女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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はじめてのしんにゅうしゃ(※まだともだちではない)

「暇がっ、過ぎるっ!」

 

 嘆きは真っ暗な部屋で反響して消えた。返事も無いしあたしは虚しくなって玉座に座り直す。

 

 あたしが何者かという話をしよう。魔王軍最高幹部『奈落の英傑(ゲニウス・アビス)』が一人、虚無の魔女(ヴァニッシュ・ソーサレス)ギルネリア・スローン・マスティファクト。要するに、魔王軍でも魔王様の次の次の次くらいに偉くて強い。だから、魔王様はあたしに大事な命令をくださった。

 

 それがこの『深紅の魔遺跡』防衛。ここはいざという時魔王様が体勢を立て直せるように作られたセーフハウス。そこを守るっていうのはこれ以上無い名誉だ。それは分かってる。分かってるけど。

 

「まじで誰も来ないじゃない!」

 

 いや、考えてみれば当たり前。だってここって予備の拠点だもの。人間どもの勇者とか軍隊とかそういうのは一直線に魔王様を目指すに決まってる。逃げ道先に潰しとこ、なんて余裕のある奴は居ない。というかたぶん人間にはこんな場所全然知られてない。

 

「あー! こんなことならマジュサとかオウキを脅してでも最前線に行くんだった! 恋人も友達も作れないじゃない!」

 

 勘違いしないでほしいんだけど、あたしは別に戦うのは好きじゃない。むしろ疲れるから嫌い。だから最初は喜んだんだけど。部下すら連れてきちゃいけないっておかしいでしょ。知ってる奴は最小限。って言われたら反論できないけど。そのせいであたしはもう数年、いや十年超えたかそんくらいここで待ちぼうけだ。年に一度会議に呼び出されるのが他のと会える数少ない機会。まあ魔王様本人に愚痴るなんて出来ないし、他の幹部は顔引きつらせて逃げるからほんとに会話するくらいなんだけど。

 このままでは経験ナシ女として他の幹部連中に馬鹿にされる。っていうか馬鹿にされてる。仕事も窓際で出会いもないとかカワイソーって哀れんだ目で見られてる!

 

「もう怒られても良いから近くの人間どもにちょっかいかけようかな。この場所がバレなかったらもうそれで良いでしょ。うん、きっとそうに違いない」

 

 マッチポンプみたいだけど、誰も来ないとこ守ってるよりも今日は侵入者を何人撃破しましたっていう方が評価される世の中だベイビー。敵が来るって分かれば魔王様も増員を認めてくれるでしょ。そしたらあたしにもやっと出会いが来るに決まってる。当希望高身長高収入高戦力。

 

「さて、そうと決まれば早速遊び、じゃない侵略の準備を……っと?」

 

 地図を取り出そうとした耳が侵入者の足音を捉えた。えっ自分で言っといてなんだけどマジで? こんな都合の良いことある? いや地図を取り出すとこまでは百回くらい繰り返した展開なんだけど。

 あたしのような魔族じゃない。人間の、若い女かな? たぶんだけど。

 

「えっどうしよ。入り口で仕留めるのが正しいんだけど」

 

 ほんとはたくさん即死級のトラップとか用意してあるんだけど。どうせ誰も来ないからって全部起動オフにしたままだ。お客さん来るとか考えてなかったからどう対応すれば良いのか分からない。

 

「あれだ。玉座に座って、奥まで来たら盛大に名乗ってやろう。そんで相手がうおおおおって臨戦態勢なって、真正面からねじ伏せよう」

 

 うん。流石あたし、完璧な回答だ。そわそわしながら侵入者がここまでやってくるのを待つ。口上の練習とかしておいた方が良いかな。噛んじゃったら凄い恥ずかしいし。声を出して相手に聞こえたらやだし、文章だけ考えておこう。

 

 よし、準備万端。やってきた侵入者に対して、あたしは座ったまま頬杖ついて傲岸不遜に言い放ってやる。

 

「よく来たな愚か者よ! 『奈落の英傑』が一人! 虚無の魔女ギルネリア・スローン・マスティファクトがお相手仕ろう!」

 

 一言も噛んでない。完璧に決まった。これで相手は自分が乗り込んだ場所が思ったよりやばいことに気がついて恐れおののき、だけど覚悟を決めることだろう!

 

「あ……」

 

 あたしの前に現れたのは魔力もこもってない衣服の人間の少女だった。私の姿を見て足を止め、目尻には涙が浮かんでいる。ふはははもっと怯えろ!竦め!そしてそれっぽく死「良かったぁ……」え、なんて?

 

 その女の子は腰を抜かしたのかへたり込んでシクシク泣いている。でもそこに恐怖とかなくて、むしろ安心してるっぽかった。

 

「あのー? あなたの目の前に居るの魔族の最高幹部なんですけど?」

「だってぇ……もう何日も人に会えてなくて。最後にあったのも追い剥ぎみたいな人で必死に逃げてきて……もう駄目かと」

「……おーい追い剥ぎより怖い存在なんですけどあたし」

「そ、そうなんですか?」

「うっ」

 

 やめろ。うるうるした目であたしを見るな。どう見ても戦える人間には見えないけど。仕事的には殺した方が良いんだ。だってこの場所吹聴されても困る……あんまり困らないな。全員なぎ倒せばいいだけの話だし。むしろあたしの暇は解消されるだろうし。魔王様に怒られるだろうけど、処刑とかはされないでしょ。通すわけじゃないんだから。

 

「運が良かったな小娘、あたしは寛大だ。今すぐここから去るなら見逃してやらんこともない」

「え、えっとありがとうございます?」

「あたしの気が変わらないうちにここを疾く出ていくんだな」

「あ、あの……」

 

 申し訳無さそうに少女が上目遣いでこっちを見る。

 

「何処から出られるんでしょうか」

 

 来た場所戻りなさいよ。




女幹部さんはうるさい
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