鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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65話 神代魔法の使い手

「我が主の裁きを受けよ」

 

 フリードの命令で幾多の灰竜が顎門の砲列を敷き、小極光による斉射を行う。その場から大きく飛び退いて回避するが、乗っていた足場は破壊され、飛んだ先にも足場はない。

 

「愚かだ。わざわざ身動きのとれぬ空中へと逃れるとは。為す術なく死ぬがよい」

 

 重力に従って落下していく清水を狙い、灰竜達が再び斉射を行う。落ちていく軌道を予測するのは容易であり、彼に閃光が迫るが……

 

「そんなこともあろうかと」

 

 清水の収納アーティファクトから一枚の布のようなアイテムが飛び出した。それは彼の背中へと素早く移動し、某蝙蝠男のような漆黒のマントとなる。次の瞬間、彼はフワリと浮遊して上昇し、その下を斉射された小極光の群れが通過していく。

 

「ハジえもんのアイテムは役に立つぜ」

 

 これは、ハジメが作ったアーティファクト〈反重力マント〉である。バイオ素材製の薄い素材に金属繊維を織り込んでおり、そこに生成魔法で重力魔法を付与している。そして、このマントにはもう一つの機能があった。

 

「浮遊しただけで調子に乗るな。我が主の威光の前にひれ伏すがいい」

 

 三度目の斉射だ。今度は清水を包囲するような陣形からの砲撃であり、確実に殲滅するつもりなのだろう。だが、マントが悪魔の翼のように変形したかと思えば、清水は閃光の中へと突っ込んでいった。

 

 反重力マントにはパワードスーツの技術を応用した変形機能が搭載されており、浮遊するだけでなく鳥のように飛翔することも可能なのだ。

 

 清水は撃剣と狙杖を装備し、随伴させた衛星で自身に当たる攻撃だけを防御し、閃光の中を突き抜けていく。行く手を阻む灰竜を狙撃で落とし、すれ違いざまに切り裂いて包囲を突破し、フリードへと迫る。

 

「食らいやがれぇぇ!」

 

 漆黒の豪腕を一対のみ召喚し、それぞれに爆筒と岩を切り出したかのような大剣を装備させる。両腕の撃剣と狙杖も合わせ、全武装による攻撃を実行する。貫通力に優れたビームが、高い連射性能を持つビームが、爆発するエネルギー弾が、振り抜かれた大剣より発生した斬撃を伴う竜巻がフリードへと向かう。

 

 しかし、数頭の灰竜が射線へと割り込むと、直後、正三角形が無数に組み合わさった赤黒い障壁が出現し、全ての攻撃を受け止めてしまった。

 

 無論、何度も攻撃を繰り返せば障壁にも亀裂が入って割れそうになるのだが、他の灰竜が射線上に入ると同じように障壁が何重にも展開されていき、思ったように突破が出来ない。よく見れば、灰竜の背中にはリクガメのような魔獣が張り付いており、甲羅を赤黒く発光させて障壁を展開していた。

 

 さしずめ、あの亀は移動式のシールドジェネレーターなのだろう。その防御力の高さはさることながら、灰竜の高い機動力と組み合わさることで凶悪な性能を発揮する。

 

 ウルを襲ったものやオルクスで勇者一行を襲撃したもの、オアシスを汚染していた巨大スライムもそうだが、灰竜や障壁亀、奴の騎乗する巨大白竜も神代魔法による産物である。これら全てをフリードが創造したのだ。

 

「私の連れている魔物が竜だけだと思ったか? この守りはそう簡単には抜けんよ。さぁ、見せてやろう。私が手にしたもう一つの力を。神代の力を!」

 

 そう言うと、フリードは極度の集中状態に入り、微動だにせずにブツブツと詠唱を唱え始めた。手には、何やら大きな布が持たれており、複雑怪奇な魔法陣が描かれているようだ。

 

 フリードがすでに大火山を攻略しているとしたら、彼の言うもう一つの神代魔法は空間魔法だろう。何を仕掛けてくるのかは分からないが、ユエを見ているので恐ろしさは知っているため、詠唱の妨害のために攻撃を続行する。

 

 しかし、灰竜達は障壁を突破されて墜落しても、後詰めがその穴を埋めて新たな障壁を展開してしまう。こちらはたった一人なので、明らかに手が足りなかった。やがて、奴の詠唱が完成してしまう。

 

「“界穿”!」

 

 魔法名が唱えられた瞬間、フリードと巨大な白竜の姿が消える。いや、実際には傍らに出現した光り輝く膜のようなものに飛び込んだだけだ。

 

 界穿はワープゲートを生み出す空間魔法だ。かなり難易度が高く、十分に習熟した上で使用するものだ。それでも長い詠唱と複雑な魔法陣が必要なため、攻撃に晒されるような環境では本来なら使用されない。

 

 次の瞬間、清水が気配を感じて振り向けば、目前に大口を開けた白竜とその背に乗って彼を睨むフリードの姿があった。白竜の口内には、既に膨大な熱量と魔力が臨界状態に達している。二枚のシールドが射線に割り込んだのと、ゼロ距離から極光が放たれるのは同時だった。

 

「ぐぅうううう!?」

 

 シールドに直撃した極光の衝撃と、防御の隙間から漏れてしまった極光の一部を受け、大きく吹き飛ばされる。強靭であるはずの肉体が悲鳴を上げ、同時に彼の口から苦悶の呻き声が上がる。

 

 吹き飛ばされた清水は、付近にあった足場に叩きつけられる。絶大な衝撃により意識が朦朧とし、体も咄嗟に動かせない。ふと、斜め前を見上げると、白竜が攻撃準備を整えているのが見えた。

 

「異教徒よ、悔い改めるのだ」

 

 フリードは清水へ向けて掌を翳し、止めを刺すように白竜へと命令する。その口内のエネルギーは増幅を開始しており、臨界に達した途端に解き放たれるだろう。

 

「いや、悔い改めるのはお前だ」

 

 フリードが勝利を確信した瞬間、それに水を差すような言葉が背後より聞こえてくる。そこには紫色のオーラに包まれたヒト型のシルエットが浮遊していた。

 

『スーパーミサイル、オンライン』

 

 右腕の先端より射出された緑色の極太飛翔体が背後よりフリードに迫る。彼が反応する前に灰竜達が割り込んで障壁を展開するが、接触した瞬間に大爆発が起き、ガラスが割れるような音と共に障壁が粉砕され、割り込んだ灰竜も爆風で全滅した。

 

「障壁が一撃で!?」

 

 あらゆる攻撃に耐えてきた障壁が一撃で粉砕されたことに、フリードは驚きを隠せない。そして、決して少なくない隙を生じさせることになった。

 

「余所見している場合か?」

 

 隙を突き、フリードとの距離を詰める清水。奴の懐へと飛び込み、撃剣を素早く斜めに振り下ろした。

 

「ぐぁあ!?」

 

 フリードは一歩下がることで致命傷を免れたが、袈裟斬りにされて右肩から左腰にかけて鎧が切り裂かれ、肉体に一直線の切創が刻まれる。そして、突如として現れた漆黒の豪腕によって白竜ごと殴り飛ばされ、水平に吹き飛んでいった。

 

「遅いぞ南雲!」

「悪かった。強敵を相手にした清水の実力が見たくてな、しばらく見させてもらった」

 

 白竜は吹き飛んだ先ですぐさま体勢を建て直し、フリードはマグマに落ちるかと思われたが、偶然にも近くにいた灰竜に拾われたことで免れる。そして、ハジメの姿を見上げた。

 

「何故だ、何故生きている? 貴様はマグマの中へと落ちたはずだ」

「マグマに落としたくらいで死ぬと思うな」

 

 ハジメのパワードスーツはマグマに落ちても即死するようなものではない。エネルギーシールドとスーツ本体の耐久力が限界を迎えなければ、耐えることは可能なのだ。

 

 さらに、グラビティ機能を発動することで防護性能が向上し、マグマの熱に余裕で耐え、地上を行くかのように素早い移動も可能になるため、マグマであろうとハジメを阻むことはできない。

 

「想定外だ……仕方があるまい、未だ危険を伴うが、この魔法で空間ごと破砕するのみ」

 

 フリードは合流した白竜へと乗り換えると、全ての灰竜で何層もの防御を固めた上で次の魔法を使おうとする。しかし……

 

「そうはさせん!」

 

 その瞬間、何処かから赤黒い斬撃が飛来した。それは何重もの障壁をいとも容易く切り裂き、フリードと白竜をも餌食にしようとする。危険を感じて避けなければ、真っ二つになっていただろう。

 

「今度は何者だ!?」

 

 斬撃が飛来した方向には、一人の男が浮遊していた。その肌は浅黒くなっており、僅かに尖った耳があるため、フリードと同族のはずだった。

 

「貴様、魔人族か? どうして私を攻撃する?」

「我が名はノクサス・ウォゾン。邪神に狂った同族を討ち、魔人族の未来を守る者だ」

「ウォゾンの一族だと?アルヴ様に反旗を翻し、その血筋は断絶しているはずだ」

 

 援軍として現れたのは、ウルで共に戦った魔人族の魔剣イグニスの使い手、ノクサスであった。空間魔法でこちらに現れ、魔力を断つ魔剣の力で障壁を切り裂き、新たに獲得した重力魔法の力で浮遊している。

 

「同志ハジメ、久しぶりだ」

「ノクサス、来てくれて助かった」

「ノクサス師匠、どうしてこんなところに?」

「たまたま近くに来ていてな。空間魔法が使用されたのを検知し、駆けつけた次第だ。まさか、ガーランドの将軍がいるとはな……」

 

 ノクサスとしても、フリードの存在は完全に想定外だった。本来の予定では、まだ遭遇するはずではなかったのだから。

 

「その剣、魔剣イグニスか……魔法を扱う私では相性が悪すぎる。おそらく、空間魔法も獲得しているのだろう。異教徒や反逆者を見逃すのも癪だが、ここは引かせてもらう」

 

 不利を悟ったフリードは攻略の証を掲げて外へのショートカットを開く。白竜の背に乗り、生き残りの灰竜を引き連れて撤退した。

 

「一先ず、戦いは終わったか……」

「しかし、奇襲されたときはビビったぜ。南雲がいきなりやられたからな……」

「あの時は気配を全く感じなかった。空間魔法で空間を歪めて潜んでいたのかもしれないな」

「私も使い手だから分かるが、空間魔法は神代魔法の中でも特に強力な一つだ。故に、空間魔法に対抗できるのは空間魔法だけだろう」

 

 この戦いにおいて、ハジメ達は空間魔法の脅威を改めて知った。そして、対抗できるのは基本的に空間魔法のみであり、対抗すべく新たな使い手が誕生しようとしていた。それは、清水である。

 

「これが、空間魔法……」

 

 魔法陣によって記憶を読み取られ、パイレーツというイレギュラーはあったものの、清水は攻略を認められ、脳に知識を刻まれた。

 

「では、アンカジに戻るとしよう。皆、俺のスターシップに乗ってくれ」

 

 今度はハジメが攻略の証を掲げ、外へのショートカットを開く。あの時と同じようにスターシップが降りてきたので、三人はそれに乗り込んで離脱した。

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