女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可) 作:異種百合推進委員会
「魔王様。ギルネリア・スローン・マスティファクト。ただいま到着致しました」
跪いて魔王様に挨拶する。うるさいばかりで役に立たない取り巻きの数が減っている気がした。あたしの居ない間に少し掃除をしたみたいだ。それでもああいう手合はゴキブリみたいに増えていくから困ったものだ。
「ギルネリアか。大義であった」
「はっ」
「他の者は席を外せ。我はこれと一つ話をしなければならん」
「しかし、何があるか分かりませんし……」
「出ていけと言った。いざという時盾になる度胸も無いものが危険を語るな」
気に入らないという顔をしていたが、取り巻き達は侍従達の手によって玉座の間から追い出される。残ったのはあたしと魔王様。それと魔王様が幼い頃からついている侍従のセッケとアニタだけだ。それにしても、あたしとしなきゃいけない話ってなんだろう。
「ギルネ」
「……なんでしょうか、魔王様」
「なんでしょうでは無いわ」
人が居なくなるや否や魔王様はあたしのほっぺをつねって引っ張る。
「ひたひ、ひたひ」
「勝手に暴走しおって、余計な仕事が増えたではないか」
「す、すひませんでした魔王様」
「へりくだらんで良い。ここに居るのはかつてと同じ者だけだ」
「でも」
「良いと言ったら良い」
へりくだるなと言われてしまったので、数十年前の、まだ魔王様が魔王じゃなくて、リィズだった頃の口調に戻さなければならないらしい。
「だってぇ、ずっと一人ぼっちで寂しかった時に縁が出来ちゃったから」
「そうなる前に我に相談すれば良かっただろう!」
「魔王様忙しそうだったし、そんなことで愚痴るのもあれかなって」
「何処までっ不器用なんだお前はぁ! その結果余計に大事になっているではないか!」
「あびびび」
あたしのほっぺたは餅じゃないんだから伸びないって痛い。魔王様がちおこ状態だ。何か言い訳しようものならほっぺが落ちてしまう。いや美味しいもの食べたとかそういう比喩じゃなくて物理的に。
「アニタ、セッケたすけ」
「自業自得だと思いますわ」
「大人しく怒られるべきだと思います」
「は、薄情者ー!」
さんざん引っ張ったところでまお……リィズの気も済んだようで解放される。うう、これ絶対真っ赤になってる。
「はあ、それで。多少の報告はジスタ・ジオから聞いているが。お前から何か話したいことはあるか」
「ええと、とても楽しく日々を過ごさせていただいております……」
「そのようだな……」
じっとりと睨みつけられる。怖いからやめてほしい。
「お前は、まだあの閑職を望むのか」
「そうね」
難しい問題ではあるが、悩む問題ではない。
「あたしがリィズの近くに居ると、色々と都合が悪いでしょう? 現魔王の指南役がすぐ近くなんて、傀儡だなんだと火種を作られて、火消しが出来ない」
「それは否定しない。だから引き剥がしを進言された時も受け入れた。まさかこんなことになるとは思わなかったがな」
魔王の指南役って言うのは普通大きな権力を約束されたようなもので、魔王にとっては後ろ盾になるものだ。ところがあたしの場合、元々の悪評とあたしの政治苦手が絡まって、むしろマイナス要因にしかなってなかった。かと言ってあたしを前線に送ったら大惨事になりそうだし、そういう理由で僻地に追いやられていたのである。その間に、魔王様はわざと隙を見せて野心を隠せなくなった他派閥を粛清してクリーンにしよう、って話だった。蝸牛と同じくらいのスピードでしか進んでいないようだけど。
「あたしは『奈落の英傑』だし虚無の魔女。もっと古い呼び名なら夜の怪物なんてのもあったわね。でも、あそこだとあたしはただのギルネリアで居られる。ジスタとか、アズキは居るけどね。魔王軍での立ち位置とか考えなくて良いのよ」
「……よくお前が魔王軍の肩書を残しておいてくれているという気分に毎度させられる」
「先々代様のグッドプレイってことにしておいて。これでもあたし、義理堅いのよ?」
「知っている。お前に育てられたのが誰だと思っているんだ」
あたしと先代魔王様ね。でも、他の魔王候補を蹴散らしたリィズが魔王になったことに、あたしは殆ど関与してない。
「一応ちゃんと魔王軍に有利な情報もあるわよ」
「何がだ?」
「村にいるあたしの友人、レイっていうんだけどね。白狼の戦乙女、なんて呼ばれるくらい強いらしいのよ」
「……その名は我も聞いたことがある。こつ然と前線から姿を消したと聞いたが」
「左遷されたらしいわ」
「…………」
悲しそうな顔で遠くを仰いでいた。同情すら感じられた。
「つまりあたしって戦力で戦乙女を封じている、って言い換えることが出来ると思わない?」
「ものは言いようだな。お前なら討ち取ることも可能だろうに」
「ワンチャン負けるわね」
「……本気か?」
「うん。ワンチャンだけど。可能性はあると思うわよ。何より、あたしがやりあいたくないし」
「結局そこに落ち着くんだな」
リィズは諦めたように玉座に腰を下ろした。
「分かった。『深紅の魔遺跡』の守護及び、白狼の戦乙女監視の任にお前をつけよう」
「ありがとう、リィズ」
一番の不安はこれで解消された。愚痴り得というか、やっぱり言ってみるものだ。
ぶかにあまいまおうさま
かんそうひょうかおまちしております