鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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最近はメトロイドプライムリマスタードに熱中してます。サーモバイザーを獲得した後の帰り道が怖すぎる件


クラスメイトside4

 ハジメがヒュドラを撃破し、バリアスーツを獲得した頃、勇者一行は迷宮の攻略を中断して王都に戻ってきていた。それには、二つの理由がある。

 

 まず、マッピングが完全に済んでいる今までの階層と異なり未知の階層が広がり、探索と戦闘を並行して行う必要があることから攻略速度が落ちたこと、魔獣も強くなっていることから、それによるメンバーの疲労も考慮して休養を取らせることにした。これが第一の理由である。

 

 もう一つの理由は、この世界における人間族の国家の一つであるヘルシャー帝国から、勇者一行と会うために皇帝陛下が向かうという通達を受けたためである。そのため、休養する場所はホルアドではなく王都に変更になっていた。

 

 それまで、帝国は勇者に興味を持っていなかった。何故ならば、ヘルシャー帝国は三百年前に名を馳せた傭兵が建国した国家であり、“力こそ全て”の完全実力主義の国家だからである。

 

 そんな彼らが、いきなり現れた何処の馬の骨か知れない勇者を、人間族のリーダーとして、救世主として認めるはずがないのだ。

 

 だが、勇者一行が歴史上の最高記録であるオルクス大迷宮の六十五層を突破したことで、帝国は勇者一行に興味を持った。そして、帝国から使者ではなく皇帝陛下が直々にやって来るという異例の事態に発展したわけだ。

 

 王国の人間からそのような説明を受けながら、勇者一行は王宮に到着する。全員が馬車から降りたところ、王宮の方から一人の少年が駆けてくるのが見えた。十歳位に見える金髪碧眼の美少年である彼の名は、ランデル・S・B・ハイリヒ。ハイリヒ王国の王子である。

 

 ランデル殿下は、思わず犬耳とブンブンと振られた尻尾を幻視してしまいそうな雰囲気を纏っており、子犬のように駆け寄ってくると大声で叫んだ。

 

「香織! よく帰った! 待ちわびたぞ!」

 

 人間族の救世主である勇者を差し置いて、彼は香織のみに声をかけていた。どうやら、香織のことしか眼中にないらしい。それもそのはずだ、彼は香織に恋心を抱いているのだから。

 

 ランデル殿下は召喚の翌日の時点で、香織にアプローチをかけていた。しかし、彼は十歳である。香織からしたら、子犬に懐かれている程度の認識だったため、その思いが実ることはない。そもそも、香織はハジメ一筋なのだ。

 

「ランデル殿下。お久しぶりです」

 

 香織は笑みを浮かべてランデル殿下に挨拶する。香織の笑顔を見た彼は一瞬で顔を真っ赤にしながらも、男らしい表情を精一杯作っていた。

 

「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか? 余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに……」

 

 悔しそうなランデル殿下。香織からしたら誰かに守られるつもりはないのだが、その微笑ましい心意気に思わず頬を緩めてしまう。

 

「お気づかい下さりありがとうございます。ですが、私なら大丈夫です。自分で望んでやっていることですから」

「いや、カオリに戦いは似合わない。そ、その……ほら、もっと安全な仕事もあるだろう? 例えば……余の侍女とかどうだ?」

 

 香織から離れたくない。そう思っていたランデル殿下は、香織を自身の侍女にしようとする。

 

「侍女ですか? いえ、すいません。私は聖女です……人を癒すのが仕事ですから……」

「なっ、なら……医療院に入ればいい。迷宮とか前線とか……危険な場所に行く必要などないだろう?」

「いえ、前線でなければ直ぐに命を救うことができませんから。心配してくださり、ありがとうございます。殿下」

「し、しかし……」

 

 何としても香織を近くに置きたいランデル殿下だったが、強くなりたいという意志を固めた香織の気持ちは梃子でも動かない。彼は更なる一手を繰り出そうとするが、涼やかだが厳しさを含んだ声が響く。

 

「ランデル。いい加減にしなさい。カオリが困っているでしょう?」

「あ、姉上!? ……し、しかし……」

「しかしではありません。皆さんお疲れなのです。あなたの都合で振り回してはいけませんよ。相手のことを考えてください」

 

 ランデルを注意したのは、彼の姉であるリリアーナ王女だ。彼女の言う通り、ランデルが香織にしつこくしている間、王族の前ということもあって他の面々は勝手に移動も出来ずに引き留められていた。

 

「うっ……余はカオリのことを考えて……」

「カオリはあなたの所有物ではありませんよ。自らの我が儘を通せるかと思ったら大間違いです」

「あっ……姉上のわからず屋!!」

 

 ランデルは自らの過ちを認めたくないのか、捨て台詞を吐いて逃げ出してしまった。

 

「カオリ、弟が失礼しました。皆さんも、引き留めてしまって申し訳ありません。代わってお詫び申し上げますわ」

 

 リリアーナはそう言って頭を下げた。

 

「気にしてないよ、リリィ。ランデル殿下は私のことを心配してくれているだけだから……」

 

 香織はリリアーナのことを愛称で呼ぶ。リリアーナ王女は十四歳であり、香織達と歳が近いということもあって、彼らと親しくなるのも早かった。彼女は特に香織と雫と親しく、互いを愛称と呼び捨てで呼び合う仲である。

 

「改めて、お帰りなさいませ。皆様、無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

 香織と話した後、全員に向き直ったリリィは労いの言葉を掛けると、ふわりと微笑む。王族としての気品や優雅さを併せ持った美少女など身近にいなかったため、それを見た生徒達は男女の区別なく顔を赤くした。

 

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

 

 そんな中、光輝は息をするようにキザなセリフを爽やかな笑顔で言う。なお、光輝には下心などない。再会できたことを単純に喜んでいるだけなのだ。彼はあまりにも鈍感過ぎた。自身のイケメンフェイスや言動の効果というものに対して。

 

 なお、言われた本人の様子は……

 

「えっ、そ、そうですか? え、えっと」

 

 リリィの顔は真っ赤に染まっており、返答に困ってオロオロとしている。彼女は王族として様々な人々と接してきた経験から、相手に下心があるかどうか見分けるのは容易であり、光輝に下心がないことは分かっていた。しかし、あのような言葉を本心から言われたことがなかったため、動揺してしまったのだ。

 

「えっと、とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。皇帝陛下が来られるには数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

 その後、光輝達は疲れを癒しつつも、居残り組に対してベヒモスの討伐報告をしたり、愛子先生に“豊穣の女神”という異名が付いたことが話題となって彼女が身悶えたりしたが、帝国の使者が来るまでに疲れを癒すことができた。

 

 

 

 

 

◾◾◾

 

 

 

 

 

 それから三日後、ついにヘルシャー帝国の皇帝陛下一行が乗った馬車が王宮に到着した。

 

 馬車から最初に降りてきたのは、四十代位のワイルドな雰囲気を纏う男だった。その銀髪は短く切り上げられ、鋭い碧眼は狼を連想させる。体は見事に鍛え上げられており、筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでも分かる程だ。彼こそがヘルシャー帝国の皇帝、ガハルド・D・ヘルシャーである。

 

 現在、謁見の間において皇帝ガハルドと四名の同行者がレッドカーペットの中央に立っており、エリヒド陛下と教皇イシュタル、光輝達迷宮攻略組と向かい合っている。

 

「ガハルド殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

「エリヒド殿、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝している。して、どなたが勇者様か?」

「うむ、まずは神の使徒の方々を紹介させて頂こうか。光輝殿、前に出てくれるか?」

「はい」

 

 定型的な挨拶が行われた後、光輝達が紹介されることになった。最初に光輝が紹介されるのだが、平和な世界にいた頃と比べてとても精悍な顔つきになっていた。

 

 全員が紹介された後、ガハルドは光輝に対してこんなことを言った。

 

「ほぅ、随分と若いな。失礼だが、本当に六十五層を突破したのか? あそこには、ベヒモスとかいう奴がいたはずだが……」

 

 ガハルドは光輝に疑わしそうな眼差しを向けており、他の者達は光輝を値踏みするかのように上から下までジロジロと見ている。光輝は、向けられた視線に居心地の悪さを感じながらも答えた。

 

「えっと、ではお話しましょうか? どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

「いや、結構だ。話やマップだけでは実力が分からん。そうだな、うちの誰かと模擬戦でもしてもらえないか?」

「えっと……俺は構いませんが……」

 

 光輝はガハルドの提案に戸惑い、エリヒドの方を振り返って指示を求める。そして、エリヒドはイシュタルの方を見て確認を取っていた。その結果、イシュタルが頷いたことで勇者との模擬戦が始まることになった。実力主義の帝国を分からせるためには、これが一番だと判断したのだろう。

 

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

「決まりだな。で、うちからは誰が出るんだ?」

 

 その時、同行者の一人が手を挙げた。

 

「でしたら、このわたくしが立候補いたしますわ!」

 

 この場にいた全員の視線がその人物に集束する。それは、豪奢なドレスを着こなした金髪縦ロールの美女だった。彼女の名はトレイシー・D・ヘルシャー。ヘルシャー帝国の第一皇女である。彼女には“戦姫”の異名があり、自ら戦場に出陣する姫として有名だ。

 

「トレイシー、お前がやるのか?」

「父上、何か問題がありますの? 何度も戦場(いくさば)を経験している私なら、十分に戦えますわ!!」

「止めても無駄そうだ。トレイシー、勇者の相手をしてこい」

 

 こうして、勇者vs帝国の戦闘姫による模擬戦が行われることが決定し、光輝達は闘技場に移動した。

 

 

 

 

 

 光輝が闘技場に入った時、トレイシーは既に準備を終えて待機していた。

 

「待っていましたわ、天之河光輝!」

 

 トレイシーの服装は先程の豪奢なものと比較して、簡素なドレスとなっており、その上から胸甲を装備していた。なお、履いているのはヒールであり、とても戦いをするような履き物ではなかった。

 

 そんな彼女の得物は大鎌である。柄の部分は彼女の背丈と同じ位の長さであり、肩に立て掛けられている。一応、鎌の部分は刃引きされているが威圧感があることに変わりはない。

 

「何処からでもかかってくるといいですわ!」

 

 トレイシーは大鎌を担いだまま、光輝を挑発する。大鎌を構えることもせずに光輝の攻撃を待っている姿に、光輝は舐められているのかと怒りを抱いた。

 

(最初の一撃で度肝を抜いてやれば、真面目にやってくれるはず……なら、本気の一撃を……!)

 

「いきます!」

 

 光輝は“縮地”を使い、風となって急速に距離を詰めると、並みの戦士では視認できない速度で唐竹に剣を振り下ろす。トレイシーが反撃する素振りを見せなかったため、勝ちを確信した光輝は寸止めしようとする。

 

 相手が女性だったこともあり、光輝は確実に寸止めするために腕へ強く意識を向けるのだが、むしろ光輝の方がトレイシーを舐めていたのだと証明することになってしまった。

 

「っ!?」

 

 次の瞬間、光輝は足に走った痛みと共に横方向に倒れる。

 

「足元がお留守ですわ!」

 

 あの時、トレイシーは光輝の意識が足元から外れていた瞬間を狙って大鎌の長い柄で足払いを仕掛けていた。そして、倒れた光輝へと大鎌を振り下ろすのだが、光輝は咄嗟に転がることで回避すると、すぐに起き上がって距離を取り、中段の構えでトレイシーと向かい合った。

 

「真っ直ぐ突っ込んでくるなんて、あなた馬鹿ですの?」

「ば、馬鹿……!?」

 

 皇女による発言に戸惑う光輝。模擬戦の様子を見ていたイシュタル達教会関係者に関しては、救世主を馬鹿呼ばわりされたことに不機嫌そうだった。

 

「まあ、真っ直ぐな剣も嫌いではありませんわ。しかし、戦場(いくさば)ではそれが命取り……実戦に次などありませんが、次は実戦のつもりでかかってくるといいですわ」

 

 ここで、トレイシーは大鎌を構える。光輝は気合いを入れ直すと、再び踏み込んでいった。

 

 今度は全てを一撃にかけるようなことはしない。唐竹、袈裟斬り、斬り上げ、突きといった多彩な剣撃を、“縮地”を織り混ぜた不規則な動きで放っていく。残像が生み出される程の速度であり、トレイシーでも対処できないかと思われた。

 

 だが、トレイシーは最小限の動きのみで回避していき、隙を突いて大鎌を振るう。光輝は大鎌持ちとの戦闘経験がなかったが、スペックの高さで何とか攻撃を凌いでいた。

 

 さらに、光輝は距離を詰めることで長柄武器の利点であるリーチの長さを無効化しようとするが、トレイシーもそれは分かっているため、大鎌を大きくぶん回すことで距離を取る。振り回す度に風切り音が発生し、それが光輝に恐怖を与える。

 

 トレイシーに対して一度も決定打を与えられない光輝。しまいには、地面に垂直に突き立てた大鎌の柄を軸にしてポールダンスのように回転することで一撃を回避し、その動きのまま背後に回った彼女からドロップキックを受けて吹き飛ばされたりしていた。履いているのがヒールなので、地味に痛かったりする。

 

「あなた、もしかして手を抜いていらっしゃるのですか? 明らかに寸止めばかりを意識しているようでしたわ」

 

 トレイシーは光輝と対峙しているうちに、彼の攻撃に違和感を感じていた。

 

「手を抜くも何も、女性……それもお姫さまを傷付けるなんて出来ません!」

「わたくしは、実戦のつもりで来なさいと言いましたわ。もしも、女の魔人族が攻撃してきた時、あなたはどうするおつもりですか?」

「そ、それは……」

 

 言葉が詰まる光輝。それもそのはずだ。彼は魔人族を魔獣と同様の存在だと考えていたのだから。魔人族は実際には人間族と同じく文明を築き、魔獣と違って男女の区別もある。魔人族の女性が攻撃してくるシチュエーションなど、彼は考えたことすらなかった。

 

「な、なら……何とか殺さないように無力化します。それなら……」

「無力化するのは、殺すよりも遥かに難しいことですの。無力化するために反撃で自分が死んだら元も子も無いですわ!」

 

 トレイシーはそう言い放った直後、一気に踏み込む。光輝程の速さではなかったのだが、動揺していたこともあって反応が遅れてしまい、気がついた時には目の前に迫っていた。

 

「っ!?」

 

 大鎌を振り抜こうとするトレイシー。光輝は彼女の放つ濃密な殺気に貫かれ、自分は殺されるのではないかと思ったのと同時に、生存本能が刺激されたのか無意識に魔力の奔流が全身から迸り、トレイシーを吹き飛ばしていた。

 

 空中に飛ばされたトレイシーは大鎌を振るうことで姿勢を制御して着地する。

 

「今のは……“限界突破”ですわね」

 

 光輝は無意識に“限界突破”という技能を使っていた。一時的に全ステータスを三倍に引き上げる技能であり、ピンチの際に使う主人公らしい技能である。

 

「トレイシーさん、限界突破を発動した俺に敵うはずがありません。俺の勝ちです」

「あなた、まさか自分だけが特別とか思っているわけではないですわね? 教えてあげますわ。あなただけの専売特許ではないということを! “限界突破”!」

 

 トレイシーの全身から魔力の奔流が迸る。“限界突破”の技能を持っていたのは、光輝だけではなかったのだ。その光景に、光輝は開いた口が塞がらなかった。

 

「おーーーほっほっほっほっ! 天之河光輝! 次の一撃で終わりにしてさしあげますわ!」

 

 トレイシーは高笑いしながら大鎌を構えると、驚きで動けない光輝に迫ろうとする。しかし、トレイシーと光輝の間に光の障壁がそそり立ったため、不発となった。

 

「それくらいにしましょうか、姫殿下。これ以上は、殺し合いになってしまいますのでな」

 

 障壁を出したのは教皇のイシュタルだった。戦いに水を差されたトレイシーは不満そうだったが、教皇の前なので流石に武器を収めた。こうして、模擬戦は引き分けに終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、予定されていた晩餐においてガハルドは勇者を認めると宣言した。だが、その晩にトレイシーとガハルドはこのように語った。

 

「あれはダメですわ。相手が女だっただけであの体たらく。魔人族の女が刺客として放たれればお仕舞いですわ」

「それだけじゃねえ。そもそも、敵を殺すという覚悟すらないようだ。魔人族も俺達と同じ人であることを理解してねえな」

「まったく、戦場(いくさば)を知らない教会の腰抜け共は勇者に何を教えてきたんですの? あの体たらくでは、おそらく十回以上は死にますわよ」

 

 勇者の評価は最悪だった。それどころか、ご法度なはずの教会への批判まで口にしてしまう始末だ。

 

「勇者の小僧よりも、その仲間にいた女剣士の方が有望かもな。連中の中で一番覚悟が決まっているように見えた。それに、俺好みの強そうな美女ときた」

「父上……愛人にでもするつもりですの?」

「あぁ……たしか、シズクといったな。是非、俺のものにしたい。ま、とにかく戦争が本格化したら勇者の小僧も変わるかもしれない。今は、自滅に巻き込まれないように立ち回るしかねえ」

「ええ、そうですわね」

 

 翌日、皇帝陛下一行は王国から去った。なお、ガハルドは出発前に雫を愛人に誘ったが、普通に断られていた。しかし、ガハルドは諦めたりはせず、次の機会を窺うようだった。




光輝とトレイシーを戦わせる異例の事態となりました。こうでもしないと、原作と殆ど変わらなくなってしまうので。本作品では最初から彼女が限界突破の技能を持っている設定になってます。
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