女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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はじめてのしんにゅうしゃ(※じゃまものはたおす)

 拳にぐっと力を入れると、一匹のワイバーンの頭が弾け飛ぶ。楽しそうに集落を襲っていた群れはそれであたしの存在に気がついた。

 

「さっさと終わらせよっか」

 

 あたしが得意なのは重力魔法。あと闇魔法。闇魔法ってなんだと言われても闇っぽい魔法としか説明できないから、いつも重力魔法だけで通してるけど。ワイバーン程度なら、あたしにとってはたいした敵ではない。

 

 ひ、ふ、み、よ。数えるのが面倒になった。一匹ずつ全部殺せば良いか。

 

「ぐぎゃああお!」

 

 あたしを敵と認定したワイバーンが高度をあげてあたしに突進してくる。避けることなんて簡単だけど、急に動いたらメアリが危ない。あたしと違って人間のこの子は脆いんだから、一歩も動かず倒すくらいじゃないと。

 

 腕を振り上げると、紫色の魔法陣が三つ浮かぶ。その中心から放たれた実体のないエネルギーがワイバーン達を飲み込んだ。翼が動かなくなり、地面へと落ちていく。

 

「あっ、集落に落としたらそれはそれで駄目か」

 

 ワイバーンの巨体がこの高度から落ちれば家一つくらいは簡単にぺしゃんこだ。追加で魔法陣を出して、もう動けない体を圧縮して潰す。血も流れないこの殺し方はあたし的には結構高評価。だって血がぶしゃっと出たらグロいし。

 

「これで怖気づいて逃げ出してくれるんなら、あたしも楽なんだけど」

 

 モンスター相手にそんな知能を期待するだけ無駄か。いや動物の本能って結構逃げに寄ってると思うんだけど、モンスターは例外。自分が命ある存在だって理解してないのかってくらい、奴らは破れかぶれに突っ込んでくる。

 このワイバーンもその手合いで。まだ集落に視線が向いていた個体も全部があたしを一番危険な存在だと認識した。

 

「だからなんだって話だけど」

 

 あたしが腕を一振りするたびにワイバーンの数は減っていく。馬鹿正直に突っ込んでくるだけでは、あたしに触れることさえ出来ない。

 

「ちょっとは頭使いなよ。別方向から同時に襲ってくるとかさ」

 

 言いながら、上空を指さして、急降下でこちらに向かってきていた奴をバラバラにしてやった。挟み撃ちするように飛んでくる二頭も重力の壁にぶつけてぺしゃんこにしてやる。頭使ってもあたしには効かないけどねっていうちょっとしたイキリ。

 しかし、数が多い。ワイバーンってこんなに群れるモンスターだったっけな。別に博士じゃないからおかしいって断定することは出来ないんだけど。だってこんだけ居たらごはんとか奪い合いになるじゃん。

 

「まあ、それは後で考えれば良いか」

 

 これで最後の一匹。頭をぐしゃりと潰して地上を見ると、あたしが殺した覚えのないのが三体くらい死んでいた。たぶん人間の中にも戦える人が居たんでしょう。まあまあな腕ではあるっぽい。

 

「終わったよメアリ。もう大丈夫」

 

 よく耐えた偉い偉い。メアリの頭を撫でてあげる。さて、邪魔者は消えたことだし降りようか。このタイミングで顔出すとワイバーンけしかけた張本人っぽく見られそうだけど、たぶん大丈夫でしょ。あたしがほとんど殺したし。

 

 地面に降り立ってメアリをゆっくり下ろしてやる。

 

「わっ」

「大丈夫?」

 

 立ちくらみかバランスを崩したメアリを支えてあげる。守りたかったこの生命。

 

「じゃああたしはもう行くから」

「行っちゃうんですか?」

 

 うっ残りたい。けど、あんまり人間と仲良くするとなー。メアリは例外にしても、情にほだされると仕事の方にも支障が出そうな気がするし。

 どうしようかどうしようと考えていると、目の前から凄まじい殺気が飛んできた。視線をあげると、純白の鎧を着た女騎士が、レイピアをこちらに向けて睨みつけている。

 

「その子から離れなさい、魔族」

 

 あー、相手方から見るとメアリを人質にとってる魔族とか、人間に害を為そうとしている姿に見えるのか。

 斬られても嫌なのでちょっと真面目に相手の実力を測る。強いなこの娘。今まで見た人間の中でも上から数えた方が早い。もしかしたらあたしが手出しせずとも、この娘だけでワイバーンの群れを追い払えていたかもしれない。

 よく見たらこめかみに汗が流れている。表情には僅かに恐怖の色。あたしがこの娘の強さを測ったように、相手もあたしの強さに当たりをつけたようだ。戦ったら、まあ八割方あたしが勝つ。それでも退かないのは、この娘が善良で勇敢なことを示している。たとえ刺し違えてもここであたしを止めようという覚悟

 うん、この娘ならメアリに悪いことはしないだろう。メアリの背中を押して、行ってと合図する。

 

 でも、メアリはあたしの予想とは全く違う行動を取った。

 

「えっと待ってください! ギルネリアさんは私を助けてくれたんです!」

 

 んんんんんんんっ! マジで天使過ぎないこの子。えっあたしを庇ってくれるの? あたし魔族だよ、人間の敵だよ。博愛主義の擬人化かな。

 

「モンスターを倒したのもギルネリアさんですよ!」

「……それは、確かにそうかもしれないが」

 

 女騎士は困惑の目でメアリを見ていた。おい何疑ってんだ殺すぞ。

 

「お話すればきっと分かる筈です」

 

 あ、待って。それはちょっと面倒かもしれない。別に人間と仲良くしたいわけじゃないんだけど。

 とはいえ、真面目な顔のメアリを否定できるほどあたしは冷血女じゃないし、相手も同じようだった。




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