鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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今回はヒュドラ戦です!
前作品よりも内容を濃くしたつもりです。


17話 守る力

 ヒュージ・バグを撃破した日から数日が経過した。現時点で最初にハジメが目覚めた階層から九十九層目を攻略するに至っており、次は百階層であった。

 

 そして、ハジメ達は百階層に踏み込む。その階層は、無数の巨大な柱に支えられた広大な空間。柱の一本一本が直径五メートルはあり、螺旋模様の彫刻と蔦のような装飾で彩られている。その柱は規則正しく一定の間隔で配置されており、まるでパルテノン神殿のようだ。この空間こそ、オルクス大迷宮の最深部である。

 

 ハジメ達は歩みを進め、二百メートル進んだところで突き当たりが見えてくる。そこには全長十メートルはある巨大な両開きの扉が存在し、美しい彫刻が彫られていた。特に、七角形の頂点に描かれた文様が印象的だ。

 

 二人は更に扉に接近するのだが、そこで異変が起こった。なんと、ハジメ達と扉の間の三十メートル程の空間に、赤黒い光を放つ巨大な魔方陣が出現したのだ。ベヒモスの魔方陣の三倍の大きさがあり、おまけに複雑である。

 

「ユエ、どうやら最後の戦いのようだ」

「ん……こんなに大きいのは初めて。でも、お父様と一緒なら乗り越えられる。そんな気がする」

 

 これから始まるのは、オルクス大迷宮の攻略者となるための試練。当然、現れる魔獣は今までとは桁違いの強さを誇るもの。やがて、そいつは魔法陣から現れた。

 

 体長三十メートル、蛇のような六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の魔獣であり、頭の色はそれぞれ赤・青・黄・緑・白・黒だった。その名は神話の怪物と同じく“ヒュドラ”という。そして、六対の眼光がハジメ達を睨み付けた。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 その咆哮を常人が聞けば、蛇に睨まれた蛙のようになってしまうだろう。だが、二人はこの大迷宮を突破してきたのだ。恐れる理由などない。

 

 咆哮の直後、赤頭が口を大きく開いて火炎放射してきた。ハジメとユエは迫り来る炎の壁を左右に散開して回避すると、反撃を開始する。

 

ドオッ!

 

 ハジメのアームキャノンが火を吹き、発射された最大チャージビームが赤頭を一撃で吹き飛ばすのだが、白頭が咆哮したかと思えば、赤頭が白い光に包まれて何事もなかったかのように復活する。白頭は回復役であったのだ。さらに、ユエの放った氷の槍が緑頭を吹き飛ばすも、同様に回復されてしまった。

 

「ユエ、白を狙うぞ!」

「んっ!」

 

 ハジメが指示した直後、青頭が現れて氷の礫を大量に吐き出してくる。回避した二人は、白頭を狙って同時攻撃を行う。

 

ドオッ!

 

「“緋槍”!」

 

 チャージビームと炎の槍が白頭に向けて飛んでいく。だが、直撃する前に黄頭が割り込んでくる。その黄頭はコブラのように頸部を広げると輝き、攻撃を全て受け止めてしまった。

 

「なるほど……盾役か。ユエ、ここは任せろ」

「ん……」

 

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 ハジメは黄頭をロックオンし、数発のノーマルミサイルを放つ。先ほどと同じく黄頭が防いでしまうが、黄頭の視界は爆煙で覆われる。

 

『スピードブースター、オンライン』

 

 ハジメは背面ブースターを噴射し、高速ダッシュでヒュドラの方へと走り出す。他の頭が攻撃を仕掛けてくるが、高速ダッシュで発生した青いエネルギーを纏っているため、全く効かない。そして、加速を利用して黄頭に向かって高速で跳ぶ。

 

「クルゥアン?!」

 

 ハジメは煙を引き裂いて黄頭の目前に現れる。突っ込んできたことに驚く黄頭だったが、直後に踏み台として利用され、ハジメは白頭の上に着陸する。

 

「この手に限る」

 

 ハジメはアームキャノンの砲口を白頭に押し付けると、至近距離から最大チャージビームを撃ち込んで離脱。白頭は何が起こったのか理解する前に撃破されてしまった。

 

 普通に撃ったところで黄頭によって防がれてしまうのだから、割り込まれない程の至近距離で撃てばいい。それこそが、ハジメの考えた白頭の攻略方法だった。

 

「ユエ、一気に畳み掛けるぞ!」

 

 ハジメはユエと共に残った首を掃討しようとする。だが、いきなりユエの悲鳴が響き渡った。

 

「いやぁあああああ!!!」

「ユエ?!」

 

 何があったのかと思い、急いで駆け寄ろうとするハジメ。赤頭と緑頭が火炎弾と風の刃を無数に放って妨害してくるが、何とか回避していく。その間も、ユエは悲鳴を上げ続けていた。

 

(そういえば……)

 

 こうなった原因を考えていると、ハジメは黒頭が何もしていないことを思い出す。そして、ハジメは一つの結論を出した。

 

(まさか……精神攻撃?)

 

 黒頭がユエに対して精神攻撃の類いを仕掛けたのではないかと予測したハジメは、素早くミサイルを黒頭に叩き込み、一撃で吹き飛ばす。そして、それと同時にユエの悲鳴は終わり、その場に倒れた。

 

 だが、今度は青頭が口を大きく広げてユエを飲み込もうと迫る。

 

(まずい!)

 

 ハジメは青頭とユエの間に割って入ると、青頭の下顎を踏みつけ、左腕で上顎を持ち上げることで押さえ、口内にミサイルを叩き込む。口内で爆発したミサイルにより、破裂した青頭の肉片が飛び散った。

 

「しっかりしろ! ユエ!」

 

 ハジメはユエを抱えて柱の裏に退避すると、青ざめた表情で震えているユエを目覚めさせるために呼びかける。当初は虚ろな目であったが、しばらくしてユエの目に光が戻る。

 

「大丈夫か?」

「お……お父様?」

「あぁ、俺だ。何があった?」

 

 目覚めたユエは、涙を流しながらその小さな手でハジメの手を握った。

 

「よかった……また見捨てられたかと……」

「見捨てられた……どういうことだ?」

 

 疑問符を浮かべるハジメ。ユエによると、ハジメに見捨てられて再びあの部屋に封印される幻覚を見させられたらしい。

 

「大丈夫だユエ。俺は絶対に見捨てない」

「お父様……」

 

 ユエにとって、ハジメは心の支えであった。自分に名前を付けてくれたハジメは父親のような存在であり、彼女が吸血鬼族であっても恐れることがなく、おまけに血を吸わせてくれるのだから。

 

「ユエ、必ず一緒に地上へ戻るぞ」

「はい、お父様……必ず一緒に」

 

 ヒュドラから白頭と黒頭が消えた今、戦いにおける心配事はないに等しい。

 

「俺が囮になるから最後は任せる。異論はないな? ユエ」

「んっ!」

 

 そして、2人は柱の陰から飛び出すと、行動を開始する。残っている攻撃用の頭である赤頭と緑頭が火炎弾や風刃を無数に飛ばしてくるが、ハジメの早撃ちによって撃ち抜かれていく。その隙に、ユエは最上級魔法を発動した。

 

「“天灼”」

 

 三つの頭を囲むように現れる、六つの放電する雷球。球体同士の放電が繋がることにより、雷で構成される檻となる。そして、檻の中を強力な電撃が埋め尽くした。

 

ズガガガガガガガガガッ!!

 

 雷属性の最上級魔法はその威力を発揮し、防御力の高い黄頭を含めた三つの頭は苦しそうに断末魔を上げながら消し炭と化してしまった。

 

 魔力の大半を使い果たし、座り込むユエ。完全にヒュドラを倒したと思ったハジメは、ヒュドラに背を向けて彼女の元へ向かおうと歩き出す。だが、ユエの切羽詰まった声が響き渡った。

 

「お父様!」

 

 ハジメがユエの視線を辿ると、そこには今までいなかった七つ目の頭があり、銀色の頭だった。その口内には光がチャージされており、次の瞬間には強烈な継続型ビームが放たれる。その向かう先は、ユエだ。

 

「ユエ! 逃げろ!」

 

 その瞬間、ハジメは咄嗟にビームの射線に割り込んでいた。ビームはその身をシールドとしたハジメに直撃し、ハジメは爆炎に飲み込まれてしまった。

 

「お、お父様?」

「……」

 

 煙が晴れた後、現れたのはその場に仁王立ちするハジメ。スーツの各所からはスパークと煙が出ており、ユエの呼びかけに反応しない。そして、ハジメは膝を折って前のめりに倒れてしまった。

 

「お父様! しっかりして! お父様!」

 

 魔力が枯渇してまともに動けないユエは、無理やり体に力を入れてハジメに駆け寄る。スーツの重量によって重いハジメを必死に揺するが、起きる気配はない。更にヘルメットを外そうと試みるが、全く外れない。実は、ハジメのパワードスーツの着脱には装着者の意思が必要であり、展開したまま気絶すると脱がすことが不可能なのだ。

 

「今度は……私がお父様を守る!」

 

 ユエは意を決すると、懐からハジメのブラスターを取り出す。本来はハジメの武器だが、ハジメは魔力切れの際の護身用としてユエに貸しており、使い方を教えていた。

 

 ユエに残されているものは、ハジメのブラスターと身体強化を施した吸血鬼の肉体、少量の魔力でも使用可能な魔闘術のみ。ユエはハジメを守るため、たった一人でヒュドラに立ち向かっていった。

 

 

 

 

 

 ハジメは夢を見ていた。それは、戦士としての訓練を始めたばかりの頃の話であり、まだ幼いハジメの声が聞こえてきた。

 

「ねえ、お父さ……師匠。僕、メトロイド(最強なる戦士)になれるかな?」

 

 幼いハジメの目の前にいるのは、今は亡き師匠であるレイヴンクローだ。

 

「メトロイドか……意味は知っているな?」

「うん、最強の戦士って意味でしょ。僕は、メトロイドになってパイレーツを倒したいんだ」

 

 最強になって悪を倒したい。小さかった頃にそのような願望を抱いた人もいることだろう。幼いハジメも、そのようなことを考える少年だった。

 

「確かに、最強の力があればパイレーツを倒すこともできるだろう。だが、それだけではだめだ。攻めるだけではなく、守るということを忘れてはならない」

「守る……」

「単純に力を敵に行使するだけでは、スペースパイレーツの同類となってしまう。我々は銀河の平和を守る存在なのだ。自らの後ろにいる力無き人々の存在を忘れるな」

 

 当時のハジメには少し難しい話だった。だが、ハジメは誰かを守るために戦うということを初めて意識した。

 

「師匠、僕は最強の戦士になりたい。スペースパイレーツからみんなを……大切なものを守れる戦士に」

「分かった。ハジメ、俺はお前を立派な戦士に育ててやる。人々や大切なものを守れる最強の戦士にな」

 

 ハジメは思い出した。自分がどのような思いで戦士としての訓練を開始したのか。人々を、そして大切なものを守れる最強の戦士、メトロイドとなる。それこそが、ハジメが抱いていた思いだった。

 

(実際はどうだ? 南雲ハジメ、お前は大切なものを守れたか?)

 

 夢の中でハジメは自己問答する。

 

(いや、守れてなどいない。力無き人々を守れなかったこともある。リドリーやパイレーツには多くの大切なものを奪われた。そして、今度はユエを失いかけている……)

 

 現在、ユエは魔力の大半を使い果たしており、その状態ではヒュドラに対抗することは不可能である。戦えるハジメが倒れた以上、ユエがヒュドラに殺されてしまうのは時間の問題だった。再び大切なものを失いそうになっている事実に、ハジメは自分を恨んだ。

 

(クソッ! また俺は大切なものを失うのか……ダメだ、それではいけない。俺は最強の戦士となると誓った。もう二度と、悲劇を繰り返したくはない!)

 

 その瞬間、ハジメの意識は覚醒した。スーツのエネルギー残量が大幅に低下したことを知らせる警報が鳴り響いており、視界はヒビが入ったバイザーに覆われている。そして、視線の先にはヒュドラに立ち向かうユエの姿が。

 

 

 

 ヒュドラはユエに対して多数の光弾を発射してくるが、ユエは魔闘術によって迎撃していく。同時に片手のブラスターのエネルギーを最大までチャージすると、最大威力のビームを銀頭に発射する。

 

 ビームは銀頭に直撃した。しかし、その威力はスーツの武装には及ばないため、銀頭に傷一つ付けることも叶わない。

 

「効かない……」

 

 ヒュドラはさらに光弾を発射する。魔闘術を使うための魔力すら残っておらず、回避に専念するのだが、ついに被弾する。当たったのは肩だった。

 

「あぐっ!?」

 

 さらに、ユエが姿勢を崩したところに銀頭がビームを放つ。ユエは何とか飛びのくことで躱すが、その代わりに光弾が腹部に直撃。吹き飛ばされたユエは、地面に叩き付けられた。

 

「うぅ……うぅ……」

 

 呻き声を上げるユエ。銀頭はユエを見下ろすと、勝ち誇ったかのように咆哮する。そして、ビームのチャージを始めた。

 

「ごめんなさい、お父様。私、ここで死ぬみたい……」

 

 ユエは完全に諦め、銀頭の口内から溢れている光を見上げる。このままビームが発射されれば、ユエは間違いなく消し飛ぶだろう。そして、ヒュドラはビームを発射した。

 

 ユエに迫る破壊の閃光。だが、次の瞬間……一陣の風が吹いた。

 

「えっ?」

 

 浮遊感を感じるユエ。気がついた時には誰かに抱えられており、その横をビームが通過していた。自分を抱えている人物を見ると、それはボロボロのパワードスーツを纏ったハジメだった。

 

「お父様……?」

「すまない、ユエ。遅くなった」

 

 ハジメはユエを抱えながら後方に跳ぶ。そして、ユエを柱の影に退避させる。

 

「ユエは隠れていろ。俺の不手際でユエには迷惑をかけた。ケジメは自分自身の手でつける」

「お父様……」

 

 ハジメはユエに背を向け、ヒュドラの方へと歩き出す。それを柱の影から見守るユエには、ハジメの背中がいつもより大きいように感じられた。ハジメは、そのまま走り出してヒュドラに突撃する。

 

「クルゥァァアアン!!」

 

 銀頭が多数の光弾をハジメに向けて放つ。ユエに放った時よりも大量であり、本気の攻撃であると伺える。だが、その程度で怯むハジメではない。

 

 ハジメは光弾の嵐の中に突入し、まるで稲妻かのような複雑な軌跡を描いて高速ですり抜けていく。継続型ビームも飛んでくるが、スライディングで回避しながらミサイルを連射して銀頭に打撃を与えていく。

 

「お父様、凄い……」

 

 そして、背中のブースターを吹かして高く跳んだハジメは、銀頭に取り付くと口をこじ開けて中にミサイルを何十発単位で叩き込んでいく。銀頭は口を塞ぐ異物を排除するために至近距離からビームを放つが、ハジメは上方向に跳んで一時的に空中へ離脱することで免れる。

 

(次で終わりにしてやる!)

 

 空中のハジメはアームキャノンにエネルギーをチャージしながら、上下逆さまの状態になって眼下の銀頭を睨む。そのままブースターを吹かせて急降下すると再び銀頭に取り付き、その口をこじ開けた。

 

「今すぐ消えろ!」

 

 ハジメはエネルギーを最大まで増幅した状態のアームキャノンを銀頭の口内に突っ込む。

 

ドオッ!

 

 最大チャージビームが銀頭の口内で放たれ、その脳蓋をぶち抜く。銀頭は糸が切れたかのように活動を停止し、地面に体を横たえると崩壊していく。その後に残されたのは、交差する二本のリングに囲まれた球状のアイテムだった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 とどめの直後に離脱して地面に降りたハジメは、片膝を着いて肩で息をしていた。今回の戦いは受けたダメージが最も多く、激しい動きもあって身体への負担が多大なものだったからだ。そこへ、ユエが駆け寄ってくるのだが……

 

「お父様! あっ……!?」

 

 ユエはハジメの目の前で盛大に転倒した。ハジメと同様にダメージが多く、魔力が枯渇してしまったために体がフラフラなのだ。

 

「ユエ、大丈夫か!?」

「だ、大丈夫……ちょっと転んだだけ」

 

 ハジメは慌てて起き上がらせるが、ユエはサムズアップしながら大丈夫だと表明する。

 

「お父様、とてもカッコよかった……ねえ、これからも私のお父様でいてくれる?」

「あぁ、勿論だ……」

 

 こうして親子で団欒すること数分。ようやくヒュドラの残骸から出てきたアイテムを獲得するときがきた。ユエの目の前でハジメはアイテムに触れる。その直後、パワードスーツが眩い光に包まれ、あまりの眩しさにユエは思わず目を覆った。

 

 やがて、ユエが目を開けると変化したパワードスーツの姿があった。新品同様となっており、カラーリングは変わらないのだが、肩アーマーが球状のものに変化し、全体的にマッシブな体型に変化している。また、胸部にあったL字の発光体が消滅していた。

 

「変わった……?」

 

『バリアスーツを入手しました』

 

『防御機能が強化されたパワードスーツです。耐熱機能が強化されている他、ビームの威力が強化されています。球状の肩アーマーが特徴的です』

 

「バリアスーツ……なるほど、銀頭が他の頭よりも耐久力があったのは、こいつを持っていたからか」

 

 この日、ハジメはさらなるパワーアップを果たした。過去に失われた全てのアビリティを取り戻し、フルスペック状態のパワードスーツを目指してハジメは進み続ける。




ここでバリアスーツを入手です。本作品におけるバリアスーツの効果は、原作にある防御力UP(ダメージ減少)と超高温への耐性に加え、ビームの威力向上を追加してます。
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