女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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へんなひとがきた(※まだきてない)

「……むっずい」

「最初は誰だってそんなもんさ」

 

 よれよれの糸みたいなものを見てため息を吐く。羊毛をもらってきたと言うので、レイから借りた糸車で糸紡ぎに挑戦してみたのだが、これがなかなか難しい。くるくる回すだけで勝手にできると思ってたのだが、加減がうまくいかない。

 

「レイに出来てあたしにできない筈が無いのに」

「おいそれはどういう意味だ」

「あいたっ」

 

 頭を軽く叩かれる。だって自他ともに認める不器用のレイが、糸紡ぎはうまくやれるなんておかしいじゃない。

 

「実家が紡績商だったからな。子供の頃から触ってればそれなりに形になるものさ」

「これで糸を作ったら、今度はお裁縫になるのよね」

「まあそうなるな。麻糸なら縄にしても良いし。葛なら釣り糸に出来るが、羊毛はどちらにも適さない」

「へー、そんなに違いがあるのね」

 

 知らないことばかりだ。あたしはだいたいなんでも貰い物、っていうか貢物だったし。自分で何かを作るということをあんまりやったことが無い。自分で技術を磨くよりも、できる奴を探して配下にする方が早かった。

 

「戦う力だけ求められてたのよ。要するに」

「魔族の価値観というのはやはり人間とは異なるものも多いな」

「まあね。やっぱり魔法があるのが大きいかしら」

 

 魔法は、人間が持たない魔族だけの技術。技術といっても生まれたときにはもう何が出来て何が出来ないってのはだいたい決まってて、それを伸ばすだけだ。才能と言った方が近いかもしれない。

 あたしの才能は重力と闇。何かを作れるような魔法じゃなくて、ただ壊したり滅ぼしたりすることしか出来ない魔法だ。その代わり、それに関してはあたしは天才的な才能を持っていた。だから暴力を振るえば望むものはだいたい手に入った。

 

「魔法か。随分多種多様な魔法があるよな。私が見たことあるものだと、花を咲かせる魔法なんて不思議なものもあったが」

「マジュサの奴ね。あれはあれで例外よ。あんなに戦闘に向かない魔法なのに、本人はバリバリの武闘派なんだもの」

「ああ、苦労させられた。戦局としては勝利したが、一対一の戦いでは負けたも同然だ」

「仕方ないわよ。身体能力ならあたしだって負けるもの」

 

 重力と闇でデバフを掛けてしまえば負けることは無いけれど。マジュサは本人は強いけどすっごい馬鹿だから。ちょっと工夫を凝らせば簡単に倒せる。だいたいの相手は工夫する前にボコボコにされるんだけど。

 

「あたしが見たので一番は絵を描く魔法かしらね」

「絵を描く?」

「魔法で筆と絵の具を作るのよ。どんなところでも絵が描けるし、水を流したくらいじゃ消えないの」

「何かの役に立つのか?」

「本人は楽しんで生きてたわよ」

 

 それは役に立つとは言わないけど。魔法なんてそんなものだ。一族は同じ系統の魔法になりやすいとかあるらしいけど、例外は無数にある。

 

「だから、糸を紡ぐなら糸を紡げる魔法を持った奴が。パンを焼くならパンを焼ける魔法の奴が。ぶんぎょー制って奴? 魔法だって勝手に成長するわけじゃないしね」

 

 炎系とかそういう魔法の持ち主は羨ましいけど。戦うのにも使えるし雑事にも便利ってめちゃくちゃ大当たり魔法だもの。あたしだって炎魔法だったら料理の道に進んで……いないかもなあ。全部まっ黒焦げにしちゃう気がする。

 

「だったら料理も今度挑戦してみれば良い。メアリに教われば食べられないものは出来ないだろう」

「呼びましたか?」

 

 話をしていたらちょうどメアリがクッキーを焼いて持ってきてくれたところだった。当人が料理好きなのもあって、台所はもう完全にメアリのスペースだ。この間護送帰りのレイが勝手に変な食材を買ってきて怒られているのを見た。ちなみにその変な食材はメアリが炒め物にしてくれてあたしも食べたけど、なんとも言えない微妙な味だった。メアリの手腕でそうなるのだからたぶん根本的に駄目なんだろう。

 

「んー、あたしも料理とかやってみようかなって」

「良いですね! 今度お友達が来るって言ってましたし、来た時に披露してみてはいかがですか?」

「ああ良いねそれ。ジスタにはしばらく実験台になってもらって」

「言い方が酷い」

「そう言えばジスタさんは今日はいらっしゃってないんですね」

「んー、毎日連れ回すのもかわいそうだからね。この村にも慣れただろうし」

「まだビクビクしてるけどな」

「修行よ修行」

 

 あたしが居ないと一人で出歩けないようじゃ困るからね。ここで過ごすのも長くなるんだし。

 

「すいませーん」

 

 こんこーん、とドアがノックされる音がした。こんな時間に来客とは珍しい。ジスタが逃げ込んできたかな? だったらもっと強くドアを叩くか

 

「待て」

 

 出ようとしたメアリをレイが止める。

 

「ギルネリア。奥の部屋に隠れておけ」

「ん? 知り合い?」

「いや……だがこの村では聞いたこと無い声だ」

 

 言われてみればそうかもしれない。あたしもまだ村の全員把握できてるわけじゃないけど。普段から農作業してるおっちゃん達はともかく、普段はおうちに居る御婦人方はまだ完璧じゃない。

 

 言われるままに隠れていてもとっさに動けないので、あたしは台所の方に身を潜める。相手方からは見えないけど、あたしがこっそり顔を出せば見える位置。

 

「こちらに白狼騎士団の方がいらっしゃると聞いてお邪魔しました」

 

 そうやって入ってきたのは、メガネを掛けて都会風の服を着た女性だった。




ねたばれ:たいとるはねたばれ

かんそうひょうかおまちしております
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