【偶像×相棒】   作:後藤陸将

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 もし拙作がこのまま続くなら――とふと考えたネタです。最終話まで書き上げて推敲を終え、第59話から毎週投稿していく中で、皆様へのサービスも兼ねて最終話の後にちょっとしたおまけをつけようかと思って書きました。
 大体、Season10第5話「消えた女」の導入と同じ展開なのはご容赦を。
 あと、即興ですがもう一つ元日スペシャル予告ネタもつくりましたので、こちらは明後日投稿します。
 明後日の投稿をもって拙作は完結となりますので、後少しだけお付き合いください。


おまけ、あるいは新たな事件のプロローグ

「おはようございます」

 甲斐亨が最近ようやく慣れ始めた警視庁組織犯罪対策第五課のフロアを抜けようとすると、お気に入りのパンダのマグカップを持ちながらもどこかよそよそしく特命係の小部屋に視線をやる角田の姿が目に入る。

「おう、おはよう」

 普段なら、全く躊躇することなく特命係の小部屋に備え付けられたコーヒーメーカーを利用してマイカップにコーヒーを注いでいるはずの角田が、今日に限っては部屋に入ろうともせず空のマイカップを手に立ちつくしている。

「何やっているんです?」

 不審に思った亨が尋ねると、角田は亨に耳打ちする。

「客だ。それも、子供の」

「子供?」

 亨は怪訝そうに眉を顰め、特命係の小部屋を覗き込む。すると、そこには顔立ちの良い少年と少女が二人で並んで座っていた。

 二人とも、歳は小学校低学年と言ったところだろうか。しかし、亨には二人の顔や服装に全く見覚えがなかった。

 子供達は、部屋をのぞき込む亨に気づくと、軽く会釈をした。亨も張り付けたような笑みを浮かべながら会釈を返す。

「誰です?」

 亨が尋ねると、角田は腕を組んだまま首を横に振った。

「俺が聞きたいよ。なんだ、カイトの客じゃないのか」

「俺にあんな小さな子供の知り合いなんていませんよ」

 そう言って、亨は溜め息をついた。

「杉下警部の甥御さんとか、姪御さんとかじゃないんですか?」

「いや、確かに警部殿には姪っ子はいる*1が、もっともっと歳がいってるはずだ」

「え?杉下警部に姪御さんがいらっしゃるんですか?」

 亨は初耳だと言った様子で聞き返す。

「そうそう、ハーバード卒のフォトグラファー志望でな。まぁ元写真部*2の俺から言わせれば彼女の写真は構図もありきたりだし、そんなにセンスも感じなかったんだがな」

 角田もかつての右京の相棒であった亀山から彼女についての話を聞いた程度で直接話をしたことはないのだが、右京譲りの好奇心と細かなところに気が付く注意力をもった女性だったらしい。

「因みに、花の里もその警部殿の姪御さんの名前から名付けたそうだ」

「へぇ、花の里にそんな由来が……って、課長、杉下さんの姪御さんも気になりますけど、あの子供ですよ。親御さんはいらっしゃらないんですか?」

「いないよ。受付のやつら、どんな対応してんだか……まぁ、子供が親を連れずに動き回っていたからってこの天下の警視庁の中で手を出すやつなんていないだろうが、それでも、なぁ」

 同意を求められた亨も、確かにと頷く。

 その時、二人の後ろから声が掛かった。

「おはようございます」

 その声のする方を見ると、そこには亨の上司である右京が立っていた。

「おう、おはよう」

「おはようございます」

 角田と亨が挨拶を返す。

「お二人とも、こんなところで何を話しているのですか?」

 角田が空のマイカップを持ちながら特命係の部屋の外で亨と話しているのが気になったのか、右京が尋ねる。

「客だよ。それも、子供だ?」

「子供?」

 角田がマグカップで特命係の小部屋を指すと、右京は興味深そうにその中を覗き込んだ。

「おや、貴方たちでしたか」

 子供達の姿を見た右京は破顔した。

 右京の姿を見た子供達も、ぱっと笑顔を浮かべる。

「杉下さん、久しぶり!!」

 明るく挨拶する少女の名は、星野ルビー。

「お久しぶりです。杉下警部」

 丁寧に頭をさげ、挨拶する少年の名は、星野アクア。

 かつて日本中を震撼させたアイドル殺害事件、その被害者となった星野アイの子供であり、同時に事件の黒幕でもあった神木輝の子供でもある。

 右京と亨の前任の相棒である神戸尊はアイが殺害された事件の真相を探り、アクアとルビーに事件の解決を報告したという縁があった。

 小さな来客をもてなすため、右京は暖かい紅茶を淹れる。

「……ねぇ。どうしてそんなにポットを高くあげるの?」

 右京が紅茶を淹れる様を横から覗き見ていたルビーが不思議そうに尋ねる。

 隣に座るアクアも、高く高く上がるポットからカップに注がれる紅茶を見て、興味深そうに観察している。

 右京が紅茶を淹れる様は、とても様にはなっているのだが、どこか独特でもあった。

 亨も、気になってはいたのだが、直接理由を尋ねることはどこか憚られたため、これまで聞いたことはなかったこともあり、右京の答えに興味津々だった。

「こうすると、美味しくなるような気がするものですからね。*3あぁ、あくまでも、僕の個人的な見解です。慣れないと紅茶が飛び散って火傷になることもありますから、真似はしないように」

「いや、真似できないよ。達人技だよ……」

 ルビーは呆れたように答える。アクアも亨も、ルビーの言に同意するかのように頷いた。

 右京はそんな彼らの姿を見て、楽しそうに笑う。

「そういえば、神戸さんは?」

 アクアがかつての右京の相棒――亨の前任だった神戸尊について尋ねた。

「神戸君は今、警察庁――隣の建物の部署にいるんですよ」

「そうなんだ、神戸さんは異動になっちゃったんだ」

「ええ。あぁ、紹介していませんでしたね。神戸君の後任の、カイト君です」

 右京に紹介された亨は、微笑を浮かべて子供達に会釈する。

「甲斐亨です。長いんで、杉下さんみたいにカイトって呼んで」

 そう言って、手を差し出し、ルビー、アクアの順に握手をする。

 右京はそんな二人を見て、満足そうに頷く。そして、再び子供達に向き直ると、優しい口調で尋ねた。

「ところで、今日は学校はどうしたのですか?ミヤコさんか斎藤社長はご一緒ではないのですか」

 右京の問いに、ルビーが答えた。

「土曜日が運動会で、今日が振替で休みなんだ。学校サボってここに来たんじゃないよ」

「ミヤコさんも社長も仕事。ここには二人で来た」

 アクアもそれに続いた。

「でも、どうして二人だけで杉下さんに会いに来たのかな?」

 亨の問いかけに、アクアとルビーの二人は一瞬顔を見合わせる。そして、少し気まずそうな表情を浮かべ、ルビーが答えた。

「実は、杉下さんに相談したいことがあって……」

 そして、ルビーは先日の運動会で目撃した奇妙な出来事について語り始めた。

*1
SEASON4第16話『天才の系譜』参照

*2
SEASON15第9話『あとぴん~角田課長の告白』参照

*3
『相棒』10周年メモリアルBOOK参照




 ルビーが目撃した不審者のことを追っていくうちに殺人事件の関係者であることが分かって、そこで事件が解決するというおきまりのパターン。
 なお、具体的な事件の内容や解決までの道のりは全く考えていないので、何か思いついた方はご自由にこのネタ使ってもらってもかまいません。
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