鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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話が前作に追いついてしまった……


34話 ライセン大迷宮

「いたぞぉ! いたぞぉぉぉぉぉ!!!」

 

 翌日になっても面倒事は終わらなかった。ライセン大迷宮の捜索に出発するため、ハジメ達は町の門の方へと歩いていたのだが、男達の中にはユエとシアを諦められない者もおり、ハジメ達を見つけた瞬間、宇宙人と遭遇したかのような声を上げて向かってきた。

 

「まったく、懲りない奴らだ……はぁ」

 

 ハジメはため息をつきながらも、向かってきた男を迎撃する。男は棍棒を握っていたが、それが振るわれる前に男の腹部を蹴り上げて宙に浮かせ、落ちてきたところを百裂脚で滅多打ちにして吹っ飛ばした。

 

 処理が完了したのでハジメは二人を連れて町を出ようとするのだが、後ろから声をかけてくる者がいた。

 

「あ、あの……」

 

 ハジメ達が振り返ると、そこにいたのはむさ苦しい男共ではなく、気が弱そうな一人の少年だった。

 

「どうした? 二人なら渡さないぞ」

「ちっ、違うんです……僕が用があるのはハジメさんなんです」

「俺か……珍しい奴だ。で、要件は?」

「ぼ、僕を……」

 

 少年は緊張しながらも、言葉を発する。

 

「あなたの門弟にしてください!」

「も、門弟……? 弟子ってことか?」

 

 少年の唐突な発言にハジメも驚きを隠せない。

 

「はい! 僕はあなたの強さに憧れました。僕だけじゃなくて、この町の子供達はみんな、あなたに憧れてるんです!」

 

 すると、数十人の子供達が何処からともなく現れ、ハジメの目の前に整列する。みんな、ヒーローを見るかのように例外無く目をキラキラさせていた。

 

「こんなことを言って悪いが、俺はシア以外に弟子をとるつもりはないんだ」

 

 ハジメに弟子入りを断られ、子供達はガッカリして俯いてしまう。その様子を見て、流石に罪悪感を感じたのかハジメはとある提案をする。

 

「だが、護身術くらいなら軽く教えてもいい。今すぐには無理だが、俺が町に戻ってきたら教えてやる」

「いいの!?」

「あぁ。約束だ。じゃあな」

 

 約束したハジメは二人を連れて子供達に背を向けて門を潜っていく。

 

「師匠は優しいですね。どうして約束してあげたんですか?」

「子供は未来を担う宝だからな。多少はお願いを聞いてやる必要もあるだろう?」

「ん……お父様は子供には優しい」

 

 三人は町から十分に離れたことを確認すると、ジャガーノートに搭乗して大峡谷の入り口へと向かった。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 この世の地獄として、処刑場として人々から恐れられる地、ライセン大峡谷。普通なら簡単に人間が死体に変わるこの場所で、魔獣が一方的に蹴散らされる事態が起こっていた。

 

 その事態を引き起こしたのは、紛うことなきハジメ達であった。ハジメのブラスターが魔獣の頭部を撃ち抜き、シアの肉切り包丁のようなサイズのナイフが魔獣を一撃で斬り捨て、ユエが装備する文明の利器であるディスクカッターが次々と切り刻んでいく。

 

「たまには刃物を使うのもいいですね、師匠」

 

 シアが振り回している大型ナイフは、ブルックの町に滞在している間、ハジメがシア専用に製作した振動刃ナイフである。シアは他のハウリアと同様にナイフ類を扱う訓練も受けていたのだが、樹海やフェアベルゲンではナイフを扱う機会はなく、今回が初めての実戦使用だった。

 

「使い心地はどうだ?」

「使いやすいですよ。このサイズのナイフを渡された時は流石に驚きましたけどね」

 

 ブルックの町を出発してから、すでに二日が経過している。彼らはライセン大迷宮の入り口を発見するべく、ジャガーノートを走らせていた。野営もしつつ、【オルクス大迷宮】の転移陣が隠されている洞窟も既に通り過ぎている。入口らしき場所を見つける度に足を止めて周囲を探索し、必ずと言って良いほどに魔獣に襲われる。その繰り返しだった。

 

 地上の魔獣は迷宮のものよりも弱く、パワードスーツなど使わなくとも生身で十分に対処できる存在である。そのため、パイレーツや迷宮の魔獣以外と戦う時は生身で戦うということが暗黙の了解となっており、ハジメは生身にブラスターを装備して二人と肩を並べていた。

 

「お父様、前方からハイベリアが」

「あぁ。そのようだな」

 

 前方から現れたのは二体のワイバーンのような魔獣。以前、ハウリア族を襲っていた連中の同族である。彼らは大峡谷でも強い部類に入る魔獣なのだが、今のハウリア族にかかれば瞬きする間に皆殺しにできるだろう。

 

「師匠、一体は私にやらせてください!」

「任せる。もう一体は俺がやろう」

 

 あの時はハジメに任せるしかなかったが、今は違うことを証明してみせると言わんばかりに志願するシア。パイレーツとの戦いを乗り越えた彼女なら大丈夫であろうと、ハジメは片方の相手を任せた。

 

「行きます!」

 

 シアは身体強化を脚部に集中させて高く跳躍し、ハイベリアの真上に到達する。部分的に身体強化を集中させることを覚えたシアは、スラスターに頼らなくても使用時と同等の高さに飛ぶことができるのだ。

 

「せりゃぁ!」

 

 腕に身体強化を集中させ、フィールドを張った拳をハイベリアの胴体に上から叩き付ける。その一撃を受けたハイベリアは胴体が内部の魔石ごと大きく抉られ、重力に引かれていった。

 

「見事だ、シア」

 

 今度はハジメがハイベリアに向かう。以前は緊急時だったのでパワードスーツで対処していたが、今は護衛対象もいないので生身で対処する。

 

「はっ!」

 

 ハジメはジェットブーツを噴射しながら跳躍し、ハイベリアの頭部をサマーソルトキックで蹴り砕く。そのまま空中で美しい宙返りを決めると、ジェットブーツで落下の勢いを殺しつつ着地した。

 

 こうして、探索と戦闘を繰り返していたところ、更に三日が経過する。

 

「ライセン大迷宮……やはり、簡単に見つかるものではないか……」

 

 分かっていることは、大峡谷の何処かに入り口があるということだけである。迷宮を管理するイヴは位置を知っているようだが、それでは試練にならないので教えてもらえない。

 

 この日も収穫はなく、日暮れの時間となった。夜の探索は危険なため、ここで一泊する。ジャガーノートの後部にはキャンピングカーのようなトレーラーが連結されており、ここで一夜を明かす予定だ。

 

 宿泊用トレーラーの内部にはベッドやキッチン、シャワー、冷暖房が完備されており、水は大気中から水分を抽出する水分凝結機によって確保している。また、トレーラーは強固な装甲とビームタレット、シールド発生装置で守られているため、安心して眠ることができる。

 

「ご飯ですよ!」

 

 夕食が完成したため、シアが二人を呼ぶ。料理が得意なシアはご飯を作る担当となっており、料理の腕が微妙であるハジメからすれば救世主だった。ちなみに、王族だったユエも料理が作れなかったが、最近はシアの指導で上達してきている。

 

 その日の夕食はクルルー鳥のトマト(モドキ)煮である。クルルー鳥とは空飛ぶ鶏のことだ。肉質や味は鶏そのものであり、この世界において一般的な鳥肉だ。それを一口大にカットし、穀物を加工した粉をまぶしてソテーにしたものを各種野菜と共にトマト(モドキ)スープで煮込んだ料理となっている。

 

 え?ハジメが鳥を食べたら共食いだって? 問題はない。鳥を食べる鳥は普通にいるのだから。そもそも、鳥人族は鳥類とは別物であるし、彼らの遺伝子があるとはいえ、ハジメは人間族である。

 

 それはさておき、夕食は絶品だった。それも、本当に野営をしているのか怪しくなるほどに。 夕食を食べ、食後の雑談をし、交代でシャワーを浴びた後、就寝時間が来る。全自動のビームタレットとシールドがあるとはいえ、念には念を入れて三人で見張りを交代しながら朝を迎えた。

 

 

 

 

 

翌朝、状況が変わった。

 

「師匠! ユエさ~ん! こっちに来てください!」

 

 起床して朝食を取った後、シアが用を足すために拠点から離れていたのだが、しばらくしてシアが二人を大声で呼んだ。

 

 何事か?と思ったハジメとユエはその声がした方へと向かう。そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れており、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。シアがいるのは、その隙間の前である。

 

「見つけましたよ! ここの中です!」

 

 シアの誘導に従って隙間に入ると、その中はそれなりに広い空間になっており、中には鳥人族のオブジェが置いてあった。その側には壁を直接削って作ったと思われる長方形型の見事な装飾の看板があり、文字が彫られていたのだが…

 

「何だこれは……?」

「ん、ん……?」

 

 ハジメとユエはそれを見ると、思わず困惑してしまった。何故なら、次のように文字が彫られていたからだ。

 

“おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪”

 

 地獄の谷底には似つかわしくない、女の子らしい丸っこい字で彫られた、まるで遊園地の入り口かのような文章。それが鳥人族のオブジェの側にあったのだから、なおさら困惑していた。

 

「大迷宮の入り口なのか?」

「ん……それにしてはふざけすぎ。でも、ミレディの名前があったということは…」

「ミレディの名は知られていないはず……それに、鳥人族関係の遺物も置いてある。本物の可能性が高いな……」

 

 ミレディ・ライセン。その名はオスカーが残した情報にあった。世間で知られているのは姓の方であり、名の方は知られていない。そのため、その名があるここはライセン大迷宮である可能性が高かった。

 

 それはそうなのだが、ハジメは鳥人族の遺物の側にこんなふざけた書き込みをするミレディの神経を疑った。とはいっても、これはようやく掴んだ大迷宮の手がかりである。とりあえず、ハジメ達は迷宮の入り口を探すことにした。

 

「ジャミングされているようだ……」

 

 ハジメはパワードスーツを装着すると、スキャンバイザーやXレイバイザーを使用して壁を調べていくのだが、人為的にジャミングされているらしく、視界にノイズが入ってしまっていた。そのため、実際に壁に触って調べ始めたのだが……

 

ガコンッ!

 

「なっ!?」

 

 ハジメが壁に触れた途端、その壁が突然勢い良く回転した。それに巻き込まれてしまったハジメは、壁の向こう側へ姿を消してしまう結果となった。そして、ハジメの視界の先に現れたのは、薄暗い部屋の天井から生えている砲塔のような機械であった。

 

「ビームタレットだと!?」

 

 叫んだ直後、強力なビームがハジメに向けて発射される。ハジメは咄嗟にサイドステップで回避すると、反撃のミサイルを数発放ってビームタレットを完全に破壊した。

 

「危ない……俺以外だったら死人が出ていたぞ……」

 

 そうハジメが呟くと、再び壁が回転してユエとシアが現れる。

 

「お父様!? 大丈夫?」

「師匠、無事ですか!?」

「あぁ、大丈夫だ…」

 

 心配している二人に返事を返すハジメ。そうしていると、周囲の壁がぼんやりと光りだし辺りを照らし出す。ハジメ達のいる場所は十メートル四方の部屋であり、部屋の中央にある石板には看板と同じような文字でとある言葉が彫られていた。

 

〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟

 

〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟

 

 「「「…………」」」

 

 皆、無言となる。考えていることは一緒だ。「ウザイ」の一言に尽きる。もしも本当に誰か死んでいれば、生き残りは確実に憤慨するだろう。

 

「ミレディ・ライセン、お前は本当に解放者の一員なのか? 変人なのは聞いていたが、ここまでとは……」

「ん……こいつだけは人類の敵でいいかも」

「ユエさん、それだけは激しく同意です!」

 

 どうやら、ライセン大迷宮はオルクス大迷宮やグリューエン大火山とは別のベクトルで攻略者を苦しめてくるようだった。

 

 

 

 

 

 一方その頃、ライセン大迷宮の奥深くでは、ハジメ達の様子を監視している者達がいた。

 

「ねえ、イーくん。パワードスーツの彼が鳥人族の後継者でいいんだよね?」

「はい、ミレディ様。彼こそが鳥人族の後継者、南雲ハジメです」

 

 そこには大脳型の機械であるセントラルユニットが鎮座し、その前には金髪を後頭部で一つにまとめて垂らした、ミニスカートの白いドレスの美少女がいた。この美少女こそ、解放者の一人であるミレディ・ライセン。

 

「この前、いきなりコールドスリープから叩き起こされて何事かと思ったけど、イーくんの言っていた通りに鳥人族の後継者が来てくれて良かった」

「私に嘘はありません」

 

 鳥人族の後継者であるハジメがオルクス大迷宮を攻略したその日まで、ミレディはコールドスリープによって眠っていた。彼女は解放者唯一の生き残りであり、鳥人族の後継者を導く役目を背負っていた。

 

「南雲ハジメ。鳥人族の後継者である君なら、あのクソ神野郎をぶっとばせるかもしれない。期待してるよ?」

 

(これで私の役目を終えられる。奴が死んだら、私も死ぬ。みんな、待ってて……)

 

 ミレディはウザいメッセージを書くような人間ではあるが、解放者としての覚悟や責任感は本物だった。

 

「イー君、戦闘用メカノイドの起動をお願い。通常攻略者用のゴーレム騎士の方は私が」

「了解。各戦闘用メカノイドを起動させます」

 

 現時点をもって、ライセン大迷宮は完全に稼働を始める。ミレディとハジメ達が対面する時は刻一刻と迫っていた。




この作品におけるライセン大迷宮は基本は原作と変わりませんが、対ハジメ用にゴーレム騎士だけでなくメカノイド(メトロイド世界のロボット)を配備してます。
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