鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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66話 新生・解放者

 

「ありがとう、貴殿らのおかげでアンカジは救われるだろう。領主として心より感謝を申し上げる」

 

 ランズィはビィズや配下と共にハジメに対して深く頭を下げる。帰還後、ハジメは採取した静因石をアンカジに全て提供し、錬成で粉末状に加工した。

 

 香織が全力を尽くして治療に当たってくれたお陰で新たな死者は未だ出ていない。そこにハジメより提供された粉末状の治療薬が投与されたことで、大勢の患者が命を救われた。

 

 オアシスの汚染が完全に無くなるにはかなりの時間がかかりそうだが、ユエが用意した巨大な貯水池と大量の水があるし、既に王国へ救援要請を出しているそうなので、時間が解決してくれるだろう。

 

「貴殿らに対してどのように報いればよいだろうか……報酬はいくらでも弾もう。何なりと申し付けていただいても構わない」

「報酬は大丈夫だ。だが、一つだけ頼みたいことがある……」

「何だろうか?」

 

 ハジメは報酬を要求しなかった。アンカジ公国は病が蔓延した影響で懐事情が苦しいからだ。元より、これは善意による行動であり、報酬を求めるつもりは最初からなかったのだ。

 

「大きい建物か広めの部屋を貸してほしい。この後、俺達は重要な話し合いをする予定だ。人払いもしていただけると助かる」

「それならお安いご用だ」

 

 ランズィは一つ返事で承諾してくれる。彼にとってハジメは祖国を救ってくれた恩人なのだ。仮に報酬を断られたとしても、何らかの形で恩に報いるつもりだった。

 

「ハジメ殿、父上が建物を確保している間、あなたに見せたいものがあるのです」

「見せたいもの?」

 

 ランズィとの話が終わった後、ビィズがそんなことを話す。どうやら、ハジメに見せたいものがあるらしい。

 

「ええ、未知の物体なのですが、ハジメ殿ならば何か分かるかと思いまして……」

「なるほど……見せてほしい」

 

 ハジメはビィズに連れられて宮殿のとある区画へとやって来る。なお、彼の頼みでパワードスーツの状態になっている。

 

「ここは我が国の宝物庫になります。本来なら限られた人物しか入れないのですが、今回は特別です」

 

 売れば一生働かずに過ごせるような宝物の数々を横目に、二人は宝物庫の中を奥へと進んでいく。

 

「ハジメ殿、これです」

「これは……」

 

 そこに鎮座していたのは、頭部と腕部が完全に欠落している鳥人族だった。肩が丸いので辛うじて判別できるレベルだ。

 

「最近になって発掘されたものです」

「ビィズ……発掘された当時、像の付近に何かアイテムは落ちていたか?」

「ええ、勿論。お持ちしましょう」

 

 ビィズは何処かからアーティファクトらしきケースを持ってきてくれる。内容物は透明な結界によって保護されており、二つに割れたカプセルの間を電撃が繋いでいる形状をしていた。

 

『スキャンバイザー、オンライン』

 

 ハジメはスキャニングすることで、そのアイテムの正体を知る。それは……

 

「ウェイブビームか……」

「ハジメ殿、知っておられるのですか?」

「これは、俺のパワードスー……機械鎧の性能を強化するためのアイテムだ」

「我々も調査は重ねましたが、用途すら分からずに放置しておりました……きっと、ハジメ殿に貰われた方がアイテムにとって幸せでしょう……」

 

 ビィズはウェイブビームをハジメに引き渡した。場合によってはハジメに譲渡することはランズィも承認済みらしく、問題ないそうだ。

 

『ウェイブビームを獲得しました』

 

『ロックオンした対象を自動的にホーミングする特性を持つ、波打つような紫色のビームです。また、電気エネルギーが流れているため、相手によっては感電させることも可能です』

 

 

 

 やがて、ハジメ達に建物が貸し出される。それはVIP用の別荘であり、病で人の往来がストップしているので貸し切り状態だ。何人も泊まれるような広大な施設で、客室がいくつも備えられている。集会所として使える建物もあり、話し合いには最適だった。

 

 話し合いには今いるメンバーに加え、遠隔で森人族のアルフレリックやハウリア族のカム、竜人族の族長、解放者のミレディが参加する予定だ。準備には時間がかかるため、実施は人々が寝静まった夜中である。

 

 準備が終わるまでの間、待機しているハジメ達は各々の部屋で休むことになったのだが……

 

「ハジメ君、入るよ?」

 

 ハジメのいる客室のドアが開き、香織が入ってくる。この部屋は一人部屋なのだが、仲間達が配慮した結果、二人で泊まることになった。

 

「か、香織……そ、その格好は……?」

 

 ハジメは動揺する。二人は恋人であり、義娘ユエがいるので夫婦になることも確定しており、香織が部屋に入ってきたところで問題はないのだが、彼女の服装に問題があった。

 

「ハジメ君、これはね……領主さんの奥さんからプレゼントされたんだ。アンカジの伝統的なドレス衣装なんだって」

 

 それは、へそが見える程に丈が短い短袖のブラウスに、ボリュームのある長いスカートであり、地球のベリーダンスで着るような服装だった。

 

 これまで見てきた香織の服装は、神官のようなデザインの露出の少ないものであったのだが、それとは打って変わって、かなり露出が増えた状態だ。

 

「どう?似合ってるかな?」

 

 香織はそう言って華麗に一回転する。スカートが花のように広がって美しく、いつもなら隠されていた透き通るような素肌や小さなへそが晒されており、かなり眩しい。かなり扇情的だった。

 

「あぁ、よく似合ってる。だが……」

「どうかしたの?」

「目のやり場に困る……」

 

 へそ出しで露出の多い服装ならシアで見慣れているが、これまで清楚で通ってきているような香織が目の前で扇情的な服装をしているのは刺激が強すぎたのだ。

 

「へえ、ハジメ君は私に興奮してくれているんだね。私、嬉しいな……」

 

 ハジメも男だ。宇宙にいた頃は異性に関心を持ったことは全くなく、あっち方面の知識も皆無だったが、生物の本能からはハジメであっても逃れられない。

 

「ハジメ君、目のやり場なんて考える必要はないからね。私はハジメ君のものだから、好きに見ていいよ。おさわりも大丈夫だから」

「か、香織?」

 

 香織はいきなりハジメへと詰め寄り、無抵抗なハジメを部屋の端へと追い詰めていく。その先にあるのはベッドであり、ついにはベッドに座らせられてしまった。

 

「ハジメ君がいない間、患者さん達の命を預かるという責任の重さに押し潰されそうだったの。でも、ハジメ君が帰ってくると信じていたから頑張れた」

「俺も同じだ。タイムリミットに間に合わないかもしれないという不安もあった。だが、香織が待ってくれていると信じるだけで戦えた」

「ふふっ、お互いに信じていたんだね」

 

 互いを信じること。それだけでハジメと香織は不安を乗り越えて頑張ることができた。二人は恋人であると同時に相棒でもある。夫婦と呼んでも差し支えないだろう。

 

「私達、もう既に夫婦なんじゃないかな?」

「挙式どころか婚姻届すら出してないけどな」

「少し早いと思うけど、家族計画も考えてあるの。ユエちゃんが長女で、二人産んで五人家族にするんだ。名前も考えていて……」

 

 その後、家族計画の説明は話し合いの準備が終わる頃まで続いた。内容はかなり具体的になっており、彼女なら本当に実現してしまうのではないかと思われた。

 

 やがて、話し合いの時が来る。

 

「全員、集まったようじゃな」

 

 集会所として使えるホールのような建物。その中央の大きな円卓を囲んでハジメ達が座る。なお、ミュウは香織に預けられてお留守番である。

 

 この部屋は三人の空間魔法使いによる空間遮断結界で隔離されており、盗聴や覗きからは完全に守られている。話す内容が内容だけに、かなり用心していた。

 

 十個の席が用意されており、四つある無人の席には何らかの機械が設置されており、そこから人の形をしたホログラムが投影される。

 

「大将、お久しぶりです!我々ハウリアは大将の命に従い、大樹の守護を続けております!」

 

 一人はシアの父親でハウリアの族長をしているカム・ハウリアだ。ハジメ製のパワードスーツが気に入っているらしく、会議なのにフル装備状態であった。

 

「まさか、遠隔とはいえ本物の竜人族と話す日が来るとは、長く生きてみるものだな」

 

 もう一人は森人族の長老でフェアベルゲンを取り仕切る長老衆の一人、アルフレリック・ハイピストだ。彼は竜人族と話せることに感激していた。

 

「おお、ティオ。随分と見違えたようだな。可愛い孫が成長した姿を見ることができて喜ばしいものだ。はっはっはっ」

「じい様、恥ずかしい故それは止めてくだされ。妾はもう子供ではないのじゃ」

「それはすまんな……」

 

 三人目はティオの祖父であり竜人族の族長をしているアドゥル・クラルスだ。久しぶりに会う孫娘にテンションが上がっていたが、族長として不味いと思ったのか、咳払いしてハジメ達の方へと意識を向けた。

 

「ゴホンッ、貴殿らがティオの仲間というわけか。私は竜人族族長のアドゥル・クラルス、ティオが世話になっているようだね。そして、そなたが鳥人族の後継者、南雲ハジメか。今後ともよろしく頼む」

「ええ、族長殿。こちらこそ、よろしく頼む。有意義な話し合いができることを期待したい」

 

 そして、最後の一人は……

 

「こんにちは〜、みんなのアイドル、解放者のミレディ・ライセンだよぉ! みんな拍手! パチパチパチパチ!!!」

 

 こんなふざけた奴だが、これでも一応は解放者の一人である。気合いを入れてきているのかやけにハイテンションだ。

 

「あれ? もしもーし、聞こえてますか~?」

 

 なお、ミレディの性格を知らない者が殆どであるため、想像していた解放者とは全く正反対の存在が現れたことに思考がフリーズし、返す言葉も出てこない。

 

「もしかして、何かやっちゃいました?」

「その、“もしかして”だ。ミレディ、相変わらずの性格だな」

「でしょ?」

 

 ハジメは何度もそのウザい性格を味わってきたので、これには慣れてしまった。一種の精神を鍛える修行のようなものだ。

 

「ん。その性格はどうにかならない?」

「無理ですよユエさん。きっと、一度死んでも変わらないと思います」

 

 それはさておき、役者は揃った。鳥人族を継ぐハジメに人間族の清水、吸血鬼族唯一の生き残りであるユエ、先祖返りの亜人族であるシアとその家族、竜人族の王族二人、フェアベルゲンの長老、反魔王派トップの魔人族、解放者の一人であり、この世界の全種族を代表できるような顔ぶれだ。

 

「これより、新生・解放者の第一回会合を開始する。我らの今後を決定する重要な話し合い……皆の衆、気を引き締めてかかるのじゃ」

 

 

 話し合いは数時間かかったが、様々な事柄が決定されるに至った。

 

 まず、新生・解放者の本拠地はフェアベルゲンとなった。人間族や魔人族の手が届きにくいことは勿論、大軍神の壁画が存在していたり、ハジメが英雄視されていたり、チョウゾギアの修復・改良によって軍事力が上がっているなど、理由は様々だ。

 

 また、フェアベルゲンには竜人族がエンジニアを派遣してハジメ製装備品のメンテナンス要員とすることと、ハジメのスターシップの格納庫をフェアベルゲンに作ることが取り決められた。

 

 解放者の戦力についても話し合われた。フェアベルゲンのチョウゾギア部隊、ハウリアのパワードスーツ部隊、竜人族や魔人族の戦士達を主力としつつ、有事の際はミレディが生産しているメカノイド軍団が戦列に加わり、物量の面でサポートしてくれる。

 

 新生・解放者の幹部は初代と同じく七人の実力者だ。ハジメ、ユエ、シア、清水、ティオ、ノクサス、ミレディであり、ミレディにはお目付け役として次代の解放者を導く役目があった。

 

「まあ、みんなそれぞれの事情があると思うけどさ、考えることは一つだよね。あのクソ神野郎はぶっ殺す。いざというときはミレディちゃんが刺し違えてでもやっつけるんで、安心してね?」

「おいおいおい、しれっとヤベえこと言ったぞ。ふざけてるくせして覚悟ガンギマリかよ!」

 

 清水のツッコミが炸裂する。ミレディは普段はウザい性格をしているが、エヒトのことになると覚悟が決まってシリアスになるのだ。

 

「これから先は色々とあると思うけど、また今度ね~、バイバーイ!!」

 

 彼女はそう言うと通信を切ってしまった。彼女の言う通り、これから先は様々な出来事があるだろう。この世界を支配する邪神と戦う以上、辛く、苦しいこともあるに違いない。それでも、彼らは世界を救うために進み続ける。

 

 彼らの次の目的地は、ミュウの故郷である海上都市エリセンである。彼女を送り届ける依頼を達成しなければならないのもあるが、ミレディからその存在を教えられた大迷宮の一つ、【メルジーネ海底遺跡】に最も近い町らしく、その探索のための拠点として利用する目的もあった。舞台は砂漠から海へと移行し、新たな戦いの幕が上がろうとしていた。

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