第11話 原点 1
タイムカプセルも開け終わった後、絵里がメンバーを集める。
「まず、凛、花陽、希、真姫。約束は忘れていないわよね。」
絵里は、四人に確認する。
「な・・・、何をするんですか?」
「あんまり酷いと、・・・凛達泣いちゃうにゃー。」
花陽が怯えたように、凛が若干ふざけたように言う。
「アイドル研究部のために、ちょっと時間をとってもらうだけよ。」
絵里が、凛と花陽をなだめるように説明する。
「みんなにやってもらうことを結論から言えば、みんなにμ's結成&解散についてインタビューを受けてもらいたいのよ。」
絵里の頼みごとはこれだ。負けていたら、企画は絵里の頭の中にしかないことになっていたかも知れない。
「えりち、何でそんなことをするんや?」
疑問を口にしたのは希だが、まあ、誰でもそう思うだろう。
「今のアイドル研究部に原点を思い出させるためよ。」
絵里が結論を先に述べる。
「まずは、今のアイドル研究部の状況を簡単に説明するわ。」
「今のアイドル研究部は、音ノ木坂学院では花形の部活の一つなの。」
「スクールアイドルと、それを支える裏方とにハッキリ分かれる仕組みになり、アイドルは選抜されるようになった。」
ここまでの説明で、アイドル研究部がいかに飛躍してきたかがわかる。
「ふふーん、アイドル研究部がそんなに成長するとは、創設者としては鼻が高いわね。」
にこがふんぞり返る。
「そのμ'sが解散して10年、今のアイドル研究部に足りないものに気づいたの。それは、原点とも言うべきみんなで支え合う心。」
絵里が説明を続ける。
「支え合う心・・・ですか?」
ことりがかわいく首をかしげる。
「一番わかりやすいのは、『ラブライブ!』第二回の東京最終予選かしら。」
「あの日は、学校の説明会と重なって、穂乃果達は生徒会との関係で遅れてきたわよね。」
絵里の言う通り、その日は大雪の影響で学校の説明会が遅れ、電車も停止。道路も雪が積もって車が動ける状況じゃない。
「そこに、穂乃果の友人3人の呼び掛けで学校のみんなで雪かきをして、間に合った訳でしょ。こういうのって、当時の音ノ木坂ならではだと思うの。」
絵里の言う通り、ヒデコ、フミコ、ミカの呼び掛けがあって、学校の全員で雪かきをした。その彼女らも、それぞれの道を歩んでいる。
「当時優勝候補筆頭だったA-riseに勝てたのも、この出来事があって、全員が心を一つに合わせられたからだと思うわ。」
絵里は、あの雪がμ'sに、天が与えてくれたプレゼントだと信じていた。
(まあ、理科教師がそんな非科学的な考えをするのもおかしな話だけどね。)
歴史に『もしも』はないと言うが、普通に考えれば、結成して半年強のグループが、優勝候補筆頭に勝つなんて冗談としか言いようがないだろう。
「でも、今の音ノ木坂学院アイドル研究部にはそれがない。普通のスクールアイドルの強豪校になってしまったわ。」
絵里が現状を嘆くように言う。
「規模が大きくなれば、どうしても全員が一致団結しにくくなるのはしょうがないわ。」
真姫の言う通り、規模が大きくなれば、どうしても目が行き届かないだろう。現実、真姫達が3年生になる頃にはそうだったのだから。「もちろん、全てを当時のようにやれる訳ではないわ。生徒だって多様性があるもの。中には、スクールアイドル内でもいがみあいが発生していることもあるわ。」
残念ながら、今の音ノ木坂学院アイドル研究部では、部員達の人間関係が複雑になり、一致団結とは言い難い。