鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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今回で原作の一章に当たる部分は最後です。


20話 怪物

「檜山大介、あなたには会ってもらわなければならない者がいます。すでに名前くらいは知っているでしょうが……」

 

 訓練を終えた檜山はマザーブレインに呼び出され、そのインターフェイスであるMBの案内で基地のとある区画に来ていた。檜山の目の前には、ゲートのような構造物が鎮座している。

 

「リドリーとかいう奴だよな。確か、戦闘部隊を率いる指揮官……」

「はい、その認識で構いません。彼は我々の最高戦力です」

 

 やがて、ゲートのような構造物が光に埋め尽くされたかと思うと、そこから紫色のドラゴンのような怪物が出現する。それこそがスペースパイレーツの指揮官、リドリーである。

 

「リドリー、ゼーベスの方はどうでしたか?」

「連邦軍の攻撃を受けたが問題はねえ。どうせ、ゼーベスは最低限の人員と兵器しか置いてねえからな」

 

 スペースパイレーツの中でも、マザーブレインとリドリーの支配下にある者達は、その大半の配属先がゼーベスから異世界に移されており、ゼーベスは拠点としての使用を殆どされていない。

 

「連邦の連中も想定外だろうなぁ。まさか、俺達が複数の異世界に拠点を作っているとは」

 

 スペースパイレーツはトータス以外にも拠点を構えていた。マザーブレインによって世界の間を繋ぐゲートが開発されており、異世界の拠点は銀河連邦に見つからない拠点として機能していた。

 

 また、ゼーベスは最低限の人員しか残していないが、固い岩盤に覆われたゼーベスは天然の要塞であると共に、強固な防御シールドで守られており、難攻不落の惑星である。銀河連邦軍は何回か攻勢をかけているが、防御の固さに手こずっている間にリドリーや配備された兵器による攻撃で損害を受けていた。

 

「ええ。連邦は我々の重要な基地がゼーベスであると思い込んでいます。連邦が気付かないうちに異世界で勢力を拡大させ、最終的には銀河を完全支配します」

 

 そして、マザーとの話が終わったリドリーはパワードスーツを着用した檜山の方を向くと接近してきた。サイズの差により、リドリーが檜山を見下ろす形となった。

 

「ヒヤマだったか? 話は聞いてるぜ。味方を撃った裏切り者のクソ野郎なんだってなぁ?」

 

 リドリーは檜山の肩に指を置きながら、その悪魔のような顔を至近距離に近付けて言う。その瞬間、檜山はたじろいでしまった。顔は黄色いバイザーに覆われているが、その下では恐怖の表情に染まっている。

 

「はっ、俺様にビビってるのか?」

 

 檜山がリドリーにビビらない方がおかしいだろう。リドリーは話し方こそチンピラのようだが、宇宙においてハジメの師匠を含めた大勢の命をその手で奪ってきた正真正銘の悪党である。檜山のような小悪党とは格が違う。檜山はリドリーが放つ悪党の雰囲気に圧倒されたのだ。

 

(何なんだよこいつ……やばい、怖すぎて漏らしそうだ……)

 

 カッコいいパワードスーツの姿からは想像できない程、檜山は完全にビビっていた。

 

「リドリー、それくらいにしておいてください。檜山大介は我々の新たな同胞なのです。逃げられてしまっては困ります」

「チッ、分かったよ……“最高司令官殿”」

 

 マザーブレインもといMBに注意され、渋々ながら檜山へのイビりをやめるリドリー。マザーブレインなど瞬殺できるリドリーだが、マザーの高い演算能力を認めているため、注意を聞き入れた。

 

「今後のことですが……檜山大介、あなたには戦闘部隊を率いて辺境にある人間族の集落を襲撃してもらいます。場合によっては勇者との遭遇もあるでしょう」

「天之河の野郎が来るのか?」

 

 マザーはとある情報をノイントから入手していた。それは、勇者とその一行が迷宮の攻略を中断して遠征に出るという情報だった。

 

「はい。あの勇者の性格を考えると、虐殺が行われたという情報を知れば、間違いなく突っ込んでくるでしょう。あなたの力を示すいい機会です。ただし、殺してはいけません」

「ダメなのか?」

「はい。今の段階で死なれると都合が悪いので」

 

 現時点で光輝は人間族の最高戦力ということになっている。そんな彼がすぐに死んでしまうと魔人族との勢力のバランスが崩れてしまうということで、マザーは彼をすぐに殺すつもりはなかった。

 

「痛めつけるくらいならいいんだろ? あいつをボコれるなら文句はない」

 

 檜山はマザーブレインの指示に従うことにした。殺せないのは残念だったようだが、とりあえず力を示せればよかったらしい。

 

「そして、リドリー。あなたには勇者が遠征から戻ってきたタイミングで王都を襲撃してもらいます」

「はっ、いきなり本拠地を襲撃かよ。で、どのくらいやればいいんだ?」

「そうですね、取り敢えず暴れて勇者を引きずりだした後、殺さない程度に勇者と戦ってください」

 

 辺境で檜山と戦った後、今度はリドリーと戦うことになる光輝。しかも、王都という大都市ということもあって巻き添えになる人々の数は計り知れないだろう。

 

「まあいい、平和ボケしている王都の連中に恐怖を刻んでやるぜ」

 

 ハジメが地上に出るのと同時に、スペースパイレーツも表舞台に姿を現そうとしている。双方の存在がトータスに波乱をもたらすのは間違いないだろう。

 

「さて、行きましたか……では、私もすべきことをしましょう」

 

 その後、檜山とリドリーは立ち去るのだが、マザーブレインは二人とは別に行動を起こそうとしていた。

 

 

 

 

 

◾◾◾

 

 

 

 

 

「素晴らしい性能だ……連中の技術力だけは認めねばならんな……」

 

 ガーランド王国の将軍フリードは、目の前の光景を見て言葉を漏らす。

 

 目の前にあるのは、魔獣同士を戦わせて強い魔獣を選出する目的で建造された円形の闘技場。現在、そこは何十体もの魔獣の死骸が折り重なる状態にあるのだが、この光景を作り出した元凶がその中を闊歩していた。

 

 それは、緑色の甲殻に覆われた爬虫類のような大型の魔獣だった。強靭な四肢の先には鋭い爪が目立ち、頭部には左右で合計八個の赤く染まった目が存在しているなど、いかにも怪物である。また、腹部にはコアのような部位が存在していた。

 

 怪物なのは見た目だけではなく、耐久力も怪物クラスだ。先ほどまで怪物が対峙していた魔獣達は、フリードがとある神代魔法を使って作り出したものであり、戦闘能力や耐久力は地上の魔獣とは桁違いのものだったのだが、怪物は彼らの攻撃など意に介さず、口から吐く強烈な火炎弾と強靭な四肢から繰り出される近接攻撃で一方的な殺戮を繰り広げたのだ。

 

「どうですか? 我々スペースパイレーツの技術が導入された魔獣の力は?」

「貴様は……マザーブレインだったな」

 

 フリードの所にMBが来ていた。護衛付きであり、赤い甲殻に身を包んだ通常のゼーベス星人が周囲を固めている。ちなみに、一般兵である通常のゼーベス星人の戦闘能力は基本的に勇者と同等である。

 

「貴様らの技術力だけは認めよう。あの怪物についてはヘルシャー帝国との戦いの際に何体か投入してもいいだろうと私は考えている。して、あの怪物の名は何といったか?」

「あの怪物の名はゼータ。現時点において最強の魔獣と言ってもいいでしょう」

 

 ゼータはスペースパイレーツによる魔獣強化計画〈Project Metroid〉の産物であった。これまでにアルファ、ガンマという二体の実験体がいたが、いずれも制御不能となったことで、パイレーツ側に犠牲を出しながらも殺処分されていた。そして、過去の二体のことを踏まえて三体目の実験体であるゼータが産み出された。

 

 なお、実験体には共通して何故か冷気に弱いという弱点がある。とはいっても、寒冷な気候に放り込まなければ問題はなく、最上級クラスの氷属性魔法しか効果がないため、特に問題視されていない。

 

 やがて、闘技場の中に新たな魔獣が送り込まれてきた。それは、強靭な四本の腕がある筋骨隆々のカ○リキーのような体長三〜四メートル程の馬頭の魔獣だった。その名はアハトド。フリードが造り出した魔獣の中で最も高い近接戦闘能力を持っている。

 

「ガァァァァァ!!」

「ルゥアアアア!!」

 

 響き渡る二体の咆哮。ゼータとアハトドが激突している光景を横目に、MBとフリードも向かい合う。

 

「そういえば、あなたが進めている計画の貴重な被験者が連れ去られたと聞きましたが……」

「あぁ、苦労して掴まえた神の使徒だったのだがな。半魔獣化させることには成功したが、完全に洗脳する前の段階で何者かに研究所が襲撃された」

 

 フリードは独自に魔獣の特性を組み込んだ強化兵士を作ろうとしていた。その被験者として選ばれたのは、異世界から召喚された人間族の救世主の一人だった。敵が召喚したという存在を調査していたフリードは、その一人が単独行動しているのに目を付け、抵抗を受けながらも捕獲に成功した。

 

「貴様らの計画が成功した以上、こちらの計画は凍結だ。別に被験者の行方を追うつもりもない」

「そうですか。では、我々の技術をこれからも利用していただけるということで……」

 

 その後、人間族・亜人族に対する侵攻作戦時の両者の行動について話し合いが行われ、会談は終了した。

 

 

 

 

 

◾◾◾

 

 

 

 

 

「はっ?!」

 

 上半身を勢いよく跳ね上げ、布団に寝かされていた白髪で赤目の青年が目を覚ました。

 

「俺は……今まで何を……」

 

 彼は過去の出来事を思い返す。彼はクラスごと勇者一行としてトータスに召喚されたが、とある出来事を理由に離脱を決意し、冒険者となったはずだった。この時点でお分かりだろうが、彼の正体は清水幸利である。

 

 ある日、清水はソロの冒険者として活動中に謎の一団による襲撃を受け、そのまま連れ去られてしまう。次に彼が目を覚ましたときには、某秘密組織に捕まったIQ600の人のように両手両足を拘束された状態で寝かされていた。そこで、彼は自分を連れ去った者の正体を知る。

 

 清水の目の前に現れたのは、フリードと名乗る魔人族。フリードから告げられたのは、清水を実験の被験者として連れ去ったという事実。清水は仮○ライダーのようなシチュエーションだと思っていたが、そんなことを考えていられたのはその時までだった。

 

 清水はフリードによる実験で、死んだ方がマシな程の苦痛を数週間に渡って味わい続けた。彼が受けたのは人間を魔獣と同じ性質を持つ存在に変えるという実験であり、激痛が走る程の急激な変化をもたらすものだった。

 

 その結果、清水の髪からは色素が抜け、目は赤くなり、肉体は魔獣のように強靭なものに変わった。そして、魔獣と同じく魔力の直接操作が可能となっていた。これは、本来の世界線で南雲ハジメが変貌した姿と同じである。

 

「八重樫さん……」

 

 清水は意中の人の名を呟く。実験で苦痛を味わっている間、彼が正気を保っていられたのは彼女への思いがあったからだ。また会って話したいという、純粋な気持ちが彼の正気を繋ぎ止めていた。

 

「しかし……ここは何処だ?」

 

 清水には最近までの記憶が殆ど無い。あるものといえば、薄れた視界の中で見た黒髪の女性の後ろ姿くらいだ。

 

 その時、清水がいる部屋の中に女性が入ってくる。女性は起きている清水の姿を見ると近付いてきた。

 

「ふむ。どうやら目覚めたようじゃな」

 

 その女性は和服のような服を着た黒髪の美女であり、記憶に残っている女性の姿と一致していた。

 

(和装の黒髪美女だと!? それも、のじゃ口調とか最高じゃねえか!)

 

 改造を受けても健在だったオタクの魂が騒ぐのか、内心興奮する清水。

 

(すごく……大きい……)

 

 何よりも清水が注目していたのは、彼女の胸元に実っているスイカサイズの双丘だった。彼は、自己主張の激しいそれに目を奪われていた。

 

 彼女はそういう視線に鈍感なのか、特に気にすることなく清水に話しかけてきた。

 

「妾はティオ・クラルスと申す者。お主を救出した者じゃ。お主、自分の名を覚えておるか?」

「し、清水幸利です」

「ふむ、記憶に問題はなさそうじゃな。ユキトシよ、お主に起こったことについてじゃが……」

「多少は分かってる。おそらく、魔獣の特性を持った人間になった。直接魔力操作もできる」

 

 ティオは清水自身の理解度を確認した後、清水の身に起こった変化について説明を始める。

 

「たしかに、お主は魔獣の特性を持った存在になっておる。調べたところ、お主の心臓に魔石のような器官があった」

「そんなものが俺の体に……」

 

 清水はそう言うと、自身の心臓がある胸の左側に手を当てる。

 

「肉体に関しては、例の器官から精製される魔力が体内を直接巡ることで、筋肉と骨格が強靭なものに変質しておる。それだけでなく、神経までも強化されておった。おそらく、常人を越えた反射神経が備わっているはずじゃろう」

 

(俺は仮○ライダー……って言うよりは、マ○ターチーフみたいになったのか)

 

「そうじゃ……お主のステータスプレートを渡していなかった」

 

 ティオは懐から一枚のプレートを取り出すと、清水に手渡す。どうやら、ステータスプレートも回収してくれたらしい。そして、その内容を見てみると……

 


清水幸利 17歳 男 レベル:???

天職:闇術師

筋力:5475

体力:6595

耐性:5335

敏捷:6725

魔力:7390

魔耐:7390

技能:闇属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇][+遅延発動]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・雷属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・高速魔力回復・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+身体強化]・言語理解


 

 清水のステータスは恐ろしいものになっていた。魔獣の特性を得てしまったことで、その数値は光輝どころかハジメよりも上になっており、ハジメの数倍はある。まさに怪物だ。

 

 直接の魔力操作も可能であり、高い適性のある属性に関しては魔法陣と詠唱無しで発動できるし、身体強化を使えば上級使徒ともタイマンでやり合えるだろう。また、肉体が大きく変質した影響なのか、レベルが表示されなくなってしまった。

 

「マジかよ……俺は本当に怪物になっちまったのか……これから先、俺はどうすれば……」

 

 自分が本当に怪物になってしまったのだと、ステータスプレートによって思い知らされた清水は、頭を抱える。その様子を見たティオは、とある提案を彼に持ちかけた。

 

「ユキトシよ、妾と共に来ないか?」

「クラルスさんと?」

「ティオでよいぞ。我らはお主の力を欲しておる。今なら、その肉体を完璧に扱えるようにするための訓練は勿論、特別な装備も付いてくるのじゃが……ちなみに、お主の訓練は妾が行うぞ」

 

(これは魅力的だ……だが、何のために俺の力を……?)

 

「俺の力を何に使うつもりですか?」

「そうじゃな……“世界の解放”のためとでも言っておくべきじゃろうな」

「“世界の解放”……面白いな。ティオさん、俺は貴方に付いていきたい」

「ふむ。交渉成立じゃ」

 

 この日、清水幸利はティオ・クラルスと出会った。彼もまた、ハジメと同様に世界の真実と向き合い、戦いに身を投じていくことになる。





複数の異世界にスペースパイレーツを進出させている設定ですが、これはアフターのための布石だったりする。

また、ゼータの元ネタは完全にゼータメトロイドですが、原作のメトロイドとは別物です。メトロイドの名前も計画名にしか入れてません

 清水君については、原作ハジメの劣化版だと思ってください。まあ、属性魔法が使えるので一概に劣化版とは言えないですが。ステータスプレートの方は暫定なので変更する可能性あり。
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