今年も拙作をよろしくお願いします。
相棒元日スペシャルまでの暇つぶしにとりあえず拙作を読んで時間でも潰していただければ幸いです。
去年は年始から色々あったので、今年は平和な一年であることを祈ります。
ニノに対する聴取を終えたトリオ・ザ・捜一の三人は、刑事部長室を訪れて聴取の結果の報告をしていた。
「新野冬子は、死体遺棄は全面的に認めていますが、殺人については全面的に否定しています」
三浦からの報告に、内村は渋い顔を浮かべる。
「その女の証言に、信ぴょう性はあるのか?死体遺棄ならば時効だが、仮に殺人なら実刑となってもおかしくない。我が身可愛さに嘘をついている可能性はないのか?」
「それに、その女は例の先日殺害されたアイドルと同じグループのメンバーだったそうじゃないか。そして、ファンの人気を奪われたばかりでなく、恋人すら実質的に奪われたと言ってもいい。妊娠していたアイドルの主治医を殺害する動機ならば、菅野と同等、いや、もしくはそれ以上に持っているはずだぞ」
中園も内村に追従するように言う。
「宮崎県警に連絡して確認を取りましたが、現場の状況からは新野と菅野のどちらが雨宮医師を殺害したのか、断定できないそうです」
「ただ、彼女と雨宮さんの体格差を考えると、不意をついたとはいえ雨宮さんを転落死させることは難しいと思われます。菅野は東京の事件でも被害者を躊躇なく一刺ししていますが、これは宮崎で殺人の経験があったからこその躊躇のなさとも考えられるのでは」
三浦に続き、伊丹が自説を披露するも内村の反応は芳しくない。
「……まぁいい。これは宮崎県警の事件だからな。医師殺害と死体遺棄について、被疑者死亡と時効成立で処理するなり好きにさせればいい。だが、今回のアイドル殺害事件とその女の繋がりはどうなんだ?」
「新野の供述どおり、彼女の携帯電話に犯行直後に公衆電話からの着信があり、通話した記録が残っていました。発信先の公衆電話を調べたところ、菅野が自殺したビルにほど近い公衆電話ボックスからの発信であることが確認できました。菅野の指紋も、受話器とプッシュボタンから採取されてます。ただ、菅野と新野のここ数年の接点は、この公衆電話の通信以外は何も」
伊丹の言葉に、内村は苦い顔をする。
さらに、芹沢は気まずそうな表情で報告を続ける。
「事務所社長にも確認しましたが、新野が被害者の新居の情報を知るはずがないとのことでした。動機という面で見ても、被害者はグループの他のメンバー全員から恨み、妬みをかう立場にありましたし、新野だけが特別強い殺害動機を持っていたという情報も今のところは」
「それでは、新野が今回の東京の事件に関与しているという証拠は、現段階では全くないということだな?」
中園の問いに、伊丹は渋々といった様子で頷く。
それを見た内村は、吐き捨てるように言った。
「それでは、今回の東京のアイドル殺害事件は、菅野の単独犯ということだな。裏付けの過程で過去の事件の背後関係と共犯者までしっかりと洗い出した以上、もはや送検に向けた障害はない。とっとと菅野の送検作業に戻れ」
その内村の決定に、伊丹が異を唱えた。
「待ってください!!まだ今回の事件には関与が疑われる容疑者がいます!!」
「例のカミキとかいう
中園の疑問に三浦が答えた。
「新野からの聴取で、神木と菅野、新野の三人が親しい関係にあることが分かりました。新野と菅野の関係は4年前に終わっていますが、神木と菅野、神木と新野の関係は続いていたようです。また、新野の携帯に神木の名前で登録のあった番号から、事件の数日前に菅野の携帯に発信があります」
「菅野の携帯に神木から連絡があったのは、
三浦と伊丹の主張に、内村は黙って考え込む仕草をする。
そこへ、芹沢が追い打ちをかけるように言葉を重ねた。
「菅野が事件現場に残した花束の包装紙部分に残っていた指紋が、神木のものと一致したと鑑識から報告も入っています。菅野と神木は事件の直前にも会っていた可能性が高いです。そうなると、事件への関与も疑わざるをえないかと」
「流石に、状況証拠とはいえここまでそろうと偶然とは思えんな」
これだけ証拠がそろったことで、これまでトリオ・ザ・捜一の捜査を週刊誌の取材呼ばわりしていた内村でさえも、伊丹たちの主張を業腹ながら認めるに至った。
「しかし、現状では菅野に
内村の心がわりを察した中園も、すかさずフォローに入る。
「仮に、殺人教唆があったとしてもそれをどうやって立証する?既に菅野が死んでいる以上、メールのように明確なやりとりの記録でも残っていなければ確認のしようがないし、そのやりとりの中に明確な殺人を教唆する内容が含まれていない限り、我々としてはどうにもならんだろう」
だが、それでもなお伊丹と三浦は食い下がる。
「神木は最悪、三人の殺人の教唆を成功させている可能性があります。今回の
「もしも神木が連続殺人教唆犯だったとして、それをこのまま野放しにしておけば、更なる犠牲者が出る可能性も否定できません」
内村は苦虫を嚙み潰したような表情になる。
確かに伊丹たちの推理が正しければ、このままでは次の犠牲が出ないとも限らない。
とはいえ、現状では危惧があるというだけで、そもそも教唆があったかどうかもはっきりしないのだ。それに、仮に教唆があったとしても、送検できるほどの証拠があるかどうかという問題も付きまとう。
神木が全面的に容疑を認めでもしない限りは送検は不可能に近いというのが、内村の結論であった。
だが、ここで中園が助け船を出した。
「部長、どうでしょう。こいつらの推理と状況証拠だけでは捜索令状もとるのは厳しいですが、とはいえ、このまま捜査を打ち切るというのは万が一、その神木という男が連続殺人教唆犯で、後で別の犯罪で馬脚を露した時にですよ、過去の事件の捜査過程に問題がなかったか追及される恐れもあります」
内村は黙って中園に続きを促すような視線を送る。
それを受けて中園はさらに続けた。
「ここはまず、送検を逸ることは避けて任意の事情聴取を挟んではどうでしょう。あくまで法に則り、できる限りのことはしたという体を残しておくのは、そう悪い話ではないと思います。確かに、部長が懸念されているように送検の遅れは世間からの勘ぐりを招く恐れがありますが、この際です。宮崎の事件の共犯者が明らかになったことから、関係者の余罪も含めて調査中ということで多少時間を稼いでも不自然ではないかと」
中園の提案に、内村は暫し考える素振りを見せる。
これを好機と見たのか、伊丹が畳みかけるように言った。
「必ず、殺人教唆の証拠か、自白を引き出してみせます!!ですから、部長!!」
トリオ・ザ・捜一の三人がそろって頭を下げる。
内村はそんな三人の姿を一瞥すると、重々しく頷いた。
来週はちょっと色々と予定があるので、更新は難しいと思いますので、次回の更新は1月15日を予定しております。
相棒元日スペシャルの感想もそこで少し後書きで触れたいですね。