鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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ヒロインとの出会いを書くのは大変



2話 出会い

 十年間も行方不明だった者、それも幼い時に消えた者が帰ってきた。その事実に興味を抱かない者はいないだろう。また、大気圏外から地上に落下する物体が観測されており、墜落した現場に政府の人間が出入りしている。

 

 ハジメとその周囲に関しても、警察等の国家機関や記者、国外の勢力までもが探りを入れてきている他、各種の精密検査を受けるように迫られている。

 

 ハジメとしては精密検査を受けるわけにはいかなかった。鳥人族の遺伝子の存在を洩らさないためだ。遺伝子を利用して強化兵士でも作られてしまえば、大問題となる。

 

 それを含めた面倒事を回避して家族を守るためにも、ハジメは全てを隠蔽することをやめ、日本政府と接近することにした。

 

 紆余曲折あって、ハジメは日本政府との間に契約を結んだ。それは、ハジメによる技術提供との引き換えによるものであり、ハジメとその周囲に手を出さないこと、その他の勢力から全力で保護するといった内容を筆頭とし、場合によってはハジメによる実力行使が待っている。国内でハジメにドンパチやってほしくない政府は、要求を簡単に飲んでくれた。

 

 ちなみに、ハジメが提供したのはパワードスーツ関連の技術だ。渡したのは銀河基準でいえば相当な旧式に当たる技術ではあったが、完成したパワードスーツは地球基準でいえば十分に強力なものだった。ちなみに、コストの面から大量生産は不可能であり、少数生産に留まった。

 

 それはさておき、ハジメは身体に関する検査に関しては政府との契約によって回避していたが、学力に関しては検査を受けていた。その結果、英語を除けば高校に通っても問題無いことが判明している。ゼーベスで高度な教育を受けたお陰である。

 

 ハジメは当初、学生になることは断っていた。スターシップの修理と鍛錬に勤しむためだ。だが、特定の組織に属していた方が保護しやすいという意見が公安から出たため、ハジメはとある高校に通うことになった。

 

 そんなある日、ハジメの所に一本の電話がかかってくる。

 

「お久しぶりです、南雲さん」

「服部さんか。最近はどうですか?」

 

 ハジメに電話をかけてきたのは、公安の服部幸太郎という男だ。彼は、政府とハジメとの窓口を担っていると同時に、非公式の特殊部隊を率いる隊長でもある。パワードスーツが配備されたのは、その特殊部隊だ。

 

「最近ですか……そうですね、ちょっかいを仕掛けてくる勢力も相当減りましたし、どちらかと言うと暇な方です」

 

 パワードスーツの力により、武装した工作員が次々と制圧されている。重機関銃の銃撃に耐え、RPG(対戦車擲弾)の直撃にもある程度耐える性能があり、各国の諜報機関や工作員からしたら恐怖の存在だった。二度と手を出さないと誓う程に。

 

「そうですか。今まで、服部さんには随分と無理をさせてしまったようだ…」

「連中はこっちの都合に構わず来ますからね。定時で帰れると思った日に限って来るんですよ。まあ、パワードスーツのお陰で楽させてもらってますが」

 

 パワードスーツの導入は、色々な勢力と事を構えている方々の労力を減らすことに貢献しているらしい。

 

「それで、要件は?」

「南雲さんが通う高校側の準備が整いました。こちらの人間も、用務員として潜り込ませましたので。一週間後から通ってもらいます」

 

 ハジメは学校に通うことになった。一年後、あんな事件が起こることなど知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメとしては、誰かと深い関わりを持つつもりは無かった。ハジメはスターシップの修理が終わったら、すぐにでもゼーベスに戻る予定であり、誰かと深く関わる意味は無いからだ。また、無駄なことに時間を使いたくないという考えもあった。

 

 だが、ハジメはとある少女との出会いをきっかけに、人と関わる道を選んでいくことになる。ハジメがその少女と出会ったのは、高校に通う数日前のことだ。

 

 ハジメは高校周辺の下見ということで町を歩いていた。高校はハジメの住む町にあり、治安の良い町の中でも特に治安の良い地域に存在していた。

 

「平和……だな」

 

 町の様子を見て、ハジメはふと呟く。地球の中でも特に治安の良い部類に入る国であり、平和であることは当たり前だろう。だが、危険な勢力や存在が跋扈している銀河社会を見てきたハジメからすれば、平和は当たり前では無かった。平和を勝ち取るためには、武器を手に取る必要があったのだから。

 

「むっ…!?」

 

 そんな中、ハジメの聴覚はとある異変を察知した。聞こえてきたのは、激しいエンジン音。歩いている道は車通りが少なく、高校生がよく通る通学路になっている。今は登校の時間であり、ハジメの目の前を大勢の高校生が歩いていた。

 

「これはまずい…」

 

 エンジン音が聞こえてきた方向を見ると、そこには道路を爆走する一台の乗用車の姿があった。大勢の学生が歩いている時間帯に車を飛ばすなど、正気の沙汰ではない。否、そもそも意識が無かった。

 

 常人を軽く越える視力で運転席を見ると、運転手が気絶していることが分かった。持病の悪化か、ただの居眠りかは分からないが、このまま人混みに突っ込んだ場合、大惨事になるだろう。

 

 幸い、高校生達も異常事態に気付いたのか、車の方に意識を向けていた。そして、事態は動いた。なんと、急にハンドルが切られたのだ。そして、車が向かう先には一人の女子高生がいた。

 

「あ…」

 

 女子高生に逃げる時間は無かった。急な事態に対応できておらず、迫り来る死への恐怖で体が硬直している。その時、ハジメの体は勝手に動き出していた。

 

 

 

 女子高生は車に轢かれる寸前、謎の浮遊感を感じていた。車が何かに激突する音が聞こえた後、いつまで経っても衝撃が来ないことに疑問を覚えた彼女は、ゆっくりと目を開く。

 

「大丈夫か?」

 

 そこには見知らぬの青年の顔があり、彼は彼女を抱えていた。所謂、お姫様抱っこというやつである。その青年こそハジメであり、彼女が車に轢かれる寸前に高速で接近し、彼女を抱えて離脱したのだ。

 

「はっ、はい…」

 

 突然の出来事に、彼女は状況の整理が出来ていなかったようだが、ハジメの問いに答える。一応、ハジメに助けられたことだけは理解できたようであった。

 

「おっと、運転手も助けなくては…」

 

 ハジメは女子高生を丁寧に降ろすと、電柱に突っ込んでいた車に近付く。バンパーとボンネットがひしゃげていたが、運転席の部分は無事だったため、救出に成功した。運転手に意識は無かったが、命に別状はなかった。

 

「あの…助けていただきありがとうございます」

 

 ハジメが警察に通報した後、先ほどの女子高生がお礼を言ってきた。この時、ハジメは彼女の顔を初めてはっきりと見たのだが、彼女から目を離せなくなってしまった。

 

 彼女は美少女だった。腰まである長く艶やかな黒髪、優しげな少し垂れ気味の瞳、スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、桜色の薄い唇。それらが完璧に配置されている。

 

(綺麗だ…)

 

 ハジメは彼女に見惚れてしまった。今まで、ハジメは恋などと無縁な生活をしており、同年代の異性と関わることも無かった。そんなハジメにとって、美少女という存在は少々刺激が強すぎたようだ。

 

「えっと…私の顔に何か付いてますか?」

「いや、何も。それより、怪我は無いようで良かった」

 

 彼女の声で現実に引き戻されたハジメは、見惚れていたことが悟られないように適当に返答する。

 

「私、白崎香織っていいます。そ、その…何かお礼をしたいのですが、お名前は?」

「俺は南雲ハジメ。別に礼はいい。助けたくて助けただけだ」

 

 ハジメはそれだけ彼女に告げると、その場から立ち去った。美少女…白崎香織は彼の後を追い、彼が通っていった曲がり角を覗き込むが、そこには誰もいなかった。

 

(南雲ハジメ君か……また、会えるかな…? その時は、ちゃんとお礼しなきゃ…)

 

 白崎香織は知らなかった。数日後、ハジメが自分の身近な場所に現れるということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南雲ハジメは高校に来ていた。パワードスーツではなく高校の制服を着ており、手には武器ではなくカバンを持っている。そして、担任の先生と対面した後、クラスに向かった。

 

「今日からクラスの仲間になる南雲ハジメ君です。皆さん、仲良くしてくださいね」

 

 担任に導かれて教室に入ると、ハジメは同級生から視線の集中砲火を浴びる。いきなりの転入生に驚いているようだ。また、彼の身長が180センチメートルもあって目立つということもあり、驚きに拍車をかけていた。

 

そして、その中で最も驚いている人物がいた。

 

(あの時の!? フフッ…これは運命かも)

 

 それは、数日前にハジメが助けた白崎香織だった。ハジメが彼女と同じ高校に入り、偶然にも同じクラスになった。香織はこの事実に驚く一方で、運命じみた何かを感じていた。

 

 香織がハジメに気付いたのと同じく、ハジメも香織の存在に気が付いていた。正確には、獲物を狙うスナイパーのように自身を見つめる彼女の視線に気付いただけだが。

 

(まさか、同じクラスとは…)

 

 そして、簡単に自己紹介したハジメは席を指定される。180センチメートルという高身長ということもあり、席は最後列だった。

 

 ハジメは、授業の合間にクラスメイト達から質問攻めを受け、その対応に追われていた。なお、その間に香織が話しかけてくることは無かった。やがて、お昼の時間になるのだが、そこで香織が動いた。

 

「久しぶり、南雲君。この前はありがとう。お昼はどうするの?」

 

 南雲ハジメと白崎香織の接触に、周囲は関心を向ける。実を言うと、香織は学校内において二大女神と呼ばれる女子生徒の片割れであり、クラスのマドンナなのだ。

 

 周囲はヒソヒソと会話しており、クラスのマドンナに話しかけられたハジメへの嫉妬や、香織とハジメの間に面識があったことへの驚きが主な内容だった。

 

「あぁ、白崎さん。元気そうで何よりだ。お昼なら、こいつらで済ませるつもりだが…」

 

 ハジメはそう言うと、カ○リーメイトを筆頭とする数本のプロテインバーをカバンから取り出して卓上に並べる。

 

「これだけなの?」

「これだけだ。一応、栄養は取れる」

 

 ハジメとしては、お昼はこれだけでも問題なかった。だが、香織はそれを許さなかった。

 

「南雲君、ちゃんと食べないとダメだよ。あっ、そうだ! 明日からお弁当作ってきてあげるよ」

 

 香織の発言に、クラスの全員が注目する。特に、クラスの男子の大半はハジメに対して殺気を向けるのだが、パイレーツと対峙してきたハジメからしたら可愛いものだった。

 

「お弁当を? だが、白崎さんに迷惑をかけるわけには…」

「大丈夫だよ。それに、南雲君には何らかの形でお礼をしたいと思ってたから…」

 

 その瞬間、香織の顔が真っ赤になる。ハジメのお弁当を毎日作る宣言をクラスメイトの面前でしてしまったことが、今更になって恥ずかしくなったのだろう。

 

(みんなの前で言っちゃった///)

 

なお、ハジメの方は…

 

「白崎さん、熱でもあるのか?」

 

 明らかに恥ずかしさから顔が赤くなっているだけなのだが、ハジメはそういうところに関しては鈍感だった。なお、クラスメイト達は一斉に口を揃えて心の中でツッコミしていた。

 

 この日は波乱に満ちた一日だったとハジメは記憶している。だが、波乱は終わらない。この学校内には、白崎香織以外にも複数の火種が存在するのだから。

 

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