鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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お待たせしました、29話です。
前作にはなかったシーンやセリフ、オリジナル装備を追加してます。


29話 偽りの調和

「話は聞いている。お前さんは、鳥人族の後継者を名乗ったそうだが」

「あぁ、そうだ」

「……鳥人族の後継者として認めるための条件が二つある。一つは、鳥人族の装備を身に付けていることだ。一応、その点に関しては合格しているようだが」

 

 先程、アルフレリックがバリアスーツを見て口走った内容こそ、鳥人族の装備の条件。肩の球状の防楯、右腕のアームキャノン、橙色の装甲の三点である。

 

「もう一つは、解放者の作った迷宮のいずれかを攻略しているということだ。何かしら、攻略した証拠はあるだろうか?」

「証拠か……」

 

 証拠を求められ、首を捻るハジメ。だが、そこでユエが助け船を出す。

 

「お父様、オスカーの持っていた指輪は?」

「あぁ、そうだな」

 

 ハジメは“宝物庫”から指輪を取り出してアルフレリックに見せる。彼は指輪に刻まれた紋章を見ると、目を見開いた。

 

「なるほど、お前さんは迷宮の一つを攻略したようだ。お前さんを鳥人族の後継者と認め、フェアベルゲンに招待しよう。もちろん、ハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの発言に周囲の亜人達が驚愕の表情を浮かべ、激しい抗議の声も上がる。それもそのはずだ。今まで、フェアベルゲンに人間族が招待されたことなど無いのだから。それに、あの鳥人族の後継者が憎き人間族であったということも、抗議の一因だろう。

 

「彼は鳥人族の後継者として、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

 アルフレリックは長老の一人らしく威厳を発揮し、厳しい表情で周囲の亜人達を宥める。

 

「感謝する、長老殿」

 

 そして、ハジメ達はフェアベルゲンに案内されることになったのだが、ここでアリアが待ったをかけた。

 

「お待ちください、父上」

「アリア、どうかしたのか?」

「単刀直入に言おう。南雲ハジメ、私と戦え」

 

(そう来たか……)

 

「何故、俺と?」

「目の前に強そうな者がいたら戦う。それが当たり前ではないのか? 鳥人族の後継者は強者であると言われている。お前が本当に後継者であるのなら、その力を示してみろ」

 

 アリア・ハイピストはいわゆる戦闘狂だった。彼女は森人族で最強の戦士であり、フェアベルゲン全体でも指折りの実力者である。ヘルシャー帝国の第一皇女と気が合うかもしれない。

 

「分かった。その要求に応えよう。だが、この装備で生身の相手と戦うわけにはいかない。こちらも同じ条件でやらせてもらう」

「それには及ばない。こちらがお前に合わせる。父上、あれの使用許可を……」

 

(あれ……とはなんだ? 俺に合わせるということは、パワードスーツの類か?)

 

 亜人族の国に鳥人族がそのようなアイテムを残したという情報は、オスカーが残してくれたデータの中にも存在しなかった。

 

(どうやら、全ての情報を残してくれたわけではないらしいな。まあ、未知が既知に変わる過程を楽しめると考えればいいか……)

 

「うむむ……まともに稼働するチョウゾギアは我々が所有する一機しか残っておらんのだ。できれば、無駄な使用は控えたいところだが……」

「これは無駄ではありません。後継者の実力を確認するという大事なことのために使うのです。壊れたとしても、彼ならば修理する術を持っているでしょう」

「止めても無駄なようだな……分かった、チョウゾギアの使用を許可する」

 

 問答が終わり、アリアは再びハジメの方に向くと、鳥人族の頭部を模した装飾のペンダントを取り出して首にかける。彼女が目を閉じて精神統一すると体全体が光に包まれていき、次の瞬間にはその姿が変化した。

 

「これは、まるで……」

「南雲ハジメ。これがフェアベルゲンに鳥人族が残した数少ない遺産……チョウゾギアだ」

 

 アリアはパワードスーツのようなもので全身を覆っていた。その形状は戦士型鳥人族が着用していたアーマーに酷似しており、丸い肩アーマーに至ってはバリアスーツとほぼ同じだ。ヘルメットに関してはフルフェイスではないが、鳥の頭部を模したものとなっている。

 

 アリアによると、この装備はチョウゾギアといい、鳥人族が亜人族のために残したパワードスーツなのだという。当初は二十機ほどあったらしいが、現在では経年劣化によって使い物にならないギアが殆どであり、まともに使用可能なのは森人族が所有するギアだけであった。

 

「飛び道具はなしだ。射撃では本当の強さが分からないからな」

「構わない。飛び道具だと一瞬で終わってしまいそうだ」

 

 ハジメが自然体でいる一方で、アリアは槍を構える。それも普通の槍ではなく、チョウゾギアと同様に鳥人族が残したチョウゾスピアと呼ばれるものだ。

 

「これより、アリア・ハイピストと南雲ハジメによる模擬戦を行う。両者、準備はよろしいか?」

「「問題ない」」

「では、はじめ!」

 

 こうして、樹海で二人の戦士が激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 樹海の中、二つの影が素早く動き回る。二体が接触する度に金属同士がぶつかる音が響き渡り、巻き込まれた木々が粉砕されていた。

 

 二体の正体はアリアとハジメである。二人の戦闘能力とパワードスーツからもたらされる強力なパワーが組み合わさり、常人では付いていくことのできない高機動戦闘に発展している。

 

「あんな所に私が混じったら一瞬で置いていかれそうです。というか、目で追うのがやっとなんですけど……」

「シア、それでも十分凄いぞ。父さん達は目で追うのも難しいんだが……」

「ん……お父様の動きなら何度も見てるから、その気になれば混じれると思う……」

「流石はユエさんですね……」

 

 二人の戦いの速さに反応する一行。なお、他の亜人達の大半はその速さに目を回しており、アルフレリックに関しては、二人が激突する度に破壊されていく樹海の様子に頭を抱えていた。

 

「あぁ……樹海が壊れていく。使用許可を出すんじゃなかった……森人族が木々を壊してどうする……」

 

 住んでいる森を人間に焼かれるエルフはいるが、自ら森を壊すエルフが何処にいるだろうか。いや、ここにいた。

 

 スポットライトは現在進行形で激突している二人に向けられる。二人は互角の近接戦闘を繰り広げていたが、しばらくして足を止めるに至る。

 

「南雲ハジメ、お前は強い。迷宮を攻略し、鳥人族の後継者として認められただけはあるな」

「あなた程の優秀な戦士にそのような評価を頂けて光栄だ」

「次の激突で勝負をつけよう。南雲ハジメ」

「あぁ、そうだな……」

 

 不意に樹海に風が吹く。木々が揺れ、一枚の葉っぱがフワフワと地面に落ちていく。その葉っぱが地面に触れたのが激突の合図となった。

 

「はぁっ!」

 

 アリアは地面を踏みしめると、構えていたチョウゾスピアを素早く前方に突き出す。まるで閃光のような一撃であり、それに対応できる存在は殆どいないだろう。

 

カキンッ!

 

 だが、人並み外れた動体視力を備えたハジメには関係ない。迫る穂先を見切り、アームキャノンで横から殴り付けることで槍の軌道を逸らした。

 

「見事だ」

 

 ハジメの技量を褒めつつも次の動作に移る。アリアは空中に飛び上がると、グルンと一回転しながら槍をハジメに叩き付けようとする。が、ハジメはアームキャノンで裏拳を放ち、遠心力と重力によって威力が上がった槍の一撃を真っ向から迎え撃った。

 

ガギィィンッ!

 

 結果、勝利したのはアームキャノンだった。槍は弾き飛ばされ、アリアの手から離れて回転しながら宙を舞う。

 

「くっ……」

 

 次の瞬間、ハジメは弓を引き絞るようにしてアームキャノンのある右腕を後ろへ引き、そのまま突き出す。キャノンの先端はアリアの胴体を捉え、彼女を強烈にふっとばした。

 

 ふっとばされたアリアは、そのまま数本の木々をバキバキと薙ぎ倒した末に運動エネルギーを失って地面に落下した。

 

「南雲ハジメ……私にここまで激しい戦いをさせたのはお前が初めてだ。ありがとう」

 

 アリアは倒木を背もたれにして地面に座り込んでいた。ハジメはそんな彼女に手を差し出した。

 

「こちらこそ。ここまで胸が躍る戦いをしたのは初めてだ。良い経験になった」

 

 差し出された手をアリアは掴み、立ち上がる。そして、二人は握手を交わしたのだが……

 

「お前を我が娘の夫にしてやろう。強さと優しさを備えているお前ならば、我が娘の夫に相応しいと私は思う」

「え?」

 

 唐突の発言にハジメは固まる。どうやら、アリアがハジメに戦いを挑んだ理由には、彼女の娘に相応しい男かどうか見極めるという目的も含まれていたらしい。

 

「こら、アリア。彼が困っているだろう。これ以上時間を食うわけにはいかない。そろそろ、フェアベルゲンに案内しなくては」

 

 アルフレリックに注意されるアリア。ハジメと最初に会った時とは、二人の立場が逆になっていた。

 

「そうでした。申し訳ない、南雲ハジメ。今の発言は忘れてくれ……」

 

 模擬戦というイレギュラーがありつつも、今度こそハジメ達はフェアベルゲンに案内されることになった。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 濃霧の中を隊長の虎の亜人……ギルの先導で進む一行。先程まで睨み合っていたハウリアと虎人族の戦士達が共同で周囲を固め、フェアベルゲンへと向かう。

 

 移動している間、アルフレリックは長老衆に伝えられる掟の内容について語った。

 

「かつて、【ハルツィナ樹海】の迷宮を創設したリューティリス・ハルツィナが複数の鳥人族を伴い、自らが“解放者”なる存在であることと、鳥人族による予言を伝えた」

 

 鳥人族は解放者の一人と共に予言を伝えていた。なお、亜人族は解放者がどのような存在であるか知らない。

 

 その予言では、はるか未来の樹海に“鳥人族の後継者”が現れるとされており、どのような者であっても敵対してはならず、鳥人族の遺跡と大樹ウーア・アルトへと案内することになっていた。

 

 そして、“鳥人族の後継者”の条件として鳥人族の装備と迷宮攻略の有無があった訳だが、後継者と敵対してはならない理由として十分と言える。何故なら、大迷宮を攻略した者の実力は途轍もないものであり、そこに鳥人族の強力な装備が加わるからだ。

 

「大樹というのは?」

「樹海の最深部にある巨大な樹木のことだ。我々はその周囲を聖地としているのだが、本当の迷宮の入り口がそこに隠されていると伝わっている」

 

 こうして暫く歩いていると、まるで一本の道を形成するかのように霧が晴れている場所に出た。霧との境目には青く光る拳大の結晶がいくつも埋め込まれており、それが霧を防いでいるようだ。ハジメはその結晶に関心を持ち、アルフレリックに尋ねた。

 

「あの結晶は?」

「あれは鳥人族が残してくれたフェアドレン水晶というものだ。あれの周囲には、何故か霧や魔獣が寄り付かない。フェアベルゲンも近辺の集落も、この水晶で囲まれている。ただし、魔獣に関しては“比較的”という程度だが」

「なるほど」

「ん……便利」

 

 集落に霧が存在しない事実は、ハジメ達にとって朗報だった。霧が余程鬱陶しかったのか、それを聞いたユエはどことなく嬉しそうに見えた。

 

 霧のトンネルを通り抜けると、目前に巨大な門が現れた。太い木同士が絡み合ってアーチを形成し、十メートル程はある木製の両開きの門がどっしりと構えている。防壁もまた木で作られており、高さは三十メートル程であった。

 

 この門こそが、フェアベルゲンへの入り口である。ギルが門番に合図すると、重そうな音と共に扉が少しずつ開いていく。

 

 門番達は、怪しい集団が来たことに動揺しているようだった。アルフレリックやアリアがいなければ、いきなり戦闘となってもおかしくなかっただろう。

 

 ハジメ達は彼らを威圧しないために、パワードスーツを解除した状態で入城する。そこには、別世界が広がっていた。

 

 直径が十メートル程もある大木が乱立し、その太い幹の内部には居住スペースが作られている。大木同士は吊り橋や渡り廊下で接続されており、その間を人々が盛んに行き来する。また、滑車を利用したエレベーターのような機構や空中水路等も整備されていた。

 

 その光景に、ハジメは感嘆した。

 

「素晴らしい……まるで、鳥人族の調和の思想が形になったようだ…」

 

 鳥人族は高度な機械文明を有しているが、自然環境との調和・共存を重視している種族であり、惑星ゼーベスでは自然環境をそのまま残したエリアが多く存在する。

 

 また、モジュール機能が搭載されているハジメのパワードスーツは様々な技術を装備として取り込むことができ、彼らの調和の思想を体現していると言ってもいいだろう。

 

「ふふ、どうやら我らの故郷を気に入ってくれたようだ。このフェアベルゲンの街は、鳥人族に倣って自然と調和するように作られている」

 

 美しい街並みにハジメが感嘆する一方、隣のユエは口をポカンと開けて見惚れている。そんな二人の様子にアルフレリックは微笑み、亜人達もどこか誇らしげだった。

 

 そのようなこともあり、亜人族がハジメとユエに対して抱く印象は少なくとも良好であった。そして、二人はハウリア族を連れて彼の用意した場所に向かった。

 

 

 

 

 

「なるほど……試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

 ハジメとユエは、オルクスの隠れ家で知った世界の真実や王国の状況をアルフレリックに話した。解放者のことや神代魔法のこと、ハジメが神の使徒の一員として異世界から召喚されたこと、神代魔法を全て集めると元の世界に帰るための手段を入手できる可能性があること等が主な内容だ。

 

「解放者がそのような存在だったとは……まあ、真実を知ったところで世界が我々に厳しい事実に変わりは無いが…」

 

 神が狂っているかどうかに関係無く、魔人族と人間族に狙われている現状は変わらない。この場所には教会の権威など無く、信仰心もない。一応、亜人族には自然崇拝の文化があると同時に、鳥人族に対する崇拝があるようだ。

 

「とにかく、今後の話だが……」

 

 ハジメは長老衆に伝わる掟によってフェアベルゲンに招き入れられたが、ハジメは人間族である。本来ならば許されることではない。そして、全ての亜人族が事情を知っているわけではないため、事情を周知していくためにも今後の話をする必要があった。

 

 その時、階下から怒号が聞こえてきた。階下にはシア達が待機している。階下で何か良からぬことが起こっていることは確実であり、ハジメとアルフレリックは顔を見合わせて同時に立ち上がると、状況を確認するために降りていった。

 

 階下では、ハウリア族が数人の亜人族と睨み会っていた。大柄な熊人族、虎人族、狐人族、背中に翼を有した翼人族、ドワーフのような土人族がそれぞれ一人ずついる。

 

「忌み子は抹殺してやる!」

 

 突然、身長二メートル半のある大柄な熊人族の男がシアに殴りかかる。熊人族は腕力と耐久力に優れた種族であり、一撃で野太い木の幹をへし折るだけのパワーを持つ。そんな存在に殴られれば、ただでは済まないだろう。

 

 階下に降りてきた三人が最初に見たのは、そのような瞬間であった。周囲の亜人達はシアが一撃で叩き潰される光景を幻視しただろうが、シアは普通の兎人族ではない。

 

 魔力による身体強化を発動すれば、彼女は熊人族に匹敵する力など簡単に出せる。それに、彼女はハジメから直々に訓練を施されているため、力だけでなく技の面でも強い。

 

 次の瞬間、亜人族達は衝撃の光景を見た。

 

「なにぃ!?」

 

 それは、可愛らしい兎人族の少女が熊人族の拳を片手で受け止めている光景。叩き潰すつもりで自慢の豪腕を振るった張本人は、驚きの声を上げていた。

 

「意外と軽いですね。これで本気ですか?」

 

 シアは熊人族を背負い投げして床に叩きつけると、そのまま取り押さえて動きを封じる。熊人族は逃れようと暴れるが、シアから逃れる術はない。兎人族に制圧されるなど、彼にとっては屈辱的だろう。

 

「アルフレリック! 貴様、なぜ人間族を招き入れた!? この忌み子とその一族もだ! 場合によっては、長老会議で貴様に処分が下ることになるぞ!」

 

 取り押さえられ、生殺与奪の権を握られた状況の熊人族の男。彼は階下に降りてきた三人に気付くと、鋭い視線でアルフレリックを睨み付け、剣呑さを声に乗せて発言する。その他の亜人達も同様に睨み付けていた。

 

 だが、アルフレリックは平然としている。

 

「長老衆に伝わる掟に従ったまでだ。お前達も長老ならば、事情は理解できるはずだ」

「何が口伝だ! そんなもの眉唾物ではないか! フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないぞ!」

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」 

「“鳥人族の後継者”が人間族であるなど、俺は認めないぞ! 我々にとって人間族は不倶戴天の敵だ!」

「だが、彼は条件を全て兼ね備えている。人間族を憎む気持ちは分かるが、彼こそが“鳥人族の後継者”なのだ」

 

 フェアベルゲンでは、能力の高い幾つかの各種族の代表が長老となって長老会議に参加し、国の方針を決める仕組みをとっている。ここに集まっている亜人達こそ、当代の長老達だ。

 

 ちなみに、現在進行形で取り押さえられている熊人族の長老はジンという名であった。ジンは少し考え込むと、一つの結論を出した。

 

「一歩譲って、“鳥人族の後継者”が人間族であることに俺は目をつぶろう。だが、忌み子とその一族に関してはそうはいかない」

 

 次に、ジンはカム達を睨み付ける。なお、シアによって取り押さえられている状況は変わっていない。

 

「魔力を持った忌み子は危険分子だ! それを匿ったハウリア族は罪人の一族! 忌み子も含め、すぐに処刑しなければならない!」

 

 熊人族の族長ジン・バントンは、忌み子に対する迫害の急先鋒と言える存在だった。熊人族の中で最強の戦士であるジンに逆らえる者は同族の中にもおらず、長老会議でも幅を利かせていた。

 

「聞きたいことがある」

 

 ジンの過激な発言に疑問を持ったハジメは、彼にあることを聞く。

 

「忌み子というのは本当に危険な存在なのか? シアを見ている限り、そうとは思えない」

 

 忌み子を危険分子とする彼の思想に、ハジメは異を唱える。忌み子に分類されるシアは可憐な十六歳の少女であり、家族を守るために戦う心優しい存在だ。シアを直々に訓練したハジメには、彼女が彼の言うような危険分子であるようには見えなかった。

 

「その忌み子があなた方に危害を加えたことがあったか?」

「そんなこと知るか! 忌み子は魔獣に等しい存在! 同胞に危害を加える前に排除するのは当然のこと!」

 

 どうやら、忌み子が危険な存在であると勝手に決めつけて排除しているらしい。ハジメは、そんなフェアベルゲンの姿勢は間違っていると判断する。

 

「なら、言わせてもらおう。フェアベルゲンは鳥人族の調和の思想を元に作られたと聞いたが、結局は見かけ倒しだったようだな」

「貴様、フェアベルゲンを愚弄するか?!」

 

 ジンはハジメの発言に怒りを露にした。

 

「決めつけだけで魔力持ちの亜人を排除する行為は、調和の思想からかけ離れている。鳥人族は個体によって様々な能力を持ち、その能力を研究・活用することで文明を発達させてきた。彼らの姿勢に倣うのであれば、種族の個性と同様に魔力持ちを個性として扱うべきだ。そうすれば、フェアベルゲンに更なる繁栄がもたらされるだろう」

 

 ハジメの発言が突き刺さったのか、ジン以外の長老達は一斉に視線を下げる。

 

「そもそも、昔のフェアベルゲンには魔力持ちの亜人による部隊が存在していたそうだ。この様子だと、その情報すら失われてしまったようだ」

 

 オスカーの情報では、かつてのフェアベルゲンには魔力を持った亜人だけが所属する精鋭部隊が存在しており、外部の脅威から亜人族を守る守護者として君臨していたという。

 

「まあ、今からやり直せばいい。今度こそ、フェアベルゲンは魔力持ちの亜人と共存し、手を取り合わなければならない」

「この化け物と共存しろとでも言うのか? たった今、俺に危害を加えているではないか!」

 

 そこで、ユエが初めて発言する。

 

「それは、あなたが先に殴りかかったから。攻撃されたら反撃する。それは当たり前のこと」

 

 ユエはシアの友人であり、同類だ。化け物と呼ばれてもおかしくない能力を持っている。ジンがシアを“化け物”と呼んだことを、彼女は許せなかった。

 

「くっ……だが、俺はこのような化け物が同胞から生まれることが気に入らない!」

 

 もはや、彼の忌み子嫌いは筋金入りといっても過言ではない。

 

「これでは埒が明かない。シア、彼は死ぬほど疲れているようだ。眠らせてやれ」

「はい、師匠」

 

 直後、ジンの首元にシアの手刀が振り下ろされ、彼は意識を刈り取られた。

 

「ゴホン。現時点において、熊人族の長老ジン・バートンは長老としての執務を遂行する能力を一時的に喪失した。よって、熊人族は不参加として今回の長老会議を執り行う」

 

 会議の議長であったアルフレリックは咳払いすると、熊人族の長老が不在のまま長老会議の開始を一方的に宣言した。




槍をアームキャノンで弾く動きはメトロイドドレッドから、アームキャノンを突き出す攻撃はスマブラから輸入しました。

オリジナル装備のチョウゾギアは、メトロイドドレッドの鳥人兵士のイメージです。ギアという名称にしたのは、最近見たシンフォギアの影響だったりする。
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