とりあえず明日の最新話が怖いです。
そして、カミキのCVは宮野さんでしたか。個人的にはCV櫻井さんかと予想していたので、少し意外でした。
「ここが、事件現場ですか」
芹沢と特命係の二人は、姫川夫妻の心中の現場となった別荘を訪れていた。既に日が沈んでいるため、辺りは完全に暗くなっていた。
四年前の事件以後、現場となった別荘は買い手がつかずに放置されていたらしく、建物自体は多少塗料がはげている程度でほぼ資料で見た事件当時の姿と変化はないものの、周囲には雑草が生え放題になっていた。
「でも、別荘の鍵なんていつ手配したんですか?」
芹沢が不思議そうに尋ねる。既に解決した事件ということもあり、証拠品は全て返却されており、下佐久警察署内には保管されていなかったはずだからだ。
そんな疑問に対し、右京は小さく笑いながら答える。
「神戸君に、あらかじめ別荘の管理会社に連絡して用意してもらいました」
「警部を下佐久警察署にお送りして、その足で管理会社に行ってお借りしてきました。しばらく借り手がつく目途がないので、返却は後日郵送でかまわないと言ってました」
神戸も補足する。相変わらず変人警部のお守りという損な役回りをしている姿に下っ端としてこき使われている自らの姿を重ねた芹沢は、心の中で密かに同情した。
だが、そんな感傷に浸っている暇もなく、三人は現場に足を踏み入れる。
「空気が大分淀んでますね……」
尊がハンカチを口に当てながら呟く。カビ臭さと埃っぽさが充満しており、長くいれば喘息などの呼吸器系疾患を引き起こしそうな空気だった。
既に使われなくなって久しい物件であり、電気の契約なども切れているため、窓から差し込む月明かりだけが光源となっている。
流石に月明かりだけでは探索しづらいので、懐中電灯を取り出す。スイッチを入れると、ぼんやりと周囲を照らし出した。
玄関から入り、廊下をまっすぐ進むと、犯行現場であるリビングルームへと辿り着く。しかし、事件から既に四年が経過しており、室内の家具は一つ残らず撤去されていた。
血飛沫が飛び散った壁紙も、フローリングも、ソファも、テーブルも、全て綺麗に取り払われ、ただの広い空間が広がっているだけだった。
ここで凄惨な事件が起きたということなど、もはや微塵も感じさせないほどだ。
そんな空間を、右京は懐中電灯を片手に注意深く観察していく。あちらこちらに光を向け、時にはしゃがみ込んで床に触れるなどして落ち着きのないネズミのように動き回る。
「で……なんで警部殿は現場に来たがったの?」
せわしなく動き回り、リビングを後にする右京を横目に見ながら、芹沢が小声で尊に話しかける。
右京の行動原理は常人には理解できないことが多々あるため、今回のような行動にも何らかの意味があるのだろうと考えたのだ。
「僕にも、理由を言ってくれなくて」
「そういうところあるよね、あの人」
「ありますね」
二人揃って苦笑いをしていると、リビングを出て行った右京がひととおり調べ終えたのか戻ってきた。
「随分と楽しそうですねぇ。何か、収穫がありましたか?」
やや皮肉めいた口調で右京が言う。それに対し、尊は素直に答えた。
「いいえ。このとおり壁紙まで張り替えられて事件当時の状況が分かるものが何一つ残ってないものですから」
「そうですねぇ。流石に、血痕の残った床、壁、天井はそのままにはしておけませんし、家具も同様です。事件後に全て処分されていたであろうことは容易に想像できました」
「じゃあ、なんで杉下警部は事件現場に来たがったんですか?事件当時の状況がうかがい知れるものなんて何も残っていないと分かっていたんでしょう?」
芹沢の問いかけに、右京はゆっくりと頷き、口を開く。
「長野県警の捜査資料によれば、この別荘には第三者が出入りした痕跡は一切なかったそうです。これは、セキュリティーシステムの記録から明らかですし、唯一開閉されたベランダの窓についても、そこからの出入りがないことは近隣の別荘に設置された防犯カメラからも明らかになっています。そして、一通り別荘の中を探しましたが、セキュリティーシステムを掻い潜ってこの別荘の外に出ることは不可能と言って差し支えないでしょう。つまり、言い換えればこの別荘は被害者である姫川さんと上原さん以外の人物は一切存在しない密室だったということです。第三者が犯行に関与する余地はない」
「杉下警部も、姫川さんと上原さんの死は無理心中だったという長野県警の見解には同意しているんですか?」
「ええ。僕も、そこに異論を挟むつもりはありません。ですが、一つ、気になることがあります」
右京が人差し指を立て、言葉を続ける。
「生活反応のない切り傷が姫川さんの身体に残っていた以上、上原さんが姫川さんを殺害し、死後に斬りつけたということは間違いないでしょう」
「まぁ、死人が死後に自分を斬りつけるなんてことはできませんからね」
芹沢の言葉に同意するように頷く右京だったが、すぐに次の疑問を口にした。
「では、何故上原さんは姫川さんを殺害後に斬りつけたのでしょう。ただ無理心中をするだけならば、姫川さんの死体を傷つける必要はないでしょう。姫川さんが刃物を持って襲ってきた上原さんに抵抗した時に全身の傷がついたのだとすれば、その傷には生活反応があってしかるべきですが、致命傷となった胸部の刺し傷以外の傷は全て生活反応がありません。となると、上原さんは」
右京は胸ポケットから取り出した万年筆を凶器のナイフに見立てると、尊も前に向き直った。
「傷口の角度から推察するに、おそらく上原さんは正面から姫川さんの胸をナイフで一突き!」
右京は尊の正面から万年筆を尊の胸に突き刺す動作をした。まるで実際に刺されたかのように尊は後ずさりし、苦しそうな表情を浮かべながら崩れるように倒れた。
「そして、最低でも十分が経ち、姫川さんが死亡したことが明らかになってから、改めて死体を傷つけた!」
さらに今度は倒れ伏す尊の横に立ち、万年筆をナイフに見立てたまま、身体中を斬りつけていく仕草を見せる。
「その後、家財を破壊し室内を荒らしまわった上原さんは、自分の手首や足にも斬りつけ、血飛沫を部屋中にばらまきました。そして、自身の頸動脈をナイフで斬りつけた直後、ナイフに残った指紋を服で拭って投げ捨てた。頸動脈からの大量の出血により、上原さんは命を落とした」
「長野県警の現場検証の結果から推察するに、事件の概要は杉下警部が仰ったとおりでしょうね」
尊が起き上がりながら、スーツについた埃を嫌そうに払う。
「でもこれ、僕がこの埃まみれの床に転がる必要ありました?」
「そんなことよりも、妙だと思いませんか?」
「そんなことって……」
尊の言葉は右京には完全に無視された。
一方で、話をはぐらかされた尊はやや不満げな表情を浮かべたものの、それ以上追及することはしなかった。しても無駄であることは明白であったし、右京のいう気になる点にも興味があったからだ。
「上原さんが姫川さんを殺害した動機は不明ですが、二人の間に殺害に至るほどの何らかの軋轢があったことは間違いないでしょう。そして、上原さんが姫川さんの殺害後自ら命を絶った動機についても、良心の呵責や罪悪感などといった理由が考えられます。ですが、上原さんが自ら命を絶つ直前に、既に亡くなった姫川さんを傷つけ、家財を荒らした動機はなんでしょうか」
右京の問いかけに、尊は顎に手を当てて考え込む。
「……無理心中を、殺人事件に偽装しようとした?」
「ええ。僕も、そう考えています。ですが、問題は何故無理心中ではなく、殺人事件に偽装する必要があったかということです」
ドラマなら多分CMが入るタイミングで、今回の更新は終了。