少年Aの再登場に期待ですね。
PV見ると、今Seasonも土師っちが特命の便利係を継続してくれそうな感じですね。馴染んできたところなので、続投が決まって素直にうれしいです。
右京と尊は、かつて上原清十郎が所属していた劇団ララライを訪ねていた。
金田一敏郎はその劇団ララライの代表兼演出家であり、スポンサーとの折衝や人材育成、演技指導等、仕事は多岐にわたる。
「おい、それじゃちょっと暗いぞ。もう少しフラットな表現でいけ」
特命係の二人が金田一から話を聞こうと訪れたその日も、金田一は稽古場で、俳優たちに演技指導を行っていた。
「劇団ララライは、優秀な役者を多く抱えている、界隈では有名な劇団だそうですよ」
熱心に演技指導をする金田一の様子を遠目に見ながら、右京は尊に言った。
「へぇ……確かにすごい演技力ですね。それに、なんか見覚えある人もちらほら」
劇団ララライは、劇団としての規模、歴史、実績は決して大きくはない。人材、予算、知名度共に、決して恵まれた環境にあるわけではないのだ。
しかし、実力のある俳優も何人か所属しており、定期的に舞台公演をしていたり、地上波のドラマのレギュラーキャラとして所属俳優が出演することもある。
尊が見覚えがあると言うのもそのせいだろう。
しばし稽古を見守っていると、一区切りついたらしい金田一が二人の方へ近づいてくる。
「待たせてしまってすいませんね、刑事さん」
「おかまいなく。突然押しかけたのは我々ですから」
尊が代表して、挨拶を返した。
「……なんの話か知らんが、周りの目や耳があるところで話すべきじゃないことだろうな。場所を変えたいんだが、いいか?」
尊と右京が頷くのを確認し、金田一は二人を伴って劇団ララライの事務スペースの隅にある応接室に向かった。
「それで、態々警視庁の刑事さんが、なんの事件で?」
金田一は応接室のソファーに二人と向き合うように座り、単刀直入に切り出した。
「実は、こちらで5年前に開催されたワークショップのことで、少々お話を伺いたいと思いまして」
右京が口を開くと、金田一は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ワークショップか……」
「あまりよい思い出がないようですね」
尊が、含みを持たせた口調で言った。
尊の指摘は当たっていたようで、金田一は眉を寄せると深いため息をついた。
「元々、ララライは演劇専門学校で芝居やってたやつらが、やりたいことをやろうってんで立ち上げたサークル演劇でな。資金力も知名度も役者の質、数も今とはくらべものにならんくらい弱小だった。で、そんな時に安上がりに人を集めることができればって考えて始めたのがワークショップだ」
「金田一さんの様子から察するに、あまりよい結果は出なかったようですが」
「費用対効果でみれば明らかな失敗だった。あれ以来、うちはワークショップはやってない」
金田一はきっぱりと言い切った。
「そのワークショップの、参加者の名簿があれば見せていただきたいのですが」
尊がすかさず切り出す。
「参加者の名簿なら、確か事務室に取ってあったと思うが……ちょっと待っててくれ」
金田一はそう言うと、席を立って事務室へと向かった。
しばらしくして、金田一が名簿をもって戻ってくる。
「これが、当時のワークショップの参加者の名簿だ。後ろについてるのは、外部参加者の申込書」
「拝見します」
右京は名簿を受け取ると、いつものように常人離れしたスピードでページを捲り目を通していく。
その様子を見ていた金田一は思わず感嘆の声を漏らす。
「すごい速さだな……これで、内容が頭に入るのか?」
「ええ」
「この人だけですからね。刑事がみんなこの人みたいな速読ができるわけじゃないですから」
尊がやんわりとあくまで右京が特別なのだと金田一に説明した。
その間に名簿をすべて見終わった右京が名簿から顔をあげた。
「金田一さん、こちらの名簿によると、ワークショップにはB小町のアイさんも参加していたそうですが」
「B小町のアイ?……あぁ、そういえば参加していたな」
金田一は予想だにしなかったのか、少しの間があってから頷いた。
「差し支えなければ、彼女がどのような経緯でワークショップに参加されたのか伺えませんか?」
「別にかまわないが……なんだ、刑事さんたちはアイの事件を調べていたのか?犯人なら自殺したって報道されていたが」
「あくまで、裏付け捜査の一環ですので、あまりお気になさらず」
金田一は怪訝な表情を浮かべながらも、アイがワークショップに参加した経緯を話し始めた。
「鏑木……あぁ、俺の大学の後輩で、元ウチの団員なんだが、ファッション雑誌にモデルを紹介したり、低予算ドラマのキャスティングなんかで顔が利くやつでな。確か、そいつの紹介でワークショップに参加していたはずだ」
「金田一さんは、彼女と親交はなかったのですか?」
尊の質問に金田一は首を横に振った。
「ここの演出担当だからな。演技指導はしたさ。でも、演技を見た後に一言二言感想やアドバイスをするくらいで、他の参加者と比べて何か特別関係があったわけではなかったな。指導の手が足りなくて、とにかくワークショップを回すだけでてんてこ舞いだったし、一人一人を見る余裕なんてとてもなかった。正直、B小町のアイが参加していたはずだと言われても、そういえばいたな、くらいの感覚しかない」
「ワークショップに参加していた彼女の様子について何か他に覚えていることは?」
「磨けば光るかもしれない、くらいは感じたが、それぐらいだな。よくよく個人を見てる暇なんてなかったから」
金田一ははっきりと言い切った。
その口ぶりからは、ワークショップに参加したアイに関心をもっていないことが窺えた。
「因みに、このワークショップには姫川愛梨さんと、上原清十郎さんが参加されていますよね」
右京の質問に、金田一は虚をつかれた顔をした。
「……確かに、その二人ならワークショップに講師側として参加していたはずだ。上原はウチの団員だったし、姫川さんも子育ての息抜きがしたいとかいって偶に顔を見せていたと思うが」
「このワークショップの参加者の中で、上原さんや姫川さんと親しくされていた方はどなたかいらっしゃいませんか?」
「さっきも言ったとおり、俺はワークショップを回すのでてんてこ舞いで、参加者と講師の関係なんか見る余裕はなかったからな、正直わからん」
「では、講師となったそちらの団員さんの中ではどうでしょう?どなたか、上原さんや姫川さんと特別親しくしていた方はいらっしゃいませんか?」
金田一は、質問の意図が分からなかったのか、首を捻りながらも答えた。
「何年も前に心中した夫婦のことなんて、今更どうして気にするのか分からんが……この時ワークショップに参加していたウチの劇団員の中でこの二人と親しかった人物というと、そうだな」
金田一は先ほどまで右京が見ていたワークショップの参加者名簿を手に取ると、名簿をめくりだした。
そして、目的のページにたどりつくと、そこに記載された一人の人物の名前を指さした。
「神木、輝……」
そのページには、ララライから講師として参加した人物と連絡先がリスト化されていた。金田一が指さした名前を尊が読み上げる。
「上原も、嫁さん共々あいつを弟みたいに可愛がっていた。古株の団員とも付き合いはあったと思うが、先輩後輩の付き合いの域を超えるだけの親交があったのは、多分輝くらいだ」
「その神木輝さんですが、少しお話を伺うことはできませんか?」
「輝はもうララライにはいない。上原が例の事件を起こした後ぐらいだったかな、学業に専念するって言ってララライを辞めちまったんだ。当時はウチでも随一の演技派だったんだがな、流石に上原が例の事件をやらかした後だったから、二人との思い出も多いララライに輝を引き留めることも気が引けた」
金田一は残念そうにため息をついた。
「神木輝さんと連絡を取りたいのですが、こちらのリストに記載されている電話番号で連絡は取れますかね?」
「いや、輝がララライを辞めるちょっと前だったかな、電話番号は変えてるはずだ。今の番号はこっちだ」
そう言うと、金田一は自身のスマホを操作したのち、右京に電話番号を見せた。
尊が金田一のスマホに表示された神木の電話番号をメモする隣で、右京はリストに記載のある神木の電話番号を見て思案を巡らせていた。
まさかの推しの子完結まで後4話……
しかも、年内発売の16巻で完結ですか。
うん、流石にこのタイミングで今まで以上のどんでん返しはないと安心していいな、多分、きっと。