絵里がμ'sの活動に関わるきっかけは、穂乃果達が、こともあろうに生徒会長の絵里にダンスを教わりに来たところだ。
(あなたの差し金ね。)
絵里は、海未の方を見た。
『あなたに、私達のことをそんな風に言われたくありません!』
先日、公園で絵里は海未に、自分のかつてのバレエの躍りを見せて、「A-Riseさえも、私から見れば素人に過ぎない。」と言ったのだ。
(彼女らに自分達の実力を知らしめるいい機会だわ。)
絵里は、やるからには自分が許せる水準まで達成することを約束させた。
その日の訓練は、絵里の予想通り、彼女達はついていけなかった。絵里が途中で中止を宣告した。
文句を言うにこと真姫には
「自分達の実力がわかったでしょ。」
(身の程知らず!)
絵里は極めて冷たい態度を取り続ける。
絵里が立ち去ろうとすると
「ありがとうございました!明日もよろしくお願いします!」
と穂乃果達が自分に礼を言った。
穂乃果達の視線から、その言葉に嘘がないことはわかる。
(どうして、そう言えるのよ!)
絵里にとっては意外なことだった。
その日の夜、妹の亜里沙がμ'sの音楽を聴いていた。亜里沙は「すごく元気がもらえる」と言っていた。
絵里も聞いてみると
(ダンスはまだまだだけど、確かにエネルギーは感じるわ・・・。)
翌朝、絵里が屋上に来ると、穂乃果達はすでに来ており、やる気を出していた。
「辛くないの?昨日あんなにやって、今日またおんなじことをやるのよ。上手くなるかどうかもわからない。」
絵里が、穂乃果達に訪ねる。
穂乃果達は、廃校を阻止したいと言う熱い気持ちをぶつけた。
それに対して、絵里は無言で去っていった。
廊下を歩いていると
「ウチな・・・。」
横から希が声をかけてきた。
「希。」
絵里が希の方を振り返る。
「えりちの友達になって、生徒会やってて、ずーっと、思ってたことがあるんや。」
「えりちは、本当は何がしたいんやろって。」
「一緒にいると、わかるんよ。」
「えりちががんばるのは、いつも誰かのためばっかりで、いつも我慢しているかのように、全然自分のこては考えてなくて。」
希の言葉を聞いて、絵里が去ろうとすると
「学校を存続させようと言うのも、生徒会長としての義務感やろ。」
希が声を張り上げる。
「だから理事長は、えりちのことを認めなかったとちゃう?」
おそらくその通りだろう。もっとも、それは理事長がはぐらかさずに教えてやっても良かったのだが。
「えりち・・・。えりちの本当にやりたいことは?」
希は、絵里を見つめながら問い質す。
「何よ・・・。何とかしなくちゃいけないんだから、しょうがないじゃない!!」
「私だって、好きなことだけやって何とかなるならそうしたいわよ!」
絵里の心の叫びだ。
絵里は涙を浮かべ、
「自分が不器用なのはわかっている!」
「でも!今さらアイドルを始めようなんて、私が言えると思うの?」
そう言うと、絵里は走って去っていった。
「私のやりたいこと・・・。・・・そんなもの!」
教室に戻って一人で座っている絵里が投げ捨てるように言うと、
突然手が差し出された。
絵里が横を向くと、穂乃果達がいた。
「あなた達・・・。」
「生徒会長、いえ、絵里先輩。お願いがあります。」
突然穂乃果達が現れて戸惑う絵里。
「練習?なら、昨日言った課題を全部こなして・・・。」
「絵里先輩、μ'sに入って下さい。」
「一緒にμ'sで歌ってほしいです。スクールアイドルとして!」
穂乃果が絵里をスクールアイドルにスカウトしに来た。
「何言ってるの?私がそんなことする訳ないでしょ。」
絵里の立場なら、そう言うだろう。
「さっき、希先輩から聞きました。」
海未が言った通り、希が屋上に言ってみんなに説明したのだ。
「ちょっと待って!別にやりたいなんて・・・。・・・大体、私がアイドルなんておかしいでしょ。」
これまでの態度を考えれば、それもそうだろう。
「やりたいなら、やってみればええんとちゃう?」
そんな絵里を後押しする希。
「やりたいことって、そんなところから始まるもんや。」
その言葉は、絵里がμ'sに入るのに、十分な力を与えてくれた。
絵里が穂乃果と握手し、8人目のメンバーとなり、その直後に希も加入し、9人が勢揃いした。