女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「では改めまして自己紹介させていただきますわ。わたくしの名前はミランダ。平民の生まれ故姓はございませんわ。首都キピタに本拠地を置く天覧研究所にて、外棲危険生物……モンスターの研究をしています。正確には人間以外の生命体全般が研究対象なのですけれど、動植物や魔族などの。ええ、対外的にはモンスターで統一した方が通りが良いので」
「……ギルネリア・スローン・マスティファクトよ」
「ギルネリア……! かの有名な虚無の魔女にお会いできるなんて、このミランダ感激のあまり失禁して失神しそうですわ」
「そ、そう」
「虚無の魔女と言えば閃光の勇者討伐の悪名も有名ですが、一個師団を一夜にして壊滅させた永夜事件も捨てがたい。ああまさか伝説をこの目に見る日が来ようとは」
「あたしの知らない武勇伝が量産されてる」
永夜事件ってどれの話だ。大軍団を追い返したことはあるけど壊滅させた記憶はない。何処かで噂に尾ひれがついているっぽい。
油断しちゃならない感とこいつ関わりたくないな感が混ざり合って絶妙な気持ち悪さになっている。メアリの精神に悪いからさっさと消えてほしい。
「で、なに。あたしに用があって来たの?」
「いえいえ、ギルネリア様へは個人的な興味と親愛以上のものはございませんわ。わたくしがこうして足を運んだのは先程話した通りワイバーンの異常発生と集団化に関して。ギルネリア様のことを吹聴するつもりもございませんわ。だって天研の上司に報告したらやれ討伐だ確保だのと、美しくない結果になってしまいますでしょう? そうしたらもうお会いできないではありませんか!」
あたしとしては回れ右して帰ってほしい。こういう欲望全開みたいなタイプは苦手だ。ぶっ飛ばして終わりに出来るならそれで良いんだけど、そうもいかないから苦手意識が凄い。
「あなたに主導権を渡していたらいつまで立っても話が進まなさそうだ」
レイが助け舟を出してくれる。
「そのワイバーンの異常発生は全頭討伐によって壊滅して何日も経つわけだが、あなたはその壊滅を観測してこちらに来たのか」
「ええ。でも滅んだことに関してはどうでも良いんです。だってあなた達が倒した、で終わりでしょう。虚無の魔女だけでなく、白狼の戦乙女もいらっしゃるのですから、どこも不思議はございませんわ。問題はあれだけの群れがなぜ発生し、村々を襲ったのか」
恍惚とした顔のまま、ミランダは話し続ける。白狼の戦乙女ってレイのこと?
「ワイバーンは元々二、三頭の小規模がグループで活動するモンスターですわ。それ以上の集合体が観測されたのは今回が二例目。いえ、十頭以上の群れは初めてです。その群れを作る原因が何処にあったのか」
「察しがついているのか?」
「いえまったく。今申し上げたようにこのような状況は類を見ない異常事態なのです。ワイバーンは共食いも観測されたことがあるので、大集団で秩序的に行動するというのは生態の見地に立っても不自然なことですから」
専門家だというのにあっけらかんと言ってのける。
「それを調査するのがわたくしのお仕事ですわ。その為にしばらくこの村に滞在する予定ですから、こうして挨拶に参った次第です」
「え、ってことはこの村に居座るってこと?」
「既に村長さんには話を通してありますわ。使っていない小屋の一つを借り受けましたの」
そりゃこの村は空き小屋はたくさんある。若いのは街へ行ってしまうから、どうしても人が少なくなってきてるんだとか。まだまだ無くなってしまうには若者も多いけれど、いずれは消えてしまうのだろう。なんて感傷をしている場合じゃない。
あたし個人としてはこのヘンタイが村に居座るのは嫌なんだけど。追い出せるような権力があるわけでもない。救いを求めるようにレイを見たけど、悲しい顔で首を振られてしまった。とても悲しい。
「わたくし、皆さんと仲良くできることを心より楽しみにしていますわ。本日はお会いできませんでしたけれど、魔族の方がもうひとりいらっしゃるらしいですし、そちらにもご挨拶をしたいですね」
では、と言ってミランダは去っていった。残されたあたし達はどっと疲れがやってきて、メアリさえも椅子にもたれかかってしまっている。
「なんか、凄いのが来ちゃったわね」
「私に言わないでくれ。しかし食えない奴だ。お前が居ること分かってて煽ったな」
「あ、あれそういうこと?」
「最初から視線が何度かお前の方を向いていた。ああいう手合は敵に回すと厄介だぞ。お前のファンらしいしな」
「えー勘弁よ」
「お疲れ様です……お茶を淹れましょうか?」
「お願いメアリ……」
ああ、やっぱりメアリは天使だ。心が浄化される。でもメアリも疲れてるはずだし、ワイバーンの話はあの子にとってとてもつらい話な筈だ。後でナデナデしてあげよう。
「そういえば気になることがあったんだけどさ」
「なんだ」
「白狼の戦乙女、って何?」
「……忘れろ」
レイは今日一番の苦虫を噛み潰したような顔をしてた。
むらにへんたいがふえたよ
かんそうひょうかおまちしております