女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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やくざなりゅうぎ(※あいさつです)

「お控えなすって!」

「お、おう」

 

 手のひらを下手に見せたアズキにレイが困惑している。

 

「さっそくのお控えありがとうございやす。僭越ながら名乗り上げさして頂きやす。(それがし)生まれは東方センジュの外れ、南に下りて徒歩(かち)にて二日、ショウトクの里。都に上りて軍に入りしはギルネリアお嬢の舎弟をやらせて頂いてやす。姓はホウジョウ、名はアズキ。お見掛け通り人の道理に疎い駆け出し者ではありやすが、以後面体お見知りおきの程よろしくお願いいたしやす!」

 

 名乗りを終えて晴れ晴れとした顔のアズキに対し、どう対応して良いのかおろおろしているレイ。

 

「ええと、私も同じように返したほうが良いのか?」

「この子なりに礼儀良くしてるだけだから、合わせなくても良いよ」

「お嬢の御友人に失礼があってはいけませんので、仁義切らせて頂きやした」

 

 アズキの故郷での挨拶らしい。と言っても普段からやるものじゃなくて、格式ばった場所でやるものだ。あたしも最初にやられた時は面食らったけれど、慣れてみればむしろ、これで圧される人を見て楽しむ側に回っていたりする。

 

「白狼騎士団のレイ・アルトリウスだ」

「メアリです。アズキさん、よろしくお願いします」

「レイさんにメアリさんですね……ん、アルトリウスと名乗りやしたかレイさん」

「ああ、そうだが」

「もしかして……白狼の戦乙女、なんて呼ばれたこたありませんか」

 

 前にミランダも言ってた奴だ。やっぱり有名人なんだろうか。本人はかなり嫌そうな顔をしているが。

 

「ねえ、アズキ。その戦乙女ってなんなの?」

「お嬢は前線から離れていたからお聞きしていませんでしたね。この数年で名を上げた戦士でさぁ。動かざる兵(イムーバブル・ソルジャー)を撤退に追いやり、闘花(バトルフラワー)と互角に渡り合う女騎士。その戦いぶりからついたあだ名が白狼の戦乙女、ここ数ヶ月話を聞いていやせんでしたが、なるほどこんなところに居たとは」

 

 マジュサ(闘花)とやりあった話は前に聞いてたけど、オウキ(動かざる兵)まで倒していたとは。撤退っていうからには死んではないんだろうけど。

 

「あーすまない。そう呼ばれるのはあまり好きではないんだ」

「これはとんだ粗相を! 失礼いたしやした。ではなんとお呼びしましょう」

「レイで構わんよ」

「ではレイさんと呼ばせて頂きやす」

 

 ふーん。アズキがレイをどう呼ぶか、ってのはどうでもいい話なんだけど。白狼の戦乙女、かっこいいと思うんだけどなあ。

 

「二つ名で呼ばれるのって恥ずかしくないか?」

「全然? 『奈落の英傑(ゲニウス・アビス)』の虚無の魔女(ヴァニッシュ・ソーサレス)、あたしは自分の肩書き好きよ。レイもあたしのことそう呼んでたし」

「白狼騎士団には他にも剛腕や剣鬼、加湿器なんて呼ばれてるのも居ますね」

 

 なんか今最後おかしくなかった?

 

「私は恥ずかしいんだ」

「そっか」

 

 共感を得られなかったからか、レイは拗ねてしまった。あたしが言うのもなんだけど、レイは案外子供っぽい。

 

「レイ様が自らの二つ名を苦手とする理由お教えしましょうか?」

「……曲者かっ!? いつの間に!」

「いつから話聞いてたのよミランダ」

 

 あたしが気付かないレベルでアズキの後ろにミランダがぴったり張り付いていた。アズキが腰に手を掛けたところで、今度はあたしの後ろに逃げ込む。武器持ってこさせなくて良かった。今のあたしなら斬れって言っちゃうもん。

 

「新しい魔族の方がいらっしゃったと聞いてわたくしいても立ってもいられず。着の身着のままに飛び出してきたところでございます」

「お嬢……こちらも御友人で?」

「知り合い以上友人未満よ、一応害は無いわ」

「ああ今日もギルネリア様は塩対応にございます」

 

 にやけた顔で言われても悲しさは出てこないって。袖にされたがってるようなものじゃない。

 

「レイ様は戦乙女と褒め称えられ、首都でも勇名を轟かせておりました。それ故伯爵様、人間のとあるお貴族様がその影響力を取り込もうと縁談を結んだのでございます」

「えっレイ実は許嫁居たってこと。恋人居ない仲間だと思ったのに」

「勝手に仲間にするな。それと私に許嫁など居らん」

「ええ、この縁談どうもレイ様の預かり知らぬところで進んでいたようなのです。そうでなければ、あのような事件は起こらないでしょう」

「なになに、何やったの」

「とあるパーティでのことです。相手の頬をひっぱたいて、公衆の面前でご破談にしたのでございます」

「っく、あははははは! そんなことやったのレイ!?」

「だから嫌いなんだ……ミランダも何故そんな話をする!」

 

 枕を断ったら飛ばされた、なんて前に言ってたけどそういう話だったのね。ゴリ押してた貴族にしてみれば、舐めてかかってた小娘に民衆の前で大恥かかされたと。しかも強引に進めてたのもバレたんだろう。だからといってレイを殺せばさらに傷がつく、僻地に左遷でもしないと腹の虫が収まらなかったわけだ。

 

「いやー、でもあたしはその伯爵? に感謝しないといけないわ」

「どうした」

「だって、そいつが居ないとあたしはレイに会えなかったじゃない」

「……! ……まったくお前は考え方が身勝手だな」

「もっと言い方あったでしょ!」

 

 あたしの抗議も虚しく。ぷい、とレイは顔を背けてしまった。




こんやくはきははやり

かんそうひょうかおまちしております
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