鳥人族の後継者は世界最強   作:ウエストモール

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序盤で光輝アンチと恵里の改変が入ります。


7話 オルクス大迷宮

 檜山達とハジメが衝突する事件が起こった日。訓練が終わった後、香織と一緒にいたハジメに突っかかってきた者がいた。

 

「見損なったぞ南雲! 檜山達を攻撃したあげく、濡れ衣まで着せるなんて!」

「濡れ衣? 何の話だ。清水の証言を聞いていなかったのか?」

 

 その者とは、天之河光輝である。何を思ったのか、彼の頭の中ではあの事件においてハジメが悪いことになっていたらしい。光輝の大声に反応し、クラスメイト達が集まってくる。

 

「確かに清水は檜山達に殴られたかもしれないが、あれは檜山が鍛えてあげようとしていただけだ! 南雲はそれを邪魔したんだぞ!」

 

 どうやら、檜山が清水を鍛えてやろうとしていたと思っているようだ。素晴らしい。今お前が言ったことは全て間違っている。どこぞの隠居ジェダイならそう言うかもしれない。

 

 そもそも、光輝はハジメに対して敵愾心を抱いており、無意識にハジメを責めるのに都合の良い解釈をしていた。

 

「お前は何を言っているんだ? あんなものは訓練でも何でもない。ただのイジメ……暴力だ。清水に聞けば、すぐにでも分かる」

「どうせ、清水を脅したに違いない! 暴力で押さえつけるなんて、俺は許さないぞ!」

 

 もう滅茶苦茶である。様子を見ているクラスメイト達も冷たい目で見ており、ハジメの隣にいた香織は不愉快そうだった。

 

「ねえ、光輝君。根拠もないのに何でそんなことを言うの? ハジメ君は人を脅したりなんてしないよ」

「香織?! どうして南雲の味方をするんだ? あぁ……もしかして、南雲に脅されているんだな?」

 

 結局、彼の頭の中ではハジメが悪いことになっていた。そんな状況を見かねたのか、光輝を止めようと動く者が二人いた。

 

「光輝! いい加減にしなさい!」

 

 その一人は雫だった。

 

「雫!?」

「今の光輝は格好悪いわよ。それに、双方の証言を聞いてきたけど、明らかに悪いのは檜山君達の方よ」

「そうだよ光輝君。一応、僕の降霊術を使ってその場にいた幽霊に聞いてみたけど、やっぱり檜山達が悪かったよ」

 

 雫に続いて発言したのは、中村恵里という女子生徒だ。黒髪をナチュラルボブにした美人で眼鏡っ娘の彼女は鈴の親友であり、香織とも親しい間柄だ。そして、彼女は“降霊術師”の天職を持っており、死者の残留思念に干渉することができる。元の世界に戻ったら警察が欲しがる人材になるかもしれない。

 

 本来の世界線では光輝を手に入れるためにクラスメイトを裏切った彼女だが、この世界では違う。光輝など欲しがっておらず、ハジメを擁護する側に回っている。何故そうなったのかは、別の話で語らせていただく。

 

「で、でも……清水にも原因があるはずだ……」

 

 二人によって光輝はハジメを責めることができなくなると、今度は清水に責任を擦り付けた。が、ハジメはそこに止めの一撃を叩き込んだ。

 

「天之河……原因があったとしても、そいつに何をしてもいい理由にはならない。仮にお前の理屈が通るのなら、人間族が魔人族に攻撃されるのも人間族に原因があることになる。違うか?」

「うっ、それは……でも、あっ……」

 

 次の瞬間、光輝は気絶した。クラスメイト達の前で滅茶苦茶なことを言ったあげく、それを幼馴染に批判され、ハジメから核心を突かれたことがとどめとなり、頭がオーバーフローを起こしたようだ。

 

「南雲君……何度も言うけど、うちの光輝がごめんなさいね。目が覚めたら叱っておくわ」

 

「本当に大変だな……」

 

 ハジメは雫に同情した。とりあえず、雫には胃薬が必要かもしれない。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 ハジメ達はオルクス大迷宮のある宿場町ホルアドに来ていた。ホルアドには王国が運営している宿があり、オルクスへと向かう前に一泊している。

 

 現在、ハジメ達はオルクス大迷宮の入口の正面にある広場に集まっていた。博物館のような入場ゲートが存在しており、冒険者ギルドから派遣された職員が出入りを管理している。何故なら、戦争を控えている状態で多大な死者を出すわけにはいかないからだ。

 

 オルクス大迷宮は魔獣の素材や魔石の産地としてだけでなく、王国騎士団や王国兵士、冒険者の訓練場として利用されており、入口前の広場は大勢の人々で溢れ、彼らをターゲットとする露店が多く並んでいた。

 

 そして、オルクス大迷宮に入ったハジメ達は第一階層を隊列を組んで進んでいた。オルクスの壁には緑光石という鉱物が埋め込まれており、そのぼんやりとした発光によってそれなりの明るさが確保されている。

 

 今回の訓練で進むのは二十階層までとなっており、複数のパーティがローテーションで交代しながら戦闘訓練を行う予定である。なお、ステータスが高すぎるハジメはパーティを組んでおらず、場合に応じて味方を援護する役目を任されていた。

 

 しばらく進んでたどり着いたのは、ドーム状となっている広間だ。一行が周囲を警戒していると、壁の隙間から灰色の毛玉が次々と湧いて出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。その魔獣はラットマンという名であり、名前の通りネズミを二足歩行にしたような見た目の魔獣なのだが、上半身がムキムキであり、その腹筋や大胸筋をボディビルダーのように見せつけてくる。筋肉モリモリマッチョマンの変態だ。

 

 前衛として立っている光輝、雫、龍太郎の三人がラットマンを迎撃する。その後ろでは香織が弦のない弓のような武器を構え、香織と親しい二人の女子、鈴と恵里が詠唱を始める。

 

 “勇者”である光輝は純白に輝くバスタードソードを使い、数体をまとめて斬り捨てる。その剣は“聖剣”と呼ばれており、王国が管理するアーティファクトだ。光属性の力を纏っており、近づいた敵の弱体化や使用者の身体能力の強化を自動的に行ってくれる。

 

 “拳士”である龍太郎はアーティファクトの籠手と脛当を装備している。衝撃波を放つ機能があり、彼の見事な拳撃と脚撃、それらと同時に放たれる衝撃波によって敵を後ろに通さない。まるで鉄壁の城塞のようだ。

 

 “剣士”の雫はシャムシールのような曲がった刀身の剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一撃で敵を切り裂く。その動きには無駄が無く、騎士団の面々は見惚れている。

 

 一方的な戦いであるのだが、やはり実戦経験が無いために何体かのラットマンが前衛の守りを抜けて後衛に迫る。後衛をいつでも守れるようにメルド団長とハジメが待機する中、後衛が迎撃を開始する。

 

 最初に攻撃したのは香織だった。彼女が装備している弦の無い弓のような武器は“聖弓”と呼ばれており、光輝の聖剣と対になるアーティファクトだ。これも光属性の力を纏っており、光の矢を放つことができる。また、弓本体の両側が刃となっており、近接攻撃も行える。

 

 香織は構えた聖弓の横に手を添え、想像上の矢を掴んで後ろに引く。すると、水色に輝く光の矢が出現し、手を放すと同時に光の矢は飛んでいき、ラットマンを射貫いた。

 

 その直後、詠唱が響き渡る。

 

「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ “螺炎”」」

 

 二人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い込んでいき、完全に燃やし尽くす。断末魔と共に灰へと変わり、大地へと帰る結果となった。

 

 

 

 更に進んでいくと、新手が現れた。それは、赤い球体の体を持つ単眼の魔獣だった。空中をフワフワと浮遊しており、それが編隊を組んで飛来してきた。

 

「あれはモノアイだ。目から光弾を撃ってくるが、お前達なら簡単に避けられるはずだ」

 

 モノアイ達は前衛の頭上を素通りすると、後衛の香織達に向けて目から光弾を放ってくる。だが、弾速はそこまでではないため、三人はバックステップで回避すると、反撃に移行した。

 

 香織は光の矢を素早く連射する。特に狙いをつけずに放った光の矢だったが、この矢には多少の誘導性があるため、次々とモノアイ達を撃ち落としていった。他の二人も風の刃や火球を放ち、確実に撃墜していった。

 

「お前達、よくやったぞ! 迷宮には空を飛ぶ魔獣も出るからな。対空警戒も怠るなよ。それと、ここからは交代で戦ってもらう。決して油断しないようにな」

 

 ラットマンとモノアイとの戦いを通し、生徒達の優秀さを見たメルド団長。彼らを褒めると同時に気を抜かないように釘を刺すことも忘れない。

 

 ここから先は大きな問題は起こっておらず、交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げて行った。戦闘経験の無さから危ない場面もあったが、ハジメがカバーしたことで切り抜けている。

 

 そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。現在の迷宮最高到達階層は六十五階層であり、それは百年前の記録となっている。超一流は四十階層、一流は二十階層を越えることが条件である。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

 一行は交代で戦闘を続けながら二十階層を探索していき、やがて一番奥の部屋にたどり着いた。そこは鍾乳洞のようになっており、つらら状の岩が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。

 

 同行している騎士団員にトラップを確認してもらいながら進んでいくのだが、突然メルド団長が足を止めた。

 

「擬態しているぞ! 周りをよく注意しておけ! 

 

 団長が忠告する。どうやら、壁に擬態している魔獣がいるようだ。やがて、壁の一部が変色したかと思うと、そこからゴリラのような魔獣が現れた。その名はロックマウント。豪腕とカメレオンのような擬態能力が特徴だ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 光輝達が前に出る。龍太郎がロックマウントの豪腕を弾き返し、光輝と雫が取り囲んで倒そうとする。だが、その地形のせいで上手くいかない。その隙にロックマウントが大きくバックステップをとる。そして、大きく息を吸った直後、強烈な咆哮を発した。

 

「グゥガガガァァァァアアアア!!」

 

 その咆哮を浴びた三人は、体が麻痺してしまう。これは、ロックマウントの固有魔法である“威圧の咆哮”だ。ロックマウントは、硬直した三人を無視して傍らにあった岩を投げつける。綺麗な放物線を描いて三人の頭上を飛んだ岩は、後衛へと降ってくる。

 

 香織達は魔法で迎撃しようとしたのだが、その岩がロックマウントに変わり、両手を広げてダイブしてきたことで、思わず悲鳴を上げて硬直し、魔法の発動や光の矢の発射は中断されてしまった。

 

「残念だったな。俺がいるぞ」

 

 籠手を装備したハジメが咄嗟に動き、ダイブしてきたロックマウントに対してアッパーカットを放ち、その身を粉砕した。

 

「大丈夫か?」

「う、うん……ありがとう、ハジメ君」

 

 ロックマウントダイブ事件は何とかなったのだが、香織達が青ざめている様子を見てキレる若者がいた。皆さんはお分かりだろうが、正義感と思い込みの塊、天之河光輝である。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 彼女達を怯えさせたという微妙な理由で怒りを燃やす光輝。以前、雫やクラスメイト達の前でハジメを非難した際に醜態を晒してしまったこともあり、少しでも勇者らしい所を見せたいと思ったのだ。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ “天翔閃”!」

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 光輝の詠唱と共に、聖剣へ強烈な光が纏われる。メルド団長が制止しようと声をかけるが、光輝はそれを無視して大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろす。

 

 その瞬間、纏われた強烈な光自体が斬撃となって放たれた。弓なりに曲がった光の斬撃は、閉所で逃げ場のないロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くす結果となった。

 

 格好いい技であるのだが、崩落の可能性がある狭い場所で放とうと考えるなど愚の骨頂。勇者らしいところを見せようと焦った結果であり、光輝が無計画な人間であることが垣間見えた。

 

 案の定、光輝にはメルド団長による拳骨の制裁が待っていた。

 

「へぶぅ!?」

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

 

 尊敬するメルド団長に叱られ、流石の光輝もバツが悪そうに謝罪する。なお、光輝を慰める者はいなかった。

 

 その時、香織が崩れた壁の方に視線を向け、壁に光る何かが埋まっているのを発見した。

 

「あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 香織が指差す方向を見ると、そこには青白く輝く美しいクリスタルが埋まっていた。その美しさから、クラスの女子達はうっとりとする。

 

「あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 と、メルド団長が説明する。グランツ鉱石は宝石の原石になる鉱石であり、貴族の女性に人気なのだという。

 

「素敵……」

 

 香織は頬を赤く染めて呟く。ハジメは一瞬、グランツ鉱石を香織の為に取ってあげたいと考えたが、多分罠なのでやめた。こんなものを取りに行くのは、欲に目が眩んだ馬鹿だけだろうし、トラップの確認が済んでいない場所に行ってはいけないと厳命されているので、取りに行く奴などいないだろう。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 前言撤回。馬鹿はすぐ側にいた。この馬鹿の正体は檜山であり、彼は壁をよじ登ってグランツ鉱石に手を伸ばした。

 

「待て! それは罠だ!」

 

 フェアスコープという魔道具で罠の存在を知った団長が叫ぶが、檜山はそのまま鉱石に触れてしまった。

 

 その瞬間、床に大きな魔方陣が出現し、光り輝く。まるで、召喚されたあの日のように。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 団長の警告は間に合わなかった。いた場所を光が埋め尽くし、一行は浮遊感を感じる。そして、次の瞬間に一行は地面に叩きつけられた。景色も先ほどと異なる。

 

 先ほどの魔方陣は、転移させるタイプのものであったのだ。ハジメ達は周囲を警戒する。

 

 転移した先は、石造りの大きな橋の中間地点。百メートルはあるその橋には手すりや柵はなく、その下には闇で埋め尽くされた奈落がある。

 

「お前達! 直ぐに立ち上がって階段の場所まで行け! 急げ!」

 

 団長は、後方にある階段に行くように叫ぶ。一行は動き出すのだが、魔法陣から出現した骸骨の魔獣、トラウムソルジャーの群れが道を塞いでしまった。

 

 そして、目の前の大きな魔法陣からは巨大な魔獣が出現する。それを見たメルド団長は呟いた。

 

「まさか……ベヒモスなのか?」

 




元ネタ一覧
・聖弓
→見た目は完全にパルテナの神弓

・モノアイ
→新・光神話パルテナの鏡からの参戦。原典では冥府軍の偵察部隊を構成する魔物となっている。
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