鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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タイトルの元ネタはメトロイドⅡのサブタイトルです


56話 RETURN OF WARRIOR

 ハジメ達はオルクス大迷宮を駆けていた。そのスピードはかなり早く、高ステータスのクラスメイトであっても追従するのは困難だろう。

 

「遠藤、皆がいるのは九十階層で間違いないんだな?」

「あぁ、そうだ!でも、七十階層までの転移魔法陣は壊してしまった!あの時は必死で……!」

 

 案内役の遠藤は清水に背負われている。彼によると、七十層からのみ起動できる、三十層と繋がる転移魔法陣があったらしいのだが、追っ手を振り切るために破壊してしまったそうだ。

 

 そのため、勇者パーティのいる九十階層まで行くには時間がかかってしまう。助けが間に合わないかもしれないと思った遠藤は、自分の行動を後悔していた。

 

「遠藤、破壊するという判断は間違っていない。そうしなければ、お前は俺達に助けを求めることすらできなかっただろう」

「南雲の言う通りだ。浩介、君は最大限に力を尽くした。後は俺達に任せろ」

「南雲……!清水……!」

 

 やがて、ハジメ達はとある階層で足を止める。そこの壁には、青白く輝く美しい大きなクリスタル、グランツ鉱石が埋まっていた。

 

「おい、ここって……まさか、最初の訓練で檜山の奴が転移トラップを発動させた……」

 

 ここは二十階層の一番奥である。ベヒモスのいる六十五階層まで直通の魔法陣が存在しており、トラップになっていた。ハジメは敢えてトラップに飛び込み、ショートカットするつもりだった。

 

「このトラップを利用し、俺達は一気に六十五階層まで飛ぶ。すぐに戦闘になるだろうが、大船に乗ったつもりでいるといい」

「ちょ、この人数でベヒモスと骸骨軍団に挑む気か!?待って、止まれ!止まって!」

「南雲を信じろ。信じれば救われる。多分、きっと、Maybe……」

 

 これから、ベヒモスとトラウムソルジャーに挟み撃ちされるという地獄にわざわざ突っ込むことを知り、遠藤は制止しようとするも、時すでに遅し。

 

「行くぞ」

「待って、うぁああああっ!?!?」

 

 ハジメの左手がグランツ鉱石に触れ、辺り一帯が閃光に包まれる。あまりの眩しさに閉じた目を開くと、そこにはあの時と同じ光景があった。

 

「懐かしいな……」

「あぁ、ベヒモスと骸骨にビビり散らかしていた記憶しかないけどな」

 

 やがて、前方の魔法陣からはベヒモスが、後方の魔法陣からはトラウムソルジャーの群れが現れる。

 

「南雲、清水、本当に大丈夫か?」

「心配はいらない」

「そうだぞ、俺達なら一瞬だ」

 

 やがて、始まったのは戦いと呼べるようなものではなく、どちらかというと蹂躙の部類だった。

 

「蹂躙しろ、ゴモラ!」

 

 清水の目前に闇属性エネルギーで構成された漆黒の獣が現れ、巨大な右腕をトラウムソルジャーの軍団に叩き付ける。彼らは一瞬でペシャンコになり、出現していた魔法陣も同時に破壊された。

 

『スペイザー、オンライン』

 

『アイスビーム、オンライン』

 

 そして、清水と背中合わせになってベヒモスと対峙するハジメは、アイススペイザービームを発射し、ベヒモスを一撃で凍結させる。そして……

 

「シア!」

「はい、師匠!」

 

 凍結したベヒモスに向けてシアが飛び出し、その鉄拳を顔面に叩き付ける。その直後、ベヒモスの体にヒビが広がっていき、やがて完全に崩壊した。

 

「これで片付いた」

「マジかよ……」

 

 訓練を積んだ勇者パーティであっても、ここまですんなりと攻略はできないものだ。遠藤は目の前の出来事に唖然としてしまった。

 

 ハジメ達はそんな彼を無視して、再び移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、勇者パーティは全滅の危機に陥っていた。まず、光輝は瀕死の重傷であり、馬の頭部と四本腕を持つ筋骨隆々の魔獣、アハトドによって宙吊りにされている。

 

 皆、満身創痍の状態だ。精神的にも肉体的にも限界である。目の前では光輝が生殺与奪の権を握られており、光輝でも勝てないような強力な魔獣に周囲を囲まれていた。もはや、彼らに出来ることは何もない。

 

 そんな中、魔獣を引き連れてきた魔人族の女が勇者パーティに提案してきた。それは、光輝を見捨てれば命だけは助けるというもの。しかし、反逆できないように首輪の魔道具を付けるという条件付きであった。

 

 何人かのクラスメイトはその誘いに乗ろうとする。光輝を見捨てることを容認できない仲間と口論になり、生き残りたいという気持ちと、光輝だけを犠牲にして自分達が生き残ることへの罪悪感で揺れていた。

 

「み、みんな……ダメだ……従うな……」

 

 そんな中、宙吊りにされている光輝が目を覚まし、提案に揺れるクラスメイト達に対して息も絶え絶えに訴える。

 

「……騙されてる……騎士団の皆さんを……殺したんだぞ……信用……するな……人間と戦わされる……奴隷にされるぞ……逃げるんだ……俺はいい……から……一人でも多く……逃げ……」

 

 光輝は取引に応じてはならないと訴え、自分を見捨てて全力で逃げるように主張する。しかし、彼以外のクラスメイトが全員生き残れる保証はない。

 

 しかし、ここで彼らを生かすために動いた者がいた。それは、瀕死の状態で光輝よりも酷い怪我を負い、もうじき死ぬと思われていたメルド団長だった。

 

「ぐっ……お前達……お前達は生き残る事だけ考えろ! ……信じた通りに進め! ……私達の戦争に……巻き込んで済まなかった……お前達と過ごす時間が長くなるほど……後悔が深くなった……だから、生きて故郷に帰れ……人間のことは気にするな……最初から…これは私達の戦争だったのだ!」

 

 それは、ハイリヒ王国騎士団団長としてではない。唯の一人の男、メルド・ロギンスの言葉だ。立場を捨てたメルドの本心。それを晒したのは、これが最後だと悟ったからだ。

 

 そして、メルドは全身から光を放ちながら自分を取り押さえていた魔獣を振り払い、魔人族の女に組み付く。

 

「魔人族……一緒に逝ってもらうぞ!」

「……それは……へぇ、自爆かい? 潔いね。嫌いじゃないよ、そう言うの」

「抜かせ!」

 

 光を発しているのは、メルドの肉体ではなく彼の首から下げられた宝石のようなもの。これは“最後の忠誠”といい、重要な情報を持つ高い地位の者が戦いに赴く際には必ず身につける魔道具であり、魔法で記憶を読まれる前に自爆するのだ。

 

 メルド団長の身命を賭した最後の攻撃である。しかし、自爆に巻き込まれて死ぬことが確定しているというのに、魔人族は余裕そうだった。そして、輝きを一層増した“最後の忠誠”がまさに発動しようという時、彼女は呟いた。

 

「喰らい尽くせ、アブソド」

 

 と、魔人族の女の声が響いた直後、臨界状態だった“最後の忠誠”から溢れ出していた光が猛烈な勢いでその輝きを失っていく。

 

「なっ!? 何が!」

 

 見れば、その光の奔流は一定の方向に流されており、六本足の亀型の魔物が大口を開けながらメルドを包む光を片っ端から吸い込んでいた。

 

 奴の名はアブソド。魔力を体内に取り込み、ストックする固有魔法を持ち、圧縮・増幅して口から吐き出すことも可能だ。その貯蔵量は膨大で、上級魔法すら完全に飲み込んでしまう。

 

 そして、自爆を封じられたメルドは腹部に衝撃を感じる。そこから砂塵で構成された赤茶色の刃が生えており、腹部から背中にかけて貫かれていた。

 

「……メルドさん!」

 

 光輝が、血反吐を吐きながらも気にした素振りも見せず大声でメルドの名を呼ぶ。直後、砂塵の刃が横薙ぎに振るわれ、彼の体が吹き飛んだ。

 

 地面に叩き付けられ、そこから血溜まりが広がっていく。大量出血しており、誰がどう見ても致命傷である。今度こそ、彼の終わりだった。

 

「うぅ、お願い! 治って!」

 

 香織が回復魔法を使用するも、魔力が殆んど残っていなかったがために傷口が塞がらない。彼女自身も魔力の欠乏で倦怠感に襲われ、膝をつきながらも必死に魔法をかけている。

 

「まさか、あの傷で立ち上がって組み付かれるとは思わなかった。流石は、王国の騎士団長。称賛に値するね。だが、今度こそ終わり……これが一つの末路だよ。あんたらはどうする?」

 

 再び選択を迫られる。提案を拒否すれば、メルド団長のように無残に殺害されるという末路が待っている。受け入れるしかない。そう思った時だった。

 

「ふざ……けるな!!」

 

 満身創痍のはずの光輝から、叫びと共に光の奔流が竜巻のように巻き上がる。危機感を覚えた魔人族は、アハトドに彼を殺すように命令するが……

 

「アハトド! 殺れ!」

「ルゥオオオ!!」

 

 アハトドは彼女の命令に忠実に動きだし、拳二本で光輝をプレスして殺そうとする。だが、光輝が自分を掴むアハトドの腕に右手の拳を振るうと、いとも簡単に粉砕してしまった。

 

 あまりの痛みに光輝を取り落とすアハトドに、彼は強烈な回し蹴りを見舞って吹き飛ばし、そのまま後方の壁にめり込ませる。

 

 恐ろしい程のパワーだ。現在の光輝は“限界突破”の派生技能である“破潰”を発動しており、通常の五倍のステータスを発揮できるのだが、消耗もあって残り時間は三十秒程。副作用も通常よりも激しいものだ。

 

 そのまま、聖剣を拾い上げた光輝は魔人族へと向けて一直線に突っ込んでいく。魔獣が妨害してくるが、その全てを薙ぎ払って進む。

 

「お前ぇー! よくもメルドさんをぉー!!」

「チィ!」

 

 怒号と共に躊躇なく振り下ろされる聖剣。魔人族は砂塵の濃度を高めて防御しようとするも、威力が増した聖剣は砂塵の盾ごと彼女を袈裟斬りにした。

 

「ぐぅ……」

 

 彼女は血飛沫を撒き散らしながら後方へと吹き飛び、背中から壁に激突するとズルズルと崩れ落ちる。そして、光輝は止めの一撃を振りかぶった。

 

「ごめん……先に逝く……愛してるよ、ミハイル……」

 

 死ぬ間際の魔人族は懐からロケットペンダントを取り出すと、恋人の思われる男の名を呼ぶ。その表情は愛しそうなものであり、彼女もまた一人の人間だった。

 

 死を覚悟した魔人族だったが、いつまで経っても衝撃が来ない。見上げてみれば、自分の頭上数ミリの場所で停止している聖剣が存在していた。

 

「あ、あぁ……お、俺は……!」

 

 彼女を見下ろす光輝の瞳からは、恐怖と戸惑いが読み取れる。どうやら、自分が何をしようとしているのか、このタイミングで気づいてしまったらしい。

 

「……呆れたね……まさか、今になってようやく気がついたのかい? “人”を殺そうとしていることに」

「ッ!?」

 

 以前から指摘されていたことだが、光輝は魔人族を魔獣の上位種、もしくは頭の良い魔獣程度に考えていた。魔人族が自分達と同じように誰かを愛し、誰かに愛され、何かの為に必死に生きているなんて、想像も出来なかったのだ。

 

「俺は、人殺しを……」

 

 狼狽える光輝の姿に、魔人族の女は侮蔑の眼差しを向けている。それは勇者への失望か、はたまた戦士として死ぬ覚悟を踏みにじられたことへの怒りか。色々なものが混ざった感情を抱いていた。

 

「お、俺達は人間同士だ。は、話し合おう。話せばきっと分かるはず……」

 

 光輝が聖剣を下げてそんなことを抜かすので、魔人族の女は心底軽蔑したような目を向けて、返事の代わりに大声で命令を下した。

 

「アハトド! 剣士の女を狙え! 全隊、攻撃せよ!」

 

 魔人族の女がアハトドに狙わせたのは、勇者パーティのサブリーダーでもある雫だ。これまでの戦いの様子から、彼女さえ押さえてしまえば勇者パーティは瓦解すると踏んだのだ。

 

 他の魔獣も雫以外のメンバーに襲いかかる。もう、誰一人として生かすつもりはない。彼らを寝返らせるよりも、彼らを利用して勇者を殺すことの方が確実だと判断していた。

 

「な、どうして!」

「自覚のない坊ちゃんだ……私達は“戦争”をしてるんだよ! 未熟な精神に巨大な力、あんたは危険過ぎる! 何が何でもここで死んでもらう! ほら、助けに行かないと全滅するよ!」

 

 光輝が仲間の方を振り返ってみれば、そこでは雫がアハトドに追い詰められている。ステータスを最大まで上げた光輝ですら圧倒されたのだ。彼女では対抗できるはずがない。

 

 光輝は咄嗟に雫とアハトドの間に割り込むが、それと同時に“破潰”のタイムリミットが来てしまい、全身から力が抜け、振りかざされた豪腕の前で無防備にも倒れ込む。

 

「こ、こんな時に!」

「光輝!」

 

 光輝を庇い、雫がアハトドの負傷した腕に斬撃を繰り出し、怯ませた隙に光輝を掴んで仲間の方へと放り投げると、殺意を込めて魔人族の女を睨んだ。

 

 光輝は使い物にならず、仲間は防戦一方。もう、この事態を打開できるのは雫だけだった。

 

「……へぇ。あんたは、殺し合いの自覚があるようだね。むしろ、あんたの方が勇者と呼ばれるにふさわしいんじゃないかい?」

「……そんな事どうでもいいわ。光輝に自覚がなかったのは私達の落ち度でもある。そのツケは私が払わせてもらうわ!」

 

 雫は覚悟を決め、魔人族の女に狙いを定めて神速の抜刀術をお見舞いしようするも、周囲の魔獣に妨害されて近づけない。

 

 一番の問題は、鈍重そうに見える巨体でありながら素早い雫の動きに対応してくるアハトドの存在だ。奴は雫と並走しながら、衝撃波を纏った拳を放ってくる。

 

 スピード特化の剣士であり、防御力が低い雫は回避するか受け流すしかない。衝撃波だけは防ぐことができず、徐々にダメージが蓄積していく。

 

 やがて、長いこと蓄積したダメージが、ほんの僅かに雫の動きを鈍らせた。それは、ギリギリの戦いにおいては致命の隙だ。

 

バギャァ!!

 

「あぐぅう!!」

 

 咄嗟に剣と鞘を交差させて盾にしたが、アハトドの拳は雫の相棒を粉砕し、そのままの勢いで雫の肩に直撃する。吹き飛ばされた彼女は地面に叩き付けられ、力なく横たわった。

 

 雫の肩は完全に砕かれたらしく、右肩が大きく下がって腕がありえない角度で曲がっており、内臓にもダメージが入ったのか、咳き込む度に血を吐いていた。

 

「雫ちゃん!!」

 

 その様子を見て、香織が焦ったような声色で雫の名を呼ぶも、雫は折れた剣の柄を握りながらも、うずくまったまま動かない。

 

 魔力がないため、彼女に回復魔法をかけることもできず、聖弓も放って助けることすらできない。仲間との陣形も、連携も、自分が向かっても無意味だとか、そういった理屈は完全に抜け落ち、あるのは最後くらい大切な親友の側にいたいという思いのみであり、気付いた時には駆け出していた。

 

 無論、無防備で足元がおぼつかないような香織を敵が無視するはずもなく、襲いかかってくるが、彼女は聖弓の刃状になっている部分で切り伏せて進み続け、多少の傷を追いつつも雫の元へと辿り着いた。

 

「か、香織……何をして……早く、戻って。ここにいちゃダメよ」

「ううん。どこでも同じだよ。それなら、雫ちゃんの傍がいいから」

「……ごめんなさい。勝てなかったわ」

「私こそ、これくらいしか出来なくてごめんね。もうほとんど魔力が残ってないの」

 

 香織はうずくまる雫の体をそっと抱き締めて支え、最後の魔力を使って痛みを和らげる魔法を使用する。大切な親友に、苦しみながら死んでほしくなかったのだ。二人は優しい表情で見つめ合い、最期の瞬間を待っていた。

 

 そんな二人にアハトドが迫る。目標を射程に捉えた瞬間、その豪腕は容赦なく振り下ろされ、二人は粉砕されてしまうだろう。

 

「ハジメ君……」

 

 香織はハジメのことを思い浮かべていた。初めて香織が好きになった人であり、この世界で離れ離れになってしまった彼。彼女はハジメと再会するため、ここまで訓練に励んできた。

 

 しかし、その努力も香織が死んでしまえば無駄に終わる。もう、ハジメと再会することもできない。そんな事実に絶望した香織の頬を、一筋の涙が流れていった。

 

 香織はハジメの名を呟き、生きているかも分からない彼に対して、ここで自分が死んでしまうことを謝罪する。

 

「ハジメ君、ごめん……」

 

 アハトドがその豪腕を振り上げた時だった。何処からタタタタタッ!!!と素早い足音が接近し、何者かが魔獣や勇者パーティの面々の頭上を飛び越えたのは。

 

 それはアハトドに向けて飛び込みつつ、空中で大砲のような腕から極大の光弾を放ち、たった今振り下ろされそうになっていた豪腕を吹っ飛ばす。

 

 そして、彼は背中から炎を噴射して加速すると、体を丸めて高速で縦回転し、そのまま球状に変形してアハトドに体当たりをお見舞いする。奴はビリヤードの玉のように弾き飛ばされ、再び岸壁にめり込んでしまった。

 

 二人の目の前に着地したのは、無機質な質感の人型だ。頭部と胸部は赤、それ以外はオレンジ色の装甲で覆われており、顔面には逆三角形の黄緑色に発光するバイザーが存在している。丸い両肩、右腕のアームキャノン、各所に散らばる黄緑色の発光体が特徴的であり、SF作品からそのまま飛び出てきたかのような姿だ。

 

 突然の出来事に、光輝達や彼らを襲っていた魔獣、魔人族の女までもが硬直する。

 

「無事なようだな、白崎さん」

 

 男の声が迷宮に響く。その声を、香織は知っていた。彼女が再会を願っていた彼、ハジメである。

 

「もしかしてハジメ君なの!?」

「あぁ、俺だ。正真正銘の南雲ハジメだ」

 

 ハジメは、そう言いながらバイザーの発光を消して透明化させ、自身の顔を香織に見せる。すると、香織の表情はパッと明るくなった。

 

「そ、その顔は……南雲…君よね?…でも、その姿は……何なの? まるで…パワードスーツ?のようだけれど…どうなっているの? 何処でそんなものを!? 宇宙人!?それともサイボーグ!?」

 

 一方、雫は目の前の存在がハジメであると認識できたものの、ハジメのパワードスーツ姿に混乱しているようであり、瀕死だというのに色々と聞こうとしてくる。

 

「落ち着いてくれ。八重樫さんの売りは冷静沈着さのはずだ。質問なら後で受け付ける。今は、この場を切り抜けることが優先だ」

 

 ハジメは再びバイザーを発光させ、アハトドの方へ向き直る。その黄緑色の眼光に睨まれたアハトドは、どこか動揺しているように思われたが、それを振り払うようにして咆哮すると、豪腕を振りかぶって一直線に向かって来た。

 

「ルゥガァアアアア!!!」

 

 だが、ハジメは慌てない。突撃してくるアハトドと正面から相対し、カツン…カツン…と一歩ずつ前進していく。

 

「危ない!」

 

 香織が警告するが、ハジメは衝撃波を纏う豪腕をアームキャノンによる打撃で普通に弾き返すと、即座に最大まで増幅したチャージビームを胴体に叩き込む。

 

ドオォォォォン!!!

 

 最大チャージビームの一撃を受け、アハトドの胴体に大きな穴が穿たれる。奴はそこから煙を立ち昇らせながら、まるで糸が切れたように後ろへぶっ倒れた。

 

 そして、ハジメは視線とアームキャノンをアハトドの死体から魔人族の女の方に向ける。

 

「そこの魔人族に告ぐ。今すぐこの場から撤退するのであれば、命までは取らないと約束する」

「何だって?」

 

 魔人族の女は思わず聞き返す。彼女の反応は正常と言ってもいいだろう。多数の魔獣に囲まれているという不利な状況で、そのような提案をするような者などいるはずがないのだから。

 

「今すぐ引けば見逃すということだ。さもなければ、先程の攻撃がそちらに降り注ぐことになるが…」

「残念だけど、ここで引く訳にはいかないのさ。このままノコノコと国に帰れば、あたしが殺されるよ」

 

 その直後、魔人族の女は多量の魔獣をけしかけてきた。多勢に無勢にしか見えず、香織は不安そうに声を震わせるが……

 

「ハジメ君……」

「大丈夫だ。俺が、俺達が全て終わらせる」

 

 目の前にいるのは、香織の知る南雲ハジメではない。最強の種族である鳥人族を継ぐ者であり、銀河を守護する戦士としての南雲ハジメである。香織はそんな彼の言葉と背中に安心感を覚えていた。

 

「ハジメ君、頑張って……!」

「あぁ、任せろ」

 

 ハジメはアームキャノンを構える。これから始まるのは、銀河最強クラスの戦士による蹂躙劇。さあ、刮目せよ。宇宙戦士の戦いを見るがいい。




ハジメが登場する辺りは、スーパーメトロイドのテーマを脳内に流しながら書いてました。メトロイドの中で一番好きなBGMだったりします
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