女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「それではこの夏を無事に乗り切ることを祈願して、カンパーイ!」
「カンパーイ」
村長の音頭で宴が始まる。櫓の上には楽器ができる人が登ってかき鳴らし、下では飲めや食えやの大騒ぎ。あたしも串焼きやふかし芋なんかを手に持って騒ぎを楽しんでいる。
良いなあ、こういうお祭り。魔界だとめったにやらないからなあ。やったとしても、なかなかあたしは参加できなかった。ほら、幹部格がそういうところに出るとみんなを萎縮させちゃうから。あたしみたいに人望はないけど威圧感だけは与えちゃうタイプの大物だと特に。
「やっほーメアリ、楽しんでる?」
「ちょ、ちょっと疲れました……」
お疲れメアリ。あの歴戦の修羅に混ざって動いてただけでも凄い。メアリはちょこんと座ってスープを飲んでいた。あたしもその隣に座る。
「でも、こういうお祭りは初めてなので、とても楽しかったです」
「ふふっ、まだ終わりじゃないわよ。お祭りは準備してる時が一番楽しいのは分かるけど」
「あ、そうですね」
「ま、でも今は休んでおきなさいな。どうせ、後で休めなくなるから」
「どういうことですか?」
「前もあったけど、宴会ってさ。どんどん加減がきかなくなっていくのよね」
最初は労い合ったり、食事とかも時制が聞いてるんだけど。だんだんみんなが酔っ払い始めると、それがどうしたと言わんばかりに騒ぎ始める。そしたら高みの見物してた奴らもだいたい引きずり降ろされて、最後には何がなんだか分からなくなってというのはお約束だ。
「ほら見て、アズキなんかペース考えないから、もう酔っ払って踊り始めてる」
遠目にもアズキが楽しくなって踊り始めたのに合わせ、酔っぱらい達が音楽に合わせて動き回っているのが見える。ちゃんとした舞踊じゃなくて乱痴気踊りだけど、まあ楽しくやってるならそれで良いだろう。あの子、すぐに酔うくせに潰れるのには時間が掛かるのよね。あたしはまあ同じくらい保つから良いけど、部下で呑み会みたいなものが起こるとだいたい誰かしら呑み潰してた。
「あれ、ミランダさんは何やってるんでしょう」
「んー?」
言われたほうに視線を向けてみると、テーブルを挟んでミランダと男衆共が座っている。お互いの手にはジョッキが握られていて、ぐっぐっと同時に飲み干した。
「も、もう勘弁」
「あら、では次の方どうぞ?」
どうやら飲み比べをやっているらしい。ミランダの周りには敗北者達が屍のように連なっている。この短時間でどれだけ飲んで飲ませたんだろう。ミランダってあんなにお酒強かったんだ。あたしも飲む時は気をつけよう。あの子の前で潰れたら何されるか分からないし。
「下心ある奴らが自滅してるだけね」
「?」
メアリはまだ分からなくていいのよ。人間っていつから飲んで良いんだっけな。あと三年くらい? その頃にはあの意味も分かるようになるだろう。
「ジスタは……あ、お母さん方に囲まれてる」
普段から子供の世話をしてる、というかおもちゃにされてるからか。ジスタはお母さん方のウケが良い。まあちっちゃいし庇護欲を煽るところもあるんだろう。あれも食べなさいこれも食べなさいと食べ物を押し付けられている。まあ明らかに食べきれない量なんだけど、たぶんやんちゃ盛りの自分の子供基準にしてるからあげすぎたって感じだろうな。あ、目が合った。
お礼だけ言って逃げるようにこっちの方へと走ってくる。それでも貰った食べ物は落としていない辺り真面目な子だなあ。そういうところが気に入られてるんだろうけど。
「おー、たくさん貰ったねえ」
「こ、こんなに食べきれないですよぉ」
「じゃ、三人で食べましょうか」
うさぎ肉のパイやサラダをつまんで、口に運ぶ。メアリとジスタが並んでいると姉妹みたいだ。
「ジスタはお酒飲まないの?」
「ボク、お酒は苦手なので。ギルネリア様は?」
「んー飲もうかなって思ったんだけど」
部下とか居るとちょっと遠慮が出ちゃうんだよね。あたしが潰れちゃったら誰が責任取るのって話になっちゃうし。レイが普通の状況だったら任せて飲み明かしちゃおうかなって考えてたんだけど。
「おらぁ! だらしがないな! 次は誰だ!」
「やべぇ、ダレンまで負けちまったぞ!」
「レイさんつえぇ!」
腕相撲大会で十人抜きしてるレイの様子を見てると、あの子に監督役は任せられないよなあって。
「レイって結構酔うと性格変わるわよねえ」
「普段きちっとしてるので、その反動でしょうか」
まあ普段はお酒とか飲んでないし。そういう意味ではちゃんとしてるんだろう。たまにははっちゃける時があったって良い。
「なんだか、ギルネリアさんって時々お母さんみたいですよね」
「お母さん?」
お母さんかあ。あたし恋人もできたこと無いんだけど。というよりも、あたしは自分の親のこともよく知らない。でも、なんとなく悪くないかも。後輩とか部下の面倒は見たことあるしね。
「そうねえ。かわいい娘が二人も居ておかあさん嬉しいわ。それで言うならレイはどっちかというとお父さんね」
そう言って果実ジュースの口に含む。お父さんは本気のアズキを勢いで投げ飛ばしていたところだった。
おさけのみたい
かんそうひょうかおまちしております