女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「おっちゃん、これどっちー?」
「おうギルちゃん。それはこっち持ってきてくれや」
「あいよー」
夏も真っ盛り、村はにわかに騒がしくなる。夏を無事に乗り切ることをお祈りして、祭りを開くのだそうだ。祭りといっても、殆ど宴会みたいなものだ。櫓を立てて飲めや踊れやするもので、ちゃんとした取り決めなんてなんにも無い。
待っている間暇なので、あたし達も準備を手伝う。あたしとアズキはそれなりにパワーがあるので櫓の組み立てを、ジスタは料理の配膳なんかを手伝っているようだ。配膳よりも子守をさせられているように見えるけどたぶん気のせいだろう。
「戻ったぞ。うさぎが三匹だ」
「おっ待ってました。こっち持ってきてくんな」
「下処理は既に済ませてありますわ」
メインディッシュにもなるお肉を狩りに行っていたレイとミランダが戻ってくる。レイはともかく、ミランダも狩りが出来たのは意外だ。やっぱりモンスターを研究してるからモンスターを食べたりすることもあるんだろうか。
「いやぁしかし人が増えると助かるねえ。日が赤くなる前に櫓が組み立て終わっちまったよ」
「何の、某もただ待っているのは性に合わないものでございやすから」
「あたしも暇だったしねえ。流石にあっちの戦場に混ざる気にはなれないし」
広場に立てられた調理場の方をちらりと見る。村全員分の料理を作るためにご婦人方がせわしなく動き回っていた。メアリが跳ね飛ばされないか心配になるけど、そこは上手くやっているようだ。最前線かな、ってなるくらい殺気立ってるし、あたしが入っても邪魔になるだけ。良い匂いが流れてくると、腹の虫がなった。
「つまみ食いしたら怒られるかしら」
「去年スタンの奴がこっそり取ろうとしてしこたま怒られてたよ」
「うへぇ、大人しくしておこ」
そんな話をしてるあたし達の前をジスタが泣きながら走り去っていく。また子供達に追いかけ回されているらしい。なんであんなに好かれてるんだろう。ある意味天性の才能なのか。本人はまったく望んでなさそうだけど。
「アズキ、まだ元気残ってる?」
「はい? 某はまだまだ動けやすが」
「じゃあジスタと変わってあげて。たぶんそろそろ捕まると思うから」
「承知いたしやした」
子供達のエネルギーってのは凄まじいもので、なんとか逃げていたジスタも体力切れで動けなくなり、捕まって団子みたいにもみくちゃにされている。アズキが近寄っていってべりべり子供達を引きはがすと、今度はアズキをおもちゃに遊び始めた。まあアズキは兄弟多かったし、子供の相手は得意だろう。やっとのことで解放されたジスタはとぼとぼしわがれた犬みたいな様子でこっちに歩いてくる。
「死ぬか、と、思いました……」
「お疲れー。楽しかった?」
「楽しくないですよぉ」
ぽんぽんと頭を叩いて労ってやる。まあ、一汗流した後のごはんの方が美味しいと言うし、ちょうど良い運動にはなったでしょ。なんだかんだとあたし抜きでも村に来るようにはなったし、追いかけ回されるのも言う程嫌いじゃないと思っている。たぶん目的は絵を進めることなんだろうけど。
「ごはんの準備はもう少し掛かりそうかな?」
「もうすぐ出来る、と仰っていましたわ?」
「ミランダ、距離近い」
「ああん」
ひっついてくるミランダをべりべりと引きはがす。もしかしてこいつの知能レベルは子供達と同レベルなんじゃないだろうか。
「そういえばギルネリア様は狩りの方には参加しなかったのですね」
「あたしね、狩り苦手なのよ」
まったく出来ないってわけじゃないけど。特に野うさぎとか鹿とかは駄目だ。捕まえようにもすぐに逃げてしまう。どうもあたしが存在するだけで怯えさせてしまうらしい。以前牧場に散歩しに行ったらニワトリにめちゃくちゃに攻撃されまくったし。一番得意なのはイノシシかな。イノシシはあたしにビビって逃げるより、気が立って襲ってくる方が多いから狩りやすい。
「むしろミランダがそっち行った方が意外よ」
「フィールドワークは研究の基本ですもの。レイ様には遠く及びませんが」
「ふーん。そう言えばレイは?」
あちら、とミランダが指差す方を見ると、調理場から出てくるのが見えた。
「去年にも増して豪勢だな」
「そうなの?」
「まあ、去年は私も積極的に参加していた訳ではなかったがな。お前たちが来たというのはかなり影響しているだろう」
「へえ、……って」
レイはそう呟きながらお肉の串焼きを齧っている。待っていつの間に貰ってるの。
「先に食べてるのずるい!」
「何を言う。これは狩りの正当な対価だ」
「あたしだって櫓組み手伝ったし!」
「じゃあ調理場に行ってそう主張して来たらどうだ?」
言い返されてちょっと考える。
「……無理ね。大人しく待ってろ、って突っ返されるだけだわ」
「なら大人しく待つんだな」
「うー……」
「はぁ……一口だけだぞ」
唸っていると、レイはため息を吐いて食べかけの串をくれる。
「やったー! レイ大好き」
「現金な奴だなまったく」
調理場からは大皿を取り出す人の動きでさらに慌ただしくなっていた。
はたらかざるものくうべからず
かんそうひょうかおまちしております