爆死ガチャと落ちこぼれ   作:S·ダーマ

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第二話

「知らない天井だ」

 

 気が付けば俺は粗末なベッドで寝かされていた。飾り気のないこの個室は俺に充ててくれたものなのだろうか?

 そういえば先ほどまであれだけ壮絶な苦しみを味わったにも関わらず、身体に異常は何もなかった。それどころかいつもより調子がいい気すらする。

 

「起きておるかー!?」

 

 バターンと勢いよくドアが開けられる。うーん、俺にあれだけの仕打ちをしておきながらこの態度。ここでしっかり釘を刺しておかないと次は何をされるかわからん。

 

「あのなぁお前……」

「おっ、もう具合は良さそうじゃな!では早速実験室へ行くぞ!わらわは早くキサマの力が見てみたいのじゃ!さぁ早くホラ早く!」

「人の話を聞け!」

 

 駄目だコイツはやく何とかしないと。このままでは俺の身が持たない。

 

「お前な、さっきまで俺はよくわからんものを体にぶち込まれてぶっ倒れてたんだぞ。もう少しこう、他人をいたわる気持ちとかは無いのか!?」

「うーん?」

「無さそう!」

 

 これは、人間(というか俺)が如何に脆い存在であるかを理解(わか)らせる必要があるようだな……自分で言ってて悲しくなってきた。

 

「いいかいお嬢さん。人間という存在はな、とても脆く儚いのだ。死ぬときにはそれはもうあっさり死ぬ!」

「えっ?」

「俺が元居た世界では日常のささいな出来事がきっかけで死んでしまう事故が毎日数多く起こっていた。下手したら道で転んだだけでも死ぬ可能性がある!」

「そ、そんな……」

「ちなみに俺は毎日の違法残業のお陰で常に生と死の境を彷徨う生活を送っていたぞ。一回医者に見せに行ったら『よくこんな体で今まで生きてこれましたね』と太鼓判をもらったこともある。これじゃいつ何時ポックリ逝っちまうかわからねぇなぁ?」

「それは嫌じゃ、死なれるのは困るのじゃ……」

 

 よしよし、言ってることが死ぬほど情けない以外は順調だ。あともう一押し。

 

「ククク、ようやく自分の立場が理解できたか。俺に実験を協力して欲しいと言うなら、『双方の合意なく苦痛を伴うあらゆる行為を禁止する』と約束しろ!」

「ふぐぅぅぅ」

「ハイ復唱!」

「うぅ、そ、双方のぉ、合意なく苦痛を、伴うあらゆる行為を禁止、しますぅ……」

「ヨシ!」

 

 これで当分の間俺の命は守られた。人として大事なものを失った気がするが、気のせいだということにしておこう。涙目でしわしわに萎れる彼女の姿にそこはかとない罪悪感を覚えるが、それも全力で無視することとする。

 

「人間は脆く儚い……うむ、わらわ覚えた。これからは死にそうになったら生命力強制注入魔法で延命させてやるのじゃ。安心するのじゃ」

「逆に死にそうだからやめて?」

 

 どうしよう、早くも不安になってきた。

 

「あー、そういえば。確か君が俺の力?だかを覚醒させてくれて、それを確かめに行くんだろ?」

「うむ。でも、無理やり力を使わせるのはダメじゃから……えっと、キサマは良いのか……?」

 

 見た目10代の金髪美少女の涙目上目遣いは理性にかなりのダメージを与えてきたが、俺は大人なので気合で耐えた。俺の取り繕いスキルを嘗めるなよ。

 だが実を言うと俺はちょっとだけワクワクしていた。痛いこと、苦しいことは御免だが、こんなビックリファンタジーの世界に飛ばされ、しかも超能力が使えるかもしれないと来た!浪漫を感じるなという方が無理である。

 

 なので俺はしょげかけている彼女に肯定の意を伝え、実験室への道案内を頼む。大喜びで駆け出す彼女は、魔を統べる魔王ではなく年相応の少女に見えた。

 

 ◇◇◇

 

「実験室というからには色んな機器でゴチャゴチャしてるもんだと思ってたが、随分小ざっぱりした広間って感じだな」

「実家にあった道具はほとんど持ってこれなかったんじゃ。仕方なかろう」

 

 ずっと気になっていたが、今俺が居候しているこの屋敷は、如何にも貴族の令嬢といった風体のリリアンが暮らしている割にはみすぼらしい印象を受ける。調度品らしい調度品も俺が尋問を受けた応接間にしか見当たらないし、使用人の類が彼女が生み出した眷属とかいう白い肉人形しかいない。話を聞く限り何かしらの事情で実家を追い出されたらしいが……あまり親しくない奴が深く追求するものでもないだろう。

 それよりも超能力だ!男として生まれたからには一度は妄想したこともあるだろう、超能力を操る自分!まさかそれが現実になるとは。もう元の世界に帰らなくてもいいのでは?この世界にガチャが存在しないのが心残りだが、リハビリだと思えばいいか。

 

「いやぁ楽しみだなあ。手から火とか出しちゃうかな?もしくはテレポート、サイコキネシス……うへへ、夢が広がるぜ」

「大丈夫か?張り切り過ぎて死んだりせぬか?」

「流石にそこまで軟ではない!……はず」

 

 大丈夫大丈夫へーきへーき。そういう油断が事故の元だという正論はしまっちゃおうね。

 

「えー、では、オホン……俺に秘められしなんかすごい力よ!えっと、こう、出ろーっ!!!」

 

 静寂。外を吹いた一陣のそよ風の音すらはっきりと聞こえる静寂が、一瞬にしてその場を支配した。

 

「……」

「……」

「……どうやら俺の超能力は周囲の音を消す能力だったようだな!」

「なわけなかろう!」

 

 叩かれた。ひどい。

 

「よいか?何事かを為すには対価が必要じゃ。キサマのソレも同じじゃ」

「対価ぁ?」

「うむ。という訳でコレを飲むがよい。体に害はない故、安心するのじゃ」

 

 そう言って彼女はぱっと見1L程はありそうな瓶を渡してきた。中身はほのかに発行する濃い青の液体で満たされている。害はないと言っていたが本当か?飲んだ瞬間爆発したりしないか?まぁ、ゴネてもしょうがないから飲むが……。

 

「残らず飲むんじゃぞ」

「……んっ、全く味がしない。で、これは何なんだ?」

「わらわ特性の液化魔力じゃ。貴重なものじゃが、これで準備が整った」

 

 貴重なものでございましたか。これは俺も気合を入れ直さないとな。

 

「部屋の中心を向いて、精神を集中させるのじゃ。己という存在の深淵に潜り込み、内より出ずる力を掴み取れ。さすれば超常をの力を真に己が物に出来る……はずじゃ」

「え、嘘だろまさかお前もノープランだったの!?」

「う、うるさいうるさい!失敗したらその時はその時じゃあ!!」

「開き直りやがった!クソっ、ええいままよ!」

 

 ここに来て急に雲行きが怪しくなったが、今更後には引き下がれない。彼女の言うとおりに目を閉じ、精神を集中させる。

 海を潜るイメージで精神を己へ埋没させる。深く、深く。しばらくそうしていると、手に何かが触れた感覚がした。俺はそれを迷わず思い切り引き上げる!

 

 ガチン、と歯車が嚙み合ったような気がした。次の瞬間には胸の内から膨大の熱量が弾け飛ぶ。しかしそれはあの時の暴力的なものではなく、ガソリンを燃やしエンジンが駆動するような、力強く、心地よさすら感じられた。体内を急速に駆け巡るエネルギーたちを、俺は一点へ搾り込み解放する!

 

「うおおおおおおお!!!!!」

「こ、これは……!?」

 

 俺を中心に出現する巨大な魔方陣。同時に此処ならざる次元より力の奔流が渦巻き、大河となったそれは新たなる”力”をもたらす!

 

【☆☆ 戦士の剣】

【★ 携帯食料(小)】

【Dランク 丈夫な木の棍棒(武器)】

【N サンドラール式携帯小銃】

【COMMON Lumberjack ax】

【☆☆ メダカの悪魔(ユニット)】

【HN ボーンソード】

【☆☆ 戦士の剣】

【C+ 火の魔導書】

【C 獣の爪】

 

 体を支配していたエネルギーが霧散し、俺は思わず膝をつく。力が抜けて思うように体が動かない。

 

「大丈夫か!?」

 

 思わずといった風に駆け寄ってくるリリアンを視界の端に収めつつ、俺は辺りを見回した。その辺に雑に散乱するガラクタ、ガラクタ、魚頭の怪人、そしてガラクタ。

 

「大丈夫か人間!おい!しっかりしろ!」

 

 俺は自分に宿った力を理解した。確かにこの上なく俺に似合う能力ではある。その上で言わせて欲しい。

 

「しっかりするんじゃ人間!死ぬな!死ぬなーっ!」

「ググゲッ」

 

 なんだこのクソガチャは!ユーザー()を嘗めてんのか!?




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