女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「ふんふんふふーん」
「楽しそうですね、ギルネリア様」
鼻歌を歌いながら出掛ける準備をしていると、ジスタが不思議そうな顔で聞いてくる。あたしはいつだって楽しいけど、鼻歌は珍しいのかもしれない。
「今日はメアリに料理を教わるの」
「メアリさんにですか? それにしても本当に毎日のように行きますね」
「あら、ジスタもこの前村の子供たちと遊んでたじゃない」
「あれは追いかけられてたって言うんですぅ」
村の子の中でも特にやんちゃ盛りのスタンが中心になってジスタを追いかけ回していた。ジスタも伝令を任されるだけあって身のこなしは軽いから、ひょいひょい避けていたが、人数が多くて途中から半泣きになっていた。
あたしは笑いながらそれを見てたのだが、ミランダが子供に見せられない顔で乱入しようとしていたので、彼女まで相手するのはかわいそうだからと止めてあげた。スタンはともかくミランダも子供みたいにふくれてたのは面白かったけど。あの子一応大人なんだよね? ジスタのちんちくりんな見た目も大人には見えないけど。
「良いじゃない。ご婦人方も喜んでたわ。家事のいたずらされるよりずっと良いって」
「うう……せめて落ち着いて本とか読みたいです」
別にあたしは読書して過ごすことを禁止してないんだけど、ジスタの小動物さが許してくれないらしい。スタンに目をつけられたのが運が無かった。でも、反撃しないで立ち回ってくれているのはあたしとしてもありがたい。いざこざが起きてしまうと、あたしの立場も悪くなっちゃうし。いや、まさか成す術無いから逃げ回ってるなんてことない……よね?
「ボクの魔法はちょっと速く動けるだけです……」
「あ、ごめん……」
駄目だったらしい。今度からはもうちょっと早めに助けてあげよう。
「忘れ物なーし、じゃ行くわよジス……ん?」
出掛ける準備も終えてさあ出発だ、ってところであたしの耳に翼の音が届く。モンスターじゃなさそうだし、また誰か魔族が来たんだろうか。
「
猛スピードでおうちに飛び込んできたのは。東方の紅白服を着た角の生えた女の子。この子が誰なのか、あたしはちゃんと覚えている。
「アズキ!」
「遅れて申し訳ございやせんお嬢! このアズキ・ホウジョウただいま馳せ参じやした!」
アズキはあたしの部下の一人だ。あたしをお嬢と呼んで慕ってくれる、部下の中でも武闘派の子。
アズキはあたしの前に突然正座で座り込むと、腰から小さな刃物を取り出す。
「このアズキ、城の姑息な翁共に唆されお嬢を一人にしてしまったこと悔やんでも悔やみきれません。ケジメとしてお嬢の前でエンコ詰めさせて頂きたいと思いやす!」
「いやそんなことしないで!?」
慕ってくれるのは嬉しいのだが、忠誠心が強過ぎてよくから回ってしまう。小指貰っても何にも嬉しくない。
「申し訳ないと思うならこの後の働きで挽回しなさい。小指なんかで釣り合うわけ無いでしょ」
「こ、こんなヤクザ者にも慈悲を与えてくださるなんて。なんと懐の広い御方……! このアズキ、一生ついていきます!」
うんうん、アズキとのやり取りも十何年ぶりだ。懐かしさで涙が出てきそう。
「じゃあアズキも紹介しないといけないし行きましょうか」
「行く、とは何処へ?」
「魔王様から聞いてない?」
「某が聞いたのは、狸によって連絡の行き違いがあったこと。早急にお嬢のもとへ向かうべしということでございやすが」
「あーそうなの」
魔王様もそこ話通してくれてれば楽だったんだけど。あたしから言えば良いから誤差か。
「これから人間の集落に行くわ」
「カチコミですか!」
「違うわ。友達に会いに行くの」
「お嬢の……御友人? それは人間が、ということですか」
「信じられない?」
「いえ、敵たる人間にも寛容さを見せる度量、感服しているところでございやす!」
物分りが良くて助かる。アズキは気合入ってるとから回っちゃうけど、ちゃんと言うこと聞いておとなしくできるもんね。
「だから武器は置きなさい。びっくりさせちゃったら困るでしょ。あたしの友達に、アズキを紹介してあげなくちゃならないんだから」
「お嬢の顔に泥を塗らぬよう、誠心誠意努めさせて頂きやす。何か粗相があったときは手討ちにしてください」
「いやしないけど」
何がどうしてかわいい部下を自分で処さなきゃいけないのか。裏切ったとかならともかく、こんなに慕ってくれる子を捨てるなんてできない。
「あ、あのぅ。話終わりましたか……?」
「ごめん今ジスタのこと忘れてたわ」
「ひどい!?」
アズキに会えたのが嬉しくって。でもジスタもそんな部屋の隅っこで縮こまってるのが悪いと思う。その位置あたしから見えないんだもん。
「なんと、某が気付けぬとは、忍びの者ですか?」
「違うと思うわ」
「違いますぅ」
ってこんなことしてたらもう出掛けないといけない頃だ。メアリとの待ち合わせに遅れるなんてそれこそ小指が危うくなってしまう。
間に合いますように。ジスタとアズキを引っ掴んで、あたしはおうちから飛び立った。悲鳴が聞こえたが、気にしないことにした。
またへんなのが
かんそうひょうかおまちしております