鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

62 / 79
この作品ではミュウ回りの設定が原作とは異なりますので、ご注意ください


54話 新たな○○と爆走ウサギ

「ほら、とっとと歩け!」

 

 保安署員によってオークション会場から黒服や客達が引きずり出されていく。その様子をミュウと共に眺めていたハジメの所に、子供達を保安署員に預けたユエがやって来た。

 

「ん、お疲れ様。それで、その子がミュウ?」

「あぁ、そうだ」

「この人は誰なの?」

 

 ミュウはハジメとシアのことしか知らず、ユエに会うのは初めてだ。ハジメと親しいことは感じ取れたようだが、若干の警戒もあった。

 

「彼女はユエ。俺の娘だ……血は繋がっていないけどな」

「ハジメお兄ちゃんってパパだったの!?」

 

 ミュウは驚く。親子関係であることに驚かれるのには慣れたものだ。

 

「……ミュウ。私はユエ。一人でよく頑張った。とっても偉い」

 

 ユエは優しげな表情でハジメに抱えられたミュウの頭を撫でる。その優しい手つきと温かい雰囲気にミュウは自然と気が緩みホロホロと涙を流し始め、やがて盛大に泣き始める。

 

 ハジメと再会した時は、まだ緊迫の中にあり、きちんと泣く事ができなかった。それが、今この瞬間、完全に気が緩んで今までの辛かった気持ちを全部吐き出したのだ。

 

「ミュウ、君は強い子だ。君の勇気が多くの子供達を助けることに繋がった。君のことを勇者と呼んでも遜色ないだろう」

 

 そして、泣き止んだのを見計らってハジメはミュウのことを褒め称える。

 

「ミュウが、勇者……?」

「あぁ、そうだ。勇者とは勇気ある者のこと。君こそ勇者に相応しい」

 

 あの勇者のことを考えると、ミュウの方が精神的な面では勇者に相応しいだろう。

 

「でも、ミュウは戦えないの」

「戦えなくてもいい。それでも何か出来ることはある」

「ミュウは強くなりたいの!ママを守れるくらいに!」

「……君にはまだ早い」

 

 ミュウはハジメの強さに圧倒されていた。そして、自分もそのように強くなりたいと思ったようだ。ハジメにもその気持ちは理解できた。

 

「どうしてなの?」

「まだ若いからな。精神が成熟する前に殺しを覚えてほしくはない。子供には子供時代を平和に暮らす権利がある。かつての俺とは違う」

「むぅ、難しい話なの……」

 

 ハジメは子供時代を子供らしく生きることが出来なかった。そのため、ミュウに自分と同じような道を幼い頃から歩んでほしくなかったのだ。

 

「でも、大きくなったらいいの?」

「まあ、そういうことになるな。それまでに気が変わることだってあるだろう。それでも望むのなら、君を鍛えてもいい」

「いいの!?今度からお兄ちゃんのことをお師匠と呼ばせてもらうの!」

「待て、それは早すぎる。まだ決まったわけでは……」

「お兄ちゃんは将来の師匠なの!だから、もうお師匠と呼ばせてもらうの!」

 

 ハジメはミュウに苦戦する。リドリーや危険なエイリアンよりも彼女の方が手強いのではないかと思わせるほどだ。やがて、ハジメは白旗を上げた。

 

「分かった分かった。将来的に君を弟子にする。ただし、今はまだ見習いだ。戦いは教えられない。あくまでも精神的な面からだ」

「ありがとなの!」

 

 ミュウは喜ぶ。二人目の弟子(見習い)が誕生した瞬間であり、ハジメが二人の弟子を抱える師匠になることが確定した瞬間だった。

 

 

 

「まさか、フューレンの裏世界三大組織の一つを半日で壊滅させることができたなんて、今でも夢のようだよ。君には感謝しかない」

 

 これまで、イルワ達は裏組織に手を焼いていた。彼らは表向きはまっとうな商売をしており、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りという状態だったのだ。

 

「イルワ、それを成すことができたのは冒険者ギルドの協力があったからだ。それより、今後の方が大変なんじゃないか?」

「そうだね。裏社会の均衡が崩れてしまったわけだし、空いた穴を巡って他の組織による新たな抗争が繰り広げられる可能性もある。そこで、お願いがあるのだが……」

 

 イルワは、他の犯罪組織を牽制するためにハジメ達の名前を使いたいということをお願いしてきた。ハジメ達を支部長お抱えの金ランク冒険者として、悪いことをすると鬼が来るぞという風に宣伝するつもりなのだ。

 

 実際、他の二つの組織が勢力を伸ばそうと画策していたようだが、イルワがハジメ達の名前を使ったことで動きが抑制され、大きな混乱が起こることはなかった。

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

 そして、話はミュウのことになる。イルワがそれを切り出した瞬間、ミュウがビクッとする。またハジメ達と引き離されるのではないかと思ったのだ。

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

「俺達に預けても大丈夫なのか?」

 

 誘拐された海人族の子を公的機関に預けなくていいのかと首を傾げるハジメだったが、イルワによると、ハジメ達が金ランクという実力者であり、今回の騒動の発端がミュウの保護だったことから、任せてもいいということになったらしい。

 

「師匠……私、絶対にこの子を守ります。だから……」

「分かっている……元からそのつもりだ。その代わり、姉弟子として手本になるように気をつけろ」

「師匠!」

「お師匠!」

 

 満面の笑みで喜びを表にするシアとミュウ。【海上の都市エリセン】に行く道中には【大火山】が存在するが、既に攻略済みなので彼女を連れて迷宮に挑むことにはならないため、問題はないだろう。

 

 イルワとの話し合いの後、宿に戻ってからミュウは女性陣の部屋に泊まることになり、三人から妹のような存在として可愛がられ、もみくちゃにされた。

 

 ミュウが最も気に入っているのはシアであり、髪色も似ていることもあって本当の姉のように慕っていた。さながら姉妹である。

 

 ミュウによると彼女には自身が産まれる前に亡くなった姉がおり、友達にはいて自分にはいない姉という存在に憧れがあったらしい。

 

 この日、小さな仲間が一行に加わった。

 

 

 

 

 

 翌日、ライセン大峡谷と並行して走る街道にて奇声が響いていた。そこを通過しているのは、六輪と二輪の乗り物であり、音の発生源は二輪の方だった。

 

「ィィィィィヤァァァァァッハァ!!!」

 

 爆走する魔力駆動二輪の上で奇声を上げているのはシアだ。これはハジメがご褒美として与えたものであり、魔力の直接操作で操縦するバイクとなっている。

 

 今まで乗っていた六輪と異なり、体がむき出しになる乗り物であるため、風を切って走る感覚を全身で味わうことができる。シアはその感覚が気に入っており、あっという間に魔力駆動二輪の魅力に取りつかれてしまっていた。

 

 その結果が今のシアである。街道に沿って進む六輪とは対照的に、奇声を発しながら右へ左へ爆走しており、ドリフトしてみたりウイリーをしてみたり、時にはアクロバティックな技を披露していた。

 

 アクセルもブレーキも魔力操作で行えるので、地球のバイクと比べると技の難易度は楽なものだ。そのため、魔力操作をマスターしているシアは短い時間で乗りこなすことができた。

 

「お父様、あれは新種の魔獣? 何故か、シアに見えるような……」

「ユエ、あれはシアだ。どうやら、ハンドルを握ると人が変わる部類の人間だったようだな」

「それにしても変わり過ぎ」

 

 ユエに至っては現実逃避のつもりなのか、爆走するシアを新種の魔獣として扱っている。そんな魔獣がいたら、今頃人間族は絶滅しているだろう。

 

「ねえ、私もあれをやりたいと言ったら?」

「駄目……とは言わないが、あんな風にはなるなよ?」

「南雲、俺もあれに乗りたいんだが……」

 

 ユエだけではなく清水までもがバイクに乗りたいと言い出した。清水は人外になっても男の子の魂は失っておらず、乗り物への興味も結構あった。

 

「清水、後で専用のバイクを作ってやる。ある程度のリクエストなら受けるが、何かあるか?」

「そうだな、バイクが人型ロボットに変形するのはどうだ?」

「人型ロボットに変形……面白そうだな。問題は、変形機構を備えたことによる強度への影響だが……やってみる価値はある」

「南雲、男のロマンを分かってくれたか!」

 

 清水の脳内にあるのは仮○ライダーに出てくるバイクが変形した戦闘メカである。ハジメにその方面の知識はあまりないが、純粋にエンジニアとして面白そうだと感じていた。

 

「ん、二人ともよく分からない話をしてる……」

「ユエよ、勝手にさせておくのがよい。我らには理解できぬ話じゃ」

 

 その時、ハジメの膝の上にミュウが乗ってくる。そして、外を見ながら瞳をキラキラとさせると、ハンドルを握りながら逆立ちし始めたシアを指差し、ハジメにおねだりを始めた。

 

「お師匠! ミュウもあれやりたいの!」

「あれは駄目だ。危なすぎる」

 

 バイクなんて幼女が乗るには危険なものだ。そのため、ミュウのおねだりは速攻で否定された。

 

「いいか、ミュウ。大きくなれば乗ることもできるが、あんな風になってはいけないぞ。あれは悪い見本だ」

「そうなの?」

「そうだ。シアの奴、羽目を外し過ぎだ……そのうち、事故を起こすかもしれないな」

 

 ハジメは頭を抱える。ミュウの手本になるようにと言ったはずなのに、すぐに破られてしまうのだから。

 

「ミュウ、後で俺と……」

 

 後で俺と乗ろうと言いかけた時だった。

 

「あ! シアお姉ちゃんが落ちちゃったの!!」

 

 ミュウが叫ぶ。ハジメの不安は的中し、シアがついに事故を起こしたのだ。制御を失った無人のバイクが木に激突し、その数メートル手前でシアが目を回して倒れていた。

 

「言わんこっちゃない……」

 

 当分、シアにはバイク禁止令を出そうと思ったハジメであった。

 

「イヴ、車を止めてくれ。あの馬鹿弟子を回収する」

 

『承知しました』

 

 現在、ジャガーノートはイヴによる遠隔操縦になっている。元からその機能は存在していたが、長距離を走行する良い機会なので、試験運用することになったのだ。

 

「イヴ、ホルアドまでどのくらいだ?」

 

『一時間くらいになるかと』

 

「そうか。ここから操縦は俺がしよう。ご苦労様、イヴ」

 

『私に疲れなどありませんが?』

 

「ふっ、お前らしいな」

 

 次の目的地は宿場町ホルアドだ。本当なら素通りできるのだが、イルワからホルアドのギルド長に届けてほしい物があると依頼を受けているため、立ち寄ることになったのだ。

 

 ハジメは知らない。丁度、宿場町ホルアドには勇者達が滞在しており、オルクス大迷宮の攻略に挑んでいることを。そして、香織との再会が近づいていることを……




ようやくここまで来れた…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。