【短編】ウルトラマントリガー~Pull the Trigger by Commonplace Alchemist~   作:???second

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トリガーの戦い

 その風景は、まるで世界遺産に登録されている古代遺跡のようであった。古代ローマを意識したような石造りの建物。これを見れば多くの人々は古代のロマンを感じ、永劫に保存しようと決め込むだろう。その一方で、市街地の各所には古代文明には似つかわしくない、街灯に電子モニターや小型端末等の近代的な備品が各所に存在していた。古代の風景を残しながらも、そこに生きる人々は既に高い水準の文明を築き上げた証であった。

だが、そんな貴重で美しい街並みを…紅蓮の炎で焼き尽くし、踏みつぶしていく巨大な影たち。

 『怪獣』たちは、まるで邪魔くさいとばかりに古代都市を次々と踏みつけていく。人々はそんな怪物たちに対し、自分たちの持ちうるあらゆる装備を駆使して挑むも、次々と怪獣たちの餌食となっていく。

彼女もまた、そんな脅威に人々を守るために戦う一人であった。

「むん…!」

 右手の中指に付けた指輪の菱形の文様が輝き、襲い来る怪獣の光線を、法衣を身に纏う銀髪の女性が、魔法陣の形をした光の盾で防ぐ。その後ろには逃げ遅れた人々や傷ついた仲間たちがいた。

「ユザレ様!我々のことよりも、御身を大事になさってください!我々のような凡庸な人間のために、あなたのようなお方が命を捨てるなど…」

「私はあなたたちを守るためにこの力を振るう者!あなたたち一人ひとりが、あなたたちの手で生まれるものが、笑顔が!未来を築く希望の光なのです!」

 自分たちよりも自分の身を優先することを勧める仲間の男に、ユザレは逃げることを拒否。引き続き後ろにいる多くの人々を守るために、防御陣を展開し続ける。でも、その盾の向こうにいるのは、無数の怪獣たちの群れ。状況はあまりにも絶望的だ。ユザレがいかに優れた力を持った存在であっても、あの圧倒的な数の怪獣たちを相手には分が悪すぎた。

 火炎や光線、あらゆる遠距離からの砲撃が、ユザレたちに向けて放たれた。さすがのユザレも死を覚悟せざるを得なかった。

 

そんな時であった。

 

 怪獣たちの砲撃は、上空より降り注がれた赤黒い光線によってすべてかき消され、そのまま怪獣たち自身を飲み込み、爆発四散させた。

何が起こったのか、状況が飲み込めず、その場で立ち尽くすユザレたち。そんな彼らの前に、ドスン!と上空から巨大な影が降り立つ。

 新たな敵の出現を予感し、ユザレたちは再び臨戦態勢を取りつつ、その巨大な影が自分たちに向ける背中を見上げる。暗黒のオーラを身に纏ってかなり視認し辛いが、シルエットは辛うじて見える。ごつごつとしていて禍々しく、鎧のようなものを纏っているようだ。一目見ただけで、その禍々しい鎧を纏うその巨人が、自分たちと友達になりたがるような友好的な存在ではないと思えてならなかった。

 

「…てめえ自身を優先して逃げればいいものを」

 

 毒を含んだ言葉と共に、振り返ったその巨人の容姿が、ユザレの目に飛び込んだ。

全体像は確かに、悪魔の化身のようであった。でもユザレには、その禍々しい闇の巨人の顔が…

 

どこか、優しい顔つきに見えていた。

 

 

 

 

なぜだろう。

 

その顔が、『彼』の笑顔と重なった。

 

 

 

「…雲…君…」

 次第に、意識が夢の世界から引き戻されていく。

「香織!意識が戻ったのか?俺たちがわかるか?」

 耳に、なじみのある声が聞こえる。そこからすぐに香織は目を覚ました。

「龍太郎君?鈴ちゃんに、園部さん?メルドさん…」

 目を開けると、自分を心配そうに見つめる龍太郎、鈴、優花、そしてメルドの顔が映った。でも、ハジメが…一番安否が気になる少年の姿がない。脳裏に過ったのは、意識を手放す前に遭遇した、あの魔人族の女であった。

「っは!そうだ、南雲君は!それにあの魔人族の女の人は!」

「落ち着け香織!今はそれどころでは!」

「それどころって何ですか!ついさっきまで私たちは魔人族に…!」

 襲われていたんだぞ、と香織はメルドに対して言いかけたが、直後に街の方から轟音が響いた。それも大地震のごとく大きく響いただけに、さすがの香織もハジメの安否や魔人族のことよりも、街の方角に目をやるしかなかった。

そこで見たのは、大きく巨大化したベヒモスと、あの石像の間で見た石像と同じ姿かたちをした、光の巨人の戦いの光景であった。

 

 

 

 

 

 ホルアドの町がキングベヒモスによって壊滅の危機に陥り、香織が魔人族の女に連れ拐われる危機一髪の瞬間、生き延びたい…故郷に帰りたい…彼女を守りたいと願い叫んだハジメは、彼の想いに応えた巨人像の体内に溢れた。

ありふれた錬成師の少年の生命を受けることで、巨人像…否、

 

光の巨人、ウルトラマントリガーは永き眠りから目覚めたのである。

 

 

 

 

 トリガーはキングベヒモスを押し返し、龍太郎たちのもとから距離を強引に開かせていくと、ベヒモスの頭上から手刀を叩き入れ、脇腹に左からの痛烈な蹴りも打ち込む。

蹴りを受けて後ろに後退したベヒモスに、トリガーはさらに続けてもう一撃キングベヒモスの腹に拳を食い込ませ、そこから連続パンチのラッシュを叩き込む。

だがベヒモスも負けてはいなかった。トリガーの連撃を止め、反撃に出るべく、トリガーのラッシュに対して、強引に体当たりを仕掛ける。

「ッグゥ!」

 ラッシュを中断させられ、そのまま押し出されるトリガーにキングベヒモスの追撃が入る。

 トリガーを逃すまいと、彼の頭を上からガシッと掴み、顔面を殴りつけた。

 ふぐっと悲鳴がトリガーの口から漏れ出る。キングベヒモスは再度放たれたトリガーの拳を、虫をはたき落とすように受け流し、下から背中でトリガーをしゃくりあげる。大きく仰け反らされたトリガーに、体当たりを食らわせ突き飛ばすキングベヒモス。トリガーは大きく吹っ飛ばされ、その拍子にホルアドの建造を一件押し潰してしまう。

 立ち上がろうとするトリガーに、キングベヒモスは即座に接近し間合いを詰めてくると、首を絞めに来るつもりか、両手で掴みかかる。それに対し、トリガーもキングベヒモスの腕を逆につかみ返してくる。

 相手を投げ飛ばそうと、お互いに力と力で押し合うトリガーとキングベヒモス。緊張の膠着状態が展開された。

 

 

 

 香織や龍太郎たちは、トリガーがキングベヒモスと戦っている間に、街のなるべく外側の方面へと撤退し、改めてトリガーの戦いを見ていた。

「すげぇ…強い」

「うん…」

「ああ…」

 いずれの一撃一撃が、腕利きの冒険者の魔法どころか、勇者である光輝のそれをも凌駕しており、トリガーとキングベヒモスの戦いを見ていた誰もが注目せざるを得なかった。ハジメのことが気がかりであった香織でも、戦うトリガーの姿に魅入られていた。

(…なんでだろう、やっぱりあの巨人…どこかで…)

 その一方でトリガーのことを、どこか懐かしく感じ取っていた。あの石像の間で見た時よりも、ずっと前から知ってるような気がした。

「う、うぅ…」

 戦いの轟音が影響してか、光輝は目を覚ました。

「目が覚めたか、光輝」

「俺は…!そうだ龍太郎、どうして邪魔をしたんだ!俺たちは…」

 目を覚ましてすぐ、光輝は龍太郎に、戦いの邪魔をしてきた彼へ文句を言おうとしたが、その龍太郎の傍らに、奈落に消えたはずの香織が目に入る。

「香織!?ど、どうしてここに!」

「あいつのお陰だ」

 香織との突然すぎる再会に戸惑う光輝に、メルドがホルアドの街の方角を指差すと、戦いの激しい号音と共に、光輝の目にもキングベヒモスと戦うウルトラマントリガーの姿が目に入った。

「う、ウルトラマン…!?」

 予想外すぎる光景に、一層混乱が増す。確かに、祖父から伝え聞かれていたウルトラマンをこの目で見れた歓喜がなかったわけではない。だが…

(一体どうなってるんだ!?ウルトラマンが、どうしてここにいる!?どうして怪獣と戦ってる!?

イシュタルさんの話じゃ、勇者である俺がいなければ復活しないはずじゃ…俺がウルトラマンになるはずじゃなかったのか!!?)

 イシュタルの話を鵜呑みにしていたこともあり、光輝は、勇者であるはずの自分がウルトラマンになるとばかり思っていた。オルクス大迷宮のどこかに隠された神具スパークレンスを手にし、自分がウルトラマンとなる…でも現実ではそうではない。ウルトラマンは、勇者である自分を待たずに姿を現した。

 望んでいた現実と異なる事態の連続に、光輝の胸中はぐるぐると渦巻いた。

 

 

 

「グウウウゥゥ…!」

 トリガーとキングベヒモスの膠着状態は依然として続いていた。互いを押し返そうと、相手の腕を掴み続け、力を出し合い続けている。

その状態を打ち破ったのは…

「グルオォ!」

キングベヒモスの方であった。

 キングベヒモスは角を赤々と燃え上がるように発光させ、さらに力を大いに発揮、角でトリガーの胸元を突いて怯ませると、トリガーの首をガシッと掴み、街の中心に向けて彼を投げ飛ばした。

 街の建物を下敷きに落下したトリガー。そんな彼に向けて、キングベヒモスは角の赤い発光を維持したまま突進を仕掛けてきた。やはり元は魔物、そして今は怪獣なだけあり、周囲の建物の破壊すら躊躇せず実行し、獲物たるトリガーの命を狩らんと迫りくるその姿は、まるでブレーキの利かなくなった暴走車両だ。

 あの巨体からは想像もつかないほどに素早い突進に、トリガーは避けられずに正面からモロに喰らい、再び遠くへと突き飛ばされてしまう。

 次々と建物をなぎ倒して行き、やがてそれが一種のクッションの代わりになったのか、勢いが殺されてトリガーはなんとか市街地内に踏み留まった。このままではいけない。なんとか反撃に転じなければ。そう思ったトリガーはキングベヒモスの次の攻撃に備えて奴の姿を目で追うが…

 

キングベヒモスの姿はいつの間にか消えていた。

 

(いない!?)

 一体どこへ?街を一望しながらキングベヒモスの姿を探し回るトリガー。だが左右どの方面にもキングベヒモスの姿はない。地面かと思うと、あの僅か一瞬の間に地面を掘り進めることができるとは思えない。ならば空かと言われると、奴には翼はないから空を飛べるはずもない。

 

…そう高をくくっていたのが誤りであった。

 

 トリガーの研ぎ澄まされた耳に、何かが聞こえてきた。ひゅううう…と、何かが風を切って進んでいるような、勢いのついた音だ。

 トリガーはふと、あることに気づいた。今は満月の夜。街は月明かりに照らされて、トリガーも例外に漏れず月の光を浴びている…筈であった。なぜか彼の周りに楕円形の影が、彼を包んでいた。

(まさか…)

 

それに気づいたときには、もう遅かった。

 

「グルオオオ!」

「ウグ!!グワアアア!!」

 

 頭上から隕石のごとき勢いでキングベヒモスが落下してきた。トリガーの背中を踏みつける形で、地上に降り立ち、どこぞの大地の巨人のごとく、周囲に土煙と瓦礫をまき散らした。

 彼の背に乗ったことで、完全にマウントを取ったキングベヒモスは、その豪腕を、自分の下敷きになっているトリガーに振りかざした。

「グルオオオオ!!」

「グ!ガァ…!」

 うつ伏せにされた状態でベヒモスの巨体に馬乗りで乗られた上に、殴打の連続。常に背面を取られたトリガーに防ぐ術はなく、されるがままであった。

 

 

 

「ヤバ!ウルトラマンが!」

 これを見た鈴が、危機感を覚えて声を上げた。キングベヒモスと違い、ウルトラマンはこちらに力を振りかざすといった、こちらの脅威となりうる行為には走っていない分信用に足るが、キングベヒモスは明らかにこちらを皆殺しにする気満々の危険な存在。もしトリガーが倒されてしまえば、こちらに牙を向くのは明白だ。

 

ピコン、ピコン、ピコン、ピコン…

 

 青く光っていたはずのトリガーの胸のランプが、警報らしき音を鳴らしながら赤く点滅を始めた。

「ねぇ、何かピコピコ鳴ってない?」

「何かの警告なのか?」

 優花やメルドは、トリガーの胸部のクリスタルの点滅と、今のトリガーの状況を踏まえ、少なくともあの警報がトリガーのピンチを知らせるものだろうと確信した。

「…くそ、怪獣め!」

光輝は聖剣を持って飛び出そうとするが、咄嗟に龍太郎が肩を掴んでそれを止めた。

「待て光輝!」

「離してくれ龍太郎!ここでウルトラマンがやられてしまったら、この街は…!」

「今のお前が行っては逆効果だ!」

 そうだ、元々の…65層層目のベヒモスにもろくな決定打どころか傷一つ負わせられなかったのに、光輝が向かったところで何も成し遂げられる筈もない。それどころか、彼の身を案じる者たちが彼を守ろうと共に危険に飛び込んでいき、さらに犠牲を増やしかねない。

 もし光輝が、トリガーがキングベヒモスの拘束から逃れるために気を逸らす、そのために攻撃すると言うのなら、ちゃんと考えているということは理解できる。

「そんなことない!今度は絶対に奴を倒します!」

 だが光輝は、そんなことすら考えていなかった。明らかに実力差がわかって当然の相手に、未だに『絶対に倒す』という叶わぬ妄執に囚われていた。

 いつまでも勝ち目のない無謀な戦いに赴こうとする光輝に…

「いい加減にしろ!この大馬鹿者が!」

 ついにメルドは堪忍袋の緒が切れ、怒鳴った。

「め、メルドさん…?」

「ろくに65層目のベヒモス相手に傷一つつけられなかった貴様に何ができる!いつまで叶う筈もない幻想に囚われているんだ!」

「で、でも…街は」

 街が壊され続けてもいいのかと反論しようとするが、続けて放たれたメルドの怒鳴り声がそれを遮った。

「言い訳をするな!ミウラ殿や坊主の言葉を思い出せ!」

 ミウラとハジメの言葉。それを言われて光輝は、檜山から「ハジメが魔人族と取引をして裏切った」という話を真に受けていたこともあって尚も反論しようとする。

「な、なんで南雲なんかの言葉を」

「言い訳をするなと言っただろうが!貴様いくつだ?子供みたいに駄々を捏ねるな!さっさと思い出さんか!」

 だが、愚かしさを省みない光輝に頭に来ていたメルドの気迫が、まだ駄々を捏ねる光輝に畳み掛けるように黙らせる。

 こんなやり取りの間にも、トリガーはより命の危機に瀕していく。

 香織は、傷ついていくトリガーを見て、胸の奥が締め付けられた。元来の優しい性格が、他者の傷つけられる姿に心を痛めやすいというのもあるだろう。だが、あの巨人の痛め付けられる姿が…

いつぞや、檜山たち小悪党組にいじめを受けていたハジメの姿とダブった。

「やめてぇ!」

 悲痛な感情のままに、キングベヒモスに向けて叫ぶ香織だが、ベヒモスにその声は届く筈もなく、キングベヒモスはトリガーへの殴打を続けていく。

 

 

 赤く角を明滅させている間、ベヒモスの身体能力は大きく向上する。通常の突進よりもさらに強力な突進で相手を撥ね飛ばすと言った使い方が見受けられるが、恐らくベヒモスの固有魔法というものなのだろう。だが、魔人族の女に怪獣化されたベヒモスは、その固有魔法の性能が桁違いのものへと変貌を遂げていた。その結果…キングベヒモスは素の肉体強化を施されたことに加え、自身の固有強化魔法によって平常時と比べて圧倒的なパワーアップを遂げた。ベヒモスの数倍どころか、数乗以上に。

 それに比べ、ウルトラマンとなったハジメの力は、確かに人間の姿の時と比べるまでもない覚醒を遂げたといえる。序盤においてキングベヒモスとなんとか渡り合えているのがその証拠だ。しかし、キングベヒモスをパワー比べで押し返すにはまだ力不足の計算だったのだ。

 その原因は、彼の元々の平凡なステータス。比較対照として、敢えて光輝を上げるとしよう。平凡なステータスのハジメと、元からチートステータスの光輝。もしこの二人がウルトラマンに同時に変身した場合、例え同じ倍率の光の力を得ても、当人の素のステータスの時点で差がついてしまう。才能のない彼自身の力が、ここでも彼自身の足を引っ張ってしまったのだ。

 だが、それを言い訳にしてもベヒモスは白旗を上げさせてもくれない。キングベヒモスが重すぎてろくに寝返りを打つこともできない。連続で背中を殴り付けられる痛みが、トリガーから思考する集中力をも奪う。

(ど、どうすれば…)

 せっかく手に入れたウルトラマンの力を活かせず、ミウラが命を捨て、香織がその身を削ってでも守ってくれたこの命を散らすことになるのか?

 

『いいか、南雲君。俺たちGUTSを含め地球人は、異星人や怪獣たちと比べりゃ一目瞭然のごとく弱いし、特殊な超能力もない。それでも今まで生き延びてこれたのはどうしてだと思う?』

 

ふと、ミウラの言葉が頭をよぎる。

 

『肉体的な訓練も確かに大事だがそれ以上に大事なことがある。

相手の力を常に研究観察し、それに対応する対策を講じる…そして自分に何ができるか。

 

つまり知恵だ』

 

(知恵…)

 背中に受けるダメージに苦悶するトリガーは、背中の上で暴れまわるキングベヒモスにどう 対処すべきか思案する。もう痛みのことなど、逃れようのないものだからと割りきり、とにかく知恵を絞るために思考を集中させる。

 何か、何か手はないか?余裕のない激痛の中、この体勢からいって不利な状況でできること…

(…そうだ!)

 ハジメの頭に一つだけ、できることが浮かんだ。この姿になってもできるかどうかはわからない。が、このままでは殺されるだけだ。ダメもとでやってみるしかない。

ベヒモスにも通じた、自分のたった一つの特技を。

『そして何より…』

 

(諦めないこと!)

 

トリガーは、背中を殴り付けられる痛みに耐えながら、地面にバンと手をつけた。

 

「〈錬成〉!」

 

その瞬間であった。

 

ボコォッ!と大地が、トリガーとキングベヒモスを中心に、50メートル深く陥没した。

 

「な、だ…大地を割っただと!?」

「す、すご…」

 これを見ていたメルドや鈴たちも仰天した。

(土を陥没させた?…でも、あれって…)

 香織だけは違う見解であった。あの大地が割れる現象、どこかで見たことがあるような気がする。しかしそれがなんなのかすぐに思い出せない。

 

 

 

「グルォア!?」

 トリガーを相手にマウントを取りきっていたキングベヒモスにとって、今のは効果的な不意打ちにもなり、陥没の際にバランスを崩してトリガーの背中から転げ落ちた。その隙を待っていたと、トリガーは即座に体を転がしながら立ち上がった。

そしてその勢いのままにキングベヒモスに接近し、下から力一杯のアッパーを叩き込んだ。

「ダアァァッ!」

「グゴオォォ!?」

 下から顎を殴りつけられたキングベヒモスは、その強烈な一撃に抗えず、陥没して出来た土壁に背中を打ち付けられた。

 土壁からずり降りたキングベヒモスは、トリガーを睨み返そうと顔を上げる。…が、ここで自身の違和感に気づく。手足が、なにかに縫い付けられているかのように動かせなくなっていた。両腕と両足を見ると、自分の両手足がいつの間にか岩の中に、まるでコンクリート詰めにされたかのように埋め込まれていた。

 これもトリガー…ハジメの謀りであった。キングベヒモスを壁に激突させてすぐ、錬成を発動させキングベヒモスの四肢を岩の中に埋め込んでしまったのだ。

(今だ!)

「オオオオオオオオ!!」

 キングベヒモスの動きを封じ、そこからはキックやパンチを併用したトリガーの怒涛のラッシュが繰り出され、キングベヒモスは一方的に打ちのめされていく。錬成師にすぎないハジメ自身に格闘技の心得がないだけに、かなりがむしゃらで型の入ってない雑なラッシュだが、身動きの取れないキングベヒモスには、さっきまでの倍返しとするには十分だった。

そして、頭上からトリガーのチョップが振り下ろされ…

 

「ヘァ!」

 

バキィン!!

 

「グガアアアアァァァアアアアア!?!」

 

キングベヒモスの角を叩き折った。

 角を叩き折られ、俺の角がぁ!と叫ぶように悶えるキングベヒモス。

「ディア!」

 最後にもう一撃、キングベヒモスの腹に蹴りを入れ、そのままキングベヒモスを踏み台に穴の外へ飛び退いたトリガーは、陥没した地面の縁に着地する。

これでなんとか体制を優位に整えることが出来たが、胸のランプの点滅がさらに速くなっている。

「グゥ…」

 それに伴って、体がかなり重くなっているのを実感した。もしかしたら、もうタイムリミットが迫っているのかもしれない。このまま戦えばパワー比べでまた不利に陥ることが大いに考えられた。何かないだろうか。光輝の神威のような一撃必殺となりうる必殺技は…

「…!」

 いや、ある!今一瞬、頭の中に浮かび上がった。

「フン!ハアアアアァァ…!」

 脳裏に過った一瞬のヴィジョンに従い、トリガーはピン両腕を胸の先へ伸ばしてクロスさせ、横一直線に広げる。すると、その両腕の動きに沿って光の軌跡が描かれ、トリガーの胸や四肢の金色のプロテクターと共に白く、美しく煌めく。

光が収まると、トリガーの両腕に強い光の力が漲っていた。滾るその力を、彼はL字型に組み上げた両腕から解き放った。

 

〈ゼペリオン光線〉!

 

「デュア!!」

 L字型に組み上げられた両腕より、一点の曇りなき白い光の奔流が放たれた。光線はキングベヒモスの胸に直撃し、そのまま浴びせられていく。

「ヌウウウウウ!!」

 トリガーは、光線の放射を止めず、さらに強く重く、気合を入れて光線を流し込み続ける。やがて限界が訪れたのか、途中でっぐ!と悲鳴を漏らしながら光線を中断した。対するキングベヒモスは、胸元を左手で押さえ、右手をトリガーのいる方角へ伸ばしながら、前のめりに倒れていく。まるで死の淵に陥った者が、なおも生にしがみ付く様に。

 やがて、倒れ込んだと同時にキングベヒモスの体は、花火のような大きな轟音と共に、無数の肉片となって粉々に爆ぜ飛んだ。

 

 

 

 

 キングベヒモスが粉々に砕け散った光景は、香織たちやホルアドの人々、冒険者、その他神の使徒たちの目にも届いた。

 

 恐るべき怪獣の脅威が去ったこと、巨人や、おそらくあの巨人をこの地へ呼び寄せてくれたであろう偉大なる神エヒトルジュエへの感謝の気持ちで、人々の歓声が沸き上がる。

 

 なんとか、やっつけることができた…。怪獣が粉々に砕け散り、これできっと人々も普段通りの安息を取り戻すことだろう。

…一緒に地上へ連れ戻した香織のことが気がかりだ。それに、メルドたち王国騎士団、クラスメイト達のことも気になる。

「デュア!」

 トリガーは頭上の空を見上げると、東の空から明けの明星を輝かせる空の彼方へと飛び去って行くのだった。




皆さん、ここに行き着くまで色々気になった箇所も多いかと思います。
どうして原作のトリガーと違い、ゴルバ―ではなくベヒモスを敵怪獣としてチョイスしたのか?
なぜ○○ミラさんたち闇の巨人が現れていないのか。
どうしてハジメが変身の際に使っているのがエンシェントスパークレンスなのか?

まず、ゴルバーですが…この先も書く場合、僕としては合体怪獣と言うゴルバーの設定から、劇中でゴルザとメルバを融合させることで初めて姿を現し、トリガーを苦戦してやりたかったってのが大きいです。それに原作の魔物たちにも、ハジメたちの強敵としてより存在感を持たせたかったこともあり、ならありふれ作中の中でも、ある意味全ての始まりとなったベヒモスが良いのではと思い、今回の形に至りました。名前もウルトラシリーズでおなじみ、『とりあえずキングを加えりゃいいか』的なノリです。

○○ミラさんたち闇の巨人についてですが、劇中でも語った通り、当初は『力』を取り戻していないため、しばらく魔人族の姿です。そこから色々過程を経た後で、本来の姿を取り戻して一層の暗躍に走る…という流れにするつもりでした。でも、原作と異なる形でその闇の巨人たちですら…な展開も用意するつもりでいました。

変身に使ったのがエンシェントスパークレンスである理由…これについても、この先やってみたい展開(もしかしたらの話ですが後に書く機会に備え、敢えて語ることはできません…)のために必要な過程でもあるからです。そのために最初はエンシェントスパークレンスをトリガーへの変身アイテムとしてハジメに使わせました。そのため、タイプチェンジも原作と違いハイパーキー無しで行わせ、よりティガに近いトリガーとして表現するつもりでいました。

その他にも、イシュタルが最初にハジメたちに見せた巨人像のことや、仲間内に潜む裏切り者たち、勇者(笑)扱いの光輝のことについても気になる人もいるでしょうが、語れるのはここまでです。ごめんなさい…

ただ、前回までに前書きで語ったように『ウルトラマンと言う作品をアンチ・ヘイトのための暴力装置にしない』という自分ルールのもと、光輝についてですが一つだけ…


彼は良い意味で、進化します。



とりあえずありふれ×トリガーにおいて思いついた分はここまでです。ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

この後のことは完全気まぐれ。いろいろ書いてみたい展開はありますが、そこに行き着くまでの過程がめんどいですw どうしても時間かかっちゃう…
まぁこのタイミングで終わらせるにはかなりもったいないのもまた事実。他にも書きたい、書かなければならないと思ってる二次創作もありますので、それらの執筆の傍らで余裕があれば、また書いて行こうかと思います。
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