鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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今回は愛子アンチ要素があります


50話 先生の失態

「クソが! 何で当たらないっ!?」

 

 檜山はハジメを切り刻もうと右腕のビームブレードを何度も振り回すがそれが命中することはない。

 

 全てを最低限の動きだけで回避されており、それをハジメに舐められていると感じた檜山は苛立っていた。

 

「てめえ! 避けてばかりかよぉぉ!」

「動きが乱暴過ぎる」

 

 その時、檜山の胴体に蹴りが突き刺さる。彼は吹っ飛ばされるが、着地してすぐに拳銃型武装バトルハンマーを引き抜いて乱射してきた。

 

「死ねぇ!」

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

 町中に解き放たれた数々の銃弾は、民家の外壁で跳弾し、ガラスを割り、建物の中を滅茶苦茶にしていく。もしも、そこに住民がいたとしたら多くの犠牲者が出ていただろう。

 

 ハジメは遮蔽物に隠れるのだが、反撃してこない様子を見た檜山がここぞとばかりにハジメを煽る。怒ったり煽ったりと、随分と忙しい奴である。

 

「おいおい、お得意のミサイルは使わねえのかぁ!? あぁ、そうだよな。町中で使えるわけねえよなぁ!」

「ミサイルは必要ない!」

 

ドガッ!!

 

 ハジメは遮蔽物から素早く飛び出し、檜山を超精密射撃で狙い撃つ。

 

「ぐあっ!?」

 

 光弾が顔面に直撃し、仰け反る檜山。ハジメはその隙にブースターを噴射しながら急速接近すると、強烈なショルダータックルをお見舞いした。

 

「ぐえっ!?」

 

 檜山は突っ込んでくるトラックのような勢いの体当たりを受け、撥ね飛ばされる。地面で何度もバウンドして停止し、起き上がったところにハジメの猛攻が始まった。

 

「今度はこちらの番だ」

 

 左腕でアッパーを顎に叩き込み、矢のように引き絞った右腕のアームキャノンを突き出して打撃を浴びせ、同時に砲口から爆発を起こして追加ダメージを与える。そこに三撃目として回し蹴りを受け、檜山は追い詰められていく。それ以降は滅多打ちに近い状態だ。

 

「南雲君……檜山君……」

 

 その様子を物陰から愛子は見ていた。生徒同士が戦っていることに悲しい目をしながらも、目を一切逸らすことはない。瞬きせず、一挙手一投足の全てを目に焼き付けている。非戦闘職で戦えず、生徒よりも打たれ弱い彼女なりの責任の果たし方だった。

 

 愛子が最前線の近くまで行くのは危険なのだが、これは彼女が頼み込んだからだ。戦いを止めることはできなくても、最後まで戦いを見届けたいのだと。少しでも危険があれば、シアか清水が彼女を下がらせることになっている。

 

 やがて、戦場は町中から外壁の付近に移行していた。町の外れの方なので建物は少なく、重火器が使用できるだろう。

 

「何故だ、どうしてお前に勝てない! お前と同等の性能のパワードスーツを着ているんだぞ!」

 

 外壁をバックに吠える檜山。獅子とか虎のそれではなく、負け犬の遠吠えみたいなものである。ハジメは彼に答えてやることにした。

 

「お前は多くの人々を一方的に殺してきた。弱者を虐げることしか知らないお前に、俺が負ける道理はない!」

 

 そもそも、戦闘経験の差がありすぎる。ハジメが何年も訓練と実戦を繰り返してきた一方、檜山は数ヶ月前まで只の一般人だった。トータスで得たチートスペックの体を強化され、高性能なパワードスーツを与えられたとはいえ、勝てるはずがないのだ。

 

 ハジメの指摘の通り、檜山は命を奪った数こそ多いが、その全てが格下の相手だった。だが、ハジメは違う。同格か格上との戦いなら何度も経験しており、銀河の守り手として檜山に負けるつもりは微塵もなかった。

 

 現実を突き付けられ、檜山は逆ギレした。

 

「てめえ、ぶっ殺してやる!」

 

 怒りのままに突進してきた檜山はビームブレードを振り下ろす。ハジメは半身になって避けると左の裏拳で顔面を打ち据え、そこに回し蹴りを繰り出して蹴り跳ばす。檜山は外壁に叩き付けられ、放射状のヒビ割れを作り出すと壁からズルズルと滑り落ちて地面に跪いた。

 

「遺言はあるか?」

 

 ハジメは最大チャージされたアームキャノンを突き付けながら、檜山へそのように尋ねた。

 

「まっ、待ってくれ南雲……俺を殺すつもりなのか? クラスメイトなんだぞ!」

「問答無用だ。スペースパイレーツに与し、大量虐殺を犯したテロリストを生かしておくわけにはいかない」

 

 この期に及んで命乞いだ。だが、大量虐殺を犯した奴にかけてやる情けなど、ハジメには存在していなかった。

 

「お前は、そうやって命乞いしてきた相手に情けをかけたことはあるか?」

「もう二度とやらない! 武器も捨てる! だから、命だけは……」

 

 武器を投げ捨てる檜山。彼は必死である。しかし、それを本心から言っていないことはお見通しであり、ハジメは彼を殺すという判断を変えるつもりはない。虐殺という罪の重さからして、極刑は免れないのだから。

 

「ダメだ」

 

 このままチャージビームをぶち込めば檜山は終わり、彼によって命を奪われる者はいなくなる。ハジメがそう思った矢先、アームキャノンの目の前に割り込む小さな人影があった。

 

「待ってください! 檜山君はすでに戦意を喪失しているんですよ? 私に免じて、彼の命だけは助けてあげてください!」

 

 それは愛子だった。どうやら、生徒の命が奪われようとしているのを見て、シア達や護衛隊の制止を振り切ってここまで出てきてしまったらしい。彼女は両腕を広げ、ハジメの前に立ち塞がった。

 

「先生、そこから退いてください」

「もう、戦いは終わったんです。檜山君が許されないことをしたのは分かっていますが、彼もまた生徒の一人。極刑は免れないかもしれませんが、今すぐに殺すというのは……」

 

 すると、愛子は檜山に近づいていく。命を狙ってきた奴だというのに、随分と無用心だ。彼女はまだ、檜山に残る善性を信じているらしい。

 

「先生、いけません! こいつはまだ!」

「愛ちゃん先生、待って!」

「ダメですぅ!」

 

 ハジメだけでなく優花やシア、その他の面々も警告するが、それが聞き入れられることはない。愛子は檜山に手を差し伸べ、優しい言葉をかける。

 

「檜山君、お願いです。武器もパワードスーツも捨てて、戻ってきてくれませんか? 檜山君が死刑にならないように何とか頑張ります。私はクラス全員で地球に戻りたいんです」

「先生……」

 

 愛子が手を差し伸べたので、檜山はその手を離さずに立ち上がる。だが、彼女の手を掴むのを止めなかった。

 

「捕まえたぜ」

 

 バイザーの下に隠された表情は酷く歪んでおり、片腕にはいつの間にか拳銃型武装が握られている。檜山は予備で持っていたであろう武器を愛子に突き付けた。

 

「ひ、檜山君? 何を……?」

「先生が単純で阿保で助かったぜ。微塵も警戒しないなんて、あんたは本当に馬鹿だよ。先生としては百点だが、要人としては赤点だぜ。フヒヒヒヒッ!!」

 

 そして、檜山はハジメ達に向けて話す。

 

「俺に近づくんじゃねえぞ! 少しでも近づいてみろ、俺の銃が火を吹いて先生をぶち抜くぜ!」

 

 檜山は愛子を隣に移動させ、バトルハンマーを彼女に向けながら警告する。先生が傷ついたり死ぬことを恐れて、動ける者はいない。ただ、一人を除いて……

 

「て、てめえ! 何で動いてやがる! 本当に殺しちまうぞ! おい、聞いてるのか!?」

 

 それはハジメだった。人質がいるにも関わらず、一歩ずつ近づいてくるその姿に檜山は動揺を隠せない。銃口がブレブレになっている始末だ。こればかりは檜山にも予想外だった。

 

「な、舐めやがってぇぇぇ!」

 

 それでもハジメは接近を止めないので、ついに檜山はバトルハンマーの引き金を引く。愛子は死への恐怖で目を瞑り、木霊する発砲音が耳に入ってくる。しかし、愛子の身に何かが起こることはなかった。

 

「な、何が……」

 

 恐る恐る目を開ける愛子。そこにはオレンジ色の握り拳が現れており、次の瞬間に開かれた拳からは潰れた銃弾がポロリとこぼれ落ちる。

 

「て、てめえ、何をした!?」

「瞬時に距離を詰めて銃弾を掴んだだけだが?」

 

 それはハジメだ。あえて近づくことで檜山を動揺させ、ギリギリの距離になったところで身体強化とブースター、高い瞬発力を駆使して急接近し、銃弾を掴む。無茶な作戦だが、ハジメはそれを成功させてしまったのだ。

 

「この下衆野郎が!」

 

 ハジメは罵倒の言葉を浴びせて檜山を殴り飛ばしていた。再び壁に叩き付けられた檜山は、壁にめり込んでしまう。

 

『ノーマルミサイル、オンライン』

 

 ハジメはミサイルを用意すると、誰かがキャッチしてくれることを期待し、愛子の首根っこを掴んで後方に放り投げる。爆風による被害を避けるためだ。

 

「お前は先生の善意を踏みにじった。檜山、お前を許しはしない!」

 

 何発ものミサイルが檜山に突っ込んでいき、いくつもの爆発が外壁を激しく揺さぶり、彼がめり込んでいた辺りが崩れていく。

 

 土煙が晴れると、そこには粉砕されて跡形もなくなった外壁の一部分と、抉られた地面だけが残されており、檜山の姿は消えていた。

 

「逃げたか。次は必ず……」

 

 拳を強く握り締め、次は必ず檜山を倒すことを決意するハジメ。彼を放置していては新たな犠牲者が出てしまうため、急いで討伐する必要があるだろう。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、南雲君! 私は身勝手なことをして迷惑をかけてしまいました。全て、先生の責任です」

 

 愛子は深々と頭を下げてハジメに謝罪した。これまでの行動や言動を省みて、大人として誤りを認める必要を感じたのだ。

 

「たしかに、今回ばかりは先生が悪い。人の悪意というものを知らなすぎたがために騙され、奴を取り逃がすことになってしまった。更なる犠牲者が出る可能性もある……」

 

 ハジメはいつもよりも辛辣だ。彼の愛子に対する物言いに、神殿騎士のデビッドが怒りを露にした。

 

「き、貴様! 愛子が謝っているんだぞ!」

「デビッドさん、少し静かにしていてもらえますか。私が悪いのは本当なので」

「……承知した」

 

 愛子の言葉で忠犬デビッドが黙ったので、ハジメは話を再開する。

 

「俺はこれ以上、先生を責めるつもりはない。死にかけたことで、先生も現実が分かったはずだ……」

「はい……私は悪意というものから無意識に目を背けていました。そのせいで騙されて、死にかけて、生徒に迷惑をかけて……善意だけでこの世界では生きていけないのでしょうね……」

 

 先生の精神的なダメージは深刻だ。自業自得な面もあるとはいえ、生徒に騙されて命を奪われかけたことに強いショックを受けていた。

 

「先生、たしかに善意や優しさだけでは生きてはいけない。だが、決してそれらを捨てないでほしい。それで救われた生徒もいるのだから」

 

 そう言って、ハジメは優花達の方を見る。彼らが再び立ち上がれたのは、愛子が元気付けたからなのだ。皆、愛子の周りに集まってきて、彼女を励まし始めた。

 

「ありがとうございます、皆さん」

 

 励ましによって愛子は元気を取り戻す。生徒の裏切りで優しさを捨てそうになってしまったが、そこを救ったのも生徒達であった。

 

 これで言うべきことは全て言ったので、ハジメの話は終わりである。先生は大人なので、過ちを認めて反省できるのだ。

 

 そして、時は流れて翌日の朝。ハジメ達は保護したウィルと共にフューレンに戻ろうとしていた。ハジメはジャガーノートを取り出し、そこに皆が乗り込んでいく。

 

「ありがとう、南雲。先生を守ってくれて」

「礼はいい、人を助けるのは当たり前だ。そうだ、園部……渡しておくものがある」

 

 そうしてハジメが取り出したのは、外周が鋭い刃となっている円盤形の武器だ。五つの穴が開いていることが確認され、そこが持ち手となっていた。

 

「これは、少し前に作ったスマートディスク*1という武器で、投げて使うものだ。投擲師の園部なら使いこなせると思ってな」

「こんなもの、もらっちゃっていいの?」

「あぁ、大丈夫だ。これはプロトタイプだから俺が使うことはない。ゼーベス星人くらいなら倒せる威力があるから、持っていてくれ」

 

 そして、ハジメは愛子の方を向く。

 

「先生、檜山のことは必ず殺します。もう、慈悲をかける意味はないので」

「はい、南雲君。どうか、彼を止めてください。クラスメイトを殺させてしまうことは心苦しいですが、これ以上に罪が増える前に……」

「ええ、任せてください」

 

 それだけ言い残し、ハジメはタラップに足をかけてジャガーノートに乗り込んでいく。すぐさまエンジンが始動し、走り去った。

*1
某宇宙の狩猟民族が持っている奴




ハジメが銃弾を掴んだところは、サムス&ジョイ1巻のとあるシーンが元ネタになってます。
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