【短編】ウルトラマントリガー~Pull the Trigger by Commonplace Alchemist~ 作:???second
「ふぅ…もうすぐ今日の訓練は終わりか。さすがにちと疲れてきたな」
ミウラは深くため息を漏らした。子供たちを守りながらも、彼らと一緒になって魔物と戦う。考えてみれば、同じチームに配属されたGUTSの後輩の指導を一気にさせられているようなものだ。しかも全員が、GUTSに入隊するまでの必要な手続きや適性診断をほとんどすっ飛ばしたうえで一緒に戦うことになった。そのうえ自分も、こちらを本気で殺しにかかってくる生物を相手に、ハイパーガンではなく魔法という不慣れな手段で戦うことを強いられているものだから、いつもの任務とはまた違った疲労感が押し寄せる。
「ああ。21層目の階段まで来たら、今日の実践訓練は終わりだ。ミウラ殿、助力に感謝する」
「俺の方こそ、感謝します。召喚された者の中で戦いの経験があるとはいえ、いつもの武器が使えない状況で、俺一人でこの子たちの面倒は見切れませんから」
「いつもの武器?」
「ええ、これです」
メルドはミウラの装備一式を見やる。ミウラは、この世界で支給された武装の内、剣と弓矢を武器に、薄手のプレートアーマー等、動きやすさと遠近両用の戦いができるものを想定した一式であった。そんな彼の身に着けている武装の中に、メルドには見慣れないものが目に入る。それが今、ミウラが手に取ったものだ。
「これが武器なのか?」
こうしてじっくり見ると、見たこともない、どのように形容するべきかもわからないものであった。見たところ、何やら小さな穴が先端についていて、ちょうど握りやすくできている持ち手がある。
ミウラがメルドに見せた武器というのは、GUTSの隊員に支給される標準装備にして銃、『GUTSハイパー』であった。
「これは銃という、鉄の塊を弾として撃って敵を殺すものです。って言っても、この銃の場合は、光…この世界で言えば光属性の魔力光線を放つことができる。その速さは矢よりも早く一瞬だ。威力も矢とは比べ物にならない」
「な…そんな武器があるのか!?」
メルドとしては、その武器はまさに理想的であった。この世界には、意外なことに銃は存在していないのである。詠唱が不要で、矢よりも早く遠距離の敵を高い威力を維持したままの一撃で仕留められる。魔人族との戦争においても、人間族側が魔人族相手に優位を保つことができるかもしれない。
「…だが、それならなぜその銃を積極的に使わない?」
「簡単な話です。この世界で新たな弾丸を調達できない。そもそも銃が存在していないこの世界じゃ…」
何せ世界そのものが違うため、この異世界では当然ながら新たなハイパーガン用の弾丸を得られない。当たり前のように使っていて、それでも小型の弱い怪獣や星人なら倒せる装備品。それの残り使用可能回数を気にしなければならない今、魔法はハイパーに代わる自衛手段として必須のものになるのは必然であった。
「それに、この銃は本来、人の命を怪獣や異星人の手から守るためのものだ。戦争のために使いたくないのが、GUTS隊員としての俺の本音です。勝手だとは思うんですけど…」
「そうか…無理なことを頼むところだった」
メルドは、ミウラの意思を汲み取り、銃のことについてはあまり深く探らないことにした。
自分より幾年か若いが、ミウラも人の命を預かる誇り高い戦士であることは察していた。もし、あの銃という武器をこの世界の技術で再現し量産化でもしてしまったら、確かに自分たち人間族は魔人族に優位に立てるかもしれない。だが、異世界の戦士であるミウラの誇りを穢してしまうことになる。自分たちの信奉する神の意思によるものとはいえ、異世界から無理やり連れてこられた彼に、酷い仕打ちになるようなことはメルドとしてはしたくなかった。少なくとも、彼がその手に持っている銃は他の誰にも使わせないように気を配らなければ。
「ただ…この銃でしかあの子たちを守れない時が来たら…」
だが、この銃の仕様を渋ったせいで子供たちを失うなんてことになってはそれこそGUTS隊員の名折れだ。万が一、子供たちが危機に陥ったその時は、たとえその相手が魔人族だろうが、この世界の人間だろうが…GUTSの隊員として抱いてはならないであろう漆黒の覚悟をミウラは口にする。
「その時が来ないように、我々騎士団も最善を尽くそう」
「ありがとうございます、メルド団長」
GUTSの隊員としての矜持…この世界からすればおそらく個人的な我儘に過ぎない意志を、メルドが組んでくれたことにミウラは深く感謝した。
「ところでミウラ殿、貴公は彼らを戦士としてどう見る?」
メルドは、神の使徒…光輝たちに戦士としての評価がいかがなものかを問う。
「…確かに才能はありますが、まだ全然ですね。っというか、寧ろ危険が大きい」
それに対してミウラは、まだ背中を預けるだけの信頼どころか、逆に危険性を危惧していた。
「地球では持っていなかった特別な力に、あの子たちの大半が酔いしれている。まるでかっこいいおもちゃを手に取ってうきうきしてる、もしくは喧嘩の強さを鼻にかけるガキ大将に近い」
「ず、ずいぶん辛辣に下すのだな…」
「特に…」
ミウラはちらっと、他の騎士団員の見張りの下で休憩をはさんでいる神の使徒たちの中で光輝と、檜山たち小悪党組を一瞥する。そして彼らがこちらを見ていないのと見計らい、メルドに耳打ちする。
「天之河と、檜山たち…あいつらは危ないな」
「ん?檜山たちはわかるが、光輝もか?」
「あぁ、彼は自分の考えこそが絶対の正義と考えている節がある。なまじ才能があり、人として正しいといえる行動をとってきたからうまくいってきたんだろうが、言い換えればあまりにも融通が利かない、頑固とは違う我儘なタイプです。もし、自分の思い通りにならない現実を目の当たりにしてしまったら…」
その先をミウラは敢えて口にしなかった。
「…そうか。俺たち、このトータスの人間は天職やステータスで人の価値を見定めてしまう節がある。俺たちは光輝の勇者という天職と、彼の最初の時点から持っていた高ステータスに気を取られ過ぎていたかもしれん」
さっきロックマウントと高すぎる威力の魔法攻撃で、魔石の欠片も残さず殲滅した光輝のことを思い出すメルド。言われてみれば、光輝はよくも悪くも感情的。まだ幼さが見受けられる。香織がロックマウントに狙われていたとはいえ、冷静さを保てないのはいざというときに致命的な弱点にもなりうる。冷静にかつ適切に対処できるようにしないといけない。
「ただ…香織のことも気になってくるな」
「白崎ちゃんの?もしかしてさっきの防御魔法のことですか?あれってこの世界の魔法じゃないんですか?」
メルドが香織のことを気にした理由。ミウラは、先ほど香織がロックマウントに飛び掛けられそうになった際に発動させた光の壁のことに気づいており、あれも魔法の一種なのかと問う。
「いや、それにしてはおかしい…私の知る聖絶どころか、あらゆる防御魔法とは違う形だった。魔法陣のようなもので直接防御していたような…そもそも、香織は詠唱すらしていなかったぞ…あれはいったい?」
聖絶を咄嗟に使ったのだろうかと疑うミウラだったが、それをメルドが否定する。長らく魔法を使った戦法を後進たちに教えてきた身でもあるメルドだ。香織が発動させた今の現象が、自分の知る魔法とは一致しないことに気づいていた。
(メルド団長ですらわからないってのか?だとしたら、あの子は一体…)
また、メルドですら香織が自ら引き起こした違和感に戸惑っているということに、ミウラもまた同じ疑問を香織に対して抱かされるのだった。
皆と同様に休憩しているハジメは、騎士団の改まっていく自分への評価や香織たちの視線に気づかず、未だ自分がただの無能としか思えない現状にため息を漏らしていた。
(…これじゃあ寄生プレイヤーだよ…)
他のみんなが高いステータスと様々な魔法、技能で魔物たちを派手に蹴散らしていることもあって、地味な手段と、ミウラや騎士団の力を借りてようやく倒せるという現状に、自分の成長をあまり実感できずにいた。練成魔法の腕前が多少は上がっているのが、せめてもの慰めだ。
(そういえば、白崎さんから声をかけられないな)
ふと、ハジメは香織のことが頭に浮かぶ。学校で出会って以来、よく話しかけられているだけに、香織から構って貰っているという日常が当たり前になっていた。でも今は、いつもなら声をかけてきたり、そうでなくともこちらを見て手を振ってくるくらい等もしてこない。
それに加えて、さっきの魔法のような防御もだ。実は、香織に対して違和感を覚えたのはメルドとミウラだけではない。ハジメもだ。なにせ詠唱すらせず、ただ来るなと叫んだだけでロックマウントを弾き飛ばして見せたのだから。他のクラスメイト達はおそらく、あれもこの世界の魔法だと思い込んでいることだろう。実際ハジメもそうなのではと疑った。だが、ステータス面での不足を知識で補うために図書館での自習を行ったことで気づかされた。少なくともこの世界では魔法の詠唱は必須。詠唱もなしに魔法を行使できるのは魔物くらいだ。だからこう考えた。あれは…魔法とは違うものなのかもしれない、と。
(さっきの白崎さん、純粋にすごかったな。まさか、詠唱とかもしないであんな技を繰り出すなんて。って…そうじゃないだろ。魔法じゃないとしたら、あの聖絶っぽいのは一体なんだったんだろう…)
香織の防御魔法らしきものを目にして純粋な感動を覚えたのは、それもオタクであるが故だろう。面倒な詠唱もなしに、高度な攻撃魔法や鉄壁の魔法、技を繰り出せる。まさにバトルもので見かけるタイプの芸当だ。
なんとなく不思議に思って香織の方を見ると、香織と目が合った。途端に香織は、ハジメを避けるように目を逸らした。それを見ては、檜山たち小悪党や、ハジメに勝手な嫉妬を向けていた一部の男子生徒、学校での怠惰なハジメの態度に軽蔑を向ける女子生徒の嘲笑う視線に気が付く。大方、香織に見捨てられたと思い込んでいるのだろう。笑いをこらえていたり、言葉に発さないのは、ミウラやメルドにバレたときの厳しい叱責を恐れてのことだろう。とはいえ、流石に全員ではなく、永山パーティや雫、龍太郎等の、どちらかというと良心的な生徒はそれに気づいて不快に顔を歪めていたが。ちなみに性善説主義の光輝は、当然ながら檜山たちの悪意のあるハジメへの視線に気づいていない。
(……人が白崎さんに構われてたらこっちを疎んで、構われなかったら笑って見下して……そりゃ、僕の授業態度も自分でよくないって頭でわかってるけど、それは父さんたちの仕事をバイトで手伝ってるからで仕方ないことだし……嫌なクラスに入ったなほんと…)
我ながらクラスメイトに恵まれてない運命を嘆くハジメ。
(同じクラスに『あいつ』がいてくれたらな…)
そんなことを思いながら、つい遠い目をしてしまう。
これまでの人生、友達といえるのは…振り返れば『彼』だけであった。彼がいてくれさえすれば、少しはストレスに満ちていた学校生活も、この世界での孤独も、ものともせずに済んだのに。もしかしたら、彼を通して香織との関わりも、最初から少しは自分でも肯定的に受け止められたかもしれない。
(…いや、あいつはもういなくなっちゃったんだ。あいつにはあいつの事情があったんだし。
尤も…
ただ一人の友達のイメージが、頭の中でハジメに背を向けて歩き去る。それと入れ替わるように、光輝や檜山、他数名のクラスメイトたちの姿が浮かぶ。そのイメージの中で、ハジメの友達は光輝たちに追いやられるように炎の中へ姿を消していく。
(『人間を嫌いになるな』、か…)
そこまで脳内映像として流れたところで、ハジメはぎりっと奥歯を噛み締めた。服の下にぶら下げているペンダントを、ぎゅっと服の上から握りしめる。
(こんな世界で、こんな奴らを見てるようじゃ、無理に思えてならないよ…
■■■■)
「……」
香織はロックマウントから身を守るために発動させた、あの聖絶擬きに対して、胸中に疑問を抱いていた。
(なんだったの、あれ…)
香織は、聖絶等の防御魔法を発動しようとした気さえなかった。ロックマウントが気持ち悪すぎて詠唱することをすっかり忘れて、その場で固まってしまっていたからだ。そう…何もしていないはずだ。なのに、ロックマウントを近づけたくないと無我夢中で手を突き出した途端、あの一瞬で指輪が光りだして、白く光る魔法陣のような光の壁がロックマウントを突き飛ばした。
(無意識のうちに魔法を使ってたのかな?でも…)
自分は詠唱すらしていなかったが、それは自覚がなかっただけですでに実行して見せた。そんな技能を知らない間に会得でもしていたのだろうか。そう思ってステータスプレートを見ても、特に変わった箇所は見られない。やはり気のせいだったのだろうか。だというのに、この胸に込み上げる不安はなんなのだろう。
香織はふいにハジメの方へと目を向ける。雫という親友以外にも、心の拠り所を求める本能がそうさせた。偶然にもハジメと目が合ったが、彼女はとっさに目をそらした。今もなお、香織の脳裏にハジメの、自分を苦手だと告げた言葉が過る。その言葉の中に、自分がハジメに対して結果的に迷惑をかけていたという事実を思い知らせる。
「香織、どうかしたのか?」
浮かない顔の香織に気が付いた龍太郎。
「龍太郎君…うぅん、何でもないよ」
「やはりさっきの魔物が怖かったんだ。大丈夫だ香織、魔物なんて俺がみんなやっつけて、君を守ってみせる。もちろんみんなのこともだけど。だから安心してくれ」
龍太郎にはなんでもないと言うと、光輝はさっきのラットマンやロックマウント等の魔物たち怯えていたと思い込み、その上で香織を安心させるように優しい言葉をかけた。
「…ありがとう。でも本当に大丈夫だから、気にしないで」
その言葉に、香織はほっとした。光輝の言葉そのものに安心したのではない。自分があの時発動させた力が、まだこの世界で習得した魔法によるものだと思っていることに安心したのだ。
(香織…)
事情も知らないこともあって光輝は勘違いしているが、まだハジメに苦手だと思われていたことでの傷心を引きずっているんだろうと、雫は思った。
香織が、ハジメに拒否反応を示されていた。これには雫も未だに驚かされ、そして香織の失恋とも言える心の傷を、我が事のように痛めた。
(私も馬鹿ね…南雲君のこと何も考えてなかったのに、香織を拒否されたからって筋違いな不満なんか抱くなんて…)
雫は、香織を迷惑に捉えるハジメへの不満を抱いたが、決して口には出さなかった。自慢の親友である香織を拒絶されるというのは、彼女にとっていい気分はしない。彼女は一度決めたり思い込んだらとことん突撃する…猪突猛進だ。そのため興味を抱いたハジメのことをもっと知ろうと、学校生活では気が付いた時にはハジメに話しかけたり、彼の後をつけていたり…などということもあった。流石にストーキングじみた行為に走った時はなるべくハジメにばれないように引き留めていたのだが。一方的な好意といったら悪い言い方だが、決してハジメに悪意を向けたかったわけではないのだ。結果がどうあれ、そこだけはどうか理解してほしかった。
でも、冷静に且つ平等に考えてみれば、香織と仲良くなるかならないかを選ぶ権利はハジメ自身にもある。それに、悪意がないとしても迷惑をかける結果に繋がるのならば、結局こちら側に非があることに変わりない。極論だが、事故で殺すつもりがないのに、結果的に人を死なせてしまった責を問われるのと似たようなものだ。光輝や檜山、他にもハジメに醜い嫉妬の下で疎んじている状況下での香織のやや突撃姿勢のアプローチが、逆にハジメには良いものに捉えられなかったのだ。
でも、やはり香織の親友という情もあり、ハジメには迷惑かもしれないが、決して悪意なんてそこにない以上、ハジメには香織のことを知ってもらいたい、興味を抱いてほしいという願いも強かった。何か助けになれることができればと考えたが、今は訓練中だし、自分もクラスメイトを守るために剣を振るっている立場。香織だけに贔屓しまくるわけにもいかず、それにハジメと香織の感情面での問題は当人にしか解決できない。他者がどうこう言っても、最後にお互いどのように関わるか決めるのはあの二人なのだ。
今も目で、想い人の姿を寂しそうに見つめる幼馴染の親友の恋の成就を、雫は願うのだった。
皆から目を背けられた檜山は、くそ、と内心で毒づいた。自分だけが明らかに非があるのに、それをろくに認めたがろうとせず、ミウラから鉱石回収の邪魔をされたことへの不満が渦巻いていた。
(くそが、あのクソオヤジがいなけりゃうまくいってたってのに…いっそのこと、どっかで…)
逆恨みを募らせるあまり、寧ろトラップから救ってもらった恩も抱こうとすらせず、ろくでもないことを抱き始める。
すると、檜山の足元にカランと、何かが転がり落ちてきた。なんだ?と思い顔を上げてそれを見やる檜山だが、それを見た途端彼は口角を上げた。
さっき岩壁から顔を出していたグランツ鉱石だ。これはラッキーだと思った。さっきは岩壁に張り付いていたがこうして転がり落ちてくるとは。おそらくこの分なら、トラップはないだろう。なにせ、そのトラップが仕掛けられた岩壁から直接この鉱石が転がり落ちてきたのだから。他のみんなは幸い気づいていない。ミウラやメルドも、キモオタと蔑んでいるハジメや、本命たる香織もだ。
「へへへ…待ってろよ白崎…」
嫌らしい笑みと共に、檜山はそれを拾い上げた。
―――――己の愚かさを更に露呈することになるとは思いもせずに。
さっきのグランツ鉱石のトラップは、岩壁にではない。グランツ鉱石そのものに仕掛けられていたのだ。
檜山がグランツ鉱石に触れた途端、ハジメたち全員の足元に、魔法陣が描かれた。
「な…この魔法陣は、あの時と…同じ!?」
足元の魔法陣を見てハジメがそう叫ぶ。自分の記憶が正しければ、この魔法陣はトータスに召喚された時に表れたものと同じ、転移魔法陣だ。
「これは…まさかトラップ!」
そんなまさかとメルドは動揺してしまう。トラップならさっき看破したはず。それにこの20層目においてトラップ同士が近い距離に設置されているということはない。つまり、看破したはずのトラップに自分たちが引っ掛かっていることを意味していた。
「檜山、てめぇまさか!!」
「お、俺は…!」
ミウラから非難の目を浴びせられ、檜山はまたも言い訳しようとするが、トラップの起動キーであるグランツ鉱石が握られているため、何の意味もなさない。
そのままハジメたちは成す術がないまま、トラップの魔法陣によって20層目から姿を消した。残ったのは、檜山が手に取ったグランツ鉱石の欠片だけであった。
ハジメたちは転移魔法陣のトラップに引っ掛かり、予想以上の下層へと転移されていた。
そこは、かつて最強の冒険者がたどり着いた最高記録の回想…65層目であった。なぜそれがわかったのかと言うと…
そこで彼らを待ち受けていた、一体の凶悪な魔物の存在があったからだ。
「馬鹿な、あれはまさか…
『ベヒモス』なのか…!?」
青ざめるメルドは、奈落の上に伸びる石造りの橋の上にて待ち構えている、猛々しい体と雄々しい角を持ったその大型の魔物を見て、その名を口にした。