鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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今回は短いです


40話 使徒、襲来

「ツヴァイトと申します。イレギュラー……コードネーム・メトロイド。“神の使徒”としてあなたを主の盤上から排除します」

 

 それは突然の出来事だった。強化型のゼーベス星人を撃破した直後、空から銀の羽が雪のように降り注ぎ、天使が舞い降りたのだ。これが天より遣わされた救世主であったら、どんなに良かったことか。

 

 邪神エヒトが生み出した忠実なる人形であり、神に仇なす者や想定外の危険分子を排除するために送り込まれる存在。それが奴の正体である。

 

 次の瞬間、神の使徒ツヴァイトの肉体から銀色の魔力が噴き出し、常人であれば気絶してしまうようなプレッシャーが一帯を支配する。

 

 戦いを潜り抜けてきたユエとシアであっても体が硬直する程であり、冷や汗を滝のように流している。だが、そんな状況でも動じない男が一人……

 

「メトロイド……やはり、パイレーツをこの世界に連れてきたのはお前達か。マザーブレインもいるのだろう?」

 

 ハジメだけは通常運行である。神の使徒から放たれるプレッシャーは確かに強力であるが、それでもリドリーや狂暴な巨大クリーチャーには遠く及ばない。この程度で動揺していては、多数の危険な存在が跋扈している宇宙では戦えないのだ。

 

 そんなハジメの様子に安心感を覚えたのか、ユエとシアは体の硬直から回復する。そして、ハジメは言葉を発さずに手振りで待避するように伝えた。

 

 ここから先は、ハジメ一人の戦いである。

 

「イレギュラー、あなたとのお喋りに付き合っている暇などありません。我が主のため、即刻消えていただきます」

「それはこちらの台詞だ。神の木偶人形……今すぐ消えろ!」

 

ドガッ! ドガッ!

 

 ハジメの発砲が戦闘開始の合図だった。撃ち上げられた二発のパワービームがツヴァイトに迫るが、彼女は蝶のようにフワリと舞うことで容易に回避すると、背中の銀翼をはためかせる。

 

 その目的は飛翔のためではない。次の瞬間、その銀翼から銀羽のミサイルが大量に射出された。高い連射性能に加え、一発一発に“分解”の固有魔法が付与されており、最後まで獲物を追いかけ回してその存在を抹消するのだ。

 

 それに対抗するのは、生命のエネルギーより無限に生み出され、アームキャノンから高速で連射される無数の光弾だ。ハジメは全力で地面を蹴って後方に飛び退きながら、正面から迫り来る銀羽の群れをビームで次々と撃ち抜いていく。

 

 ハジメが地面に着地した直後、銀羽の弾幕を突き破るようにして銀色の砲撃が飛来してくる。これは分解砲撃といい、手数を重視する銀羽とは対照的に、威力を重視した一撃である。

 

「くっ!」

 

 ハジメは横方向に飛んで回避したが、その背後にあった大岩が文字通りに分解され、何もなかったかのように消滅してしまった。

 

「まさか、これほど放ったというのに全く被弾しないとは……これがイレギュラーの力ですか。評価を上方修正する必要があります」

「随分と舐められていたようだな……」

「イレギュラー、あなたを侮っていたことは認めましょう。ただし、今のは小手調べに過ぎません。今度こそあなたを排除します」

「あぁ、やれるものならな」

 

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 ハジメは上空のツヴァイトをロックオンし、ミサイルを連続で放つ。だが、あろうことか彼女はミサイルを双大剣で切り裂きながらハジメへと真っ直ぐに迫ってくる。

 

「チッ!」

 

 突っ込んでくる彼女に対してチャージビームを放つが、交差させた双大剣によって防御されてしまう。そのまま、至近距離に踏み込んで来た彼女は回転して遠心力を乗せた大剣の一撃を浴びせてきた。

 

ガキィィィンッ!!!

 

 大剣の腹をアームキャノンで殴り、かち上げることで軌道をずらして回避する。もう片方の大剣も振り下ろされ、ハジメを真っ二つにしようとするが、咄嗟に半身になったことで肩アーマーから火花を散らす程度に終わった。

 

「何故です。何故、“分解”が効いていないのです!?」

 

 無表情ではあるが驚きを隠せないツヴァイト。当然だが双大剣にも“分解”は付与されており、あらゆる物質を切り裂いてしまう危険な代物だ。パワードスーツに大剣が直撃したにも関わらず、切り裂くことができなかった事実に、彼女は驚いていた。

 

 ハジメのパワードスーツは彼の精神力によってその形態を維持しており、ハジメの精神が折れない限り一瞬であれば分解に抗ってくれる。その上をエネルギーシールドが覆う二層構造であり、自己修復機能を備えたパワードスーツは簡単に切り裂かれることはないのだ。

 

「鳥人族が授けてくれたパワードスーツを簡単に貫けると思うな」

 

 ハジメはそう言い放ちながら、青いチャージビームを発射する。ツヴァイトは先ほどと同様に大剣を交差させて防御するが、それが間違いであったことを知る。今のビームは凍結効果が付与されたアイスビームであり、全身を氷漬けにされてしまったからだ。

 

 ツヴァイトは自身を覆っている氷を分解するが、その一瞬の隙をハジメに突かれてしまい、いつの間にか至近距離に迫られる。彼女の無防備な腹部には、輝くアームキャノンの先端が接触していた。

 

「この距離なら防げないな」

 

 その直後にゼロ距離から最大チャージビームが放たれ、ツヴァイトは弾かれるようにして吹き飛ばされた。

 

「ぐぉっ!?」

 

 吹き飛んだ彼女は森の中に突っ込み、進路上の木々を何本もへし折って停止する。ゼロ距離からチャージビームの直撃を受けた胴体部分の戦装束はボロボロになり、素肌は少しばかり爛れていた。

 

「凍結攻撃……そんなものは提供されたデータにはなかったはずです」

「どうやら、俺の能力がここまで戻っているのはマザーも想定外だったようだな」

 

 戦場は森の中へと移行する。薙ぎ払うように放たれた分解砲撃の下をスライディングで潜り抜け、アイスビームの連射で反撃する。この一瞬で多くの木々が消し飛び、氷漬けにされ、自然環境が破壊されていく。

 

『シーカーミサイル、オンライン』

 

 五発の小型ミサイルがツヴァイトに殺到するが、彼女は銀翼を大きく広げて自身を包み込み、着弾したミサイルを全て分解してしまった。だが、その直後に飛来したロープ状のビームに反応できず、片方の大剣の持ち手部分に巻き付かれる。

 

「これは!?」

 

 それはグラップリングビームである。ハジメは左腕に力を込めて彼女を引っ張り、ブンブンと振り回して近くの大木に背中から叩きつけた。

 

「ぐうぅっ!?」

 

 大木の太い幹に放射状の割れ目が走り、叩きつけられた衝撃でツヴァイトは片方の大剣を手放してしまう。

 

「こいつをくらえ!」

 

 幹にめり込んだツヴァイトに向けてチャージビームを放つハジメ。しかし、咄嗟に回避されてしまい、大木を粉砕する結果に終わる。

 

「私の武器を奪うのは想定外でした。ですが、私の姉妹達に同じ手段が通用するとは思わないことです」

 

 そして、ツヴァイトは空高く舞い上がると、森の中にぽっかりと空いた空間にいるハジメを見下ろした。

 

「仕方がありません。ここら辺一帯ごと貴方達を焼き払わせていただきます」

 

 銀色の光を纏い、激しく輝くツヴァイト。その姿は夕暮れで薄暗くなり始めている空でかなり目立つ。彼女は擬似的な限界突破である“禁域開放”という技能を使用しており、全ステータスが数倍に引き上げられているのだ。

 

 ハジメがミサイルを連射するが、宙にばら撒かれた銀羽によって全てが相殺される。一部の銀羽は彼女の下方に集まると、何枚も重なって銀色に輝く魔方陣を形成する。次の瞬間……

 

「“劫火浪”」

 

 発動されたのは、津波のような炎を生み出す最上級魔法。しかも、“禁域開放”でステータスが引き上げられている都合上、本来のものよりも威力と攻撃範囲が高まっている。

 

(ライトニングアーマーなら防げるが……ユエとシアは!? ならば……)

 

 ハジメ達を飲み込まんとする炎の大津波が頭上から迫り、視界の殆んどが炎で埋まる。そんな中、ハジメはアームキャノンにエネルギーをチャージし始めていた。

 

『スーパーミサイル、オンライン』

 

 選択されたのはスーパーミサイル。超高温の巨大熱源が出現したことで周囲の植物や地面から水分が奪われ、火の粉が舞い始める状況でスーパーミサイルが完成し、その姿を覗かせる。

 

「スーパーミサイル、発射!」

 

 狙いは壁の向こう側の使徒だ。発射されたミサイルはブースターの噴射で瞬時に音速に達し、炎の壁に突入する。衝撃波を纏ったスーパーミサイルは炎の壁に大穴を空けてその殆んどを消滅させ、そのままツヴァイトに迫る。

 

「そんなものっ!」

 

 ツヴァイトが採った行動は、二枚の銀翼で自身を包み込むことによる分解防御。あらゆるものを分解する自身の能力であれば、どんなものでも防ぐことができると考えたのだ。

 

 そして、スーパーミサイルは分解能力を秘めた銀色の繭に激突するのだが、彼女の予想に反して二重の防御は極太の弾頭を備えたミサイルによって容易に貫通されてしまった。

 

「なっ!?」

 

 もはや、ツヴァイトに為す術はなかった。防御を貫いたスーパーミサイルが胸部に突き刺さり、肉体にねじ込まれる。死を悟った直後、弾頭が起爆して強烈な爆風が撒き散らされ、彼女の上半身は木っ端微塵に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 戦闘終了後、ハジメ達は地面に落下していた使徒の下半身の周囲に集まっていた。

 

「神の使徒……とんでもない奴でしたね」

「ん……あれは間違いなく上級使徒。私とシアでは手に負えない」

「スーパーミサイルでようやく撃破できた相手だ。量産型の使徒なら他の武装でもいけそうだが、あれが複数体同時に現れたとすると……」

「「最悪(です)……」」

 

 上級使徒のステータスはパワードスーツを装備したハジメの基本能力に匹敵する。チャージビームのゼロ距離射撃を受けても、アイスビームで氷漬けにされても死ぬことはなく、さらには戦闘経験が他の個体にフィードバックされる仕様になっているため、次からは同じ手段が通用しなくなる。それが複数現れることを想像し、ハジメ達は顔を青ざめていた。

 

「師匠、私も使徒と戦えるように頑張ります」

「ん……私も頑張る」

 

 人間は努力して成長し、先に進むことのできる生き物だ。それは、フィードバックからしか学ぶことができない神の使徒と大きく異なる点であり、人間の長所である。

 

 戦闘データがフィードバックされてしまうのであれば、常に努力を重ねて進化することによって敵の予想を上回ればいいのだ。

 

「心強いな。シアは身体強化を、ユエは重力魔法を極めれば、きっと使徒にも対抗できる」

「でも、正直言ってしまうと……二、三人くらいは新しい仲間が欲しいところですけどね」

「ん……簡単に見つかったら苦労はしない」

「使徒と戦えるような存在は竜人族くらいだ。仮に生き残っていたとしても、表舞台に出てきてくれるだろうか……」

 

 この時のハジメ達は知らない。この先、新たな出会いがあるということを。

 

「まあ、無い物ねだりをしても仕方がない。今度こそ、ブルックの町に帰るぞ」

「「は~い!」」

「元気でよろしい」

 

 使徒の死体と武器を回収し、もはや原型を留めていない森を後にするハジメ達、ちなみに、ここはブルックの町から一日程の場所に位置しており、町に帰ることができたのは早朝であった。




この作品でハジメの射撃が回避されたのは今回が初めてかもしれない。真の神の使徒(名前有り)の性能はパワードスーツハジメの基本性能に匹敵しているので、数少ない同格の相手になってます。ただし、アビリティの入手状況や戦闘経験の積み重ねによって左右される模様。
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