鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

23 / 79
19話 ハジメの意思

 

 ヒュドラを倒し、解放者と鳥人族の真実を知り、ユエの機嫌を損ねた波乱万丈の日が終わり、翌日の朝となった。

 

 地底なので時間が分からなさそうなものだが、それは天井に浮かんでいる太陽のような輝く球体が解決してくれた。イヴによると例の球体は解放者と鳥人族が協力して作ったアーティファクトであり、外の時間と同期して夜には月に変わるとのことだ。

 

 それはともかく、ハジメはユエの機嫌を直すために苦労した。ハジメ曰く、スペースパイレーツと戦うより大変だったらしい。あの手この手で機嫌を直そうとした末、添い寝をしてあげることで決着がついた。

 

 そのようなこともあり、手に入れた情報を精査するのは翌日に持ち越されてしまった。現在、ハジメはスターシップのあった部屋に籠り、情報の精査を行っていた。

 

「概念魔法……それなら元の世界に帰れるかもしれないな……」

 

 存在した情報の中で、ハジメが最も注目しているのは概念魔法という魔法だ。ダウンロードしたデータには次のような説明があった。

 

「概念魔法」

概念魔法はあらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。七つの神代魔法を手に入れることが条件であり、極限の意思こそがそれを生み出すだろう。

 

 あらゆる概念を顕現させ、作用させる魔法ということは、元の世界の位置を特定する概念と、世界と世界を繋ぐ概念を生み出すことで、元の世界に帰ることができるのではないかとハジメは考えた。

 

 大迷宮を攻略すれば神代魔法が手に入る。ハジメは全ての大迷宮を攻略するという意思を固めた。元の世界に帰る手段があれば、香織を含めたクラスメイト達を逃がすことができるだろう。だが、それをエヒトが黙って見逃すはずがない。

 

 当然、大迷宮の攻略を妨害してくるだろうし、異世界からハジメ達を召喚した以上、エヒトは異世界に干渉することができる。再び、勇者とその同胞をトータスに召喚するだろう。

 

(神と戦わない理由はないな……)

 

 元の世界に帰ったから『はい、終わり』というわけではないのだ。異世界召喚の被害者をこれ以上出さないためにも、悪意をもって干渉してくる異世界の存在は殲滅しなければならないとハジメは考えていた。

 

「俺が奴を終わらせる……」

 

 ハジメは解放者と鳥人族の意思を継ぎ、エヒトを倒すことにした。なお、ハジメはエヒトを倒せば一件落着だとは微塵にも思っていない。エヒトを排除したところでトータスでは争いが続くだろうし、他の異世界からの干渉もあり得るからだ。

 

(トータスの争いを終わらせることはできるのだろうか? いや、難しいだろうな……)

 

 人間族と魔人族は千年に渡って争ってきた。元凶のエヒトを倒し、真実を公表したとしても憎しみが消えるはずがない。それに、両者からハジメが反逆者として敵視される可能性もあるのだ。

 

 ハジメの方針としては、残りのアビリティと七つの神代魔法を集め、戦闘力の強化と帰還用の概念魔法の開発を行い、最終的には神を倒すということになった。なお、世界を救うか否かという点については保留である。

 

 その後、ハジメは今後の方針についてユエに話した。神と敵対するということは世界を敵に回す可能性が非常に高く、彼女の意思を無視して巻き込むわけにはいかないからだ。なお、ユエの返答は一瞬で返ってきた。

 

「私も戦う。世界の真実を知った者として、逃げるわけにはいかない。それに、お父様には恩を返したい……」

「ユエがそう言うのなら、俺は否定しないさ。あぁ、そうだ。ユエ用に装備を作ろう。それも、最高のものをな」

「ありがとう、お父様……私、最高の装備に釣り合うように強くなってみせる」

 

 帰還する手段を作るために大迷宮を攻略し、神に立ち向かうということで二人の意思は統一された。そして、大迷宮の攻略や神の尖兵と戦う準備をするため、しばらくオスカーの隠れ家に留まることにした。

 

 

 

 

 

 滞在中、ハジメはオスカーの工房で二つのアイテムを発見していた。一つは、“宝物庫”と呼ばれる指輪型アーティファクトだ。

 

 “宝物庫”には直径一センチ程の紅い宝石が取り付けられており、その中に存在している空間に物を保管できる。その小ささからは想像できない程の広さの空間であり、スターシップのような大型の物体すら収納してしまう性能がある。ハジメは、このアイテムに空間に関連する神代魔法が付与されているのではないかと予想していた。

 

 もう一つは、鳥人族のアイテムだった。その名はグラップリングビームといい、光のロープのようなビームを発射するアビリティである。入手時には、次のような表示がバイザーにあった。

 

『グラップリングビームを入手しました』

 

『左手と一体化したデバイスから発射される、ロープのようなビームです。天井に打ち込んでぶら下がる、敵の武器を奪う、障害物を排除するなど、様々な使い方が可能です』

 

 グラップリングビームは攻撃用のアビリティではないが、探索から戦闘の補助までこなしてくれる多用途なものとなっている。大迷宮の攻略においても、役に立ってくれることだろう。

 

 また、ハジメは館の地下室にあった鳥人族の設備を利用し、イヴの協力を受けながら装備の製作や改良を行っていた。

 

 その例として、ハジメが生身で扱う武装が挙げられる。パワードスーツを着ていれば、ハジメは大抵の敵と戦うことはできるが、町や都市の中だったり、近くに他者がいる場合など、スーツを纏えない状況が想定されているからだ。

 

 その一つとして、ハジメはフィールドナックルという武装を製作した。籠手型の武装であり、ベヒモス戦で装着していた籠手を改造したものだ。この武装の機能として、力場発生機能が搭載されている。

 

 フィールドナックルは使用者の魔力や生体エネルギーを動力として力場を発生させるのだが、その力場を拳に纏うことでビームブレードの直撃すら容易に受け止められる。また、両腕の籠手同士を近づけることによって、大きなバリアを展開できる。これではリフレクターの出番が無くなってしまいそうなものだが、手札が多いに越したことはない。

 

 武器ではないが、パワードスーツ未装着時の情報収集能力の低下を補うためのスマホ型デバイスも製作した。バイザーシステムの機能が全て搭載されており、スターシップの遠隔操作もできる。

 

 また、ハジメは宣言通りにユエ用の装備を作った。封印部屋で見つけ、ここまでユエが着ていた黒いドレスを修繕・改造したドレス型戦闘服であり、防御力の向上が図られている。

 

 元々は黒一色のドレスだったが、金色のラインが入れられたり、紅い宝石が各所に配置されている等、お洒落な見た目となっている。なお、紅い宝石は魔力タンクとなっており、最上級を使ったとしても、一発で魔力が枯渇することはなくなっている。

 

 戦闘時にはその上から銀色のアーマーを装備することになっており、アーマーを起点に展開するエネルギーシールドで全身を敵の攻撃や熱気、冷気等から防護する。アーマーを装備した姿は某セイバーに見えなくもない。

 

 ユエの低い機動力をカバーするための装備も作られた。ローラーダッシュ機能が搭載された特殊なブーツである。これは、神の尖兵との戦いを想定した装備だ。

 

 神の尖兵……真の神の使徒は“分解”の固有魔法を持っており、それを利用した攻撃を繰り出してくることが、オスカーが残した情報から判明している。エネルギーシールドによってある程度は無効化できるとのことだが、被弾は減らした方がいい。ユエのように機動力が低いと分解の餌食にされてしまうため、ローラーダッシュ装備を製作していた。

 

 他にも色々と作った装備があったのだが、ここでは割愛させていただく。

 

 

 

 

 

◾◾◾

 

 

 

 

 

 あれから一ヶ月後、ハジメ達が地上へと旅立つ日が来た。情報の精査、装備の製作・改良とその慣熟訓練、対神の使徒を想定した戦闘訓練を重ねており、準備は万端である。

 

 その間、二人は父と娘のように過ごしていた。二人で料理をして大失敗してみたり、風呂でハジメがユエの頭を洗ってあげたり、ユエがハジメに甘えたりと、とても親密だった。

 

 現在、ハジメとユエは館の三階で見つけた帰還用の魔法陣の前に来ていた。二人は共に新しい装備を身につけており、新たな旅立ちに相応しいと言えるだろう。

 

 ハジメは赤いパイロットスーツを着込み、その上に銀色のジャケットを羽織っている。腰にはブラスターを収めたホルスターとリフレクターが下げられていた。そして、履いているブーツはジェットブーツになっており、スーツの未着用時の機動力低下を補っている。フィールドナックルも装備済みだ。

 

 ユエはハジメが製作した金のラインと赤い装飾品が特徴的な黒いドレスに身を包んでいる。某騎士王のようなアーマーが既に装着された鎧ドレスの状態であり、臨戦態勢であることが分かる。見たところ重そうな装備のようだが、生身の状態と変わらない感覚で動けるほど軽量な装備となっている。

 

「ハジメ様、ユエ様、私はナビゲーターとして遠隔で旅に同行させていただきます」

 

 二人の近くにはイヴが操作する球状の警備ユニットが来ている。イヴは精神感応能力を利用した遠隔通信で同行することになっていた。スターシップやスマホ型デバイス、アームキャノンに搭載されたホログラム装置を通してハジメ達をナビゲートしてくれることだろう。

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

 そして、ハジメはオスカーの指輪……攻略の証を使って魔法陣を起動させながら、ユエに対して静かな声で告げる。

 

「ユエ、俺達の力はこの世界では異端だ。教会や各国が黙っていることはないだろう。当然、俺達を排除するか力を戦争に利用しようとするだろうが、この力を渡すわけにはいかない……」

「ん……」

「俺達はどの国家にも属さないし、媚びへつらうようなこともしない。彼らの私利私欲のために力を振るうようなこともだ……」

「ん……」

「だが、困っている人を助けることまでは否定しない。神を倒したところで、人々が救われていなければ意味がないからだ。あくまでも、俺達が救うのは国家ではなく“人”だ……」

 

 ハジメはこの世界で行動する際の心構えをユエに伝えた。国家や勢力ではなく人を助けるというものであり、ハジメはトータスを完全に見捨てたわけではなかった。世界を救うかどうかは保留のハジメだが、人は救うつもりだった。

 

「各勢力どころか、世界を敵に回すかもしれない危険な旅路だ。命がいくつあっても足りないくらいだろうな……」

「それは覚悟の上……」

 

 覚悟はすでに決まっている。

 

「障害は実力をもって排除し、突破口を開く。全て乗り越え、目的を果たすぞ。異論はないな?」

「ん……異論はない。お父様と共に全て乗り越える……」

 

 そして、二人は手を繋いで魔法陣に飛び込み、閃光と共にその姿を消した。





○フィールドナックル
→元ネタはサムス&ジョイに出てくる同名の武装。名前と機能は同じだが、仕組みや構造は全く異なる。

○ローラーダッシュ
ボトムズとかコードギアスでよく見るやつ。

○ハジメの服装
→鳥つながりでスターフォックスのファルコの服装をイメージしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。