女幹部さんは友達が欲しい(※恋人でも可)   作:異種百合推進委員会

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おでかけだいさくせん(※じっこうとうじつ)

「大丈夫、よね。レイ、見えてないわよね」

「何度も確認するな。挙動不審にしている方が目につくぞ」

「うー、だってー」

「大丈夫ですよ、ちゃんと準備したんですから。」

 

 街道を歩いている最中に何度も確認していると、呆れられてしまった。でも村に居るときとは話が違う。あたしが魔族だってバレないようにしなきゃいけない。翼はこーがくめーさいってので見えなくなってはいるけど、いざとなると不安でしょうがない。

 

「ほら、門まで着いたぞ。手続きするから少し待っていろ」

「う、メアリー手握ってて」

「はーい」

 

 メアリと手を繋いでいるとちょっとだけ安心する。この子は不安より初めて見る景色への楽しさの方が勝っているみたいで目をきらきらと輝かせていた。それだけで良かったという気分になる。

 

 番兵とちょっと話して何やらペンを走らせていたレイが戻ってくる。手には木の板、みたいなものを握っていた。

 

「何それ?」

「割符だな。これを持っていないと街から出れなくなる」

「えっ何それ怖い」

「失くさなければ問題ないさ、さあ行こうか」

 

 レイについて門をくぐり抜ける。うわあ、と思わず息を吐いた。賑やかで、うるさくて、人が多い。魔王城も人の往来はそれなりにある、というかここよりずっと多い筈なんだけど。活気がまるで違った。これで規模としては大きくないって話なんだから恐ろしい。

 

「劇場はあっちか。逸れるといかんな。ギルネ、手を繋いで放すなよ」

「えっうん。って今……」

「念の為だ。ギルネじゃ嫌だったか?」

 

 ギルネ。あたしをその呼び方するのは殆ど居ない。一部の部下と、魔王様と、もう殆ど居ないけど古い知り合い。

 

「いや、ちょっとびっくりしただけ」

 

 レイに呼ばれるのは悪くない。むしろ心地良い。彼女の手をしっかり掴んで、もう片方の手でメアリを引き寄せる。これであたしが手を離さなければ迷子になることはない。

 

 レイは慣れた足取りで人の合間をするりするりと抜けていく。あたしは翼を誰かにぶつけないようにってのもあってコケそうになりながら、メアリに支えられてついていく。しばらく歩いた先には大きな天幕が張られた建物があった。たぶん、これが劇場なのだろう。受付まで行って、愛想笑いの上手なお姉さんにチケットを貰う。あたしは人間のお金に詳しくないけど、聞こえるだけでも結構な額だった。村じゃ使う先もあんまり無いけど、そんなにお金持ってたんだ。

 

「横並びにしては良い席が取れた」

「そうなの?」

「ああ、楽しみにしていると良い」

 

 そうやってあたしの手を引っ張るレイの姿は悪戯好きの子供みたいだ。

 

「そういえば、どんなお話なのかあたし聞いてないわ」

 

 出掛けるのが不安と楽しみでいっぱいで、そこまで気が回らなかった。先に聞いちゃうと楽しみが半減しちゃうかもしれないけど。

 

「とある騎士と、令嬢の恋物語さ」

「私も、お名前だけは聞いたことがあります」

「劇としてはメジャーな演目だからな。だからこそ、演じる役者や監督の腕が出る」

「詳しいのね」

「一時期、観劇に傾倒していたことがあってな」

 

 レイにそんな趣味があったというのは正直意外だ。馬鹿にしてるとかじゃなくて、こつこつと自分で何かをやる、っていうのが好きなレイと、座って眺めているだけの演劇というのがどうしても結びつかなかったのだ。演技じゃなくて、小道具とかに興味ありそうなイメージ。

 あたしの視線の意味を感じ取ったのか、レイは誤魔化すように喉を鳴らす。

 

「んん、始まるまでまだ少し時間があるが、何か食べるか?」

 

 劇場の周りには荷車を引いて食べ物を売っている店がいくつかある。たぶんこうやって暇を持て余している人を狙っているのだろう。実際人が並んでいるし、商売上手だなあ。

 

「メアリは何が食べたい?」

「私ですか? あの、そこにあるクレープって食べてみたいです」

「主食風と甘味とあるがどっちにする?」

「私は主食系の、ベーコンが入っているので」

「あたし甘いのが良い! 果物たくさん入ってるやつ!」

「分かった分かった」

 

 レイがまたお金を出してくれて、三人分のクレープを買ってくれる。レイは牛肉が入ったがっつりしたものを頼んだようだ。奢られてばかりで申し訳なくなる。今度何かでお返ししよう。

 こういう時、あたしから返せるものが余りにも少なくて悲しくなる。昔から、あたしは善意に対して武力や暴力を与えることでしか返せなかった。魔族社会で、相手がそれを望んでいたっていうのもあるけど。あたしに出来る事が他に何も無かったからだ。それが悪かったとは思わない。先々代様も先代様も、もちろん今の魔王様だってあたしをあたしとしてちゃんと見てくれた。暴力まで含めてのあたしだ。だけど、

 

「こらっ」

「あいたっ」

 

 レイにおでこを小突かれた。考えことを見抜かれただろうか。

 

「今日は私のわがままに付き合ってもらってるんだ。あまり遠慮がちにするな」

「私のわがままにも付き合ってもらってます!」

 

 二人はあたしの暴力を必要としていない。見てもいない。それなのに、こんなに良くしてくれる。それは長く生きていても初めての経験で、とても嬉しかった。




このひとへんなとこでしょうしんものだ

かんそうひょうかおまちしております
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