鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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ゼーベス星人はいくら殺してもいい。
古事記にもそう書かれている。

今回は戦闘シーンから大樹に行くまでを一気に駆け抜けます。


31話 フェアベルゲンの英雄達

『スピードブースター、オンライン』

 

 背面ブースターを噴射し、全身に青いエネルギーを纏って高速で大地を駆けるハジメ。彼が突き進む先にいるのは、多数のゼーベス星人だ。

 

 スピードブースターの発動時は無敵状態であり、大半の攻撃は無効化する。また、発動時に接触した敵を一撃で粉砕する攻撃性能も備えており、某配管工兄弟でお馴染みの無敵になる星と同じである。

 

 ハジメはスピードブースターで進路上のゼーベス星人を蹂躙しながら進んでいくのだが、いきなり急ブレーキをかける。慣性で少し滑りながら停止し、その場にしゃがんだハジメの全身は明滅する白い光に覆われた。

 

 これは、スピードブースターの派生アクションであるシャインスパークを発動するための準備だ。

 

 やがて、ハジメは一体の空戦型ゼーベス星人に狙いを定めて地面を蹴る。全身を黄色に光り輝かせ、強烈な衝撃波を周囲に撒き散らしながら、自身を砲弾に見立てて敵に体当たりする。現在のハジメが使用可能な攻撃の中で最大の攻撃力を誇るシャインスパークの直撃を受けた空戦型ゼーベス星人は一撃で粉砕された。

 

 そして、ハジメはズシンッ!という音と共に三点着地で地上に降り立ち、地面にヒビが入る。目の前には敵の集団、背後には逃げ遅れた亜人達がおり、ハジメはゼーベス星人に対して啖呵を切った。

 

「パイレーツ共、この俺が相手だ!」

 

 罪無き人々を虐殺するパイレーツに対し、ハジメは怒りに燃えていた。そんなハジメの気迫に押され、星人達は浮き足立っている。

 

『スペイザー、オンライン』

 

 アームキャノン内でエネルギーを増幅し、浮き足立つゼーベス星人の集団に向けて放つ。最大威力のビームが三発同時に放たれ、横並びになっていた三体の星人を同時に撃破した。

 

 少し練度が高いゼーベス星人が反応してビームを放つが、手遅れだ。すでにハジメは地面を蹴り込み、地面スレスレを滑空するようにしてビームの下を潜り抜け、至近距離に迫っていたからだ。

 

「グギャァ!?」

 

 そして、アームキャノンによる正拳突きが頭に叩き込まれる。その一撃で頭の外骨格が歪み、その砲口から発生した爆発で完全に粉砕された。

 

「さて、次は誰から殺られたい? リクエストには答えてやる」

 

 その瞬間、ゼーベス星人達が次々と襲いかかってきた。

 

 迫り来るゼーベス星人の集団に対して、ハジメは休むことなくアームキャノンを動かし、ビームを発砲し続けて敵の物量に対抗する。たった一人から無数の光弾が四方八方にばら撒かれ、次々と敵を撃ち抜いて近くに寄せ付けない。

 

 それでも限界があるので至近距離に迫るゼーベス星人も現れたが、そこもハジメのキルゾーンである。アームキャノンを装備していることから飛び道具を使う遠距離タイプに見えるが、実際には遠近両方に対応可能な万能型であり、やっとの思いで接近したとしても近接攻撃で叩き潰されてしまうのだ。

 

 前方から来たゼーベス星人に対して強烈なショルダータックルをかまし、その衝撃で外骨格や内臓を粉砕する。その勢いは人間大でありながら全速力の自動車に匹敵しており、盛大に吹き飛んだ味方の死体に突っ込まれ、何体かの星人がボーリングのピンのようになっていた。

 

  左側のゼーベス星人が突き出したハサミは体を少し後ろに傾けることで容易に回避し、カウンターの回し蹴りを叩き込んで胴を砕く。直後に右側から迫ってきた二体に対しては、ノールックでアームキャノンだけを向けて素早く二連射して始末する。

 

 その背後ではハサミが振りかざされるが、低めに跳ぶと後方に向かって勢いよく脚部の先端を槍のように突き出し、星人の胸部を粉砕する。

 

 少し離れた地点から何発かの射撃がくるが、ハジメは鳥のようにフワリと跳躍して回避し、付近の壁を砕く勢いで蹴って更に高く舞い上がると、アームキャノンを地上に向けて撃ち下ろす。

 

ドガドガドガドガッ!!

 

 破壊の流星群が降り注ぎ、ゼーベス星人達は一方的に蜂の巣にされていく。

 

 着地した隙を狙って射撃してくる個体もいたが、ハジメはそれすらも察知すると前方に倒れこむようにしながらモーフボールに変形して回避し、そのまま高速で転がって体当たりする。星人の体を利用して空中に跳び上がると、人型に戻って頭頂部を真上からぶち抜いた。

 

 別の場所ではシアが戦っていた。

 

「うりゃぁぁぁぁ!!」

 

 本気で身体強化したシアの鉄拳を胴体に受け、ゼーベス星人はグシャッ!という音と共に甲殻の破片と血を飛び散らせて絶命する。そして、シアはゼーベス星人の集団に突貫した。

 

「師匠の射撃の方が正確ですぅ!」

 

 多数のビームが飛来するが、シアは難なくビームの隙間をすり抜けていく。ハジメによるスパルタ特訓の賜物である。両腕を構え、ボクサーのような前傾姿勢で前進し、以前よりも射撃を回避する技術が向上していた。

 

「一番槍、突貫します!」

 

 別に一番槍でも何でもないのだが、その勢いのままにゼーベス星人の集団へと乱入して駆け抜ける。ハジメ仕込みの格闘術を駆使し、拳撃と脚撃を次々と繰り出して星人を撃破していく。一撃一撃が敵にとって致命的な攻撃であり、振るわれる度に先程まで命だったものが転がっていく。

 

(私……ちゃんと戦えてます!)

 

 以前、シアはゼーベス星人から逃げることしかできなかった。だが、彼女は覚悟を決めてハジメに弟子入りし、戦闘技術を身に付け、戦闘用の装備を手にした。抗う力を得た彼女は、敵に背を向けるのではなく、目を逸らさずに敵へと一直線に向かうという選択ができるようになったのだ。

 

 そして、シアは腰のスラスターを噴射しながら上空にいる空戦型ゼーベス星人を目掛けて高く跳躍する。同じ高度に上がってきたシアの姿に驚いた空戦型は距離を取ろうとするが……

 

「逃がしません!」

 

 瞬時に足元に出した力場を蹴って距離を詰めるとボレーキックのような空中回し蹴りを繰り出し、その頭をサッカーボールのように蹴り飛ばす。ジェットパックが残っている本体の処理も忘れず、別の空戦型に向かって蹴り飛ばして爆殺していた。

 

 空戦型の処理が終わると、シアは力場を蹴って地上の敵集団を目指して急降下する。腰のスラスターも噴射した状態であり、凄まじい勢いで降下していくのだが、今回はガントレットの三つ目の機能を起動させていた。

 

『ブースター起動』

 

 右腕のガントレットがガチャガチャと変形し、何処にそんなものが収まっていたのか疑問に思える程の大きなブースターが右腕に展開される。これはハジメのパワードスーツの技術の応用である。ブースターを噴射することで拳の威力を向上させる機能なのだが、シアは加速に使用していた。

 

「でりゃぁぁぁぁ!!」

 

 それは、一筋の流星の如く。装備の機能と自身の能力を最大限に利用して加速したシアは、己を恐るべき質量兵器に変えて地上に着弾した。

 

 運悪く真下にいたゼーベス星人は黄金の右腕に叩き潰され、着弾時の衝撃波によって周囲のゼーベス星人が吹き飛ばされ、至近距離にいた者は絶命していた。

 

 息をつく間もなく、シアは四方八方から殺意に晒される。それは衝撃波によって吹き飛ばされた星人達のものであり、彼らはすぐさま起き上がっていた。全員がボロボロになっているが、殺意だけは衰えないらしい。

 

「ここを、あなた達の死に場所にしてあげます!」

 

 シアは最も近くにいたゼーベス星人に狙いを定めると、低めに跳躍して踵落としを叩き込む。直撃を受けた星人の頭部はトマトのように潰され、外骨格と血液、脳髄を撒き散らして死に絶えた。

 

 

 

「遅い……それでは私に届かない」

 

 ローラーの独特な駆動音を響かせ、ユエは戦場を縦横無尽に駆け回っていた。そんな彼女に対して、ゼーベス星人は一斉にハサミを開くとビームを殺到させていく。しかし、小さい体で素早く動き回る彼女には全く届かず、掠りもしない。接近戦をしようにも、近付くことすら不可能だった。

 

 スケーターのように滑らかな動きでビームを回避していくが、その動きにアクセルジャンプや上半身を反らせるタイプのイナバウアーのような動きを織り混ぜていた。ユエが戦い方を研究していた時に生み出された動きであり、偶然にもスケートの動きと同じだったのだが、何故か敵を翻弄するのに向いていた。

 

「“風刃”」

 

 回避してばかりではない。ユエは動き回りながらも風の刃を次々と放ち、ゼーベス星人の頭と胴体を永久に破局させていく。

 

「“破断”」

 

 続けて、水属性中級魔法“破断”による細いレーザーのような水流を放ち、すれ違いざまにゼーベス星人を両断する。何とか隙を見つけて飛びかかる個体もいたが、即座に展開されたディスクカッターによって切り刻まれ、鮮血を撒き散らす。

 

 本来なら接近戦は苦手なユエだが、ハジメが製作した装備によって遠距離から至近距離まで対応可能なオールラウンダーと化していた。

 

「フフッ……みんな切り刻んであげる。だから、私から逃げないで?」

 

 敵を切り刻むことに快楽を覚えたのか、ユエはディスクカッターを取り付けた二本のアームを振りかざしてゼーベス星人に襲いかかる。もはや、どちらが襲撃者なのか分からない。

 

 生きた殺人草刈り機とでも呼ぶべきだろう。ユエが通った後に命は残らず、無惨なバラバラ死体だけが残されていく。彼女は本当に後衛職の魔法使いなのか怪しくなってきた。

 

 なお、半ば暴走しているような状態であっても、周囲への警戒は怠らない。空から降り注ぐビームの雨は華麗なターンで回避し、小型ミサイル群に関してはギリギリまで引き付けた上で“破断”を放って薙ぎ払う。

 

「“緋槍”」

 

 そして、撃ってきた空戦型ゼーベス星人に炎の槍を直撃させる。炎の槍は本体どころか背部のジェットパックまでも貫いており、自爆特攻は不可能。体内から焼き尽くされ、彼は死体も残さずに消えた。

 

 

 

 三人によって敵が蹴散らされていく一方、彼らがいないある場所をゼーベス星人の一団が進軍していた。空戦型は三人の方に向かっており、ここにはいない。

 

「?」

 

 先頭を行くゼーベス星人は首を傾げる。何故なら、いくら進んでも人っ子一人いないからだ。いつまでも無人地帯であることに、流石の彼らも疑問を抱いた。

 

 彼らは知らない。自分達が誘い込まれており、見られているということを。今、この瞬間からお前達は捕食者から獲物に転落する。一方的に狩られる存在に。

 

 それとは反対に、今まで逃げるだけだった獲物から、敵を打ち払う戦士へと進化を遂げた者達がいた。

 

『敵部隊、予定地点に入りました。族長、指示をお願いします』

『こちら、カム。作戦は打ち合わせ通りに行うぞ。狙撃班、強襲班、掃討班、準備はいいか?』

『『『問題なし!!』』』

『よし、カニパーティーの始まりだ! 各班、打ち合わせ通りに攻撃開始!』

 

 最初に動いたのは、狙撃班だった。彼らは木の上や物影に潜んでおり、ショルダービームキャノンの発射準備を行う。ヘルメット横のレーザーサイトを起動させ、各自に割り振られた敵に照準する。

 

 何体かのゼーベス星人の頭に三つの赤い光点が現れるが、彼らは気づかない。そして、その赤い光点に目掛けて光弾が飛び込んでいき、頭部を一撃で吹き飛ばした。

 

「強襲班、突撃! 奴らの首を討ち取れ!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

 近接武器を装備した強襲班は喊声を上げて突撃する。ここに、もはや以前のハウリアはいない。完全に戦国時代の戦いである。

 

 強襲班で先陣を切ったのはカムだ。ビームキャノンによる狙撃で崩れた敵の隊列に突っ込み、左腕の振動刃コンバットナイフと右腕のリストブレイドによる二刀流で暴れ回る。

 

 ハサミの一撃を回避しつつ、リストブレイドを一閃して腕を飛ばし、左手に逆手持ちしたナイフで首を討ち取る。他のハウリア達もカムに劣らず、敵の首を順調に落としている。

 

 狙撃と強襲により、ゼーベス星人の集団は総崩れである。敵が次々と逃げ出していくが、カム達は追撃の手を緩めない。定期的にビームキャノンによる射撃が行われ、その外骨格をぶち抜いていく。

 

 ここで、掃討班が動いた。逃げ出したゼーベス星人の前に躍り出て退路を塞ぎ、確実に倒していく。パルのビームボウガンによる狙撃も加わりゼーベス星人達はその命を散らしていった。

 

「悪く思わないでくれ。これはお前達の自業自得だ」

 

 カムは最後の一体の首に突き立てたリストブレイドを引き抜きながら、そう呟いた。

 

 

 

 

 

(これが、鳥人族の後継者の本気……!)

 

 自身も戦いながら、ハジメの戦いを見ていたアリアは、その力に感嘆していた。

 

(何なのだ、あの飛び道具の命中率は……まさに百発百中ではないか……あの時、飛び道具が使われていたとしたら……)

 

 あの模擬戦の時、ハジメは飛び道具を封印した近接オンリーの状態だった。その状態であれば対等に戦えていたが、あの百発百中と言える命中率を見たアリアには、全力のハジメに勝てるビジョンが見えなかった。

 

(我々でもあの命中率は不可能だ……彼の射撃技術は素晴らしい……!)

 

 森人族は弓を持って産まれてくると言われるほど、弓を始めとする飛び道具を得意とする種族である。そんな森人族の彼女に褒められるのは名誉以外の何者でもない。

 

(他の二人も高い戦闘力を持っている……彼らなら、この世界に変革をもたらすことができるかもしれないな……)

 

 アリアはそんなことを思いつつ、槍や格闘で敵を叩きのめしていた。受けたダメージが大きいとはいえ、タフな彼女はまだまだ戦える。そのまま、彼女は戦場を最後まで駆け抜けた。

 

 その後も、パイレーツ部隊はハジメ達によって蹂躙され続けた。ビームや魔法を撃ち込まれ、格闘や槍で叩きのめされ、回転鋸で切り刻まれ、首を刈り取られる。ハジメ達の攻撃に対し、ゼーベス星人たちに為す術は無い。一人、また一人と同胞が倒れていき、数の上では有利だったはずのパイレーツの勢力が急速に衰退する。逃げ出す者も現れ、フェアベルゲンを襲ったパイレーツ部隊は壊滅した。

 

 この戦いは、ハジメ達の勝利に終わった。だが、忘れてはならない。スペースパイレーツの手によって多くの罪無き人々の命が奪われたということを。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 あの惨劇から十日が経過した。

 

 その間、ハジメ達とハウリア族による残党狩りや被害地域の復興支援が行われており、パイレーツを撃退したこともあって、住民は彼らに対して総じて良い印象を持っていたし、フェアベルゲンを救った英雄として扱う動きがあった。

 

 特にシアは、扱いが魔力持ちの忌み子から救国の英雄に変わっており、その変化は手のひら返しといってもいいだろう。そして、ハウリア族は英雄の一族として扱われている。

 

 無論、当初は同胞ではないハジメやユエに対して、熊人族を中心に懐疑心を抱く者が少なくなかった。

 

 長老会議によって掟の内容が公表され、ハジメが“鳥人族の後継者”として、ユエがその娘として紹介されたとはいえ、他種族に対して排他的な彼らが簡単に信用できるはずがない。

 

 だが、そんな二人の行動が彼らの態度を変える。それは、犠牲者の葬儀が行われた時のことだ。二人も参列していたのだが、他の参列者からは他種族ということで良く見られていなかった。

 

「すまない、君達を救うことができなかった……」

 

 だが、二人が犠牲者の墓標の前で膝をつき、謝罪すると共に目を瞑って冥福を祈ったことで、亜人族の態度が変わる。

 

 亜人族にとって、人間族は自分達のことを全く人として見ていないという認識が当たり前であり、一部の亜人族はハジメ達もそうであると考えていた。

 

 彼らはハジメとユエの行動を見て、二人が亜人族の死を悲しみ、冥福を祈ることができる者であることを知った。まだ、全ての亜人族から支持されている訳ではないが、当初よりは関係が改善したといえる。

 

 そして十日目の今日、ハジメ達がフェアベルゲンを出発する時が来た。その見送りには英雄達を一目見ようと大勢の亜人族が詰めかけている。

 

「カム、本当に後は任せていいのか?」

「はい、大将。これ以降の復興作業及び樹海の防衛は我々ハウリア族が引き受けます」

 

 フェアベルゲンの軍隊に大きな被害が出たことで、臆病者から立派な戦士となったハウリア族は戦力として重宝され、巷では“亜人族の守護者”と呼ばれている。

 

 また、ハジメによってチョウゾギアの修理と改良が行われ、自己修復装置の搭載やエネルギーシールドの強化が行われた他、飛び道具が搭載されている。ギアの新造も為され、三十体のギアが追加された。

 

 四十人のハウリア部隊と五十人のチョウゾギア部隊、ハジメ製戦闘服や武装を装備した兵士達がフェアベルゲンと樹海の防衛の任に就くことになった。

 

「そうか、後は任せる」

「こちらこそ、我が娘のことをよろしくお願いいたします」

「任せろ。シアのことは立派な戦士に育て上げてみせる。そして、必ず樹海に戻ってくる」

 

 ハジメはシアを旅の仲間として迎えていた。ハウリア全員が戦士となり、フェアベルゲン内での居場所を確保した以上、シアがフェアベルゲンに残る理由はない。シア自身、ハジメと肩を並べて戦いたいと思っていた。

 

 そんな中、詰めかけていた人々の集団が割れ、その間を通って三人の森人族が現れる。長老のアルフレリック、娘のアリア、最後の一人は金髪碧眼の美少女だった。

 

「ハジメ殿。大樹への案内には私と娘、孫娘も同行させていただく」

「我が娘を助けて頂いたこと、感謝している」

「アルテナです。ハジメ様、この前は危ない所を助けていただき、ありがとうございました」

 

 美少女の正体はアリアの娘であるアルテナ・ハイピストであった。森人族のお姫様的な存在であるアルテナは、ハジメに頭を下げる。十日前の襲撃の際、逃げ遅れたアルテナはゼーベス星人に殺されそうになっていた所をハジメに救われていた。

 

「当然のことをしただけだ」

 

(ハジメ様は素敵な殿方ですわ……強く、優しく、熊人族の族長と違って驕り高ぶるようなことをしない……それに、あの時のハジメ様は……)

 

 アルテナはハジメに助けられた時のことを思い浮かべる。当時、彼女はゼーベス星人に追い詰められ、ハサミを振り下ろされる一歩手前であった。だが、そのゼーベス星人は駆けつけたハジメの放ったグラップリングビームで動きを封じられ、引き寄せられて右腕の一撃で仕留められていた。

 

 なお、この時点でハジメは彼女がアリアの娘であることは知らなかった。そして、ハジメとアルテナは敵に包囲されてしまうが、ハジメは彼女を背後に庇い、こんなことを言った。

 

「俺から離れるな。必ず君を助ける」

 

 この発言に他意はない。単純に、ハジメから離れなければ生きて帰れるという事実を伝えたに過ぎない。アルテナも一応それは理解していたが、吊り橋効果でもあったのか、彼女がハジメに好意を抱く一因となった。

 

(後でお祖父様から彼が人間族であることを聞いて驚きましたわ。でも、私達の知る人間族とは違い、ハジメ様は亜人を差別しないお方でしたわ……)

 

「アルテナさん!?」 

「はっ……! シアさん? 少しボーッとしてましたわ」

 

 ハジメのことを考えて別の世界に旅立っていたアルテナは、シアの声で元の世界に引き戻された。

 

「お父様、揃ったみたいだから行こう?」

「あぁ、そうだなユエ」

 

 すでに大樹に向かうメンバーは集結済みだ。ハジメとユエ、シア、アルフレリック、アリア、アルテナ、何名かのハウリアである。

 

「シア、大樹に行くまでの先導は頼む」

「了解です、師匠!」

 

 出発の時が迫る。シアはしばらく会えなくなるカムに対して別れの挨拶をした。

 

「父様、行ってきます!」

「シア、気を付けて行ってくるんだ。父さん達は、お前の帰る場所を守り続ける。だから、必ず生きて帰ってこい」

「大丈夫、私は絶対に帰ってきます」

 

 シアは父親に対してサムズアップした。

 

「では、行こう」

 

 巨大な木造の門が開き、一行はそこを通り抜けるべく歩みを進める。詰めかけていた人々の歓声を背に受け、フェアベルゲンを後にした。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 シアに先導された一行は、およそ十五分で大樹ウーア・アルトの下へ辿り着いた。

 

「……枯れている」

 

 ハジメの第一声。その通り、大樹は見事に枯れていた。想像と違ったのか、ユエの方は微妙な表情をしている。

 

 大樹と呼ばれるくらいなのでその大きさは途轍もなく、その幹の直径はおよそ五十メートルはあると思われる。周囲の木々とは桁違いの大きさであるのだが、その大樹だけ葉が無かった。

 

「ハジメ殿、大樹は建国前から枯れていると伝わっている」

 

 アルフレリックが解説する。彼によると、今に至るまで朽ちることなく枯れたままの状態で残っており、神聖視される所以となっているらしい。なお、多くの亜人族は観光名所扱いしているとのことだ。

 

「ハジメ様、こちらへ」

 

 アルテナに案内されてハジメ達が大樹の根元に近づくと、そこに石板が建てられていた。

 

「指輪と同じだ……」

「ん……同じ文様」

 

 その石板には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれており、その文様の1つがオルクスの指輪の十字に円が重なった文様と同じだった。

 

「ここに迷宮の入口があるようだな」

 

 ハジメは石板の回りを調べていく。石板の裏側に回り込んだ時、あるものをハジメは発見した。それは、表側の7つの文様に対応する様に開けられている小さな窪みだった。

 

「これは……」

 

ハジメはオルクスの指輪を窪みに嵌めてみる。すると、石版が淡く輝きだした。しばらく輝く石板を見ていると、次第に光が収まる代わりに文字が浮かび上がる。そこにはこう書かれていた。

 

“四つの証”

 

“再生の力”

 

“紡がれた絆の道標”

 

“全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう”

 

「どうやら、迷宮への入口を開くには条件があるらしい。“四つの証”というのは、間違いなく迷宮を攻略した証のことだろうな」

「ん……“再生の力”と“紡がれた絆の道標”は?」

「ユエさん、紡がれた絆の道標は亜人の案内人を得られるかどうかじゃないですか? 師匠は多くの亜人族から信頼されてますし」

「ん……なるほど。“再生の力”は、もしかして神代魔法? 多分、私の“自動再生”とは関係無いと思う」

 

 

 ユエが試しに薄く指を切って“自動再生”を発動しながら石板や大樹に触れるが、変化はない。再生の力というのは、間違いなく神代魔法なのだろう。

 

「まとめると、七大迷宮の過半数を攻略した上で再生に関する神代魔法を入手し、亜人族の案内で大樹まで来いということだろうな」

 

 ハジメは再生に関する神代魔法……言うならば再生魔法で目の前の枯れている大樹を再生させる必要があると推測していた。

 

「ん……ということは今すぐの攻略は不可能ということ?」

「そうらしいな」

 

 ハジメはアルフレリック達の方を見る。

 

「長老殿、俺はここ以外の迷宮から攻略することにします。しばらくの間、お世話になりました」

「いえ、フェアベルゲンと孫娘を救ってもらったのだ。お互い様というものだろう」

「南雲ハジメ。また、手合わせできるのを楽しみにしている」

「ハジメ様、あなたが再びフェアベルゲンに来るときまで、首を長くしてお待ちしておりますわ」

 

 ハジメは胸に手を当てて一礼すると、同行していたハウリアの戦士を集めて言う。

 

「俺が戻るまで、大樹とフェアベルゲンを守護するようにカムに伝えてくれ。それと、三人を無事にフェアベルゲンまで送り届けてくれ。まあ、一人だけ護衛がいらなそうな人がいるがな」

「「「了解しました!」」」

 

 ハジメ達はシアの案内で樹海から出ると、ジャガーノートに乗って出発した。これからは、シアを加えた三人で旅をすることになる。




ようやくシャインスパークを使わせることができた。スピードブースターに至っては久しぶり過ぎる。

そろそろ、ゼーベス星人を強化していこうと思います。流石に、このまま一方的に蹂躙され続けるのも可哀想なので。
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