鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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どうも、お久しぶりです。ブルアカの方を書くのが楽しくなってしまい、こちらの投稿がかなり遅れる結果となりました


55話 懐かしきホルアド

 ハジメと清水は数ヶ月ぶりにホルアドへと足を踏み入れた。

 

「ホルアド……久しぶりだな」

「そうだな、南雲。俺もだ」

 

 二人は懐かしげに目を細め、仲間を連れて町のメインストリートを進む。目的地はホルアドのギルドである。

 

「全てはここから始まった」

「あぁ。初めての実戦訓練でベヒモスと骸骨の大群に挟み撃ちされて、南雲が奈落に落ちて……今なら、ベヒモスなんて怖くないけどな」

 

 ホルアドは初めて見た王都の外であり、実戦訓練を行ったオルクス大迷宮を抱える宿場町だ。運命はここで決まったと言っても過言ではない。

 

「しかし、視線が凄いな……」

「そりゃ、美少女揃いだからな。ユエさんにシアさん、うちのティオさんがいて、おまけにミュウもいるんだ。気にならないはずがない」

「それもそうだな」

 

 一行はかなり目立っている。まるで、ランウェイを進むモデルのようなものだ。視線が集まることは珍しくないが、ここまでのものは初めてだった。

 

 やがて、冒険者ギルドのホルアド支部へと到着した。ハジメはミュウを肩車したまま金属製の重い扉を開ける。重厚な音が響き、人が入る合図となった。

 

 ハジメはここに来るのは初めてだったのだが、入った瞬間に他のギルドとの違いに気がついた。内部の冒険者達は誰も彼も目がギラついていて、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は無い。それに加えて、かなりピリピリとした様子だったのだ。

 

 ギルドに足を踏み入れた途端に冒険者達の視線がハジメ達を捉える。美少女を引き連れて調子に乗っているガキとでも思ったのだろう、一部の冒険者は拳を握り締めながら立ち上がり、踏み出そうとしていた。

 

 しかし、最後にティオが入ってきた瞬間に彼らは動きを止める。彼女は黒ランクの冒険者として(今は金だが)それなりに知られており、不利を悟ったようだ。何とも現金なやつらである。

 

「ここの支部長はいるか? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっている。本人に直接渡してほしいとの依頼なのだが……」

 

 ハジメはカウンターの前に行くと、そこにいた受付嬢に要件を伝え、自身のステータスプレートを提示した。

 

「はい、お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼ですか?」

 

 普通、一介の冒険者が支部長クラスから依頼を受けることはありえないため、少し訝しそうな表情になる受付嬢。しかし、渡されたステータスプレートに表示されている情報を見て目を見開いた。

 

「き、金ランク?!」

 

 ちなみに、金ランクの冒険者は全体の一割程だ。金に認定された者については全てのギルド職員が把握しており、彼女も例に漏れず把握していたのだが、ハジメは金になったばかりなので知るはずもなく、思わず驚愕の声を漏らしてしまった。その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いてハジメを凝視する。

 

 個人のランクも武器や戦い方と並ぶ立派な個人情報であり、それをうっかり大声で晒してしまった受付嬢は顔を青ざめさせ、もの凄い勢いで頭を下げ始めた。

 

「も、申し訳ありません! 本当に、申し訳ありません!」

「別にいい。こちらにも驚かせてしまった責任がある。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてほしい」

「は、はい! 少々お待ちください!」

 

 ランクを晒されたところで別に困ることはない。最高の金ランクであれば、他の荒くれ者の冒険者に対する牽制にはなるし、フューレンで裏組織を壊滅させるなど大暴れしてきた以上、身分の秘匿など今更だからだ。ここにいる全員が金だとは誰も思わないだろう。

 

 待つこと五分後。やがて、ギルドの奥から何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。何事か?とハジメ達が音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年が床を滑りながら飛び出てきて、盛大に転んで即座に起き上がった後、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

 ハジメと清水はその人物を知っていた。

 

「「遠藤?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「南雲なのか?」

「あぁ、そうだ。久しぶりだな、遠藤」

 

 彼の名は遠藤浩介。天職は暗殺者であり、気配や痕跡を消したり、短剣や投げナイフを扱うことを得意としている。トータスに来る前から影が薄い男と呼ばれており、自動ドアが三回に一回しか反応しなかったり、何故か学校に登校していないことになっていたりと、その素質があった。

 

 最高クラスの感知能力を持つハジメですら感知できないことがある程に影が薄すぎるため、これまで描写されることすらなかった(メタい)彼だが、ここに来てようやくハジメの目の前に現れることができたのだ。

 

「そっちの仮面の奴は……まさか、清水か?」

「な、何を言っているのか分からないな……」

「忘れたのか、俺とオタトークを楽しんだ日々を!俺はお前の性癖も把握してるぞ。今から公開してやろうか?」

 

 実は、清水と遠藤には交友関係があった。遠藤の影が薄いせいで周囲は把握していなかったが、遠藤は隠れオタクであり、それなりに深い話もしていたようだ。

 

「それだけはやめてくれ。そうだ、俺は清水本人だ」

「やっぱりか、行方不明だと聞いて心配してたぞ」

 

 性癖を晒されそうになったため、清水は降参して自分が本人であることを認めた。ちなみに、彼の性癖には黒髪ロングと巨乳が含まれており、雫やティオが当てはまっていたりする。

 

「遠藤、随分と慌てているように見えたが、何があった?」

「はっ?!」

 

 事情を聞いた瞬間、遠藤の表情がガラリと深刻そうなものに変わる。改めてよく見てみると遠藤の装束はボロボロであり、大変なことがあったようだ。そして、いきなり遠藤は土下座して叫んだ。

 

「頼む、一緒に迷宮に潜ってくれ! 早くしないと皆死んじまう! 一人でも多くの戦力が必要なんだ! 健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ! 頼むよ、南雲! 清水!」

「どういうことだ? 天之河やメルド団長がいるはずだろう?」

「たしかに、二人がいれば大抵のことは大丈夫な筈だ」

 

 遠藤の尋常ではない様子に、二人は困惑しながら問い返す。すると、遠藤はメルド団長の名が出た瞬間、ひどく暗い表情になって膝から崩れ落ちた。そして、押し殺したような低く澱んだ声でポツリと呟く。

 

「……んだよ」

「何だって?」

「……死んだって言ったんだ! メルド団長もアランさんも他の皆も! 迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ! 俺を逃がすために! 俺のせいで! 死んだんだ! 死んだんだよぉ!」

「そうか……あの人が……」

 

 メルド団長への評価はハジメの中でも高い方だ。その剣術の腕や指揮能力はもちろんのこと、人格面でも優れており、みんなの父親のように慕われていた。ハジメは内心、彼の冥福を祈った。

 

 王国最強の剣士である彼が敗北し、勇者一行がピンチに陥っているということは、相手は迷宮の魔獣ではないだろう。おそらく、魔人族が強化した魔獣か、スペースパイレーツかと思われる。

 

「一体、何があった?」

「それは……」

 

 ハジメの質問を受け、遠藤は事の次第を話そうとするが、そこでしわがれた声による制止がかかる。

 

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

「あなたは?」

 

 それは、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。元は高ランク冒険者か騎士でもやっていたのだろうか。ベテランの風格があり、全身から覇気が溢れていた。

 

「冒険者ギルド、ホルアド支部長のロア・バワビスだ。イルワからの手紙は見せてもらった。とりあえず、奥に案内しよう」

 

 彼は遠藤を担いで冒険者ギルドの奥へと向かう。ハジメ達もそれを追いかけ、応接室へと入った。

 

 

 

 

 

「なるほど、大体分かった」

 

 遠藤やロアによると、勇者一行は魔人族と遭遇し、それに率いられた強力な魔獣によって全滅の危機に瀕しているという。

 

 強さはウルに現れたものとそう変わらないだろう。情報では厄介な特性を持つ魔獣が多く、知識にはない存在だったため、被害が広がったらしい。

 

 スペースパイレーツは確認されていないようだが、現地に来ている可能性は高い。ハジメ達が駆けつけなければ、全員が帰らぬ人となるだろう。当然、そこには香織もおり……

 

「遠藤、白崎さんはまだ無事か?」

「あ、ああ。俺が最後に見た時点では無事だ。彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし……正確な援護射撃もそうだが、特に回復魔法がとんでもなかった。それに……」

「それだけ聞ければ十分だ。ありがとう」

 

 遠藤は聞かれてもいないことも必死に話してくれた。香織は随分と活躍しているようだ。彼女が戦場に適応したことは素直には喜べないが、これは彼女の意思なのだ。否定はできない。

 

「俺の当初の目的は、白崎さんに再会することだった。俺は約束した……必ず帰ってくると」

「南雲、力を貸してくれるのか?」

「あぁ。白崎さんとの約束を果たすためにも、救出に手を貸そう。皆、俺についてきてくれるか?」

 

 ハジメは出会った仲間達の姿を一人ずつ視界に捉えながら尋ねる。彼らの返答は分かりきったものだった。

 

「私はお父様についていく。それが当たり前」

「師匠、何を今さらそんなことを」

「南雲、俺にだって再会したい人はいる。思いは同じだ」

「我らは肩を並べて戦った仲ではないか」

 

 満場一致である。斯くして、勇者パーティ救出ミッションを遂行することが決定した。

 

「ありがとう、南雲!これでみんなを助けられる!」

「支部長、対外的には依頼ということで頼む。報酬はいらないが、上層部の連中に無条件で助けてもらえると思われたくはない」

「おう、任された。それと、そちらのお嬢様はギルドの方で預かっておこう」

 

 流石にミュウを連れていくわけにはいかない。全員が最強格ではあるものの、非戦闘員を守りきるのは難しいからだ。ロアはその辺りも汲んでくれた。

 

「ミュウ、お留守番も修行だ。良い子で待っていなさい」

「分かったの!ミュウはお師匠の帰りを待ってるの!」

 

 やがて、ハジメ達はオルクス大迷宮の第一階層へと移る。ここから先は遠藤の案内で進むのだが、その前にハジメにはすることがあった。

 

『バリアスーツ起動中…』

 

 ハジメは息をするようにパワードスーツを装着する。もはや見慣れた光景なのだが、遠藤だけは初めて見る形となり……

 

「な、な、何じゃそりゃぁぁぁぁっ!? 滅茶苦茶カッコいいじゃねえか!!! 何処で手に入れたんだ!?」

「話は後だ。行くぞ」

 

 遠藤の声が迷宮に響き渡る。だが、それに答えていられる程の時間はない。ハジメ達はすぐに走り出した。

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