「ギエエエエッ!!!」
滞空するレドギア星人が再度ハジメに向けて小型ミサイルを斉射してくる。ハジメは距離を取るのではなく、逆に発射してきた本体に向けて駆けていく。
レドギア星人の生体ミサイルの精度はあまり高い方ではない。どちらかというと面制圧がメインであり、走るだけでも避けることは可能なのだ。
ハジメはミサイルを避けながら、清水がいる場所から急速に離れていく。レドギア星人との戦いは激しいことが予測され、それに巻き込まれないようにするためだ。
「ここまで来れば……」
清水の姿が点になるくらいまで離れたハジメの目の前に、レドギア星人が降り立つ。そして、胸部のコアがしばし輝いたかと思うと、そこから紫色の太い光線が放たれる。
咄嗟に側宙で回避するハジメ。そこへ、間髪入れずにレドギア星人の伸縮する長い腕が襲いかかる。奴のパワーは桁違いだ。並みの人間なら即死である。
「くっ!」
サイドステップで突き出された腕の先端を避け、二発目はアームキャノンで弾き、反撃のチャージビームを放つ。
が、レドギア星人はビームの直撃など意に介さずに頭部にある一対の触腕を振り下ろして掴みかかってくる。ハジメは高く跳躍して避けると、レドギア星人の頭上に乗って至近距離から攻撃する。
『アイスビーム、オンライン』
アイスビームの直撃を受け、レドギア星人の触腕が凍結する。奴の頭上より退避しつつもミサイルを放ち、凍結したそれを粉砕した。
一方、清水はマグドール星人の群れと戦いを繰り広げていた。
「流石に多すぎじゃないか?」
マグドール星人が口から吐き出したマグマ弾の雨を突き進む清水。直撃すれば大ダメージは確実なのだが、彼の周囲を浮遊する一対のシールドがそれを防いでくれる。
これは衛星という竜人族製のアーティファクトである。脳波で動きをコントロールすることができ、清水の命令に従って完璧な護りを提供する。
衛星で身を守りつつ、マグドール星人の一体へと接近する。体と比べて異様に長い腕を振り回して攻撃してくるが、跳躍して回避しながら下方を通り抜ける腕を魔力刃を纏った撃剣で切り落とす。
「もらった!」
次の瞬間、マグドール星人の頭蓋へと撃剣が突き立てられ、深々と差し込まれる。そして、トリガーを引かれたことで光弾を至近距離でぶちこまれ、絶命した。
「狙い撃つ!」
マグマに沈んでいくマグドール星人の死体から小島に飛び移ると、狙杖の銃身を衛星の縁に乗せ、安定させた上で狙撃を行う。光線によって頭部を撃ち抜かれ、奴らは次々と沈んでいく。
不意に背後より現れたマグドール星人が口を大きく開いて清水を丸のみにしようとする。だが、咄嗟に放たれた強烈な後ろ蹴りを受けてグロッキー状態に陥り、口内に突っ込まれた狙杖による一撃で仲間の後を追うことになった。
「一体ずつは面倒だ。まとめて終わらせてやるぜ」
これまでに何体も屠ってきたが、マグドール星人の生き残りはまだ残っていた。マグマに潜伏している個体が増援として現れたからだ。残りは六体であり、まとめて始末すべく魔法を行使する。
「ヘカトンケイル!」
空中に現れた六つの魔法陣から三対の漆黒の豪腕が出現する。それによって六体のマグドール星人をマグマより引きずり出し、空中へと放り投げると……
「オラオラオラオラ!!」
全力のラッシュを繰り出してマグドール星人らをボコボコにしつつ空中へと強制的に貼り付けてしまう。そして、確実に屠るための魔法が発動された。
「戦神の鉄槌よ、霆によりて悉くを粉砕せよ “トールハンマー”!」
現在進行形で打ち上げられている彼らの頭上に現れたのは、巨大な雷球だった。とある神話に登場する戦神が持っていたとされる武器の名を冠するこの魔法は、圧縮した雷の塊を落として目標を粉砕するものだ。
そして、戦神の鉄槌が振り下ろされる。マグドール星人らは落下してきたそれに飲み込まれ、一瞬でその身を滅ぼされることになった。
一方、ハジメとレドギア星人の戦いも佳境を迎えていた。
レドギア星人が何度目か分からない飛翔を見せ、いつものように空中で小型ミサイルを斉射する。避けることは容易なのでハジメも普通に回避するが、奴はその直後に体当たりをお見舞いしてきた。
奴の最大の武器はその肉体の大きさにあるだろう。見た目相応に質量もあるため、それが空を飛んで体当たりを仕掛けてくれば、恐ろしい程の威力を発揮する。
「“豪腕”」
ハジメはアームキャノンのある右腕に腕力を強化する魔法を発動し、レドギア星人の空中体当たりを迎え撃つ。突っ込んできた奴の巨体をアームキャノンの一撃で弾き返してしまった。
「ギエエッ!?」
迎撃されてしまったレドギア星人は、ハジメから少しばかり距離を取って着地する。そして、長い両腕をアウトリガーのように地面へと突き刺すと、胴体中央のコアへとエネルギーチャージを開始する。
これまで何度もレドギア星人が光線を放ってくる機会はあったが、それらは素早く放たれるものであり、ハジメなら耐えられるレベルに過ぎない。だが、今回は最大威力で放とうとしていた。
「させるか」
『スーパーミサイル、オンライン』
エネルギーチャージを続け、今もなお激しく輝いている胴体のコアに向けてスーパーミサイルを発射する。それは寸分の狂いなくコアへと着弾し、チャージを中断させて大きく怯ませ、グロッキー状態にすることに貢献した。
その隙はハジメは見逃さなかった。スタートダッシュを切って駆け出し、背部ブースターを点火、その右腕はエネルギーチャージを開始しており、ビームを増幅させながら身動きがとれないレドギア星人へと迫る。
「終わりだ」
エネルギーが最大までチャージされたアームキャノンが、レドギア星人のコアに押し当てられ、その威力を解放する。コアへと致命の一撃を受けたレドギア星人は一瞬で爆散した。
「終わったか……」
「南雲ぉ!そっちも終わったみたいだな!」
「あぁ、何とかな」
二人は互いの無事を確認する。スペースパイレーツというイレギュラーとの遭遇戦であったが、ハジメ達の敵ではなかった。
「立ち止まってる暇はない。行くぞ」
「おうよ!」
ゆっくりしてはいられないため、先へと進む二人。清水が魔獣を狩り、ときおり現れるパイレーツをハジメが蹴散らし続け、最後の地点までたどり着く。
その途中でミノタウロスみたいな奴にも遭遇していた。ハジメが戦ったガーディアンの通常仕様であり、それでもお釣りが来るくらいの強さだったが、清水の手で始末されている。ちなみに止めは右腕に装着した豪腕による一撃だ。
そして、最後の試練は前と変わらない。迫り来る百体のマグマ蛇を倒すという持久戦形式だ。清水は持てる全てのアーティファクトを使用してそれを突破し、解放者の隠れ家への道を拓いた。
「よっしゃあ!これで攻略だ!」
「よく頑張ったな、清水」
これで攻略は完了したので、中央の島に存在するドームへと向かっていく二人。もう少しでたどり着くというときだった。
その瞬間……
ズドォオオオオオオオオ!!!!
頭上より極光が降り注いだ。以前、ハジメがオルクス大迷宮のガーディアンから受けて重傷を負った攻撃にそっくりだが、それよりも遥かに強力な神罰の如き一撃。
狙われたのはハジメだ。ハジメは乗っていた足場ごと極光に巻き込まれ、崩壊した足場と共にそのまま落下し、マグマの海の中へと消えてしまった。
「南雲ぉぉぉ!!!」
自身の後方にいたハジメが落下していく様を見て、絶叫する清水。救助は間に合わず、ハジメの姿は見えなくなっている。少し焦ってしまうが、とあることを思い出して冷静さを取り戻した。
(いや、待てよ……南雲のパワードスーツなら即死はあり得ない。マグマに耐えられる装備もあったはず。南雲なら大丈夫だ……)
ハジメとした何気ない会話が、ハジメの無事を清水に確信させることになった。それと同時に、無数の閃光が降り注いできた。
「チッ! “嵐空”!」
清水は咄嗟に風属性の中級防御魔法を発動し、圧縮された空気の壁によって防御する。魔法はあまり使ってこなかったので魔力に余裕があり、高い適性のある風属性なので守りは頑強だ。
全ての閃光を受けきった後、頭上より男の声が聞こえてくる。それは、清水にとって聞き覚えのあるものだった。
「ここで待ち伏せていて正解だった。鳥人族の後継者とやらも、この程度だったというわけだ……おや、誰かと思えば貴様は行方不明になった実験体ではないか」
「フリード!!」
そこには、いつの間にか、そこにはおびただしい数の灰竜とそれらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜が飛んでおり、その白竜の背に赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男がいた。
「まさか、生きていたとはな。まあいい、鳥人族の後継者に引き続き、お前の魂も神の元へと送ってやろう」
「死ぬのはお前だ。よくも、俺の体をこんなにしてくれたな。強くなれたことには感謝してるが、それはそれとして殺す」
清水は殺意を全開にする。奴の名はフリード・バグアー、魔人族の将軍であり、清水を改造した張本人である。
「私を殺せるとは思わないことだ。私は神代の力を手に入れた。故に私は、異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である。アルヴ様は私に直接語りかけて下さったのだ。“我が使徒”と!」
「この狂信者が……イシュタルと変わらねえな」
「私は奴とは違う!その言葉、我が主への侮辱であるぞ。よって、我が主の名の元に貴様を断罪する!」
「やれるならやってみろ!」
大火山の最深部にて、狂信者と化け物が激突する。方や異教徒を滅するため、方や自分を改造した相手に復讐するため。その力を行使する。戦いはまだ、終わらない。