鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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本編(ハジメside)を書くのが楽し過ぎて、こちらが疎かになってました。


クラスメイトside5

 ヘルシャー帝国の皇帝陛下一行が王国を訪れ、光輝とトレイシー皇女による模擬戦が行われてから一か月後、勇者一行は迷宮攻略を中断して辺境へと遠征に出ていた。

 

 辺境への遠征が決まったのは、教会の内部において人間族の救世主である勇者の存在を辺境にも知らしめるべきだという意見が出たからである。

 

 ただし、理由はそれだけではない。最近、王国の辺境において本来ならいないはずの魔獣の群れの目撃例が相次いでおり、魔人族が人為的に持ち込んだ可能性が高いとされたこともあった。

 

 こうしたこともあって教会は勇者一行を辺境に派遣し、勇者の存在と神の威光を示すと共に事態を解決することを図った。

 

 勇者一行は王国騎士団を伴って王都を出発し、一週間後には辺境の村……その名もハテノ村に入る。村長をはじめとする村人達に歓迎され、村の付近に現れた魔獣の説明を受けると、翌日に村の守りを騎士団に任せて勇者一行は単独で討伐に向かった。

 

「刃の如き意志よ、光に宿りて敵を切り裂け “光刃”!」

 

 光の刃を纏ってビームサーベルのようになった聖剣を振り下ろし、オークのような魔獣であるブルタールを両断する。ブルタールは岩塊をそのまま打撃部位にしたようなメイスを装備しており、それを盾にしていたようだが、光輝の一撃はメイスごと敵を切り裂いていた。

 

 ブルタールは本来、大陸の北方にある山脈地帯に生息する魔獣なのだが、勇者一行がやって来たのは王国領内でも南の方面であり、本来ならいるはずがなかった。

 

 光輝の付近にはパーティーのメンバーもおり、各々が自分らしい方法でブルタールを倒していっている。

 

「はぁっ!」

 

 俊敏のステータスが優れている雫は、素早い動きでブルタールを翻弄し、ヒットアンドアウェイで死角から鋭い斬撃を何度も食らわせて倒していく。

 

「おりゃあ!」

 

 龍太郎は筋力のステータスが優れており、メイスの一撃を拳で弾くと、がら空きになったブルタールの胴体に正拳突きを叩き込む。ブルタールの体は脂肪で守られており、打撃系の技は効果が薄いのだが、それは純粋な現地人の場合だ。彼のステータスであれば、吸収しきれない程の衝撃を与えるのは容易く、ブルタールの胴体は爆発四散していた。

 

「やったぜ!」

 

 内心どころか実際にガッツポーズする龍太郎。なお、その背後から別個体がメイスを振り下ろそうとしているが、彼は気づかない。しかし、振り下ろされたメイスは光の壁によって受け止められ、直後に頭部を光の矢で撃ち抜かれて絶命した。

 

「うおぉ!?」

 

 龍太郎はメイスと障壁が衝突した際の音で背後から敵が迫っていたことに気付き、驚きの声を上げる。そして、自分を助けてくれた者達の方を見て感謝を伝えた。

 

「わりぃ! 助かった!」

「もぉ、龍君……大事な所で油断しちゃダメだよ」

 

 龍太郎のことを「龍君」と親しげに呼ぶのは、クラスのマスコット的存在である谷口鈴。この二人は意外にも仲がよく、周囲からは凸凹コンビと呼ばれていたりする。

 

「ふふっ……龍太郎君には鈴ちゃんが必要みたいだね」

 

 鈴の隣には香織が立っており、二人の様子を微笑ましく見ながらも、聖弓を構えている。先程、ブルタールの頭を撃ち抜いたのは香織だった。

 

 恵里が指揮する後衛組から光の矢だけではなく多種多様な魔法が飛来して敵を屠っていき、場合によっては結界師の鈴が発動した結界が前衛組を守る。前衛と後衛の連携で、ブルタールの群れは瞬く間に蹴散らされていった。

 

「よし、討伐完了だ! 後片付けをして村に戻るぞ!」

 

 光輝の指揮の下、ブルタールの死体を片付ける一行。死体を野外に放置すると異臭が出るだけでなく、その肉を食べる他の魔獣が集まってしまうため、死体を焼却する必要があった。死体は一ヶ所に集められた後、結界で圧縮した上で火属性上級魔法で灰へと変えられた。

 

(これで、村人達も救われる。この調子で強くなれば、いつかは人間族だって救えるはずだ……)

 

 光輝は遠征について非常に満足していた。何故なら、迷宮の中と違って直接的に現地の人間を魔獣の脅威から守れるのだから。村人に大歓迎されたこともあり、自分は人間族を救う“勇者”であるという認識が強くなっていた。

 

 やがて、勇者一行は村への帰路に就いた。その様子を遠くから眺めている存在がいることに気付かずに……

 

「天之河……マザーの情報通りに来やがったか。てめえの鼻っ柱、へし折ってやる……ヒヒヒッ」

 

 緑色のパワードスーツを着用した存在……檜山は、一行の後ろ姿を見た後、俊敏な動きで何処かへと姿を消した。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 勇者一行が村に戻ると、村人達とメルド団長が出迎えてくれた。

 

「お前ら、よく戻った! 誰も欠けていないな?」

「メルドさん。大丈夫です、誰一人欠けていませんし、怪我人もいません」

「そうか、それなら良かった。もう、俺達が側にいなくとも、お前らだけで行動できるようになったんだな……」

 

 メルド団長は光輝達の成長を喜んでいた。ある日、戦いを知らない平和な国からやって来た若者達を戦えるようにするという任務を与えられ、文化の異なる彼らとどのように接し、導いていくのかと思い悩みながら、数か月の時を共に過ごしてきた。彼らの立派な姿を見て、メルドは涙が出そうだった。

 

「勇者様、あなた方には深く感謝しております。おかげさまで、この村は以前のような活気を取り戻すことができました」

「いえ、俺は勇者ですから。困っている人達を助けるのは当たり前です」

 

 村長のお礼に対して、光輝は絵に描いた勇者のような台詞を言う。まあ、実際に天職が勇者なのだが。

 

「聖女様にも感謝しております。聖女様のおかげで、重い怪我を負った村人が以前のように暮らせるようになりました」

 

 村長は香織だけ名指しでお礼を言う。というのも、いきなり現れたブルタールに襲われた何人かの村人が重傷を負って再起不能となっており、寝たきりになってしまうのではないかと言われていた。

 

 しかし、勇者一行が訪れたことで状況は一変する。聖女であり、弛まぬ努力によって回復魔法の腕を磨いた香織が治療に当たり、再起不能と言われていた村人達が復活したのだ。ブルタールの方も一行によって倒されたため、村人達は勇者一行に感謝していた。

 

 村の中では香織が最も人気だった。それも、彼女を崇める新興宗教が生まれてしまいそうな程に。彼女によって立ち直った村人からの支持がある他、軽い怪我を治してあげた小さな子供達から人気であり、勇者を差し置いて目立っていた。

 

「わ、私は出来ることをしただけですから。皆さんが元気になったようで、私は嬉しいです」

「せ、聖女様……」

 

 微笑む香織。彼女の笑顔は多くの男を惚れさせる性能を備えており、年寄りの村長すらも顔を赤らめる。

 

 その後、一行は村人達と交流を深めるのだが、最も人だかりが出来ていたのは香織の周辺だった。特に、小さな子供達が集まっている。

 

「聖女のお姉ちゃん……僕、大きくなったらお姉ちゃんと結婚するんだ」

「何言ってんだ、結婚するのは俺だ!」

「いや、私でしょ? 聖女と村娘の組み合わせこそ至高だよ。夜はあんなこと、そんなことを……グフフ」

 

 村の子供達は、男子だけでなく女子までも自分こそが香織と結婚する人物であると自己主張していた。一名ほど変な奴がいたが、気にしてはいけない。

 

「そんなに私のことが好きなの? でもね、私には心に決めている人がいるから……今はここにいないけどね」

「え、どんな人なの?」

「そ、それは……」

 

 香織の脳内にハジメの姿が大量に投影され、脳のキャパシティと処理能力を圧迫した結果、香織の顔は真っ赤に染まる。オーバーフロー目前であったが、そこに助け船が現れる。

 

「なにやってんだゴルァ! 聖女様が困っているだろうが! クソガキ共、とっとと離れやがれ!」

「「「で、出たぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

 怒りながら現れたのは一人の若い女性。子供達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。彼女は香織に治療されて再起不能から立ち直った村人の一人であり、香織の熱心な信者である。

 

「すいません、聖女様。子供達が迷惑を……」

「別に大丈夫ですよ」

 

 本来なら彼女はおっとりとした女性なのだが、香織のことになると少々?過激になってしまう。後に彼女は香織を崇める宗教組織の幹部になったらしい。

 

「いやー、香織ちゃんは子供達に人気だねえ」

「エリリン、もしかして嫉妬?」

「もちろん、嫉妬してるよ。香織ちゃんに甘えている子供達の方にね」

「そっちか~い!」

 

 香織と子供達の様子を見て、コントのようなやり取りをする恵里と鈴であった。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 翌日、事件は起きた。朝、赤子を抱えているボロボロになった女性が村に駆け込んできたのだが、女性は赤子を騎士に託した直後に亡くなった。

 

 女性が死に際に言っていた内容から推測するに、彼女は近隣の村に住んでいたが、謎の集団によって村が壊滅し、赤子を抱えて命からがら逃げてきたのだと思われる。

 

「ごめんなさい、あなたを助けられなかった……」

「香織……あなたは何も悪くないわ」

 

 既に息絶えた女性の亡骸を見て、香織は悲しそうな表情を浮かべ、謝罪の言葉を口にする。そんな親友の様子に反応し、雫は彼女を慰める。

 

「彼女は赤子だけでも生き残らせようと、執念で生にしがみついてこの村に駆け込んできたんだろうな……」

 

 メルド団長は言う。彼女は自身の子供を守るという親としての責務を全うし、死んでいったのだ。

 

「許せない……平和に暮らしてきた人々から平穏な日常を奪うなんて……!」

 

 光輝は彼女の村を襲った集団に対して怒りを露にしていた。そして、彼は独断専行に走る。

 

「メルドさん、その村に行ってきます! まだ、生きている人だっているかもしれません!」

「駄目だ。敵の集団の概要すら分かっていない。偵察を含めた戦闘の準備をする必要もある。罠の可能性だってあるぞ」

「そんな悠長なことをしていては、救える人も救えません!」

 

 光輝は完全に怒りに飲み込まれ、現実が見えていない。もしも罠だった場合、運が悪ければ人間族は象徴たる勇者を失うことになるというのに。以前よりも成長したとはいえ、結局は理想論に至ってしまうのだ。

 

「すいません、メルドさん! 俺は行きます!」

「待て! コウキ!」

「光輝! 待ちなさい!」

 

 光輝は騎士団の馬を強制的に借り、団長や雫の制止を無視して全速力で村から飛び出ていった。

 

 

 

 

 

 数分後、光輝は村の付近まで到達していた。その目に映る風景は、全体的に炎上して黒煙が立ち上る村。そして、村の方からフラフラと走ってくる人影を見た。

 

「た、助けてくれ!」

「大丈夫ですか? 俺は勇者です、安心してください。俺が守ります」

 

 走ってきたのは農夫と思われる男性だった。光輝は彼を安心させるため、声を掛けたのだが……

 

ドパンッ!

 

 突然、この世界で聞こえるはずのない乾いた破裂音……銃声が響いたかと思うと、その男性の頭が破裂してしまった。

 

「うっ……!」

 

 目の前でいきなり起こったグロテスクな出来事に、光輝は思わず口を手で塞ぐ。魔獣の頭部が弾け飛ぶ光景なら見慣れていたが、人間がこのように死ぬのを見たのは初めてだった。

 

「おいおい、何が“安心してください、俺が守ります”だよ。全く守れてないじゃねえか」

「だ、誰だ?!」

 

 声のした方向を見ると大岩があり、その上に緑色の人影があった。それは、ファンタジーに似つかわしくない容貌のSF的なパワードスーツだった。

 

「本当にお前は滑稽な奴だ。守ると言っておきながら、結局は何も守れてないからなぁ……フハハハハハッ!」

「う、うるさい! それは、お前が卑怯な手段を使ったからだ!」

「卑怯だ? 馬鹿だな、天之河。戦いに卑怯もラッキョウもねえんだよ」

「ば……馬鹿? てっ、どうして名前を……」

 

 その時、目の前の存在は大型拳銃のような武器を瞬時に構え、光輝に向けて発砲する。

 

ドパンッ!

 

「ぐあっ?!」

 

 実体弾の一撃を受け、光輝の胸部から火花が散る。ダメージ自体は装備している聖鎧が防いでくれたが、着弾の衝撃までは防げずに落馬してしまった。

 

「その鎧に助けられたな、天之河」

 

 勇者専用の装備である聖鎧にはエネルギーシールドのような薄い結界が常に展開されており、装甲の硬さも合わせて高い防御力を誇っている。

 

「どうして、俺の名前を知っているんだ?」

「まさか、俺のことを忘れたのか? この声に聞き覚えがあるはずだぜ」

「……も、もしかして……お前は!!」

 

 光輝がその正体に気付いた時、目の前の存在に向かって光輝の後方から光の矢が飛来する。その存在は右腕からビームブレードを展開すると、飛来した光の矢を斬り捨てた。

 

「光輝! 大丈夫!?」

 

 光輝の傍に雫が駆け寄ってくる。やって来たのは彼女だけではなく、香織や龍太郎、鈴や恵里といった勇者一行の面々が揃っていた。彼らは、光輝の後を馬で追いかけてきたのだ。一応、騎士団も遅れて到着することになっている。

 

「なあ、光輝。あいつは誰なんだ?」

「龍太郎……あいつは……信じられないかもしれないが……」

「あぁ、俺だよ。檜山大介本人だ」

 

 光輝が言う前に目の前の存在が先に答えた。同時にバイザーを開いて素顔を晒しており、行方不明だった檜山であることは全員が理解できた。

 

「だ、大介……その姿は何なんだよ?」

 

 檜山とよく一緒に行動していた子悪党組の中でも、特に近藤が驚いている様子だった。

 

「パワードスーツだよ。これのおかげで、俺は最強の力を手に入れた! 俺に敵はいねえ!」

「大介……どうしちまったんだよ……」

 

 狂気の表情を浮かべ、自分の力を誇示する檜山。以前と変化した彼の様子に近藤達は困惑していた。

 

「檜山、村を襲ったのは君なのか? どうして襲ったんだ? 人を殺すなんて……」

「あぁ、村を襲ったのは俺だぜ。理由は……上からの命令に従っただけだ」

「そうなのか?! 檜山、君は逆らえずに仕方なく人を殺したんだろう? 今、こちらに戻ってきてくれるなら、俺は君を赦す。その力があれば、人間族も救える」

 

 光輝はあんなに怒っていたにも関わらず、犯人がクラスメイトであり、命令に従っただけだと知った瞬間、手の平を返すように檜山を赦そうとした。

 

「何を言ってるんだよ、光輝。檜山は村の人々を虐殺したんだろ? そんな奴と俺は一緒にいたくないぜ」

「そうよ、光輝。そもそも、大迷宮であんなことがあったのは檜山君の勝手な行動のせいよ。その辺りも含めて、お咎めなしというわけには……」

 

 苦言を呈する龍太郎と雫。檜山が人を殺した事実に変わりはない。そんな彼がそのまま戻ってくるなんて、許しがたいものであった。香織に関しては特に発言することはないものの、二人と同じ気持ちなので光輝を睨んでいた。

 

「天之河。残念だが、俺はてめえらの敵だ。戻るつもりはないぜ」

「ど、どうして? 敵対する理由なんて……」

「あぁ……いいことを教えてやろうか? 魔法を撃って南雲を奈落に落としたのは俺だぜ。要するに、俺はクラスメイトを殺したんだよ」

「なっ!? あれは、誰かの誤射だったんじゃ?」

 

 ハジメが奈落に落ちた原因が魔法の誤射ではなく、檜山が意図的に魔法を撃ったためであるという事実に、勇者一行に衝撃が走る。

 

「………い」

 

 そんな中、香織が小声でボソッと何かを呟いた。

 

「カオリン……っ!?」

 

 鈴が香織に話しかけるが、香織から発された異様なオーラに曝され、次の言葉がでない。

 

「許さない……!」

 

 香織は檜山に怒っていた。異様なオーラの正体は濃密な殺気であり、彼女と付き合いのある面々は、そんな状態の香織を見たことがなかった。

 

 今まで、香織はハジメに魔法を当てた犯人が分からないからこそ、感情を抑えることができていた。だが、その犯人が自分の仕業であると目の前でカミングアウトした今、香織を抑えるものは消えた。大迷宮で起きた事態の元凶であり、先ほど救えなかった女性が死亡した原因でもあったので、怒りが大爆発していた。

 

 そして、香織は聖弓を構えると何度も光の矢を檜山に向けて発射していく。なお、怒りで狙いがブレている上、誘導性を付与することも忘れているので、簡単に回避されているが。

 

 皆、香織の行動を邪魔したら自分に矛先が向くのではないかと思い、たった一名を除いて香織を制止しようとしなかった。

 

「ま、待つんだ香織! 檜山を攻撃したって、何も戻ってはこない!」

「光輝君は本当にこんな奴を赦すの? 私は絶対に赦せない。雫ちゃんも言っていたけど、お咎めなしで終わらせるなんておかしいよ」

「天之河、白崎ですらそう言っているんだぜ。それでも、お前は俺を赦せるのか? あぁ?」

 

 攻撃を受けている状態だというのに、檜山は余裕そうだ。

 

「お、俺は……」

「これ以上話すことはないぜ。今回はお前を見逃してやるが、次に会う時にはお前をぶち殺して、八重樫や白崎を奴隷にしてやるよ。フハハハハッ!」

 

 そして、檜山は拳銃型の武装であるバトルハンマーを光輝達の周囲に何発も撃ち込み、視界を遮る程の土煙を巻き上げる。視界が回復した時、檜山の姿は消えていた。

 

 その後、到着した騎士団が目撃したのは、その場に立ち尽くす光輝の姿だった。




完全にオリジナルのシーンは上手く書けない……
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