陽キャ?いいえトリプル(無口・無感情・無表情)コンボです   作:By the way

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今まで意識向けないようにしてたんですけど、もう入試から目を背ける訳にも行かなくなってきたんで、少し投稿頻度下げた方がいいのかな……って思ってます。


人のようなナニカ達

ある一つのやらかしからなし崩し的に極刑レベルの大罪を犯してしまった昨日から一晩経って今日。

……二限目辺りから誰かから向けられている視線に気付いて以降、授業中以外はずっと感じるその視線に顔を――本当に数ミリとかその単位レベルで――顰めながら学校生活を送っていた。

多分普段との違いに気付いている人はいないだろう。自分で言ってて悲しくなるが、事実気付いてそうな人が誰一人としていないのである。

 

……いつも休憩時間は階段の踊り場でスマホを眺めたり、教本を読み込んだりして潰しているのだが、この最早不自然過ぎるくらい圧倒的に人が寄り付かない階段でも視線を感じた以上は私に何か用があるんじゃないかと思うのだが……

 

ぶっちゃけ思いつかないし分からないのだ。

正直な話、私は周りから避けられている。それも結構高度なレベルで。

……いくら原因が分かりきっている*1とはいえ今更軌道修正しても無駄だし、そもそも不可能だしで詰んでいる訳だ。

 

STARRYでのバイトでもやったように歌を用いて擬似会話に持っていくことで親しみやすさを出すプランも考えたのだが、そんなことをしようものなら不思議ちゃん枠から一瞬で変人枠に落とされると思い至ったことで白紙に戻した。

よしんばそれで交友関係が広がったとしても、行く先々で変人のレッテル貼られたらたまったもんじゃないし。

 

あのドリンクカウンターで死ぬ程見た本気でドン引きしている表情の数々を思い出す。……控えめに言って死にたいな、とそう感じるような目でした。

苦々しいというよりは刺々しい記憶として存在しているお客さん達に見事に精神をやられながらも、ホームルームを終え真っ直ぐ帰宅するべく下駄箱――ではなく誰もいない音楽室へと向かう。

 

ハッピーセットのおかげで無駄に苦労した末に手に入れた吹奏楽部がオフの日のみ使える鍵をポケットから取り出し、鍵穴に入れて回す。

ガチャリという少し重い音が鳴り鍵が開き、手を添え扉をスライドさせる。

 

……視線は、まだ感じる。

放課後なのに帰ったりもせずに付いて来てるってことは暇人か何かなの?でも暇人がわざわざ私に時間を割くとは思えないんだけど……ずっと無視してたけどそろそろ限界か。

 

「……!」

 

「っ!!!あっ、あの、…その、えと……」

 

意を決して振り向いてみると、そこには見事なピンク髪*2に同色のジャージという格好の少女が。背中にはギターケースらしきもの……ギターケース?

 

「……」

 

「え?あっ、…は、はい…そうですけど」

 

「……!」

 

スマホを取り出しメモ帳アプリを起動しすぐさま高速フリック入力を用いて『それギター?』と書き込んで見せれば、私の流れる水の如き動作に若干引かれはしたものの、望んでいた回答が得られた。

まさか、まさかこの学校にギターに興味を持つ人がいたなんて……!

 

「あっ、あの…」

 

「?」

 

一人感動しながら、しかしその感動を表情に出せないことを嘆いていると、ピンク髪少女が俯きながらも何かを必死に伝えようとしていることに気付いた。

 

「あっ、あなたも、ギター、弾きますか…?」

 

「!(コクコク)」

 

「や、やった…!」

 

「…?」

 

「あっ、い、いえなんでも!?」

 

そう……なんか聞こえた気がしたんだけど、気の所為か。

それにしてもピンクのジャージでギタリストかぁ……これもしかして共通の話題持ってたりする?

右手に持ったままだったスマホを操作、今度は『【ギターヒーロー】っていう投稿者知ってる?』と打ち込んでみれば、ピンク髪少女があからさまに肩を跳ねさせた。……これはあれですね。

 

「……」

 

不思議ちゃんというレッテルを貼られたあの日と同じようにヌッと少女の前に立つ。めちゃくちゃ微妙ながら私の方が身長が高いようで少し目の高さが違うのだが、しっかりと目線を合わせ少女の目を捉える。

 

「あっ、ひ、い、え…えと、なんで、しょうか」

 

「……」

 

「え?…あっ、いやちが…あっいえなんでもないですすみません……」

 

「???」

 

おかしい、私はただギターヒーローさんのファンですか?って聞いただけなのに、なんでこんなに過剰に反応されるんだろう?

……もしかして私の無表情って結構威圧感あったりする?今までは周りが隠してただけでそうだって可能性が……あるかも、しれない。

でもだからといって笑える訳でもないし、どうすれば……

 

「あっ、あの!!」

 

「っ!?」

 

「あっ、ごめんなさ…あ!」

 

真剣にコミュニケーションの取り方を考え込んでいた私だが、唐突に大声を出した少女に今度はこちらが肩を跳ねさせることになり―――

 

「っ…!?」

 

「す、すみません…あっ、あの、大丈夫…ですか?」

 

「……(コク)」

 

「あっ、良かっ、たです…」

 

――盛大に尻餅を突きそうになって、咄嗟に私の手を掴んだピンク少女に助けられる形になった。

……ああ、顔が熱い。羞恥心が爆発してどんどん頬に熱が溜まっていくのを感じる……

 

というか…びっくりして尻餅突きかけるとかめちゃくちゃダサいじゃん。オマケにそれを初対面の人に見られるとか……ははは、消えてなくなりたい……

 

「えっ、え!?塵、いや胞子!?」

 

物理的に体積が小さくなってるような感覚に陥っているが、多分錯覚だろう。そんな物理法則を無視した現象、幾らこの髪色ファンタジーな世界でも起こりっこないのだから。

……それはそれとしてなんか飛んでるような気がするけど、今日暴風警報とか出てたっけ?

 

「あっ、あわ、わわわ……」

 

「、!」

 

風に流されるというとんでもなくリアルな錯覚に身を任せていたのだが、そういえばまだお礼言ってなかったと思いとりあえず頭を下げることにした。

 

「エッ!?も、戻った……」

 

「……(ペコリ)」

 

「あっ、その…どういたしまして……」

 

よし、じゃあ仕切り直してまずはお話でも――

 

「ごめんなさいごめんなさい調子乗ってました…やっぱりそうだよね…私と同じでギター持ってるし友達いなさそうだからもしかしたら友達になれるかもなんてそんなの有り得ないよね。私陰キャで根暗で芋女だし……」

 

「――」

 

戦慄した。ちょっとコミュ障なのかもしれないとは思ってはいたがまさかここまでとは思わなかったからだ。

というかそれはそれとして友達いなさそうって酷くないか?事実だけどさ……

 

「やっぱり私みたいな陰キャはぼっちでギター弾いてるのがお似合いなんだ…私の味方は評価してくれるネットの人達……いやもうあの人達が私の友達だったり?」

 

うわぁ……評価してくれるのが嬉しいのは分かるけど、流石にその人達は友達とは言えないでしょ……

このピンク少女が相当拗らせていることを知り、深い憐憫の情を抱きかけたまさにその時だった。

 

「にへ、にへへへ…友達、三万人〜」

 

「!?」

 

え、めっちゃ顔歪んで――いやこれ溶けてるのか!?どういう体質してんのこの子!?

……なんと彼女の顔が溶けだしたのである。こう、なんか氷像が溶けるみたいな感じで。

勿論比喩でもなんでもなく現実で起こっている出来事である。

 

「……」

 

「ふへ、ふへへ」

 

髪色もそうだしやっぱりこの子人みたいなナニカだったりするんじゃ……

そろり、そろりとバレないように少しずつ距離を取りながらそう思った。

 

……そう思ったのだが、一つだけ少し気になる言葉が聞こえたのである。友達三万人という言葉だ。その数は現在のギターヒーローのチャンネル登録者数と同じであり、さっきの発言が確かなら評価してくれるネット民の数ということになる。

 

……いや、まさか、ね?そんな都合のいいことなんて有り得ない有り得ない。

半信半疑――といいながら疑いの気持ちの方が強かったりする気持ちのまま、『もしかしてギターヒーロー本人だったりします?』と書いたスマホを見せた。

 

「ふぇ?あっ……」

 

「……」

 

「あっ!?…その、私、えっと……!」

 

……このいっそ大袈裟なまでに必死に誤魔化す姿を見て九分九厘そうだと確信してしまった。

だが先程のドロドロに溶けた彼女の姿が頭に浮かぶと、なんか認めたくないという子供っぽい感情が胸の奥から湧き上がるのである……

 

具体的には――違うと、ただ憧れてるだけのファンですって言って…!私嫌だよ!?ずっと憧れてたギターヒーローがこんな人型のナニカだったなんて認めたくない!といった感じに。

 

「は、いぃ…」

 

「――」

 

「あっ、ご、ごめん、なさい…私みたいなのが……」

 

しかし現実は無常である。目前で縮こまりながら文字通りどんどん萎んでいる彼女は、自らをギターヒーローだと認めた。

オマケにそのとんでもなく申し訳なさそうな態度から彼女がギターヒーローを騙る偽物なんじゃないかという希望もまた吹き飛んだ。

 

……つまり、あとに残るのは実態が人型のナニカなギターヒーローと、ハッピーセットのまま燃え尽きて真っ白になる私だけだということである。

 

「あっ、今度は真っ白……」

 

ギターヒーローが何か言っているような気がするが、その言葉は私の耳には入らずそのまま通り抜けて行く。

もうこのまま帰ろうかな…と結局中身を出すことすら無かったギターケースを背負って音楽室を後にしようとして、思いついた。

 

いや、これはひょっとしてチャンスなのでは?と。

伊地知先輩があの日言っていた夢を叶えるのならば、ギターヒーローの実力は間違いなくプラスになる。

それに何よりも……伊地知先輩だけでなく、山田先輩もギターヒーローのファンらしいから二人とも絶対喜ぶんじゃないか。

 

「……」

 

「へ、へ…?」

 

ギターヒーローその人たる少女に向き合う。

彼女はどこか青っぽい色に染まった顔を困惑一色にして私を見つめている。

……ああそうだ。これがどれだけ最低な行為かは理解している。私は二人の先輩の―――いや、私自身の為に彼女を利用するのだ。

その行動の数々からひしひしと感じる、バンドを組みたいという彼女の気持ちを。

 

「…、バァンドにぃぃ、興味あるうぅ〜?」

 

「…え」

 

「……」

 

……や ら か し た 。

*1
ここから始まるプロローグ参照

*2
もう突っ込まない、これがこの世界にとっての普通……いやこの世界でもおかしい髪色してないこれ?




人型のナニカはブーメランなんですよね
途中のあの日=結束バンド加入の日です。どこで挟もうか悩んでる幕間のネタの1つであります。
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