女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「おお、お嬢。どうしました」
「ん、差し入れよ。他の皆さんにもどうぞって」
メアリが焼いたクッキーの入ったバスケットを渡す。ここに持ってくるだけでも暑い。本格的に夏が近づいてきたみたいだ。
ラフな格好のアズキが汗を拭う。ここ最近、アズキは村のいろんな畑を手伝っていた。本人が言うには体を動かしていないと落ち着かないらしい。前線でずっと戦ってたみたいだし気持ちは分かる。村の方も力自慢が手伝ってくれると大歓迎みたい。だけど、若い男どもは落ち着かなそうにちらちら見てることにアズキは気付いてるんだろうか。こんな天気だから薄着だし、出るとこ出てるべっぴんさんだし。ってこれだとあたしがエロオヤジみたいか。
「あらら。ギルネリア様もこちらにいらしゃってましたかこれはなんという幸運もはや運命でしょうか」
「あんたは平常運転ねミランダ。あんたも畑仕事の手伝い?」
「いえわたくしはアズキ様にお話がありまして」
「某ですかい?」
「ええ、以前こちらの文献が読みたいと仰られていたので。わたくしの蔵書で良ければお見せするお話をしましたでしょう? それのご用意ができましたので」
「ああ、そいつはありがたいですねえ。支度しますんで、少しだけ待ってください」
いつの間にそんなお話をしていたのか。アズキはああ見えてインテリだから、そこでウマがあったのかな。というかミランダは本なんて持ってきてたんだ。
「貴重なものですから。自宅に残していると泥棒に取られてしまうかもしれませんもの」
「ふうん、それあたしもついていって良い?」
「本当ですか? ギルネリア様がわたくしのお部屋にあがってくださるなんて。今日はなんと素晴らしい日でしょうか」
人間の本、ってのにはあたしも興味がある。問題は読めるかだけど。たぶん読めないだろうなあ。まあ、音読でもしてもらうか。
片付けを終えたアズキと三人でミランダの家へと向かう。途中で隙あらば髪の匂いを嗅いだりしようとしてくるミランダをあしらって、余計に汗をかいた気がする。ミランダの家は空き小屋を借りただけにも関わらず、かなりしっかりと整理されていた。もっと研究職みたいなぐちゃぐちゃを想像していたから、ちょっと予想外だ。
居間で待っていると、ミランダががっしりしたサイズの本を持ってくる。一冊だけで鈍器になりそうだ。表紙に書いてある文字は、やっぱり人間文字で読めなかった。
「それにしても、お二方は符牒文字が読めるのですね」
「いや? あたしは読めないわよ」
「某は多少心得があるくらいでございやすね」
どうして人間と魔族で同じ言葉を喋っているのに、違う文字になるんだか。一つ覚えるだけでも苦労したのに、二つなんて覚えられない。魔族でも文字が読めるのって半分も居ない知識人なんだけどなあ。二つ読めるのなんて魔族じゃ殆ど居ない。うちのアズキは凄いんだ。
「それについては、魔族の方にも一因があると言われておりますね」
「そうなの?」
それは初耳だ。前も思ったけど、ミランダは結構物知りで、あたしが知らないことも知っている。
「かつては人間も魔族も同じ文字を使っていたそうですが。ある時、魔族に指令書を奪われた結果戦局に大打撃を受けたそうですの。それから、魔族が読めないように暗号化した文字を使うようになったとされておりますわ」
「ほほう、それで
「でも暗号をみんな使ってるなんて本末転倒じゃない?」
「ええ、本末転倒ですが。人間も、人間の敵だったというようでして。貴族が政治闘争の謀略にも使い始めた結果、一般化してしまった。というのが主流な説となっております」
「えぇ……」
なんていうか、変なお話だなあ。まあ魔族の方もばかみたいな話はあるし、案外そんなものなのかもしれない。
人間は愚かという話を続けても良いけど、あんまり良い知識にはならないっぽい。本の話に戻ろう。
「で、何の本なのそれ」
「表紙を見る限りでは、神事の作法について記された本のようでございやすね」
「ええ、タイトルは『神に対する心構え』と申しまして、神学を学ぶ人間にとっての教科書のようなものですわ。写本が多いので比較的安価ですし、よろしければお譲りしましょうか?」
「良いんですかい!?」
アズキの目がきらきらと輝く。比較的安価と言っても、本は本だ。そんな簡単に譲って良いものなんだろうか。
「内容は全て暗記してますもの」
「さらっと凄いこと言うわね」
どこからどう見ても分厚いんだけど。あたしだったら暗記するどころか一回読み切る前に諦めてしまいそうだ。もしかして天才なのか?
「それなら、某も持っている本を今度持ってきましょう。お嬢に
「まあ! 魔界の本が手に入る機会なんてめったに手に入りませんわ! 良いんですの?」
「某も幾つか暗記していますから。問題ありやせんで」
訂正、あたしが馬鹿なのかもしれない。
ばーかばーか
かんそうひょうかおまちしております