の直接操作、全属性適性を持つユエは、魅力的に見えたはずだ。

 

 ユエを守るために裏切りを装って奈落の底に封印した。そんな可能性がハジメの頭の中に浮上する。だが、この可能性についてユエに話すべきではないだろう。何故なら、どんな理由があろうとも、ユエが苦痛を味わった事実は変わらないからだ。関係の悪化を防ぐためにも、なおさら言うべきではない。

 

 

 

 数十分後、目を覚ましたユエとハジメは情報交換を始めた。

 

 ユエが話したのはこの大迷宮に関することだったが、その内容はハジメが王国で調べた内容と殆ど違いがないものだった。ユエはそれに加え、自身の能力について全て教えてくれた。一方、ハジメが話した内容は今に至るまでの全てだった。鳥人族に育てられたこと、第二の故郷や大切な存在を失ったこと、地球に戻ってからのこと、異世界に召喚されたこと等を話している。

 

 それについて特にユエが反応していたことは、鳥人族に関係する所だ。この世界において鳥人族は反逆者扱いされており、正確な情報は残されていない。鳥人族の文化や思想、ゼーベスでの生活といった情報は、彼女にとっては新鮮なものだっただろう。もちろん、碑文の内容も伝えている。

 

「お父様の話を聞いて、チョウゾが反逆者とは思えなくなった。私も彼らの真実を知りたい。それに、解放者のことも気になる……」

 

 鳥人族や解放者の真実を明らかにするため、大迷宮を攻略する。その方針が、二人の間で共有された。

 

「お父様、もう一つだけ詳しく聞きたいことがある……」

「何だ?」

「話にあったカオリという女性とお父様の関係について知りたい」

 

 鳥人族の次にユエが興味を持ったのは、香織だった。地球でのことについて話す以上、香織のことを語らないわけにはいかなかったのだが、省略している部分も多かった。

 

「話を聞く限り、お父様はカオリのことが好きで、カオリもお父様のことが好きということは分かる。でも、お父様とカオリは恋人ではないようだった……どうして?」

「なるほど……分かった、全て話そう」

 

 ハジメは語り始めた。自身が香織のことをどのように認識し、どのような思いを抱いているのか。

 

「すでに話しているが、俺と彼女の出会いは彼女を助けたことに始まる。その時、俺は彼女に惚れた。彼女の美しさもあるが、彼女に惹かれた理由の一つには、俺と正反対な存在であるということがある」

 

 南雲ハジメは地球に戻るまでの間、問題の解決や人助けの手段として暴力を使ってきた。悪事のために暴力を使ったわけではないが、いくら正当な目的のためであっても、暴力には変わらない。そのため、ハジメは自身の本質は暴力であると考えていた。

 

「彼女を見たとき、俺には分かった。彼女の本質は暴力とは正反対の慈愛であることを。俺は彼女の美しさだけでなく、優しい雰囲気に惹かれた」

 

 今まで、スペースパイレーツや原生生物といった存在から殺意を向けられていたハジメは、殺意だけでなく正反対の慈愛の存在にも敏感だった。

 

「俺は思った。本質が暴力の俺と本質が慈愛の彼女という両者は惹かれあってはならないのだと。だからこそ、俺は彼女に深入りしないようにした」

「でも、深く関わってしまった?」

「あぁ。彼女は予想以上にグイグイと距離を詰めてきた。周囲の目もあり、俺は優しい彼女に冷たい態度をとれなかった。そして、関係の着地点を探した結果、友達以上だが恋人未満という中途半端な関係になってしまった」

 

 ハジメが思っている以上に、香織はハジメに執着している。距離の詰めかたも半端ないものだった。愛の暴走特急と呼んでもいいだろう。

 

「俺は、彼女に暴力とは無関係でいてほしかった。だが、そこで異世界召喚というイレギュラーが発生した」

 

 異世界に召喚されたハジメ達は戦争への参加を要求された。勝手に参加を決めようとする光輝達にハジメが割って入ったのは、香織が戦争に参加することになるのを阻止するためでもあった。最終的に志願制となったため、ハジメの目的は達成できていた。

 

「今頃、白崎さんは訓練には参加せずに医療院に所属しているか、もしくは先生に同行して各地を巡っている……と信じたい」

 

 なお、現実は非情である。実際のところ、香織はハジメへの想いを胸に迷宮攻略組の一員としてオルクス大迷宮に潜っている。

 

「俺のことは死んだとでも思っているだろう。彼女はパワードスーツのことは知らないし、あんな所から生身で落ちて、無事な人間など普通はいないからな」

 

 ハジメは見くびっていた。白崎香織という人間のハジメ自身に対する執着を。後に、ハジメは彼女が戦争参加を決めたと知ることになるのだが、その時ハジメは冷静でいられるのだろうか?

 

「ん……お父様は優しい。暴力を使ったとしても、その行動はきっと優しさから来るものだと思う」

「俺が……優しい?」

「そう。お父様は私を魔獣から守ってくれた。それに、カオリを大切にしている。慈愛と暴力……それは相反するものだけど、同時に存在することもある。その例がお父様」

 

 ユエはハジメを肯定する。王族として教育を受けていることもあり、その一言一言に教養を感じ取れる。

 

「ありがとう、ユエ」

 

 その後も二人はしばらく話し、二人の情報交換が終わるのだが、ユエはこんなことを言った。

 

「そういえば、お父様は元の世界に帰るの?」

「あぁ、そうだな。可能ならば、白崎さんやクラスメイト達も元の世界に帰したい。それに、ゼーベスも奪還しなければならない」

「そう……」

 

 それを聞いた瞬間、ユエは俯いてしまった。ユエは、再び自分が孤独になることを不安に思っているのだろう。ハジメはそんな姿のユエを見ると、その頭を撫でながら言った。

 

「安心しろ。ユエを置いて行ったりはしない。地球では戸籍の問題もあるが、銀河連邦もある。住める場所は沢山あるからな。それに、鳥人族に生き残りがいれば、彼らも受け入れてくれるはずだ」

「え……いいの? ありがとう、お父様!」

 

 こうして、二人は共に歩むことになった。

 

 

 

 

 

「そういえば、ユエは食事はどうするんだ? 俺にはスーツがあるから問題はないが……」

 

 ハジメの食料問題は、腹は満たされないもののパワードスーツの機能によって解決している。だが、スーツのないユエだけはそうはいかない。かといって、毒である魔獣の血肉を食べさせるなんて以ての外だ。

 

「大丈夫。私は吸血鬼だから血を吸っておけば生きていられる」

 

 そして、ユエはハジメを指差して言う。

 

「私、お父様の血が飲みたい」

「俺の血か……構わない」

 

 ハジメはパワードスーツを完全に解除し、吸いやすいように姿勢を低くした上、その首筋を見せる。ユエはハジメに密着すると、首筋に牙を突き立てた。

 

 その際、ハジメはチクリと痛みを感じる。そして、首筋を通して体内から力が抜けていくような感覚を覚えた。普通、血を吸われるという行為に恐怖・嫌悪しそうなものだが、ハジメは特に動じない。

 

 やがて、ユエは首筋から口を離すと、熱に浮かされたような表情でペロリと唇を舐め、血を余すことなく摂取する。幼い容姿である彼女だが、その仕草からは妖艶さが感じられた。なお、ハジメにはロリに対して欲情する趣味はないし、手を出すことはない。

 

「ごちそうさま。おいしかった……」

「それならよかった。で、味は?」

 

 血に味はあるのか?という単なる好奇心からハジメはユエに聞く。

 

「ん……一言で言うなら、鳥の肉を煮込んだスープみたいな味。ただ……少し味が薄い……」

「なるほど」

 

(鳥の肉を煮込んだスープ……まさか、鳥人族の遺伝子の影響か? それに、味が薄いのは食事を殆んどしていないからか? 血の味……研究したいところだ)

 

 ハジメの脳内で考察が渦巻く。ハジメには戦士としての側面だけでなく、科学者や技術者の側面も存在し、関心を持った事柄について考え込むことがある。ハジメが気付いた時には、ユエが顔を覗き込んでいた。

 

「お父様、大丈夫? 体調でも悪いの?」

「っ!? あぁ、大丈夫だ。今後のことを考えていた。そろそろ出発するが、異論はないな?」

「ん……準備はできてる」

 

 立ち上がったハジメの体が光に包まれ、パワードスーツの姿に変わる。その隣には黒いドレスに身を包んだユエの姿がある。錬成で出口を作ると、二人は戦いの場に出撃した。

 

 

 

 

 

◾◾◾

 

 

 

 

 

 畑山愛子25歳は社会科教師である。生徒の味方になることを信条としていた彼女は、生徒達と共に異世界トータスに召喚されてしまう。

 

 彼女が突然の非常識な出来事に混乱している間、色々なことが生徒の手によって決まってしまい、志願制になったとはいえ大切な生徒達が戦闘訓練を始めてしまった。

 

 彼女は可能な限り生徒の近くに居ようと決心したものの、作農師という貴重な天職を持っていることに加え、生徒達からの説得を受けたことから、戦闘とは無縁な農地開発に行くことになってしまった。

 

 生徒達を心配しながら、各地を護衛の騎士と共に巡っていく彼女だったが、そんな彼女に気さくに話しかけてくれる一人の騎士がいた。

 

 

 

「はぁ……」

 

 王宮にいた愛子はため息をついていた。三人の生徒が短期間で消えてしまったという事実は、一人の大人として……先生として生徒達を守ろうとしていた彼女の心に重くのしかかっており、メンタルはボロボロだった。

 

「何だか浮かない顔だな、プリンセス」

 

 愛子が顔を上げると、目の前に大柄な騎士が立っていた。笑顔と白い歯が素敵な褐色肌のマッチョマンであり、スキンヘッドだ。

 

「アンソニーさん……」

 

 彼の名はアンソニー。愛子が各地を巡る際、最初の頃から護衛してくれていた神殿騎士だ。神殿騎士というのは、教会が独自に保有する戦力であり、神や教会に仇なす者を斬る刃である。

 

 神殿騎士のアンソニーは愛子のことを勝手にプリンセスと呼んでいる。そして、彼の得物は大剣のような重量の両手剣なのだが、彼はそれを片手で軽々と扱っている。教会に所属する騎士にしては陽気でフレンドリーな彼は、生徒達から人気があり、アンソニーの兄貴と呼ばれていた。

 

「事情は聞いているぜ、プリンセス」

 

 既に語られているが、クラスメイトの死によって生徒達の多くが戦いを拒絶しており、王国や教会の人間の中には戦いへの参加を催促してくる者もいた。それに対して愛子が抗議し、自身の能力や立場を盾にして生徒達を守っている。

 

 愛子の行動は彼女の人気を更に高める結果となり、戦いは望まないが、彼女の護衛をしたいという生徒達の一団が現れた。その名も、愛ちゃん護衛隊。そのリーダー格となっているのは、あの時にハジメに助けられた園部優花である。

 

 当初、自身を助けてくれたハジメの死がトラウマになり、他の生徒以上に戦いを拒否していた優花だったが、愛子と接触して精神が安定してきた彼女は、ハジメに救われた意味を考えるようになった。

 

 その結果、自分はハジメに助けられたのだから、自分も誰かを助けるという結論に至り、他の生徒に声をかけて護衛隊を結成したわけだ。

 

「生徒達が護衛をしてくれるのは嬉しいですが、私はこれ以上誰も失いたくないんです。アンソニーさん、いざというときは生徒達を守ってください。お願いします……」

 

 愛子はアンソニーに頭を下げる。

 

「まあ、プリンセスの頼みなら……分かった、生徒達は俺が守るぜ。勿論、プリンセスのこともな」

 

 アンソニーはニカッと笑うと、その素敵な真っ白い歯を見せた。それを見て愛子も笑顔になる。彼の笑顔は、愛子にとっての精神的な支えになっていた。

 

 数日後、愛子は護衛隊の生徒やアンソニーと共に、再び農地開発や改良へ向かうことになった。その際、アンソニー以外に新しく加わった四人のイケメン騎士と生徒達の間に愛子を巡っていざこざがあったり、それをアンソニーが仲介するなど、色々な出来事が起こるのだが、それはまた別の話である。




神殿騎士アンソニーの元ネタはメトロイドOtherMのアンソニー・ヒッグスです。両手剣を片手で扱う辺りは、FEのアイクが元ネタだったりする。
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