女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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さとがえり(※なごやか)

「ギルネリア! 今日こそてめえのドタマかち割ってやらぁ!」

「はいはいマジュサは元気ねえ」

「イタタタタタタ!」

 

 会議室、あたしを見るやいなや飛びかかって来たマジュサを重力魔法で叩き落として関節を決める。相変わらず元気で短気過ぎるなあこの子は。『奈落の英傑』の一人なんだからもう少し落ち着きを持ってほしい。あたしみたいに。

 

「てめえマジぶっ殺す!」

「口が悪い子は嫌いよあたし」

「ぐああああああ! おい助けろオウキ!」

 

 保護者役のオウキは助けるわけでもなくそこに立っている。幹部になる前からの知り合いだって聞いたことはあるんだけど、未だに仲が良いのか悪いのかよく分からない。性格は全く違うんだけどね。喧嘩っ早くて気が強いマジュサと、落ち着いていて主張も弱めなオウキ。

 

「あっれー、ギルネリアおばさんもう来てたんだ」

「捻るわよ、ブーケ」

「やだぁ、歳だから余裕が無いのかしら」

 

 捕まえようとするとひらりと逃げられて舌打ちする。マジュサを押さえつけながらだから捕まえられない。ブーケの方はけらけら笑ってわざと範囲ギリギリのところを浮いている。

 悪意の童女(マリス・アリス)のブーケは最年少だからとあたしをおばさん煽りしてくる。もうこれだけで気分がだるい。ビビられて遠巻きにヒソヒソされるよりはマシだけど、もうちょっと友好的な子は居ないのだろうか。

 

「あんた達、こんな早くから来てるのね」

「マジュサはともかく、俺とブーケは幹部としても新参なので。魔王様に失礼をする訳には参りません」

 

 そういえばこの二人は魔王様になってからの登用だったっけか。先代様の時から居るあたしや他の面子に対してやっぱりへりくだってしまうらしい。いやオウキはともかくそこの二人が魔王様以外にへりくだってるの想像つかないけども。

 

「真面目ねオウキ。そういえば前線に出てたんでしょう? あっちは今どうなってんの?」

「俺も負傷し戻ったのは最近なのでマジュサの方が詳しいとは思うのですが」

「ガルルルルルルル……」

 

 やだこの子退化してる。オウキも諦めの表情で首を振った。こんな動物みたいな子でも実力は確かなのが性質が悪い。

 

「膠着状態というのが近いですね。少し前は人間に強いのが居て押され気味だったのですが、忽然と姿を消しまして」

「あのクソアマ、今度こそひき肉にしてやる」

 

 二人が言っているのはレイのことだろう。そのレイがあたしと毎日のようにお茶してるって聞いたらどんな顔するだろうか。

 

「おばさんこそ、魔族に相手されないから人間にすり寄ったって聞いたけど。人間にも振られた?」

「仲良くやってるわよ。あたしはあんたやマジュサみたいな野蛮人じゃないの」

「へえ、仲良くやってるんだぁ。魔王様が聞いたらどう思うのかな?」

「残念でした。魔王様の許可はちゃんと取ってます」

 

 ほっぺた抓られたけど。ちゃんと任務続行の言質まで貰ってるからね。

 

「人間と共存、ですか。それで戦が終われば良いのですが」

「はっ、あんなカスと共存なんて寒気がする。皆殺しにしちまえば良いんだ」

「戦争が終わっちゃったら新しいおもちゃも手に入らなくなっちゃうし」

「……道程は遠そうです」

 

 これに関してはオウキが穏健派としか言いようが無い。マジュサの殺意もブーケの悪意も魔族の一般認識だ。あたしからすれば人のこと言えんのかとツッコみたい部分はあるけれど、長々した戦争で積み重なったものだから簡単には変えられない。

 

 あたしはどうなんだろうな。人間にはそれ程興味が無い。滅ぼされても悲しいと思わないだろう。でもあの村の人間は例外。逆に言ったら、魔族が滅んでも気にしない気がする。

 結局のところ、あたしはあたしが身内と認めた人が平和ならそれで良い。たぶん、それはこの子達とは分かり合えない。

 

 なんとなく悲しい気分に浸っていると、会議室の一番大きな扉が開いて、魔王様が入ってくる。マジュサを解放するとこの子でもちゃんとするべき時は分かっているから、大人しく席に着いた。

 

「マコラが見えんが。概ね集まったか」

「……あれ? 三人程足りなくないですか?」

 

 あたし、マジュサ、オウキ、ブーケ。マコラを抜いても三人足りない。というか半分しか集まってない。

 

「カレル、ナミ、アジューダスは北方で不穏な動きがあったのでそちらの調査に向かわせている。問題は無い」

「なるほど」

 

 『奈落の英傑』を三人も派遣するような事態か。かなりきな臭い。だけど、あたしが口を挟むと余計に拗れるから気にしないことにする。

 

「おやおや、私が最後とは。申し訳ございません魔王様」

 

 魔王様が来たのを見計らったかのようにマコラが姿を現した。相変わらず幻影だ。

 

「構わん。では始めようか。奈落会議を」

 

 あたしにとっては、実に退屈な会議が始まった。

 

 いや、面白い話もあるにはあった。半分くらいはうたた寝していたけども。でも、大変革が起きるようなこともなく、例年通り前線の状況と解決策を論じて、魔王様を快く思っていない不穏分子の話を論じて、上手いこと締めてそれで終わり。

 

 早く帰りたいな、とあたしは村のみんなの顔を思い出してあくびをしてしまうのだった。




でばんは(しばらく)ないです。
あと日刊ランキングのってました。ありがとうございます。

かんそうひょうかおまちしております
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