鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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タイトル通りです


57話 魔人族終了のお知らせ

「サーモバイザーを使うまでもないな……」

 

 ハジメはそう呟きながら手を左側に伸ばし、虚空を掴む。そこには確かに感触があり、力を込めるとミシミシと音が鳴る。

 

 力を込めて一気に握り締めると、何もなかったはずの空間から血と肉片が溢れだし、頭を潰された異形の魔獣が死体となって現れた。

 

 この魔獣の名はキメラ。獅子の頭部に竜のような手足と鋭い爪、蛇の尻尾、鷲の翼を持っている。

 

 キメラには透明化能力があるのだが、少し動くだけで空間が揺らいでしまう程度であり、気配もダダ漏れなのでハジメからしたら隠れていないも同然だった。

 

 気配感知により、透明化したキメラが辺り一帯に潜んでいることが分かっている。ハジメは死体を投げ捨てると、一見何もない空間にビームを撃ち放った。

 

ドガッ! ドガッ!

 

 二発のビームが飛んでいき、目標を違わず問答無用に貫く。すると、空間が一瞬揺らいで頭部が吹き飛んだ二体のキメラが現れ、僅かな停滞のあとぐらりと揺れて地面に崩れ落ちた。

 

 ハジメはその後も発砲を続け、隠れているつもりのキメラを片っ端から滅していく。クラスメイトの側にも奴らは潜んでおり、救出対象を傷つけないように精密な射撃をお見舞いする。

 

 これはもはや戦いですらない。一方的な狩猟と同じであり、クラスメイト達を脅かしていたキメラは撃たれるだけの七面鳥と化していた。

 

「ははっ、透明化が意味を成さないとはね……」

 

 透明化して敵を翻弄する作戦が通用しないと理解した魔人族は、取り敢えず数で取り囲んで物量で圧倒する戦法に切り替え、とにかく魔獣を突撃させていく。

 

 ハジメの背後に黒猫のような容姿の魔獣が忍び寄り、鋭い何本もの触手を突き刺そうと伸ばしてくるが、振り向き様の回し蹴りで触手を纏めて迎撃され、次の瞬間には頭蓋を撃ち抜かれる。

 

 そんなハジメの左右から同時に襲い来るのは、四つ目の狼。ウルにいた機械狼の素体であり、先読み能力もこの時点から存在するのだが、それが追い付かない程の早撃ちによって僅かコンマ一秒の間に両方とも始末された。

 

 そこへブルタールが突っ込んできて岩石のメイスを振り下ろすが、ハジメは跳躍して奴の頭上に飛び乗り、至近距離からチャージビームを放って爆殺する。

 

 着地した直後、ブルタールの後ろに隠れていたキメラが飛び出して噛みついてくるが、ハジメはわざと左腕で受ける。そして、そのまま腹部にアームキャノンを押し当てると、チャージビームで胴体をぶち抜いてしまった。

 

 力を失ったキメラがハジメの左腕から脱落する。その間にも数多くの魔獣が襲ってくるが、ハジメはビームを高速で連射し、近接攻撃で叩き潰し、キメラが地面に落下するまでに多くの死体を量産する。

 

 こうして作られたのは、血肉で彩られた鮮やかな絨毯。これら全て、ハジメ一人によって生産されたものだ。“私が作りました”と生産者表示をしていいかもしれない。

 

 次の獲物を探していると、「キュワァアア!」という奇怪な音が発生する。ハジメがそちらを向くと、六本足の亀であるアブソドが口を大きく開いており、その口の中には純白の光が輝きながら猛烈な勢いで圧縮されているところだった。

 

 ハジメは知らないが、それはメルド団長が発動させようとしていた“最後の忠誠”に蓄えられていた膨大な魔力である。それを圧縮し、威力を高めた上で放とうしているのだ。

 

 次の瞬間、ハジメを標的として膨大な魔力が砲撃となって発射される。避けることは簡単だが、後ろには香織をはじめとした生存者がいる。射線上の地面を抉り飛ばしながら迫る死の光への対応は決まっていた。

 

〈ライトニングアーマー、オンライン〉

 

 それは、地に根を生やした大樹の如く。あらゆる攻撃を無効化する電撃のフォースフィールドを身に纏い、強力な砲撃が迫っているにも拘わらず、どっしりと構えて不動の意思を示す。

 

 魔力の砲撃が直撃した瞬間、凄まじい轟音が響き渡り、発生した衝撃波によって迷宮が揺れる。天井が、壁が、地面がひび割れ、土煙に辺りが包まれる。

 

 周囲から見えているのは魔力の砲撃と、緑色の雷鎧を纏う人影のみ。やがて、アブソドの蓄えていた魔力が底を尽き、砲撃が終わると同時に何も見えなくなった。

 

「やったか!?」

 

 魔人族の発言に皆が思った。それは死亡フラグというものではないかと。案の定、直後にそれは回収される。土煙を切り裂いて一発の光弾が飛び出し、彼女の右頬を掠ったのだ。

 

 右頬に酷い火傷を負い、後ろへ倒れこむ魔人族。その右肩には白い羽毛と肉片が混じった何かがべっとりと付着していた。

 

 その正体は、彼女の右肩に乗っていた白い鴉のような魔獣だったものである。固有魔法によって一定範囲内の味方を大幅に回復させることができ、勇者パーティを苦戦させた原因の一つとなっている。

 

 そして、土煙の中から無傷のハジメが現れる。遠藤からの情報で敵戦力のことは把握しており、白鴉を撃ち抜いたのも回復を阻止するためだった。

 

「あんた、パイレーツの連中が言っていた鳥人族の後継者だね?」

「あぁ、そうだ」

 

 ハジメはそう返答しながらも、アブソドをロックオンしてノーマルミサイルを発射する。それは開け放たれていた口内に音速で突き刺さり、奴を一撃で粉砕した。

 

「真正面からじゃ勝てないわけだ……でも、まだやりようはあるよ。お前達、他の奴らを狙いな!」

 

 魔人族の指示で、魔獣達はハジメを避けて生存者を狙う方向にシフトする。人質にすることで強力な戦力であるハジメを押さえ込むつもりだ。

 

 しかし、そんなことは想定済みであり、ハジメが慌てることはない。何故なら、援軍がこの場に到着するからだ。

 

 最初に狙われたのは、香織と雫である。数体の黒猫が一斉に触手を放ち、彼女達を串刺しにしようとする。

 

 歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、その前に二人の人影が割り込む。剣を携えたその二人は、迫る触手の群れを次々と切り刻んでしまった。

 

 ボトボトと地面に落ちていく触手だったもの。彼女達が見たのは、黒い和服の女性と仮面を付けた男。その正体はティオと清水である。

 

「妾に合わせよ」

「ええ、もちろん」

 

 二人は同時に剣を構え、迫る黒猫やキメラを相手取る。互いに互いの隙を埋めるような立ち回りであらゆる敵を寄せ付けず、生存者を守る盾のようだ。

 

「美しい……」

 

 二人の剣技を見て、剣士である雫は率直な感想を漏らす。彼らの剣技はしなやかな清流のようでありながら、敵に対しては激流のように荒々しく牙を剥く側面を持っている。美しいものにはトゲがある。それを体現した剣術であった。

 

 一方、後方に固まっているクラスメイト達にも例外なく敵は襲いかかっていた。無防備な味方を守るため、結界師の鈴が結界を展開しようとするも、魔力の欠乏で上手く出せず、ふらついてしまう。

 

 万事休すかと思われたが、いきなり飛び込んできたウサミミの少女が敵を殴り付け、蹴り付けて敵を迎撃し、たった一人で追い払ってくれた。

 

「みんな!! 助けを呼んできたぞ!!」

 

 そして、シアに担がれている遠藤がクラスメイト達に叫ぶ。“助けを呼んできた”という言葉に反応して、状況をあまり飲み込めていなかった光輝達がようやく我を取り戻した。

 

 そこへ敵が再び押し寄せてくる。先ほどよりも増えており、シアでも完全に抑えきれるか分からないのが正直なところ。だが、彼女には頼れる友人がいた。

 

「シア、ここは任せて」

 

 それはユエだ。最後に姿を現したユエは敵集団を睥睨する。そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

「“蒼龍”」

 

 その瞬間、ユエ達の頭上に直径一メートル程の青白い球体が発生した。それは、炎系の魔法を扱うものなら知っている最上級魔法“蒼天”であるのだが、それを詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。それを目の前で見せられたので、特に後衛組は呆然と頭上の蒼く燃え盛る太陽を仰ぎ見るしかなかった。

 

 だが、驚くにはまだ早い。何故なら、蒼き太陽がうねりながら形を変え、大蛇となって敵に襲いかかって一瞬で消滅させてしまったからだ。

 

 やがて、大蛇は全長三十メートル程の蒼く燃え盛る東洋龍にまで成長する。ユエの蒼龍はとぐろを巻いて生存者を守り、鎌首をもたげると敵に向けてその顎門をガバッっと開く。

 

ゴァアアアアア!!!

 

 咆哮と共に魔獣達は浮かび上がり、口内に次々と吸い込まれると焼却されていく。“蒼龍”は火属性最上級魔法“蒼天”と重力魔法の複合魔法となっており、ユエのオリジナルだ。強制的に引き寄せた敵を灰すら残らない程に焼き尽くすという、恐ろしい魔法である。

 

「ホントに……なんなのさ」

 

 力なく、そんなことを呟いたのは魔人族の女だ。いかなる策を練ろうとも、圧倒的な力によってひっくり返されるという理不尽。戦略が戦術に負けるという事態に、彼女の胸中は諦観の念に侵食されていた。

 

「何なんだ……彼らは何者なんだ!? 最初に出てきた彼は一体!?」

 

 光輝が呟く。自分達を苦しめてきた魔獣達が、謎の集団によって歯牙にもかけず駆逐されている。最初に現れたパワードスーツに対しては特に理解が追い付かず、ハジメであることに気づいていなかった。

 

 その疑問に対する答えをもたらしてくれたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、遠藤だ。

 

「はは、信じられないだろうけど……あいつは南雲だよ」

「「「「「「は?」」」」」」

 

 遠藤の言葉に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。正体を本人から明かされた雫ですら混乱していたのだ。光輝達が簡単に信じられるはずがない。

 

「だから、南雲、南雲ハジメだよ。あの日、橋から落ちた南雲だ。生き延びて、あんな装備を手に入れ、強い仲間とチームを組んで帰ってきたんだよ!」

「南雲って、え? 南雲が生きていたのか!?」

 

 光輝が驚愕の声を漏らす。だが、ハジメは最高戦力であるという共通認識がクラスメイト達にはあり、目の前の無双ぶりを見せられては否定できなかった。

 

(あの力があれば、俺だって……)

 

 そして、光輝は思ってしまった。檜山と同じく、パワードスーツがあれば自分も強い力を手にいれることができ、勇者としての威厳を示せるのではないかと。そんなことを思いつつ、彼は戦いを眺めていた。

 

 やがて、戦いはターニングポイントを迎える。魔人族が率いている魔獣軍団がついに全滅し、残りは指揮官だけとなったのだ。

 

「お前に残された選択肢は三つだ。このまま死ぬまで戦うか、降伏するか、撤退するか。撤退するならば、見逃してもいい」

「降伏したところで、異種族に対する扱いなんて決まっているだろうに……それに、撤退したところで帰る場所なんて……」

 

 ハジメの提案に対して、魔人族の女は戦って死ぬつもりのようだ。人間族に捕まれば何をされるか分からない上、帰ったところで殺されるのが目に見えているからだ。

 

「人間族ではなく、我々に降伏すればいい。我々は複数の種族の集まりだ。迫害されるような種族もいるし、お前と同じ魔人族も所属している。悪いようにはしない」

「それでも、あたしには戦士としての矜持があるのさ。戦って死ぬことを選ぶよ」

 

 彼女はいざというときのために温存していた魔法をハジメに向けて放とうとする。だが、それが放たれることはなかった。

 

「ガハッ!?」

 

 何故なら、彼女の胸からエネルギーの刃が突き出たからだ。見れば、彼女の背後には緑色のパワードスーツが立っており、奴によって背中から貫かれていた。奇しくも、彼女はメルド団長と同じ末路を辿ることになった。

 

 唐突の出来事に、その場にいた全員が凍りつく。そして、この事態を引き起こした張本人に視線が集まる。皆、奴のことはよく知っていた。

 

「檜山!!」

「あの時はよくもやってくれたじゃねえか。今度こそ、てめぇを殺してやる。そうすれば、全ては俺のものだ」

「殺されるのはお前の方だ。これまでに犯した多くの罪……その命で償ってもらうぞ」

 

 一度終息したはずの異常事態は檜山の出現によって再燃し、加速する。互いに武器を構え、臨戦態勢へと移行している。

 

 だが、ここで光輝が横槍を入れた。

 

「ま、待つんだ! 檜山、南雲! クラスメイト同士で戦ったって、何もいいことはない! ここは、俺に免じて武器を収めるんだ!」

「あぁ!? お飾り勇者が、てめえ風情が俺に指図するんじゃねえよ!! ぶっ殺す!」

 

ドパンッ!

 

 檜山が発砲し、光輝に向けて銃弾が飛んでいく。そのまま彼の脳天がぶち抜かれるかと思われたが、銃弾はシアによって掴まれる。

 

「あなたは寝ていてください」

 

 光輝の首筋に手刀が当たり、彼は気絶してしまう。邪魔者がいなくなったため、今度こそ二人は戦いを開始した。




次回はvs檜山パート2になります
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