女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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さとがえり(※かんげいされてない)

 夏真っ盛り。洞窟になってるお家はそれなりに涼しいけど、外に出たらすぐに溶けてしまいそう。それだけでもまあ憂鬱なんだけど、もう一個憂鬱なことがあたしに降りかかっていた。

 

「あー、もう奈落会議の季節か……」

 

 奈落会議。魔王様と魔王軍最高幹部である『奈落の英傑』に依る年に一度の作戦会議。今までは唯一他人に会える機会だったから憂鬱なりに楽しみにしてたけど、ここに居るだけで友人や部下と遊べる今となっては面倒くさいだけだ。

 何より、まかり間違って別の場所に異動なんてことになったらせっかくの楽園がなくなってしまう。その時はもう大いにゴネるつもりではあるけど。

 

「ジスタ、あたしの代わりに会議出てよぉ」

「無理ですよぉ……」

 

 まあ無茶ぶりなのは確かだ。ジスタが出たらプレッシャーだけでたぶん死んでしまう。

 

「仕方ない。レイとメアリにしばらく家を空けるから遊びに行けないって伝えてくるかー」

 

 そうやって、おうちを出たのが数日前。

 

 あたしは今、何十人もの魔族に取り囲まれていた。

 

「あたし、急いでるんだけど。何か用?」

 

 集落からは離れた場所。先に入って魔王様とお話しようって近道を飛んでいたのが悪かったらしい。こんなところで待ち伏せしてるんだからろくな奴じゃないだろう。普段なら問答無用でふっとばしてるところなんだけど、丸くなったってことなのかなあ。だからといってイライラが収まってるわけじゃないし、しょうもない話だったら殴り倒すけど。

 

「…………」

「あたし、優しいからもう一度だけ聞いてあげるわ。このギルネリア・スローン・マスティファクトの行手を阻むのだから、何か大層な理由があるんでしょうね」

「……人に与する恥知らずに語る言葉など無い」

「あっそう」

 

 ならお話はここで終わりだ。

 

 四方八方から魔法が飛んでくる。統率された動き、その辺のごろつきってわけじゃなさそうだ。大方、あたしのことが気に食わないどっかの派閥が刺客を差し向けてきたと、そんなところだろう。昔はよくあったけど、最近は大人しくなってたんだけどなあ。また全部ぶちのめさないと舐められちゃうか。

 

 くるっと指を回す。あたしの周囲は闇に包まれて、魔法を全部吸い込んでしまう。

 

「リバース」

 

 吸い込んだなら、吐き出すこともできる。同じ魔法をそっくりそのまま、ただし威力だけ何倍にも増やして返してやる。それだけで半分くらいは脱落した。殺しちゃったかな。死なない程度にって加減はしたつもりだけど、こういう手合は脆いからよく加減を間違える。だから、あんまり歯向かってきてほしくないんだけど。

 

「少し、頭を冷やしなさいな」

 

 闇魔法で作った槍を頭上に展開する。合わせて二十。重力の加速を得て解き放たれた槍が生き残りを貫いていく。貫くって言っても別に傷を与えるわけじゃない。ただへばりついて、突き刺さったまま離れないだけだ。壁や床に叩きつけられた奴らはそれだけでもう動けない。うん。やっぱり重力で叩き落とすに限る。これが一番上手いこと行く。

 残り数人、あたしが視線を向けると腰を抜かして、仲間を捨てて逃げ去っていった。まったくビビって逃げるくらいなら最初から絡まないでほしい。

 

 もっかい飛び立とうとしたところでパチパチパチ。拍手が響く。

 

「いやはや流石。虚無の魔女、腕は落ちていないようですな」

「……マコラか」

 

 振り向きざまに腕を振り下ろす。白いひげをたくわえたジジイを重圧が襲う。雑魚の魔族だったらこれだけで塵一つ残らないはずなんだけど、こいつはピンピンしてる。耐えたっていうよりそもそも効いてない。

 

「やっぱり幻影かクソジジイ」

「ジジイとは酷いですねえ。あなたとそれほど歳は変わらないでしょうに。ああ、それともババアと呼んでほしいのですかな」

「見た目がジジイならジジイよ。こいつら、あんたの差金ね」

「いやいや、私は何もしてはおりませんよ」

「よく言う」

 

 縛り上げたところで、この雑魚からマコラの名前は出ないだろう。『奈落の英傑』が一人、見えざる恐怖(インビジブル・フィアー)マコラ・スローン・トランジルク。幻影魔法を使うこいつはあたしよりほんのちょっと歳上で、『奈落の英傑』の最年長。こいつが得意なのは自らの手を汚さず、他人を好きに動かすこと。不満を持っている奴らを都合よくそそのかして、あたしにぶつけたのだ。理由なんて考えるまでも無い。あたしとこいつは犬猿の仲で、顔を合わせれば挨拶代わりに殺しに行く。そんな関係を何百年も続けている。

 

「それにしても、珍しくお早い到着だ。いつも定刻ギリギリに駆け込んでくるというのに、何かあったのです?」

「あんたには関係ないわ。さっさと消えなさい」

「おお、怖い。幻影ごと潰される前にお暇しましょうか。ああ、最後に一つだけ」

 

 ぐにゃりと歪んで消える間際、マコラのジジイはニヤニヤと口角を吊り上げる。

 

「手にしたものはちゃんと持っておかないと。こぼれ落ちてしまいますよ?」

「お気遣いどーも」

 

 そんなこと言われなくても、分かってる。




うさんくせー

かんそうひょうかおまちしております
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